フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

フランチャイズ本部に対する評価基準について フランチャイズ時評

 昨年7月に経済産業省の諮問機関であるサービス・フランチャイズ研究会から「サービス業フランチャイズの環境整備の在り方について」と題する報告書が発表された。既に、このフランチャイズ時評でも03年8月号でこの概要を報告し、かつ評価を行っている。サービス・フランチャイズ研究会と称するが、内容はフランチャイズ・システム全体に対する提言であり、フランチャイズ・システムを構成する各主体に対して、様々な課題を提起している。(社)日本フランチャイズチェーン協会では「サービス・フランチャイズ研究会」を設置して、提起された様々な課題に対して検討をしていると聞いている。
 この報告書の中で、特に注目したいのは「サービス業フランチャイズの環境整備に係る具体的施策」の第5項目に提起された「フランチャイズ本部に対する客観的な評価の促進」である。その項目では「本部に対する継続的かつ中立的な評価等が重要」であるとして、「フランチャイズは業種・業態が多岐に及んでいること、評価する視点が様々であることなどから、客観的な評価が難しい面もあり、民間における多様な主体による評価を促進する観点から、必要な環境整備を行うべきである」と結んでいる。
 恐らく、今年中にも、様々な機関から「フランチャイズ本部評価」が行われるであろうと予測される。
 本稿では、フランチャイズ本部評価を行う場合の問題点と、既に評価を行った事例を紹介して、客観的、中立的な本部評価が積極的に行われる一助にしたい。

1. 評価を行う主体の条件について


 かってあるコンサルタント会社が本部評価を行い、それがそのまま有名な経済雑誌に掲載され、大きな社会的問題を起こしたことは、いまだに記憶に新しい事例である。(「FRANJA」01年7月号に優れた報告書がある)最終的には、この会社の代表者が詐欺罪の容疑で逮捕されてしまい、何時の間にか話題にも登らなくなったが、この事件はフランチャイズ本部評価を行う各主体の備えるべき要件を明らかにしたと言う意味で、反面教師的意義があり、この事件を手掛かりに「評価を行う主体の条件」についてまず提言してみたい。

(1)フランチャイズ・システムを熟知していること
 本部評価を行う主体がフランチャイズ・システムを熟知していることが絶対条件である。フランチャイズ・システムを十分理解していなければ、正しい本部評価が出来るわけがない。特に評価基準を明確にして、誤解を生じないようにする工夫が必要である。

(2)客観的・中立的な立場にあること
 本部評価を行う主体は、当然フランチャイズ本部に対して客観的・中立的な立場でなければならない。特定のフランチャイズ本部と利害関係を持つ主体が行った評価は誰も信用しない。
 その意味で、フランチャイズ開発代行会社、フランチャイズコンサルタント、フランチャイズ支援ビジネス等いずれかのフランチャイズ本部と利害関係を有する主体は、客観的・中立的な立場とは思えない。

(3)経済的な力
 本部評価を行うためには、フランチャイズ本部の聞き取り調査(アンケート調査)はもとより、加盟店からの聞き取り調査も欠かせない。例えば、5%の加盟店の意見を聞いたとしても1本部当り10店舗程度の調査は欠かせないことになる(フランチャイズ・エイジ04年1月号の2002年「フランチャイズ統計」から会員社の平均店舗数が430店程度であり、その半分を加盟店として推算した。)仮に300社の本部を評価するとしても、推定で数千万円の費用が掛かり、
その評定を行う主体の経済力がなければ出来ることではない。
 また、その費用を吸収するためにも(例えば加盟店希望者に情報として売却する)、長期の時間が掛かり、相当な経済力を持った機関でなければ、多分成功しないであろう。

2. 評価の具体的事例の紹介


 様々な困難の中で、フランチャイズ本部評価を試みた事例が幾つかあるので、そのエッセンスを紹介して参考に供したい。


A フランチャイズ本部を評価して格付けとして発表した事例


 フランチャイズ本部の格付けを発表して、評価基準を明確にしている事例を2例紹介する。

(1)日経ビジネス 03年10月20日号


 「フランチャイズ実力ランキング」として、総合ランキング上位50社、並びに「消費者が選ぶ総合ベストチェーンランキング」として上位50社を発表している。FC本部の調査方法は、同誌の42Pの下段に記載されているので、それを引用(一部)する。

【1】調査方法
 国内でFCを展開する有力企業392社を対象に、日経BPコンサルティングが調査した。8月中旬に調査票を送付。有効回答のあった企業数は131社、133チェーン、回収率は33.4%だった。
 ランキングの評価は、「規模」のほか、収益の「成長性」、チェーンの「存続性」を尺度として作成した。

【2】規模
「規模」については、「FC店の末端売上高」を評価した。

【3】成長性
 「成長性」については、FC店売上高をFC店舗数で割った直近(2002年6月から2003年5月までに迎えた決算期)のFC1店舗当りの売上高を、1期前の同じ値で割った「FC1店舗当りの売上高伸び率」と、直近のFC店舗数から1期前の同じ値を引いた「FC店舗増加数」、直近の本部総売上高を1期前の同じ値で割った「本部総売上高伸び率」の3つの指標で評価した。

【4】存続性
 「存続性」については、2002年度中に閉鎖せずに存続したFC店舗数を前年度末FC店舗数で割った「FC店舗存続率」と、直近の店舗指導員数を直近のFC店舗数で割った「FC1店舗当り店舗指導員数」、さらに、本部のチェーン全体への投資余力を見るために本部の直近営業利益額を、FC・直営の合計店舗数で「1店舗当りの本部営業利益」の3つの指標で評価した。

【5】合計
 それぞれの指標ごとに偏差値を算出。「規模」「成長性」「存続性」の各評価項目ごとに偏差値の平均値を求め、それらを合計して総合ランキングを作成した。有効回答の平均値が50、標準偏差値は10となる。3項目すべてが平均値だった企業の合計点は150点になる。
(以下一部略した)

【6】ランキング対象企業
 様々な理由でランキング対象から外した企業(例えばFC店舗数の割合が全店舗数の30%未満の企業等)があり、最終的にランキング対象企業は75社、77チェーンとなり、一部の大手企業で対象から外れたところもある。

●評価
 日経BPコンサルティングが行った調査であるだけに、本部調査の方法は納得性が高いし、信頼性も高い。かつ評価の結果もほぼ妥当なものであると思う。しかし、次のような問題点も考えられる。

【1】FC本部の評価に「規模」を導入することには疑問を感ずる。しかも評価の1/3を占める高いウエイトが掛けられており、当然のことながらコンビニが上位6位を独占することになった。アーリーステージ、ミドルステージのFC本部の評価こそ求められているのだから、「規模」を外すか、せいぜい1/10程度のウエイトにしないと、加盟店希望者が求めるFC本部評価にはならないのではないかと思う。

【2】FC本部評価をすべて本部へのアンケートで済ませていることに疑問を感ずる。せめて2~3%の加盟店でも聞き取り調査を導入すれば、かなり変わった結果が出るのではないかと思う。特にFCは本部と加盟店の双方のコラボレーションで顧客満足度が決まるものであり、本部のアンケートのみでは不足する。

(2)有力外食フランチャイズ格付け2001~2002年  リンク総研編


  ベンチャーリンク系の研究機関であるリンク総研が、外食企業を対象にした格付けであり、そのFCへの加盟を検討している加盟店希望者向けの格付けと、加盟希望者への融資を考えている金融機関関係者に使ってもらうための加盟評価の視点からの評価である。本稿では、前者の加盟店希望者向けの格付けのみを検討の対象にする。一般FC情報(41チェーン)、エマージングFC情報(16チェーン)、推定格付け情報(4チェーン)の合計61チェーンを格付けしている。
 格付けのための調査は対象FC本部への調査票の郵送もしくは持参して回答を記入してもらうアンケート方式が基本である。随時FC本部への電話や訪問によるインタビューを実施している。さらに、状況に応じて加盟店へのアンケート調査、店舗取材、金融機関へのヒヤリングも併せ行っている。
 加盟評価は4つの分析ポイントから評価している。

【1】店舗収益性評価
 直営店の次の10の数値を使用して評価している。
平均FL比率、平均人件費率、平均営業利益率、モデル投資回収年数、平均月坪売上高、平均人時売上高、直営店黒字店舗率、加盟店多店舗展開率、加盟店の契約更新率、平均収益余力(直営トップ店の営業指標と全店平均の業績指標の差である収益余力が大きいほど改善余地が残されており、将来の店舗収益拡大の可能性が高いと考える)

【2】加盟リスク
 加盟店が安心して当該事業を行えるかどうかを検証するために、次の14項目について評価した。
契約期間とモデル投資回収年数比、モデル投資回収年数、本部の安定性・収益性・成長性、商圏保全状況、本部からの契約解除、加盟店からの契約解除、違約金・損害賠償、加盟店買取り制度、フランチャイズ総合保険、ロイヤルティー率、直営店中途撤退率、初期投資金額、トラブル実績、将来性

【3】事業難易度評価
 収益性に目を奪われ、忘れがちな店舗の運営面について検証するために、次の11項目について評価している。
研修期間、常時雇用スタッフ数、ピーク時運営スタッフ数、取引業者対象数(実際に発注する対象業者数)、1週間の営業時間、非営業時間比率、売上高変動率、
想定来店頻度、月間本部報告書類数、業務代替性、取扱メニュー数、

【4】本部サポート内容
 運営面について、業態そのものの難易度と併せて本部のサポートがどの程度なのかについて検討するために、次の18項目について評価している。
出店地確保、資金調達、店舗設計施工管理、会社設立支援、従業員採用、新規開店支援、経理事務代行、随時教育、個別店の販促サポート、不振店対策、週次損益管理、店長フォロー研修、チェーン全体の広告宣伝、SV月間指導時間、SV指導項目、店舗運営マニュアル整備状況、マニュアルの使いやすさ、研修指導項目

 以上の評価項目による結果を、あらかじめ設定しておいた評価項目・評価テーブルに当てはめて得点化していくという定量的分析を行っている。評価担当者・調査担当者の主観的な判断によるバラツキを避けるためである。具体的には、評価項目ごとに一定の配点を行い、最高のランキング5から最低のランキング0までの6段階ごとに得点を付与する方法を用いている。
 また、推定格付けとは、リンク総研の調査に協力してもらえなかった本部の中でも、特に注目度が高く有力と思われる企業については推定で格付けを行ったことを表す言葉である。公開、上場企業もしくは加盟店の数が多く社会的な影響力が大きいと考えられる有力FC本部について、一般に公開されている情報と加盟店へのヒヤリング・店頭調査などによって推定格付けを行った。

評価対象企業は、評価記号S・A・B・C・Dと大文字によるアルファベット表示している。エマージングFCにはs・a・b・c・dと小文字によるアルファベット表示としている。推定格付けにつては評価記号のアルファベット大文字の前に(推)の印を付けて区別している。各企業別に2ページを用いて、調査担当者コメント、本部PR事項、評価担当者コメントの欄を設けて、公平に意見が述べられるようになっている。
 評価項目別(4項目)に記号で表し併せて点数も表示して総合得点数(500点満点)で何点を取ったが明記されている。

●評価
【1】ベンチャーリンク系の研究機関であるだけに、フランチャイズに関しては熟知しており、評価基準も必要な項目はすべて網羅されている。

【2】難を言えば、点数を付けた基準が明確でなく、これもノウハウの内であろうが、読者としては不満が残る。また、加盟店へのアンケート調査、ヒヤリング調査がどの程度行われたが不明である点も残念である。

【3】決定的な問題点は、リンク総研がベンチャーリンク系の研究機関であり、評価主体の持つべき客観性・中立性に疑問がある点である。現にベンチャーリンクが開発に関与したFC本部にはSの羅列が目立ち、他のFC本部から「公平でない」との意見を聞いたこともあるので、評価者の客観性・中立性が疑われる立場の評価は差し控えるべきであろう。

B 自己評価もしくは加盟希望者による評価について
 本稿の目的はFC本部の評価基準であるため、本部自身による自己評価もしくは、加盟希望者による評価基準は目的から外れる恐れがあるが、極めて優秀な評価基準が2例あるため、今後「FC本部の評価基準」が各方面で議論される場合の有力な参考資料になるものであり、公開できる範囲で明らかにする。

3.(社)日本フランチャイズチェーン協会  経営品質向上プログラム


(1)制定の経緯
 同協会の編集による「フランチャイズハンドブック」の34Pに、経営品質向上プログラム制定の経緯を述べている。本プログラムは,JFA設立30周年記念事業として、学者・研究者・弁護士・アナリスト・コンサルタント等有識者による諮問委員会が01年7月に設立され、全体会議4回、ワーキングチームの会合6回の検討を経て、02年2月に協会会長に答申され、同年3月の理事会で承認され、同年5月の30周年記念総会で発表されたものである。
 その後、1年間を掛けて正会員の有志企業で導入され、さらに内容の充実を図るため一部表現などの手直しを行い、実用可能なプログラムに仕上げた。

(2)「フランチャイズ品質向上活動」への取り組みについて
 03年11月の協会の理事会で(「フランチャイズ品質向上」活動の取り組み)についての基本方針を決定して、フランチャイズ品質向上を3ケ年計画により取り組むことになった。
 重要なことは、従来この「経営品質向上プログラム」が正会員のみに開示され、フランチャイズ業界一般には公開されていなかったが、今回このプログラムを会員外にも公開して、自己点検・自己評価に取り組む本部を公募して、取り組みが優秀なチェーンを協会として表彰する制度を作った点である。
 協会は「フランチャイズはクオリティの時代」を統一スローガンに掲げ、あらゆる機会を利用してフランチャイズへの正しい理解と認識をアピールしていくことを方針としてマスコミに発表した。

(3)経営品質向上プログラムの内容について
 今年の3月頃には、協会から詳細な内容が発表されるであろうが、概ね次ぎのような構成になっている。

Ⅰ  経営理念・経営ビジヨンと本部体制
 経営理念の明確化、経営理念の社会性、経営理念の業務反映、経営戦略ビジョンの明確化と認知度、経営戦略ビジョンに基づく行動、加盟店及び顧客満足に関する本部経営者の意識、フランチャイズパッケージの内容理解度、本部経営力強化の重要性認識、加盟店の選定基準
Ⅱ  フランチャイズ契約
 契約の公平性、契約書作成のプロセス、契約書の分かりやすさ、契約前の説明内容、契約日までの猶予期間
Ⅲ  フランチャイズの仕組み
 プロトタイプ、中核になるノウハウ、立地評価、マニュアル、スーパーバイザーによる指導、商標登録、各種IT(情報技術)の活用、ロジスティクス・システム、加盟店オーナー・店長教育システム、本部従業員の基本教育システム、
Ⅳ  加盟店の満足
 加盟店業績把握、加盟店支援システム、加盟店相互の交流の場、加盟店オーナーからの改善提案、加盟店オーナーからのクレーム対応、本部経営情報の共有化、加盟店の業績動向、複数店舗経営者の増加度、中途解約による閉店、期間満了による契約解消、加盟店からの訴訟、加盟店満足度調査
Ⅴ  事業活動の成果
 店舗数の増減、本部企業の収益率動向、本部企業の収益高動向、本部企業の損益分岐点比率動向、本部企業の総資本対自己資本比率、本部企業の安全性、本部企業の効率性、中期経営計画
Ⅵ  顧客満足度、地域社会の理解と対応
 顧客満足度測定、顧客認知度、クレーム対応、クレーム数の増減、環境負荷低減意識、社会貢献や社会的責任意識の共有化、社会貢献活動、労働環境
Ⅶ  経営革新
 経営革新のためのビジョン策定、顧客ニーズの収集と活用、中核になるノウハウの革新、ロジスティクス・システムの革新、加盟店開発の革新、本部社員教育・能力の革新、加盟店支援システムの革新、ブランド力の革新

 以上の7大項目の下の60項目について各々5段階による評価を各本部の自己責任で行う仕組みである。

(4)ジー(加盟店)による本部評価
 以上の本部自己評価は、本部自身が行うことにより、経営能力の向上、フランチャイズ品質の向上を図るものであるが、本来フランチャイズ・システムとは、本部と加盟店の双方のコラボレーションによって顧客満足度の向上を図る仕組みであることに基づき、ジー(加盟店)による本部評価を併せ行うことにより、その目的を果たすことがより確実なものになる。

(5)ジーによる本部評価の項目
 概ね、「経営品質向上プログラム」と対応する内容であるが、メガフランチャイジーも検討に参加しているため、異色の内容もある。また、この内容も最終結論ではなく、今後の検討によって変更される部分もあり得る。

Ⅰ  経営理念・経営ビジョン
 経営理念の明確化、経営理念への共鳴、経営理念の業務反映、経営戦略ビジョンの明確化と認知度、経営戦略ビジョンに基づく行動、フランチャイズ・パッケージに対する満足度、本部経営力強化の重要性認識、加盟店の選定基準
Ⅱ  フランチャイズ契約
 契約の公平性、契約書の内容の納得性、契約書分かり易さ、契約時の説明、契約日までの猶予期間、
Ⅲ  フランチャイズの仕組み
 直営店の成功、中核になるノウハウ、売上高予測の精度、接客ノウハウ、マニュアル、商標、各種IT(情報技術)の満足度、ロジスティクス・システム、加盟店オーナー・店長教育システム、本部従業員の基本教育システム
Ⅳ  加盟店の満足
 加盟店業績把握、加盟店の現状把握、加盟店支援システム、加盟店相互の交流の場、加盟店経営者からの改善提案、加盟店経営者からのクレーム対応、
本部経営情報の提供、
Ⅴ  事業活動の成果
 加盟店の業績動向、複数店舗経営者、再契約の意思、加盟店満足度、
Ⅵ  顧客満足、地域社会全体の理解と対応
 顧客認知度、クレーム対応、環境負荷逓減意識、社会貢献や社会的責任意識の共有化、社会貢献活動、労働環境、
Ⅶ  経営革新
 経営革新のためのビジョン策定、経営システムの革新、顧客ニーズの収集と活用、変化に対応したシステム革新、弾力性ある指導、中核になるノウハウの革新、本部社員に対する満足度、加盟店指導システムの革新、ブランド力の革新、

● 評価
【1】継続性
 以上の説明で判るとおり、「フランチャイズ品質向上」運動として一般に公表するまでに3年近い歳月を掛け、考えられる限りの有識者と実務者の意見の上で構築されたものであり、しかも正会員の有志企業による導入を行い、実地テストも済んでいる。かつパートナーである加盟店からの評価も包摂しており、内容としてはほぼ完成かれたものであろう。何よりも継続的な努力の積み重ねの上に成り立っている事が重要である。

【2】包括性
 フランチャイズに関するわが国有数の有識者と、実務担当者の検討の上で作り上げられたものであり、フランチャイズ・システムを熟知した包括性がある。                 十分評価できる内容である。

【3】経営の質の向上
 フランチャイズ本部の経営の質の向上は、協会設立以来30年間の課題であったが、従来は「倫理綱領を守る」「開示自主基準を守る」「フランチャイズ・コンプライアンスの徹底」等スローガン的な範囲を出ることが出来ず、協会として隔靴掻痒の感があったが、この「経営品質向上プログラム」の策定によって、協会に大きな武器が出来たと言えるであろう。

【4】問題点
 しかし、協会という性格上第三者評価にはなじまない点が問題であろう。本部企業の自己評価であり、外部に発表することを基本的には考えていない。
 品質向上への取り組みが優秀なチェーンを表彰することになっているが、どの程度の数の本部が公募に応ずるかが現段階では不明である。
 参加本部の数と、正会員がどこまで参加するかによって、その成否が問われるであろう。

4. フランチャイズ研究会  フランチャイズ本部の評価基準策定に関する調査・研究


 (社)中小企業診断協会東京支部の「フランチャイズ研究会」がこの度、平成15年度マスターセンター補助事業として表記の調査・研究をまとめた。筆者もその一員として加わり、内容を詳しく知る立場にあった。この調査・研究は加盟希望者が本部情報を自分の力で、どのような視点から、どのような評価基準で判断することが可能であるかを検討したものであり、所謂本部格付けではない。しかし、今後本部格付けを行う研究機関などにとって格好の参考資料になるものである。
この調査。研究はこれから印刷に掛けられ、3月に開催される「フランチャイズ・ショー2004」に刊行物として販売される予定である。公表前であるが、杉本会長及び西野委員長の同意をいただき、ここに概要を発表させていただくことになった。FC研究会の皆さんの好意に厚くお礼を申し上げる。

(1)調査・研究の目的
 フランチャイズビジネスはその業種・業態は多岐にわたっており、加盟希望者が自分に合った適切なフランチャイズ本部を選定する際の情報として、本部による情報開示を補完する観点からも、本部に対する中立的な評価基準の策定が重要になってきている。このことは、平成15年7月に報告がなされた経済産業省の「サービス・フランチャイズ研究会」において、"民間における多様な主体による本部評価の促進"が具体的な施策として提言されていることからもうかがい知ることができる。
 本調査・研究は以上の背景を踏まえて、加盟希望者(個人開業者や事業多角化を目指す中小企業)が本部を選択する際の視点(何を見る)と評価軸(どうやって見る)を提供することを目的に、中小企業診断士という中立的な立場で、本部評価基準の策定を行うものである。(調査・研究より引用)

(2)業種別検討
 この調査・研究では、フランチャイズ・システムを「飲食」「小売」「サービス」の業種ごとに検討して、3業種別の評価基準を提示している点が大きな特徴であり、総得点数は3業種によって異なる数値となる。

(3)フランチャイズ段階別の検討
 本部にはフランチャイズのステージがある。例えば、スタートアップ期、アーリーステージ期、ミドルステージ期等の段階がある。本調査・研究ではアーリーステージ期の本部の項目のウエイトを変化させることにより、フランチャイズ段階別の検討を行っている点も大きな特徴である。

(4)使用する資料
 加盟希望者が入手可能な資料を駆使して、本人が本部を評価する仕組みである。その時に使用する資料は次のようなものである。
法定開示書面(ザ・フランチャイズから引用可能な本部は157チェーン)、会社案内書、フランチャイズ募集案内書、「日本のフランチャイズチエーン」、「FRANJA」各号、「フランチャイズショー」等の各種イベント、「ザ・フランチャイズ」、本部のホームページ、加盟説明会への参加、開発担当者との面談、加盟店ヒアリング、責任者との面談、会社四季報、有価証券報告書、本部ヒヤリング、加盟契約書等

(5)評価項目
 大項目、中項目、チェック項目(小項目と同じ)の3段階となっている。本部評価基準は小売業、サービス業、飲食業の3区分となっている。以下サービス業の事例で説明する。(小項目の数の差がある)

Ⅰ  本部事業(運営)力
 中項目  本部成長性
  本部売上高伸び率、加盟店数伸び率
 中項目  本部展開力
  新業態・新商品・サービスの開発、業態・商品・サービスの独自性、プロトタイプ店とFCパッケージの確立度、商標・サービスマークの登録状況、情報システム、
 中項目  本部経営姿勢
  経営理念の明確性、加盟店に対する経営理念の浸透度、企業倫理(コンプライアンス)方針・規定の有無、
Ⅱ  本部財務力 
 中項目  収益性
  売上高対営業利益率、総資本回転率
 中項目  安全性
  自己資本比率、流動比率、固定長期適合率
 中項目  成長性
  営業利益高の伸び率、経常利益率の伸び率
Ⅲ  情報公開(開示)度 
 中項目  一般情報
  店舗リストの公開、加盟案内(パンフレット)の内容充実度、自社HPの内容更新度
 中項目  契約時の情報
  法定開示書面の内容充実度、加盟リスクに対する十分な説明の有無
 中項目  加盟後の情報
  加盟店相互の情報交換場の有無、加盟店への情報提供の頻度とデメリット情報
Ⅳ  加盟店支援力
 中項目  ジー支援システム
  SV1人当りの管轄店舗数、SVの指導内容と評価、お客様開拓支援力
 中項目  マニュアル整備
  マニュアル整備の度合い(充実度)、定期的な改定体制及び更新度、
 中項目  教育システム整備
  加盟契約後・オープン前の研修システム、オープン後の研修システム、
Ⅴ  加盟店成功度
 中項目  店舗収益性
  既存店1店舗当りの売上高の伸び率、加盟店1店舗当り売上高営業利益率、
  平均投資回収期間、ロイヤルティの算定基準・水準の合理性、
 中項目  加盟リスク(運営難易度)
  契約更新率の推移、不振店対策の有無、解約違約金の有無、
 中項目  本部との関係度(リレーションシップ)
  複数店舗経営者の割合、契約後の中途解約件数の割合、加盟店からの訴訟件数の割合、

(6)本部評価基準
 各チェック項目別(小項目別)に計算方法、解説、評価尺度が説明されており、加盟希望者が自分の力で採点できるように、分かりやすく説明されている。評価尺度は5段階評価か3段階評価である。また、項目ごとに情報収集先を説明している。

(7)評点の結果
 3業態別に評価項目を設けたために、総合店は270点~280点が満点となる。
 (アーリーステージFCは300点~310点が満点となる。)
 100点満点に換算して、総得点数に応じて次のように本部を区分している。
 

100点換算の総得点 評    価
90点以上 優良FC本部で加盟成功は加盟者の能力・情熱・考え方次第。
80点以上90点未満 FC本部として課題はあるが、是正すれば優良本部へ転換も。
60点以上80点未満 FC本部としては標準的であるが、解決すべき課題も山積。
40点以上60点未満 FC本部としては問題があり、加盟するには要注意。
40点未満 FC本部としての体をなしていない。 

● 評価
【1】オリジナルティがある
 加盟希望者が各種公表された資料を基に、自分自らがFC本部を評価しようとする企画であり、考え方がオリジナルである。新進気鋭の中小企業診断士が中心になってまとめただけに、極めて斬新であり、実務的である。

【2】資料は極めて身近なものでまとめてある
 法定開示書面、会社案内、加盟店募集パンフレット、「日本のフランチャイズチェーン」、会社四季報等入手しやすい資料を採用しており、加盟希望者は
 誰でも自分の力で評価できる内容である。

【3】親切である
 加盟希望者自身が採点できるように、実に親切に出来ている。上記3種類の評価方法が、ノウハウ保護の目的で不明確な部分があるが(フランチャイズ協会の「フランチャイズ品質向上プログラム」は丁寧な解説書と用語集を付け加えているが、やはり難解な部分があることは止むを得ない)、この調査・研究は加盟希望者が採点したすいように、評価基準は計算方法、解説、評価尺度、情報収集先と小項目ごとに説明しており、これだけ親切な調査・研究書は稀である。

【4】課題
 しかし、手放しで絶賛するわけにはいかない。まず、この調査・研究が5ケ月でまとめられて、実査を行ってない。従って、現実に加盟希望者が自分の力でFC本部評価を行おうとした場合、いろんな問題が発生する可能性がある。
例えば、法定開示書面をザ・フランチャイズで公開しているのはわずか
 150本部であり、しかも財務諸表を掲載しているのは75チェーンにしか過ぎない。これは、法定開示書面が加盟希望者に加盟契約前に書面を交付して説明することをFC本部に義務付けているのみであり、ウエッブで一般公開することを想定していないからである。もっと言うならば、法定開示書面の開示が法律で義務付けられているのは小売業(含む飲食業)のみであり、サービス業は法定開示書面作成の義務はない。
 また、法律で義務付けられているとは言え、小売業、飲食業で新しい(02年制定の法律)開示書面を作成しているのはフランチャイズ全体の20~30%にしか過ぎないと、筆者の体験で判断できる。驚いたことに法定開示書面を旧書式で開示している事例が実に多い。これは、法定開示書面の必要性(法律で定められていること)は承知しているが、新基準の開示は経営内容をかなりさらけ出すために、旧書面で済ませようとしているとしか考えられない。
 また、仮に法定開示書面が完備していても、それを本部が加盟希望者に示すのは、希望者がほぼ確実に加盟の意思を表明した後である。即ち、希望の本部の法定開示書面を数社分並べて比較すると言う前提がかなり難しいということである。
 また、同じように契約書を示すのは、100%契約の約束が出来た加盟希望者のみであり、それ以外の人に契約書は開示しないものである。
 また、殆ど外部に開示しない情報もある。例えば、不振店対策は独占禁止法のガイドラインで「その有無及び内容」を開示することになっているが、およそ開示の事例を見たことがない。
 実査の上で更なる改善が行われ、加盟希望者の力になれる調査・研究になることを強く期待する。



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