フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

「フランチャイズ・ショー2004」から見える動向 フランチャイズ時評

1. フランチャイズ拡大の傾向

2004年3月3日から東京都江東区有明の東京国際展示場「東京ビッグサイト」で第20回目の「フランチャイズショー&ビジネスエキスポ2004」(主催・日本経済新聞社)が開催された。その会場からフランチャイズに関わる幾つかのニュートレンドを感じたので、新しいフランチャイズの息吹を報告する。
 今年の出展社数はフードサービス業37社(前年比4社増)、小売業22社(前年比4社増)、サービス業39社(前年比4社増)、海外6社合計104社であり、実に昨年に比較すると18社の増加であり、日本経済の好調振りに併せて、フランチャイズ・ビジネスも活況を呈してきたことが判る。
 最近の傾向として既存の大手フランチャイズ本部の参加が限定されており、新しいベンチャー的なフランチャイズ本部の参加が多いのは事実である。(社)日本フランチャイズチェーン協会が特別協賛しているにも関わらず、例年正会員社の参加が少ないことが気に掛かっていたが、今年は正会員社の参加も多く会場に賑わいを見せていた。コンビニは昨年1社の参加に止まったが、今年は大手2社の参加が見られた。

2. フードサービス業

 話題のフードコートは今年は、5社の参加であり、新規におむらいす亭、ゆきむら亭FC本部が参加した。総出展社が増大したため、フードコートの面積にしわ寄せが行き、初日はテーブル数、座席数の少なさが利用者の不満を買ったが、2日目以降は事務局の素早い対応で、客席が増加されて、商品を持ったまま客席が空くのを待つお客が減少したことは、素直に評価したい。
 おむらいす亭は始めてのオープンキッチンであり、調理工程がお客から見えるシステムを採用していた。不慣れな部分はあったが、今後のSCのフードコート出展に手がかりを掴んだのではなかろうか。またゆきむら亭はラーメンに本物の丼を使用していた。洗い場が大変であったろうが、お客の反応は良かったように感ずる。ペッパーフード、サーティーワンアイスクリーム、ワイエスフードは毎年の出展であり、手馴れたものであった。相変わらず、ペッパーフードが行列を作っていたが、客数はおむらいす亭がやや多いように感じた。比較的低価格で、会場内で食事を済ませることが出来るフードコートの出店は、来場者や加盟店希望者にとって非常に役に立つ企画であり、是非今後も継続することを事務局にお願いしたい。
 フードサービスではつぼ八、なか卯、焼肉屋さかい、ストロベリーコーンズ等FC協会の正会員社が揃っていた。特になか卯は今年初出展であり、BSEの最中の出展にはフランチャイズ展開に掛ける会社の熱意を感じた。
 今年もうどん店の出展は見られたが、昨年のようなブーム状態は去り、通常のコマと同じような出足であった。「ブームに乗って加盟してはいけない」ことを実証した形になり、今後いろんな加盟を考慮している加盟店希望者は「単なるブームではないか」を見極める必要があるであろう。
 昨年10社を数えたラーメン店は、今年は6社に減少したが、相変わらず国民食的人気が高い業種である。鼓福が新規出店であり、加盟店募集と併せて、「味わけ」を紹介しており、独立店への食材の提供を意図するものであろう。フランチャイズとは呼べないが、少資本型独立パッケージである。
 最近、フランチャイズに似た形で業態の「ライセンス販売」が行われている。フランチャイズの亜流と思われるが、一度実態を調査して報告してみたい。鼓福の「味わけ」制度もフランチャイズの亜流であり、実態を調べてみたい。
 フードサービス業はいつの時代でも華やかであり、新業態も多い。今年の初出店のうち、特に興味を引いたチェーンを上げれば、次のようなチェーンである。「関門海」の高級食材とらふぐを使用したてっちり、ふぐ鍋を低価格で提供する「玄品ふぐ」のチェーン。食材は養殖により、既に直営店で41店舗を展開していると言うから、プロトタイプは完成しているのであろう。問題は技術者の養成であるが、加盟すれば調理師、ふぐ調理師免許等が取得できるよう育成するそうである。「サファリ」は地鶏を中心とした新鮮な食材を「対馬石」で焼く、石焼き料理を提供する「石焼地鶏 石庵」のチェーン。現在(03年11月)直営9店、加盟店5店の合計14店で、年商6億円の規模である。また、「エス・ジェイ・フーズ」は最新の「ニューズ・デリ」のチェーンであり、デリ・チェーンとしての知名度は高い。「ポムフード」は創作オムライス「ポムの樹」を多店舗展開しているチェーンである。

3. 小売業

 会場内で一番目を引いたのは、会場入り口に最大のブースを構えた「神戸物産」であろう。業務用食材を取り扱う現金卸売店舗であり、250店の店舗数を持つ日本一の「業務スーパー」であり、会場の広さと同時に希望者に黄色い布袋を無償で配布して、大半の入場者が袋を持ち歩いた光景は初出展ながら、素晴らしいデビュー振りである。裏側に本格的HMR(家庭料理代行)の「神戸クック」を出展していた。これも今後期待できる業態である。
 既に述べたが、大手コンビニのローソン、ファミリーマートの2社が出展したことも、今年の大きな収穫であった。
 今後拡大が期待されるリサイクルビジネスは6社に登った。まず何と言っても中古本のリサイクル最大手の「ブックオフ」である。特に3月16日に東証2部に上場して公開価格の2倍の値段を付けた話題のチェーンであり、久方振りの出展である。同じく本,CD、ゲームソフトのリサイクルショップ「ブックアイランド」も出展した。子供服のリサイクルショップとして、出店を進めている「パートナーズアンドカンパニー」の「わくわくキッズ」は初出展である。このシステムの特徴は価格決定の完成度と会員制度による顧客との「ワンツーワンマーケッテイング」が実行できていることであろう。「ゴルフ・ドゥ」はゴルフ用品のリサイクル、「タックルベリー」は中古釣具店のチェーン店であり、店舗数も多い。「パーパス」はリサイクルブチック「美装倶楽部」の加盟店を募集中であり、初出展である。

4. サービス業

 サービス業39社のうち実に16社が初出展である。出展企業の入れ替わりの激しい業種である。21世紀に発展が期待できる分野であり、注目する必要がある。今後成長が期待できる高齢者向けビジネスを紹介する。
 「ジョイント」は病態食、高齢者食宅配「けんたくん」は、様々な病態に合わせたメニューを提案し、地域社会への貢献を図るという理念だそうである。「ソーシャルクリエイエーション」は高齢者の立場に立った、美味、健康、安全の「在宅配食サービス」と日常生活をサポートする「買い物代行サービス」を独自のノウハウでフランチャイズ展開すると説明している。宅配サービスについては03年6月の日経MJによれば直営1店、FC30店を展開しているそうであるが、買い物代行サービスの価格をブースで質問したところ、「現在は無料」ということであった。「日本メディケアーサポート」はデイサービスセンター・グループホームの開設・運営のフランチャイズシステムである。「ベストケア」は個別リハビリを軸としたデイサービスセンターのフランチャイズであり、利用者の自立を支援するために考案された、様々な独自のシステムを保有しているそうである。「やまねメディカル」は介護保険適用の通所介護施設である「デイサービスセンターなごやか」のフランチャイズ本部である。
 いずれもニュービジネスであり、介護、宅配、健康等をテーマにしているが、会社名は殆ど知られていない。いつの時代でも新しいビジネスは、ややうさん臭い目で見られるものであるが、今後間違いなくニーズの高まる分野であり、健全なフランチャイズ・ビジネスとして発展することを期待したい。

5. フランチャイズ支援ビジネス等

 フランチャイズ支援ビジネス、出版、無料相談コーナーは今年は16社(前年比1社減)であるが、今年は特に2社を紹介したい。1社は船井総合研究所である。今更言うまでも無く、わが国最大級のコンサルタント会社である。船井総研は各業態別にはクライアントの数も多く、特に流通業には強い会社であるが、フランチャイズシステムに関しては、必ずしも造詣が深い訳ではない。むしろ今後努力して開発していくべき分野だろう。わずか1コマとは言え、船井総研が出展したことは、同社がこれからフランチャイズ部門に掛ける期待の大きさを表すものであろう。
更に新規出展した会社で目立ったのはベンチャーリンクである。本来ベンチャーリンクはBLP(ビジネス・リンク・パートナー)会員に推薦本部のエリア権を売ることをビジネスにしてきたが、今回はフランチャイズ・ショーで一般来場者にも「ゴルフパートナー」「銀の皿」等のエリア権を販売しようと試みていた。これも新しい動向であり、今後の同社の動きを見たい。

6. セミナー

 今年は第20回のフランチャイズショーであることから、セミナーにも工夫が見られた。
 毎回定番で行われる(社)中小企業診断協会東京支部フランチャイズ研究会の特別協力で行われる「フランチャイズ加盟希望者向けセミナー」12講座は参加費無料ということもあり、締め切り前の2月25日頃には満席になるセミナーである。講師はフランチャイズ研究会に所属する中小企業診断士や弁護士であり、これからフランチャイズ加盟を希望する個人や法人には打って付けの講演である。しかも、事前にレジメ段階で先輩による厳しいチェックを受け、かつ講演後も研究会の勉強会で、そのレジメを用いて全員に報告して来年に備えるという厳しい審査を経て講演をするのであり、多分日本の「加盟希望者向けセミナー」では最高のレベルを維持しているものであると思う。フランチャイズチェーン協会では、毎月第四土曜日の午後に、同じメンバーにより加盟希望者向き「やさしいフランチャイズ基礎講座」を開設している。即ち、社団法人の協会が行う基礎講座を3日間で全部受けられるという「お値打ち講座」であり、早々と満席になるのは当然である。12講座の一部を挙げてみると、溝口晃子氏「フランチャイズビジネスの仕組みと基本」、伊藤恭氏「加盟店にもできるフランチャイズ本部評価方法」、柳沢恵三氏「法定開示書面の見方・読み方・いかし方」、池田安弘氏「業種選択、本部選択のポイント」、西野公晴氏「立地評価・物件取得のポイント」などである。
 本来加盟店希望者向けのセミナーであり、そのために無料にしているのであろうが、参加者にはフランチャイズ本部、コンサルタント等多様な受講者が見受けられる。日本経済新聞社としては、事前申込者は「加盟希望者に限定」などの工夫を凝らさないと、折角の企画が本来の目的に沿わなくなっているので来年は一考願いたい。
 有料講座の目玉は特別セッションの「現役・優良フランチャイジーが語る"僕達のフランチャイズ活用方法と本部選び」である。企画協力はトーチ出版「FRANJA」である。パネル討論会で、パネラーは青木謙侍氏、小林正二氏、箕輪友行氏の3名の著名なメガフランチャイジーである。コーディネーターはFRANJA編集長の波多野陽子氏である。波多野編集長は日本のフランチャイジーに関する情報では第一人者であり、申し分のない人選である。パネル討論会は「フランチャイズビジネスとの出会い」「多店舗化への移行時のタイミング&障害」「マルチブランドフランチャイズのメリット&デメリット」「フランチャイズ本部の選び方」「フランチャイズ本部にして欲しくない"アレやコレ"」「フランチャイジーとして"本部力"を感じる瞬間」「今、僕達が注目している業種・業態」など多岐に亘り、2時間が短すぎる程内容の充実した討論会であった。討論会後、約1時間別室で"名刺交換会"を行い、著名講師との相談が出来たことも素晴らしい運営であった。
 余談ながら、日本経済新聞社の「フトコロの深さ」を感じる企画であった。同じ出版媒体に企画運営を任せる日経社の度胸の広さに感服したのは筆者一人ではあるまい。今後もこのように、フランチャイズの各部門の第一人者と共同企画で、有料セミナーを企画してもらいたい。120名の席は満席となり、受講者には大きな収穫になったであろう。

7. 無料相談

 筆者は5年連続で(社)中小企業診断協会東京支部FC研究会のブースで3日、4日の両日にわたって無料相談を実施した。これは加盟希望者、フランチャイズ本部希望者に適切なアドバイスを行うことにより、日本のフランチャイズ・ビジネスの健全な発展を図ろうとする趣旨である。
 今年の相談者も昨年並みの百人近くに上ったが、今年の相談は昨年に比較してかなり変化が見られた。
 一つはフランチャイズ加盟希望者がほぼ半数を占め、本来のフランチャイズショーの趣きを呈したことであり、5年続けた無料相談が来場者に行き渡ったことを示すものである。一方、フランチャイズ本部構築の相談も半数を占め、明らかにフランチャイズショーがベンチャー起業のチャンスとしてとらえて、来場している人も多いことが感じた。
 もう一つは相談内容が具体的であり、加盟対象を絞り込んだり、既にプロトタイプを直営店で経営したりして相談に来られる方が多かった。
 やや薄明かりの灯った日本経済の中にフランチャイズ・ビジネスが完全に溶け込んできたことが感じられた。従来の「フランチャイズショーは春先のお祭り」から、「フランチャイズ・ビジネスが来年度の事業計画に組み込まれており、具体的な行動に移るために参加」に大きく変動したように感じられた。
 ショーに参加された親しい本部5~6社に聞いたところ、今年の反響は極めて良好であり、事業説明会への参加者も多数見込めるとの回答であった。昨年は米国によるイラク攻撃を目前に控えており、株価もバブル崩壊以降最低を更新する毎日であり、リストラの進行に伴うフランチャイズ加盟への検討であったが、今年は、自動車、電機、鉄鋼、素材産業等の業績が過去最高益を更新する見込みであり、日経ダウも1万1500円近辺であり、1年前とはガラリと景況感が変ったが、フランチャイズに対する社会的役割はますます高くなり、それだけ信頼される本部作りや、優良加盟店の選別が求められる年である。
(社)日本フランチャイズチェーン協会が「フランチャイズはクオリティの時代」を合言葉に、フランチャイズチェーンの経営品質向上運動を展開しようとしている時期とタイミングの合致を強く感じた「フランチャイズショー2004」であった。 

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