フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

協会 初代専務理事  松崎 来輔氏の逝去を悼み、功績を讃える

 9月17日協会初代専務理事(名誉会員) 松崎 来輔氏が享年80歳で逝去された。生前のフランチャイズ協会の設立以来の功績を讃え、併せて協会の初期の歴史(特に倫理綱領について)を振り返ってみたい。

 松崎来輔氏は、協会設立の昭和47年以来平成3年に至るまで、実に19年に亘りフランチャイズ協会の専務理事として、協会の発展、フランチャイズ・システムの普及に努力され、その功績を讃えて協会は30周年の席上名誉会員の称号を贈った。(2002年)

 わが国の現代的なフランチャイズ・ビジネスの幕開けは1963年(昭和38年)と言われているが、1960年代後半には第1次フランチャイズ・ブームが起きたのであった。
また1969(昭和44)年には資本の自由化によって、レストラン業はその対象になった時代である。
 その反面、フランチャイズ・ビジネスの意魏が社会的に定着していないために、自称フランチャイズも出現したので、フランチャイズ・ビジネスは詐欺的商法と見られるケースも起きた。
 フランチャイズ・チェーンを展開している企業の有志その他の方々が「健全なフランチャイズチェーンを育成する団体」の必要性を叫び協会設立の準備を行った。

 1972(昭和47)年2月には「協会設立趣意書」が発表され、アメリカのIFAと同じ趣旨の下にわが国にもフランチャイズ協会の設立が必要であることが述べられている。
 このフランチャイズ協会が公益法人であることが必要であることは、次の3点から論じらている。

 この協会はまず第一にフランチャイズ企業の道義的行為の確立を目的とする。教会がフランチャイズ企業の倫理綱領をかかげ、会員は倫理綱領に賛同する同士によって構成され
るもの、とするのもそのためである。

 つぎに協会はフランチャイズ企業の経営水準の向上を目的とする。協会はそのための場と情報の提供に当たるとともに、フランチャイザー志向者の教育、指導を実施するものである。

 第三の目的は、フランチャイジングを取り巻く法的、制度的環境の整備であり、その目的のために立法、行政機関に意見具申などを行なおうとするものである。
 公益法人である必要性は、その活動内容と効果が極めて公共性・公益性に富むからである。

 いろんな課題はあったが、設立総会は、1972(昭和47)年2月10日に開催された。会場は東京・霞ヶ関ビルの東海大学交友会館であった。当日は大雪が降り、交通機関が大混乱したが150名を超える来会者があった。

 

 設立総会当時点における会員数は、正会員社13社、準会員社2社、研究会員2社であった。会長には安田元七氏、副会長には藤井和郎氏(不二家・専務)、本橋一秀氏(鮒中・専務)伊藤正規氏(伊藤ハム・本部長)の3氏が就任され、初代専務理事には松崎来輔氏が就任した。正会員社13社では、さぞ会の運営には経済的に苦慮されたであろうと思う。

 社団法人日本フランチャイズチェーン協会の設立許可が下りたのが、4月14日であった。
 協会は、まず1972(昭和47)年4月に定義策定専門部会を設置し、6月に「フランチャイズ」の定義を策定し、6月24日開催の協会発足記念講演会で発表した。この定義は1979(昭和54)年4月に現在の定義に改定されて、今日に至っている。

 倫理綱領は1972(昭和47)年11月24日の臨時総会で採択された。松崎専務理事は1973(昭和48)年1月号の「フランチャイズエイジ」で、「倫理綱領の採択とその異議」と題して、次のような記事を掲載している。
「日本フランチャイズチェーン協会は,昭和47年11月24日の臨時総会で、別項の倫理綱領を採択した。同時に協会規約を改正して、正会員の資格は、まず第一にこの倫理綱領に賛同するフランチャイザーであること、とした。

 協会が倫理綱領を制定することは、協会設立準備の段階からの課題であった。これは、協会の組織原理に関するものだけに、とくにこの協会が業種業態を異にしながら、志を一つにするものが相集まって組織をつくろうというものであるだけに、できるだけ早くつくる必要があった。

Ⅰ 単なるガイドラインではない

 この倫理綱領は、会員が守る規範を、会員が自らの手で作り、定め、これを守っていく意思を広く世に表明したものである。一般にフランチャイザーが守るべきことを定めた単なる基準ないしはガイドラインといったものとは異なる。(中略)

1  フランチャイズチェーンを健全に発展させる根底をなすものは、フランチャイザーの高い道義意識にもとづく適正な行為である。
2  フランチャイザーは、その守るべき行動の規範をよく認識し、これを遵守する必要がある。
3  そのためには、まずフランチャイザーの行動規範は何か、これを明確に指示表明する必要がある。
4  その明確化は、他律的に行われるものではなく、これを守るべしとする会員自らの手によるものでなければならない。
5  このことは会員の創意によって行い、これがフランチャイジーによって守られるように組織的に活動する必要がある。その活動の主体となる組織が協会である。(中略)

Ⅱ 協会の活動と倫理綱領

 協会は、この倫理綱領の策定について、通産省のご指導を得るとともに、中立的立場の学識経験者のご参画を仰いだのだ。さらになお、協会で策定する規範については、通産大臣の意見を求めること、という協会定款にもとづいて、策定された倫理綱領につき通産大臣の承認を求め、これを得た。
 このことは、この倫理綱領が、業界の単なる私的な申合わせではなく、そこに公的な権威が付け加わっていることを意味する。したがって、この倫理綱領には、1で述べたことの他に、フランチャイザーのガイドラインとして、公に認められたものという側面がある、と考えられる。」

 

 現在「フランチャイズ経営品質の向上」が語られる機会が増加したが、私は経営品質の大前提として「倫理綱領」と「開示書面」の開示を完全に実施した後の課題と考えている。倫理綱領を知らなかったり、無視する経営者の多い中で、あえて松崎初代専務理事の功績として、「倫理綱領の制定」を取り上げた理由である。

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