フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

フランチャイジーフォーラムを考える フランチャイズ時評

1. ジーフォーラムフェアーの開催

フランチャイジーフォーラム(フェアー)が去る1月30日に日経ホールで開催された。聞くところによれば、出席希望者は900名に及んだが、会場の入場能力の関係で500名に絞ったそうである。ここまで動員できたのは日経本紙、日経MJによる数度の大広告によるものであろう。その資金の出所などは知るよしも無いが、会場費を含めて数百万円は下らないだろうと推定される。
第1回フェアーへの協賛金の支払社は、当日会場で配布された資料によれば、(株)エックスヴィン他9社であり、1社当りの協賛金は20万円(聞き取り調査)であるそうだ。


2. ジーフォーラム誕生の背景

 そもそもフランチャイジーフォーラムが生まれた原因は、経済産業省商務情報政策局長の私的研究会として「サービス・フランチャイズ研究会」が平成15年2月に発足して7回の会合を重ねて、平成15年7月に「サービス業フランチャイズの環境整備の在り方について」という報告書が出されて、その中に次のような事項が報告されている。(詳細な内容は「フランチャイズ時評8月号」を参照)3. 具体的論点の第2項目として「加盟者等の意識の向上」の中に「フォーラム等の場を通じ、大規模な多店舗展開を行い、事業経験が豊富な法人加盟者等が中心となって、加盟希望者等に対する情報提供や提言活動などが行われること」を期待しているとの内容である。いわゆるメガフランチャイジーが官庁文書に登場した初めてのケースであろう。
 上記の研究会の報告書によれば、第5回に「多店舗展開型加盟者に関する調査研究」が報告されているので、多分この調査・研究を基にして報告書が作成されているのであろう。(なおFRANJA3月号の記事の内容の事実関係については知る立場にないので、そこからの引用は避ける)
 経済産業省のサービス経済課の説明によれば、「加盟者の意識の向上を図るため、加盟者の視点に立った積極的な活動を行うべく、いわゆる"メガフランチャイジー"を発起人とした自発的な「フォーラム」を設置」するそうである。

3. 実施体制と具体的事業内容

 実施体制は、まず組織としては任意団体として、意思決定は世話人会で行い、組織運営は外部に委託するそうである。フォーラムの具体的運営に際しては、経済産業省が最大限の支援を行うと定めている。正会員の会費は月1万円(年間12万円)。入会基準は「知識・経験を持ったフランチャイジー」であることの担保として「当会の基本理念に賛同する者であって、一定規模以上の年間売上高(5億円以上)と店舗数(10店舗以上)と、世話人の推薦が必要と定めている。
 具体的事業内容としては

  • 加盟者の成功体験や有効な事業戦略の情報をHP、メーリングリスト等を通じて配信
  • HPを通じて加盟者や加盟希望者等の相談を受け(経営相談、契約サポート、トラブル等)、世話人や会員等が対応
  • 年1回フェアーを開催し、次の事業等を実施
  •  ・加盟者や加盟希望者等に対するセミナーやモデル相談等を実施
     ・フランチャイズ・システムについての提言をまとめる
     ・本部の団体との政策対話

  事業規模については、次のように定めている。

  • 年間固定費
  •  事務委託費(システム管理、会計管理、連絡調整等)500万円程度
  • 定例フェアー(1回当り)
  •  会場費、広告宣伝、その他の事業費等 600万円程度
  • 年間固定費は正会員及び協賛者の会費を充てる。イベント経費は後援者から協力をお願いする
 


4. 世話人等

世話人(発起人)
 泉澤豊氏(CVSベイエリア代表取締役)他5名である。

  • 協賛者候補
  •  協賛会員は本フォーラムの趣旨・目的に賛同する法人又は個人
     (ただし、フランチャイズ本部事業者を除く)
     会費 年間1口 10万円(原則2口以上)  個人 1口1万円以上
     自治体、商社、コンサルタント、弁護士、地銀、建設・不動産、損保、
     リース、警備会社、マシコミ等 
  • 後援企業候補
 世話人の加盟本部、その他趣旨に賛同する本部事業者
 具体的にはブックオフコーポレーション(株)等の社名が上がっている。


5. 関係者リスト

 当日配布された資料によれば
  • 正会員
  •  世話人6社以外に(株)トップカルチャーが名前を連ねており、1月28日現在7社である。
  • 協賛会員(法人)
     商業界、ソフトバンク・インベストメント、日本フードサービス協会、日本
  •  ベンチャー学会、(株)フランチャイズアドバンテージ、三菱商事(株)等  協賛会員の個人の部には2名の名前が記されていた。  協賛会員の会費は法人で年10万円(原則として2口以上)、個人は1口1万円以上  
  • 後援企業
 (株)オートバックスセブン、(株)ガリバーインターナショナル、(株)吉野家ディー・アンド・シー合計16社

6. フランチャイジーフォーラムは必要か

(1)(社)日本フランチャイズチェーン協会との関係

  日本フランチャイズチェーン協会は昭和47年に社団法人として設立されたわが国唯一のフランチャイズに関する公的団体である。会員は定款の定めに従いフランチャイザー(フランチャイズ本部)に限定している。ただし、研究会員は「フランチャイズシステムに関心を有する者」として入会
  を認めており、現実にフランチャイジーが研究会員として加入している。
  日本フランチャイズチェーン協会にジーの加盟を認めれば、フランチャイジーフォーラムは不要である。
  しかし、協会の正会員社には加盟店の入会を認めるべしとする会員と、認めるべきではないとする会員があり、いずれも決着がついていないし、また加盟店の入会を認めるべきかどうかを正式に議論したことは一度もない。
  しかし、個人的には「加盟店を加入させてはどうか」との意見を述べられる会員もあり、5年程前にIFA(アメリカ)の常任理事であったダスキンの(故)会長の駒井茂春氏にアメリカのIFAの実情を筆者が聞いたことがある。アメリカのIFAでは、定款を変更して加盟店でもIFAに加入できるようになったが、駒井会長(当時)は否定的な見解であり、筆者の質問に対して「経団連と総評が合併してもうまく行く訳が無いでしょう」と言う意見を述べられたことを思い出す。
  現時点においては、加盟店のフランチャイズ協会への正会員としての加入の道は閉ざされている。

(2)加盟店団体を作ることについて

  加盟店が自己の社会的立場を主張し、行政に対して独立して政策提言することに対しては賛成である。
  是非、加盟店の有志が何等かの連絡方法で(多分経費の関係でネットによる連絡、会議になると思うが)加盟店団体を作られることを期待する。
  この場合、特定政党や特定イデオロギーに影響されることなく、正に「加盟店による加盟店のための団体」を作り、自己主張をして、政府の政策に反映させることには賛成である。

(3)経済産業省主導の加盟店団体の結成について

  凡そ、官庁の主導した民間団体がうまく機能した事例は殆どない。時代の流れは「官から民へ」である。今更、官庁主導の加盟店団体ができても、健全に機能するとは思えない。
  しかし、今回は折角フランチャイジーフォーラムとして誕生したことだから、今後官との関係を断ち切り、独自の路線で歩むことを強く期待する。

(4)経費は自前が当然である

  今回のフランチャイジーフォーラムは、経済産業省の肝いりであるため、第1回のフォーラムフェアーを開催するために、一部のフランチャイズ本部から協賛金を集めたことが、当日の資料に明記されている。
 (社)日本フランチャイズチェーン協会を設立した時は、会員社以外からは一切お金を集めていない。設立総会時点(昭和47年2月10日)においては、正会員社13社、準会員2社、研究会員2社の合計17社であった。
  この時、誰からも資金的援助を受けず、勿論関係する通産省からの補助金もなく、すべて会員社の負担でスタートしたのである。しかも専任の専務理事を置き、約3年の間に倫理綱領の決定、用語の定義、フランチャイズ契約書作成の指針など基本的事項を決定して、今日の協会の基礎を作っている。
  経済的に苦しい中を、多分会費以外に会員社の特別会費等で乗り切ったのである。
  この歴史的事実を見ても、フランチャイジーが日本のフランチャイズ・システムの健全な発展を目指すならば、当然すべての経費は自己負担すべきである。
  フランチャイズ本部の協賛金を当てにしたり、ましてや集金に回るような心構えでは、到底フランチャイジー集団を作る精神的基礎が出来ていない。
  酷評するならば、官庁の思惑に利用されている恐れがある。

(5)IT技術を駆使すれば安く出来る

  時代は変わって,IT技術が飛躍的に発展して誰でもホームページを開いて自己の見識を世に問うことが出来る時代である。
  加盟者の中にはIT技術の専門家も多数いる。(筆者の知っている範囲でもかなりの数になる)官のお世話にならなくても加盟者の自力で、十分IT技術を駆使して、安い経費で会議や相談活動が出来るはずである。
  

7. フランチャイジー集団の成功事例について

(1)フランチャイズ専門誌の事例

 フランチャイズ専門誌が「フランチャイジーによるフランチャイジーのための相談室」を開設したところ、加盟希望者による相談が急増したそうである。
 その相談室は、現在も続行されているが後日談がある。相談員を中心に「フランチァイジー勉強会」を隔月に開催して、相互の研鑽、意見交換、視察旅行等も行い、事務局はその専門誌にお願いしてすべての経費は当然のことながら、自己負担である。
 筆者がこの集団に気付いたのは、「飲食店経営」に毎月「FC加盟店の成功者たち」を執筆するために、各飲食フランチャイズ本部にお願いして優秀な加盟店をご紹介いただき、その紹介を受けた加盟店を取材して毎月記事にしている。ところが04年2月号、及び3月号の加盟者が2人ともその勉強会に参加したり、相談に乗ってもらっていることを当人から聞かされたことがきっかけである。
 各飲食フランチャイズ本部は加盟店の経営内容を数値として公表する記事であるため、概してフランチャイジーの中でも業績優秀な加盟店を推薦する傾向があることは当然である。
 偶然とは言え、2ケ月連続でその勉強会の参加者が本部から選定されたと言うことは、その勉強会への参加が加盟者にとって非常に大きなインパクトを与え、成功者への道を歩んだことになる。
 経験豊富な加盟者によるアドバイス、指導、勉強が加盟店経営にとって大きなプラスになることを知ったばかりの時期のフランチャイジーフォーラムであるだけに、経費自己負担による真剣な心構えが成功に導いたと言えよう。

(2)商業界セミナーの事例

  毎年、2月には商業界セミナーが開催される。今年は、筆者は「勝てるFCの基準」というテーマで2月18日に講演を行った。(夜20時から22時10分まで)その後、会場を移動して飲食チームと合同して車座懇談会に移った。(22時30分から24時まで)熱心な受講者が10名ほど集まり、議論が加盟しているAコンビニの業績をどのように上げるかというテーマに終始した。同じ系列のAコンビニに複数店加盟されている方が3名参加されており、非常に白熱の議論が行われた。
 関西から参加されたAコンビニの加盟店から「日販が45万円で利益が出ない。 リーチインタイプの冷蔵庫を1台増設して、日本酒・焼酎を強化したいがスーパーバイザーが許可しない。この場合、どうすれば売上高が上り、利益が取れるであろうか」との質問が出された。講師陣が答える前に、同業のAコンビニの加盟者2名(関東地区で複数店舗を展開し、それ以外の事業も行っている大型加盟店である)が口を揃えて、「Aコンビニの強みは何か。
 決して日本酒や焼酎の品揃えを強化することではないはずである。当然弁当、お握り、サンドイッチ等日配商品である。本部推奨品以外の日本酒を売っても売上も利益もたいしたことはない。Aコンビニの強みを生かしてデイリー商品の販売を強化することが先ではないか。基本を徹底することこそ、Aコンビニの売上高と利益を稼ぎ出す根本である」として自社の事例を説明して、1店舗は日販100万円以上、1店舗は90万円以上、最近始めた1店舗でも80万円以上を売っている。本部の指導にまず忠実に従うことが成功の鍵であると主張された。更に、「この本部の方針が受け入れられないならば、Aコンビニに加盟してはいけない」とまで主張された。
 講師陣も概ね、この意見に賛成であったが、同業者同士の真剣な議論であるだけに、関西から参加された方も頷かれたことと思う。これを、もし講師陣が同じ内容の発言をしたら、多分素直に受け入れてもらえなかったであろう。
 加盟店同士の真剣な討議であるだけに説得力も高いと思われた。
 フランチャイジーによる、フランチャイジーに対する相談は抜群の効果を感じた次第である。

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