フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

サービス・フランチャイズ研究会の中間報告について フランチャイズ時評

 経済産業省は昨年11月に発表された「フランチャイズチェーン経営実態調査」を受けて、商務情報政策局長の私的研究会として「サービス・フランチャイズ研究会」を発足させ、2月3日の第1回から6月18日の第7回まで会合を開き、このほど「サービス・フランチャイズの環境整備の在り方」という中間報告を発表した。

 同研究会の趣旨は報告書を抜粋すれば、次のようにまとめることが出来る。「近年、わが国においては、少子高齢化の進展、国民の価値観の多様化といった経済社会環境の変化により、サービス経済が急速に進展しており、需要、雇用創出等の観点から、サービス産業の振興は重要な課題である。

 サービスは主に人を直接の媒介として提供されるため、"無形性(目に見えない)"や"生産即消費(貯蔵がきかない)"といった基本的特性を有しており、そのためサービスの質や客観性や標準化が難しく、また、需要者の近隣に出店することが不可欠である」そこで環境が整備されシステムとして確立されれば、新規産業、雇用の創出への大きな貢献が期待できるとして「サービスフランチャイズの健全な発展に向けて具体的な環境整備のあり方について検討する」というものである。

 このサービス・フランチャイズ研究会の中間報告(案)は平成15年7月に発表され、経済産業省のホームページに掲載されている。
http:www.meti.go.jp/report/committee/index.html

Ⅰ この「サービス・フランチャイズの環境整備の在り方」

 まず概要を述べて、その後に意見を申し述べたい。

1 サービス業フランチャイズの現状

 レンタル、学習塾、住宅建築・リホーム等に代表されるサービス業フランチャイズは着実に成長を遂げている。地域の不振企業がサービス業フランチャイズを活用して事業再生を果たして、事業に成功しているケースも事例を挙げて説明されている。
サービス業フランチャイズがこのように着実に成長している理由として

  1. 開業時のリスク低下や投資額の節約
  2. ②ビジネス経験に関わらず比較的開業しやすい手段であり、潜在的加入者が増加していること

  3. ③サービス経済化が進展する中、フランチャイズ・システムがサービス業の基本的特性に適合すること、などを挙げている。

 本部と加盟者との間で様々な問題が生じていることは事実であるが、環境が整備されれば、低迷する経済や急速に進展するサービス経済化等を背景として、わが国経済の活性化に極めて有効な経営手法として期待される。

2 サービス業フランチャイズの健全な発展に向けた課題

 サービス業フランチャイズにおいて、
①専門的人材、②自己資金の不足、③フランチャイズに対する認識、 ④経営能力の未熟な本部や提供するノウハウの事前評価が難しい等の課題が浮かび上がってくる。

3 具体的施策

  1. ①専門人材の育成
  2.  サービス業フランチャイズにおいて本部や加盟者がフランチャイズを正確に理解しているとは限らない。相談を受ける弁護士、会計士、コンサルタントの専門人材は不足している。米国では、フランチャイズを専門とした研究機関や教育プログラムが存在している。わが国でも大学院などの教育機関に専門講座を設けることなどが必要である。

  3. ②加盟者の意識の向上
  4.  大規模な多店舗展開を行い事業経験が豊富な加盟者等を中心としたフォーラム等の場を通じて、加盟店希望者に対する情報提供活動が行われることが期待される。

  5. ③加盟者等の資金調達機会の増大
  6.  民間における多様な金融手法が普及することで、加盟者等の資金調達機会が拡大することが臨まれる。

  7. ④情報開示の促進
  8.  サービス業フランチャイズについても小売業や外食業と同等あるいはそれ以上に、本部の事前の情報開示の促進を図る必要がる。

  9. ⑤本部に対する客観的な評価の促進

 本部に対する継続的かつ中立的な評価が重要であり、民間の多様な主体による評価を促進する観点から必要な環境整備を行う。

  • ⑥トラブルの未然防止
  •  トラブルの未然防止には、加盟希望者の自己責任の徹底、判断力や理解力の向上及び本部の情報開示が重要である。しかし、本部と加盟者の契約内容に対する具体的な規制に踏み込むこととなれば、フランチャイズ契約の柔軟性を奪い、本部と加盟者の事業活動を大きく制約することになり不適切である。

    Ⅱ 各主体に求められる姿

    1.  本部事業者及び加盟者等

    2.  本部は継続的なノウハウの開発・提供、情報開示の徹底が求められる。加盟者等は、契約内容の理解を十分に行い、事業者としての自覚と責任を持つこと。

    3. (社)日本フランチャイズチェーン協会

    4.  年内を目途に同協会がサービス業フランチャイズについて主体的な見直しを行い、情報開示やサービス業フランチャイズの組織率や協会のブランドの向上に努力する。大規模加盟者に関わる考え方について研究を行う。

    5. 政府

     サービス業フランチャイズの健全な発展のためには、政府内の関係部署が一層緊密な連携を図り、各制度の着実な執行や、環境に応じた迅速な対応を図る。

    Ⅲ 意見と感想

    1.  サービス業フランチャイズに関して商務情報局長の私的研究機関とは言え、研究会を設け、一応の成案をまとめられた功に対しては積極的に評価したい。


    2.  サービス業フランチャイズは特に脱サラの加盟店希望者に受けている。それは初期投資が比較的低く、比較的開業しやすい手段と思われるからである。しかし「売上高は投資に比例」するものである。投下資金が少なくて済むと言うことは、売上高も利益も投下資金に応じて小さくなるということである。

    3.   特に無店舗販売の場合、積極的な顧客開拓をしない限り、売上高はゼロと言うことがしばしば発生する。無店舗サービス業は顧客開拓を継続的にしないと、売上高は低迷し、生活すら満足にできなくなるのが実態である。

       サービス業フランチャイズに詳しい人の意見によれば、無店舗サービス業で1年以上継続してその仕事を続けている人は30%程度ということである。
       よほど顧客開拓に自信が無い限り、無店舗サービス業フランチャイズはかなり困難と考えるべきであろう。
       通常無店舗サービス業は300万円程度の加盟金と若干の工具類で事業のスタートが切れることをうたい文句にしているフランチャイズが多い。しかし、現実には事業が軌道仁乗るまでの1~2年程度の生活資金を考えると、決して初期投資が少ないことは魅力ではない。

       この辺はフランジャ3月号(2003年)の「わが国サービスFCの未来を語ろう」という座談会で4氏揃って、「サービス業フランチャイズには営業力が不可欠」と主張している優れた座談会記事がある。

    4.  フランチャイズの専門人材が不足していることは、サービス業フランチャイズに限定されたことではない。日本にはフランチャイズを専門とする弁護士、会計士、コンサルタントが少ない。やはり大学でフランチャイズ学部なり、経営学部の一部門としてフランチャイズ学科を設ける必要がある。


    5.  今回初めて官庁文書に大規模加盟者(私はメガフランチャイジーと呼んでいる)の姿が現れ、彼らによる加盟店希望者への情報提供活動が求められている。

    6.  メガフランチャイジーが社会的に評価されることが大賛成であるが、果たしてメガフランチャイジーが脱サラ加盟者の参考になるであろうか。私は4年間に亘り、飲食店経営に「FC加盟店の成功者たち」を連載してきたが、初めてフランチャイジーになる人にはメガフランチャイジーではなく、1~2店舗を展開する加盟者の話しの方が遥かに親近感があり、加盟者の実態が伝わると思う。むしろメガフランチャイジーは中小、中堅企業の多角化、事業転換に大いに役立つであろう。

    7.  加盟者の資金調達は、特に脱サラなど無担保で、保証人が立てられない人には民間が相手にする筈がない。むしろ、このような場合こそ、雇用の確保の観点から政府系資金を貸し出すべきではないか。
        民間資金の調達は、既に加盟店として相当規模に達した企業に相応しい方法であり、初期の加盟店には到底無理な話である。


    8.  本部に対する客観的な評価

    9.  フランチャイズ・チェーン全体に対する客観的な評価が様々な機関で行われることが重要である。丁度今、そのタイミングにある。

       私の所属する(社)中小企業診断協会・東京支部の「フランチャイズ研究会」では、法定開示書面(ザ・フランチャイズで公開されている)の分析を通して、「良い本部の選び方」を提言するよう取り組んでいる。

    10.  フランチャイズ契約の内容に対して具体的な規制に踏み込むことは絶対に避けるべきである。フランチャイズシステムが40年でここまで大きく発展したことは、行政が本部と加盟者の事業活動に対する制約を行わなかったことが大きく貢献している。行政はあくまで、情報の事前の開示に止め、そこから先は業界の自主基準に任せるべきである。
    11.  

    12.  (社)日本フランチャイズチェーン協会に対する課題として、大規模加盟者に関わる考え方について研究を行うよう提言しているが、これはどのような意味であろうか。メガフランチャイジーを協会の正会員に向かえよとの提言であろうか。会員の範囲はあくまでも協会の自主判断に任せるべきことであり、行政や研究会が意見を述べるのは勝手であるが、決定するのは協会の全員で決めるべきである。


    13.  政府の具体的施策がまるで見えてこない。独特の官庁用語で飾っており、将来に向けて政府は何をするかがこの文章からは理解できない。


    14.  委員の人選について
       サービス業フランチャイズの研究を行うのに、サービス業フランチャイズで最も新聞、雑誌に多く出るダスキン、カルチャーコンビニエンスクラブ(CCC)、パレットプラザの社長が起用されていないのは何故であろうか。この3社を除いて、日本のサービス業フランチャイズを論ずることには違和感を感ずる。

     

     せっかく、行政が多くの時間とお金を掛けてサービス業フランチャイズを調査、研究するならば、当然の配慮ではなかろうか。

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