フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

フランチャイズの定義を考える

Ⅰ 各フランチャイズ協会による定義

 フランチャイズという用語については、(社)日本フランチャイズチェーン協会が昭和54年4月に改訂した、次の定義が一般的に使用されている。

 フランチャイズとは、事業者(「フランチャイザー」と呼ぶ)が、他の事業者(「フランチャイジー」と呼ぶ)との間に契約を結び、自己の商標、サービスマーク、トレードネーム、その他の営業の象徴となる標識、及び経営のノウハウを用いて、同一のイメージのもとに商品の販売その他の事業を行う権利を与え、一方、フランチャイジーは、その見返りとして一定の対価を支払い、事業に必要な資金を投下してフランチャイザーの指導および援助のもとに事業を行う両者の継続的関係をいう。

 この定義によれば、

  1.  フランチャイザーとフランチャイジーとは契約を結ぶ

  2.  フランチャイザーがフランチャイジーに供与するものは、同一のイメージの下に事業を行う権利である

  3.  供与の内容は営業の象徴となる標識と経営のノウハウである

  4.  フランチャイジーによる対価の支払いと資本の投下を求めている

  5.  フランチャイザーの指導及び援助のもとに事業を行う両者の継続性を重視している

 比較的よくまとまった分かり易い定義である。

 しかし、昨今のフランチャイズでは②「同一のイメージの下に」⑤「フランチャイザーの指導のおよび援助のもとに」 の2点が変化しつつある。
例えば、大阪王将の展開するラーメンチェーン「よってこや」は内装・外装は店毎にオーナーの希望を入れて変更しており、到底「同一のイメージの下に」とは言えない。しかし、メニュー、物流等デジタルな部分では当然同一のインフラを使用している。
 またラーメンチェーン等では、店舗の造作とメニューの統一及び開店業務までは行うが、その後の指導、および援助は行わない事例がある。これを「フランチャイズではない」と切り捨てるのは簡単であるが、世間ではフランチャイズとして通用していることも事実である。本部による指導、援助を欠いたフランチャイズは望ましい形ではないが、現実には数多くあることから、これらも包含する定義を求める意見もある。(筆者は反対である)

 次に、アメリカで最も有力な団体である国際フランチャイズ協会(IFAと略す)の定義を見てみる。

 フランチャイジングとは、ディストリビュションの一方法である。それは、習慣的に理解されている産業というものとは異なる。この名称は、商品及びサービスのディストリビューションのために、多くの産業に採用されるものであり、また今日まで採用されてきたものであった。フランチャイズの関係というものは、独立した当事者間における契約であって、このことによって、フランチャイザーが、フランチャイジーのビジネスが継続的に利益をあげつづけるために、教育訓練、マーケティング、広告およびノウハウ等の分野で義務を負う事業をいう。

 一方フランチャイジーはフランチャイザーの承認かライセンスを得た、共通の店名、商標、型式及び手続きをもって行う義務を負っている。そして、かかるフランチャイジーは,自己のフランチャイズ・ビジネスのために、フランチャイザーにフランチャイズ・フィーを支払い,現実に資本投下を行うものである。(IFA規約第2章第1条)(フランチャイズチェーン協会発行「フランチャイズビジネスの基礎知識」から引用)

 これはフランチャイズの定義ではなく、フランチャイズ事業の定義であるが、幾つかの点で示唆的である。

  1.  フランチャイジングとは、ディストリビュションの一方法である

  2.  独立した当事者間における契約である

  3.  フランチャイザーがフランチャイジーのビジネスが継続的に利益をあげつづけるために、教育訓練、マーケテング、広告およびノウハウ等の分野で義務を負う事業をいう

  4.  フランチャイジーはフランチャイザーの承認かライセンスを得た、共通の店名、商標、型式及び手続きを持って行う義務を負っている

  5.  フランチャイジーは、自己のフランチャイズ・ビジネスのために、フランチャイザーにフランチャイズ・フィーを支払い、現実に資本投下を行うものである

この事業の定義の最大の特徴は③「フランチャイザーがフランチャイジーのビジネスが継続的に利益をあげつづけるために、教育訓練、マーケテイング、広告およびノウハウ等の分野で義務を負う事業をいう」とフランチャイズザーのブラッシュアップを義務づけている点であろう。正確であるが、その分適用範囲が狭くなる。むしろ倫理綱領に入れるべき項目かも知れない。

Ⅱ 立法上の定義

1. 中小小売商業振興法

 わが国の中小小売商業振興法における「特定連鎖化事業」の定義を見てみる。同法第11条において、「特定連鎖化事業」とは次のようなものをいうとされている。

「連鎖化事業であって、当該連鎖化事業に係わる約款に加盟者に特定の商標、商号その他の表示を使用させる旨及び加盟者から加盟に際し加盟金、保証金、その他の金銭を徴する旨の定めのあるもの」

 この連鎖化事業とは(同法第4条4項の5)

「主として中小小売商業者に対し、定型的な約款による契約に基づき継続的に、商品を販売し、又は販売をあっせんし、かつ、経営に関する指導を行う事業をいう」

 この定義をまとめてみると、次のようになる。

  1. フランチャイジーが「主として中小小売商業者」に限定されている

  2. フランチャイズ契約は「定型的約款」に基づくこと

  3. フランチャイザーがフランチャイジーに「商品を販売し、又はあっせん」することが要件とされていること

  4. 「経営に関する指導」を行うことが要件とされている

  5. 「加盟に際し加盟金、保証金、その他の金銭を徴すること」

等に特色がある。特に①と③と⑤の要件は独特であり、サービス関係が除外されていることが特徴であり、定義としては全体的に要件を絞り込みすぎていると思われる。これは同法がフランチャイズの定義を下すことが目的ではなく、中小小売商業の振興を目的として政策立法であることが原因であろう。

2. 公正取引委員会のガイドライン

 立法ではないが、平成14年4月に発表された公正取引委員会の「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」について」の はじめに の1項 一般的考え方で、次のように定義している。

(1) フランチャイズ・システムの定義は様々であるが、一般的には、本部が加盟者に対して、特定の商標、商号等を使用する権利を与えるとともに、加盟者の物品販売、サービス提供その他の事業・経営について、統一的な方法で統制.指導.援助を行い、これらの対価として加盟者が本部に金銭を支払う事業形態であるとされている。(以下略す)

(2) フランチャイズ・システムにおいては、本部と加盟者がいわゆるフランチャイズ契約を締結し、この契約に基づいて、本部と加盟者があたかも通常の企業における本店と支店であるかのような外観を呈して事業を行っているものが多いが、加盟者は法律的には本部から独立した事業者であることから、本部と加盟者の取引については独占禁止法が適用されるものである。

(3) フランチャイズ・システムにおける取引関係の基本は、本部と加盟店との間のフランチャイズ契約であり、同契約は概ね次のような事項を含む統一的契約である。

  1. 加盟者が本部の商標、商号等を使用し営業することの許諾に関するもの

  2. 営業に対する第三者の統一的イメージを確保し、加盟者の営業を維持するための加盟者の統制、指導等に関するもの

  3. 上記に関連した対価の支払いに関するもの

  4. フランチャイズ契約の終了に関するもの(以下略す)

 公取委の見解をまとめれば、次の通りである。

  1. フランチャイズ・システムにおける取引関係の基本はフランチャイズ契約である

  2. 本部が加盟者に対して、特定の商標、商号等を使用する権利を与える

  3. 加盟者の物品販売、サービス提供その他の事業・経営について、統一的イメージを採用し、統一的な方法で統制.指導.援助を行い

  4. これらの対価として加盟者が本部に金銭を支払う事業形態である(とされている)

  5. 加盟者は本部から独立した事業者である

Ⅲ まとめの定義

 フランチャイズの各種定義と立法例を参考にして、「フランチャイズ」を定義すれば、概ね次のようにまとめられるであろう。

 「フランチャイズとは、ある事業者(フランチャイザーという)が、他の事業者(フランチャイジーという)に対し、定型的な契約により継続的に付与するライセンスであり、次の要素を含むものをいう。

  1. フランチャイザーはフランチャイジーに対して事業の象徴となる標識と経営のノウハウを提供して、対象となる事業につき指導.援助を行い

  2. フランチャイジーは事業に必要な資金を投下して、フランチャイザーの統制下に入り

  3. フランチャイジーはフランチャイザーに対価を支払い

  4. 両当事者は独立した事業者である。」

(本文は日本フランチャイズチェーン協会が今般新たに改訂した「フランチャイズ・ハンドブック」に掲載される「フランチャイズ総論(黒川孝雄筆)」から引用して、加筆・補正したものである。)

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