フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

2003年・フランチャイズ業界のまとめ

 2003年のフランチャイズ業界を振り返ってみると、まず売上高規模の拡大が止まり踊り場にさしかかった観がある。この現象は実は2000年ころから見られることであり、実質的な市場規模の急拡大が止まり、新しいフランチャイズ・フォーマットが求められている。
 フランチャイズ・システムの歴史は1970年頃から、外食産業の勃興と共に始まったものである。80年代にはコンビニエンスストアが急成長を始め、フランチャイズシステム全体の売上高を伸ばしてきた。その急拡大も2000年までに急成長を止めて、緩やかな成長に移り、フランチャイズシステム全体が踊り場的様相を呈してきたのである。
以下、分野別に2003年の動向をまとめてみる。

Ⅰ サービス業界の動き

 まず、この私的機関の研究会の報告書を評価したい。サービスフランチャイズ業全体に対する指摘(実はフランチャイズシステム全体に対する指摘とほぼ同意義である)がなされ、サービスフランチャイズ業が世間から注目された事実は重要である。

1. 評価したい

 まず、この私的機関の研究会の報告書を評価したい。サービスフランチャイズ業全体に対する指摘(実はフランチャイズシステム全体に対する指摘とほぼ同意義である)がなされ、サービスフランチャイズ業が世間から注目された事実は重要である。

2. サービス業の難しさ

 サービス・フランチャイズ業は特に投資金額が比較的安く、脱サラに向いているため、今後の雇用の受け皿としての期待が大きい。サービス業に対する市場が拡大していることも追い風である。
 この投資額が比較的安く、加盟しやすいという特徴が、逆にサービス・フランチャイズ業の問題点になりうことが多い。「売上高は投資の額に比例」するものである。投下資金が少なくて済むということは、売上高も利益も投資額に応じて小さくなるということである。
 特に無店舗販売の場合、積極的な顧客開拓をしない限り、売上高はゼロということもしばしば発生する。無店舗サービス業は顧客開拓を継続的に実施しないと、売上高が低迷し、生活すら満足にできない事態が発生する可能性がある。よほど顧客開拓に自信がない限り、無店舗サービス業フランチャイズはかなり困難と思った方が正しい。サービス業フランチャイズ本部最大の命綱は「継続的顧客開拓力」を加盟店に教育し続ける仕組みである。
 今回の報告書にこの点が漏れていることは残念である。FRANJA3月号(2003年)で「わが国サービスFCの未来を語ろう」という座談会で、出席者の4氏が揃って、「サービス業フランチャイズには営業力が不可欠」と主張しているのは、自らサービス業フランチャイズを主催するか、加盟店として成功してきた実績に基づくものである。

3. サービス業フランチャイズの人材不足

 サービス業に限定することなく、フランチャイズの専門人材が絶対的に不足している。
日本にはフランチャイズを専門とする弁護士、会計士、コンサルタントが少ない。
これに対しては、西部文理大学の小山周三教授(サービス経営学部)が、03年秋から「フランチャイズ経営論」をスタートさせている。勿論、大学における正規の科目としてフランチャイズシステムが取り上げられるのは、今回が始めてのケースである。この大学の建学の精神が、ホスピタリティを原点として「サービス経営の実践的指導者を育成する」であることからも頷けるものがある。いずれ他の大学でも、フランチャイズシステムを経営学の1科目として取り上げる時代が近づいているであろう。

4. ジー・フォーラムの開催

 今回初めて官庁文書に大規模加盟店(私はメガフランチャイジーと呼んでいる)の姿が現れ、彼らによる加盟店希望者への情報提供活動が求められている。この項目は、早速実行に移され、04年1月30日(金)の午後1時から日経会場で行われることになったので、是非希望者は参加していただきたい。
 但し、メガフランチャイジーが脱サラの加盟店希望者の参考になるかどうかは疑問であると考えている。むしろ、1~2店を展開する加盟者の話の方がはるかに現実的であるような気がする。まずはジー・フォーラムを聞きにいこう。

5. 資金調達について

 フランチャイズ加盟者にとって最大の課題は資金調達である。特に脱サラをした人が無担保、無保証で民間から資金調達ができるわけがない。このような場合こそ、雇用確保の手段として政府系資金を政策的に貸し出すべきである。時代の流れが「官から民」へ移行していることは事実であるが、まだまだ官の果たすべき役割は多いのである。

6. 本部に対する客観的な評価

 フランチャイズ・チェーン全体に対する客観的評価が様々な機関で行われることは重要であり、社会的にも必要な機能である。
 評価機関の客観性の担保と正確性が求められる。私が所属する(社)中小企業診断協会・東京支部の「フランチャイズ研究会」では、法定開示書面や、会社案内、会社説明会、フランチャイジーからの聞き取り等により、加盟希望者本人が「本部評価」する客観的基準を作成した。3月のフランチャイズ・ショーには出版物として皆さんから評価していただけるように努力している。

7. サービス業フランチャイズの情報開示について

 フランチャイズシステムに関する情報開示を定めた中小小売商業振興法は、その対象を小売業(含む飲食業)に限定した。それは、同法が小売商業の振興を定めた法律であったからである。従って、サービス業フランチャイズの情報開示は公取委の定めた独占禁止法上のガイドライン以外に規定はない。これから伸張が期待されるサービス業フランチャイズに情報開示の法律がないことが常に問題にされてきた。今回の報告書は、本部と加盟者の契約内容に対する具体的な規制に踏み込むことは賢明にも避けた。国家権力がフランチャイズ契約の内容に対して具体的に規制に踏み込むことは厳に慎むべき行為である。行政はあくまでも情報の事前報開示に止め、そこから先は業界の自主基準に任せるべきである。
 私見としてはサービス業フランチャイズの事前情報開示は法定開示書面によるべきことを、フランチャイズ協会の見解として公表すれば足ることである。

Ⅱ 小売業界の動き

 フランチャイズシステムの中で最大の売上高規模を誇るものは小売業界である。中でもコンビニエンスストアが最大の勢力を持っているので、自然、コンビニの動向が小売業界の動向となるのは止むを得ないであろう。

1. セブン・イレブン、1万店を越す

 コンビニ業界最大の店舗数、売上高を誇るセブン・イレブンが今夏ついに1万店に達した。1国内で1万店を超える出店をするケースは世界最初であり、記憶されるべき年である。
「基本の徹底」「変化への対応」という理念を、常に言い続けてこられた鈴木会長のすざましい信念の賜物であろう。

2. 「サークルKサンクス」の誕生

 シーアンドエスとその子会社サークルケイとサンクスアンドアソシエイツの3社が04年9月に合併し、「サークルKサンクス」として新たにスタートを切ることになった。01年7月のシーアンドエスの誕生はコンビニの合従連衡をもたらすかに見えたが、業界再編成の気運の見えないまま、3社合併に踏み切ることになった。

3. 酒類販売の自由化

 03年9月から酒類販売が完全自由化されるよていであった。まず01年1月、酒類販売店間に一定の距離を置く「距離基準」が廃止され、今年の9月からは地域の人口当たりの免許を定めた「人口基準」も廃止されることになっていた。酒類販売の自由化に当り、コンビニ、スーパー、宅配業者が一斉に酒販に参入する予定であったが、議員立法による緊急措置法が成立して、酒類販売の競争の激しい地域では税務署長の判断で新規の酒販参入を規制できる法律である。この「逆特区」ともよぶべき地域は全国で900地域以上が指定され、コンビニ等の参入が見送られた。この緊急措置法は2年間の時限立法であり、逆特区の指定も1年後に見直すというが、果たして酒類販売の自由化が進むかどうかは不明な部分はあるが、全体で見れば、規制緩和は確実に進んでいるというべきであろう。
 医薬品のコンビニ販売が議論されたが、結局医薬部外品のみの規制緩和に終わりそうである。

Ⅲ 外食業界の動向

 外食全体としては、市場は縮小傾向にあり、特に既存点ベースで見ると03年の前半において著しかった。10月以降はやや取り戻してきているが、外食市場は「厳しい」の一語につきるであろう。

1. 「ニッポンのバーガー  匠味」

 モスフードサービス(以下モスと略す)は03年88月より新商品「ニッポンのバーガー 匠味」を発売した。この商品は「商品のこだわりを追及してきたモスの集大成、究極のバーガー」をうたっており、価格は580円と640円(チーズ入り)で、販売店舗は9月段階で約300店に限定し、更に1日10ケ限定販売というファーストフードとしてはいずれも常識破りの設定であった。
 マクドナルドの低価格攻勢の中で、この5年間、モスほどマスコミに叩かれたチェーンはなかったと思う。低価格に高品質で立ち向かう戦略は実に困難である。2000年にマクドナルドがハンバーガー平日半額65円に踏み切り、「デフレの優等生」として扱われ、平日半額は2000年の流行語となったほどである。マックの売上高は伸びて、店舗数も拡大した反面、モスは店舗数は減らす、売上高は減少する等苦戦が目立った。マスコミはこのモスの姿勢を徹底的に批判し叩き続けた。モスは加盟店が多いこと、老朽店舗が多いこと、店舗面積が概して狭いこと等、競走上不利な点が多々あった。しかし、モスは創業の原点である「高品質・適正価格」の旗を振り続け、デフレの深刻化する中でも妥協はしなかった。
01年の牛丼の安売り合戦とそれに続く9月の日本初の狂牛病の発生は、日本の外食市場にとって転換のチャンスとなった。勿論、マクドナルドもモスも牛肉を使用している業界として大きな打撃を受けたが、この狂牛病や一連の食肉偽装事件が日本の消費者の「安ければ買う」から「美味しくて安全であれば、高くても買う」へ大きく価値観を転換させる出来事となった。
 低価格は一時的には消費者に驚きを与え、購買意欲を喚起するが、半年もすれば当たり前になり、安いことが感激を与えることはないのである。マクドナルドが既存店の前年割れ2年以上も続く中、モスの「高品質・適正価格」という路線が改めて消費者から評価されて、02年の後半から既存店の前年割れが小さくなり、遂に10月には既存店の前年対比がプラスに転ずる月も現れた。一方マクドナルドは平日半額のハンバーガーを80円に上げたり、59円に下げたりして消費者の不信を呼んで、撤退店も急増した。日本の外食産業の確立に功績のあった藤田田会長が引退して、経営から全面的に引き下がる事態となった。
 このマックからモスへの消費者の好みの変化は素早く、容易に対応できるものではなかった。このモス時代の象徴となる商品が「ニッポンのバーガー 匠味」であり、超デイスカウントから「高品質・適正価格ならば高くても買う」という新しい消費者像を明らかにした商品であり、今年の外食産業の象徴的出来事である。

2. 新業態開発

 03年を特徴付ける外食の出来事は、既存の外食が新業態の開発に走ったことである。あまりにも事例が多いが牛角や焼肉屋さかいの新業態開発が話題となった。

3. 国際化

 日本の外食フランチャイズが海外市場を目指して多店舗化を図って10年以上の歴史になるが、今年はペッパーフードサービスとかジー・コミユニケーションの高粋舎など中堅規模の外食フランチャイズが海外展開(中国、韓国等)を開始して、その成功が報道された年であった。
 国内市場の飽和感から、積極的に海外に展開する新しい息吹を感ずる。

4. 再び狂牛病

 今年のクリスマスの最中に「アメリカで初のBSE発生」のニュースが流れた。消費者の反響は現段階では穏やかであるが、外食産業の牛肉は半分をアメリカからの輸入に頼っているので、この影響は「原料肉調達難」という形で、外食業界を揺さぶっている。
 アメリカがどのようなスピードで安全性を確保するか、アメリカ以外の国からどの程度調達できるか、コストはどこまで上がるか、いずれも未解決のまま新年を迎える。
 2004年も外食産業のフランチャイズには厳しい年になりそうである。

以 上

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