フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

フランチャイズに関する文献について(1) 

 トーチ出版のフランジャ(2004年3月号)に掲載した「胎動するニッポンのFC」第1回で「大学で初のフランチャイズ専門講座が誕生」を報道した。その中で「専門書の不足」を強く訴え、法学関係以外の経営論、サービス論の図書は皆無に近いと論じた。
 今でも、この報告には間違いないと考えているが、あえて、日本で読めるフランチャイズ文献について探ってみた。なお、ハウツーものは実に多いが、今回の調査からは除外した。
 第1回は(社)日本フランチャイズチェーン協会が出版もしくは監修した図書に限定して論述してみる。

1.フランチャイズ・ビジネス経営シリーズ

 

 フランチャイズ協会が設立されて約15年が経過した昭和60年頃に、フランチャイズに関する理論体系、実務書体系が殆ど存在しないことに着目して、フランチャイズ協会の総力を挙げてフランチャイズ・ビジネス経営シリーズの発刊が企画された。監修委員は次の7氏であり、学者・弁護士・コンサルタントの第一線の研究者が担当している。
  監修委員(委員長  宇野政雄)
   宇野政雄(早稲田大学教授)、浅井慶三郎(慶応大学教授)、奥住正道(奥住マネジメント研究所所長)、川越憲治(川越法律事務所・弁護士)、倉本初夫(商業界主幹)、田内幸一(一橋大学教授)、土井輝生(早稲田大学教授)
   執筆はフランチャイズ協会事務局、コンサルタント等多数が当っている。参考までに第4巻「フランチャイズ・ビジネスのマニュアル作成方法」の執筆者は松崎來輔(元JFA専務理事)、河村嘉一郎(マネジメントコンサルタント)、澤田和雄(システム経営研究所)、岸田弘(元JFA事業部長)本橋一秀(日本フランチャイズシステム研究所社長)、の5氏である。
  経営シリーズの著作名は次の通りであり、フランチャイズに関する理論・実務をほぼ網羅したものである。
  第1巻  フランチャイズ・ビジネスの経営
  第2巻  フランチャイズ・ビジネスの本部機能と役割
  第3巻  フランチャイズ・ビジネスのスーパーバイザーの使命と役割
  第4巻  フランチャイズ・ビジネスのマニュアルの作成方法
  第5巻  フランチャイズ・ビジネスの業態開発のコンセプト
  第6巻  フランチャイズ・ビジネスの人材開発と教育訓練
  第7巻  フランチャイズ・ビジネスの立地開発
  第8巻  フランチャイズ・ビジネスの販売促進
  第9巻  フランチャイズ・ビジネスの販売促進
  第10巻 フランチャイズ・ビジネスの経営診断
 約10年の長きに亘って出版された経営シリーズであり、当時としては画期的な図書であり、セブンーイレブン、モス・フードサービス等の実例も紹介されており、実用に供されたものと思うが、当時から理論と実務の関係が希薄であり、「誰を読者に設定したのか良く判らない」という疑問があったことは事実である。その後のフランチャイズ・システムの急速な発展には追いつけず、現在では歴史的図書としての位置づけが与えられるものである。
 しかし、もし再度理論・実務の体系が書き改められる場合には、十分参考になる図書であり、かつ現在も協会を通して販売されているので、歴史的発展を勉強する方にはお勧めである・(1冊2100円)

2.フランチャイズ・テキスト

  

 95年度から「スーパーバイザー士」の資格制度が導入され、その教科書及び通信教育のテキスト、フランチャイズ開発セミナーのテキストとして出版されたものである。
  著者はフランチャイズ協会の事務局の職員や、SV学校の講師、弁護士が執筆したもので、96年から98年に掛けて短期集中的に執筆されている。
   経営シリーズが監修委員を学者7名に依頼したため、1年1冊のペースでしか発刊出来なかったことを反省して、実務家が中心になって実務的に利用できる観点で執筆したのが本シリーズの特徴であり、約10年間利用されてきたし、今でも協会から発売されている。(1300円から2000円程度)
   現在も一部はSV学校のテキストとして利用されているが、大半は陳腐化して時代のニーズに合わなくなっている。全部で25冊に及ぶ力作である。参考のために著作名のみ挙げる。
  「フランチャイズ・ビジネスの基礎知識」「スーパーバイザーの基礎知識(1)」「スーパーバイザーの基礎知識(Ⅱ)」「フランチャイズ契約の知識」「マニュアル作成の実務」「スーパーバイザーのためのフランチャイズ経営論(Ⅰ)」「スーパーバイザーのためのフランチャイズ経営論(Ⅱ)」「スーパーバイザーに必要なリーダーシップ」「計数管理の基礎知識」「企業発展のための組織戦略」「スーパーバイザーのための販売促進」「ベスト・サービスへの道」「フランチャイズシステム開発(モデル店企画編)」「フランチャイズシステム開発(戦略企画編Ⅰ)」「フランチャイズシステム開発(戦略企画編Ⅱ)」「フランチャイズ・システム開発(システム設計編)」「21世紀のビジネス開発の原理原則」「経営戦略の基礎知識」「スーパーバイザーのための経済知識」「人材開発のための教育訓練論」「スーパーバイザーのための労務管理の知識」「マーケティング戦略の基礎理論」「スーパーバイザーに必要なリーダーシップ」「フランチャイズ・チェーンのストアマネジメント」「加盟店のための立地調査手法」
   SV士のためのテキスト、通信教育の教材としての緊急性は分かるが、短期間にこれだけのボリュームの冊子を作り上げた関係者の努力には敬意を払いたい。
   SV士の位置づけとして、将来的には中小企業診断士並みの資格を意図していたため、このテキストの内容も中小企業診断士のテキストの影響を強く受けている。

3.フランチャイズ・ハンドブック

 旧版は1982(昭和57)年に発行されて、その後数回の増刷を行っているが、ついに改訂版は出版されなかった。(売価2000円)初代専務理事・松崎來輔氏の努力により編纂されたものであり、次のような内容である。
  Ⅰ 倫理綱領
  Ⅱ 契約の指針
  Ⅲ フランチャイズ用語辞典
  Ⅳ 関係法令・判例等
  Ⅴ フランチャイズ関係年表
  Ⅵ 協会の定款、規約、登録事業運営規定、マーク
   日本のフランチャイズの揺籃期から、協会が設立されて、各種指針、倫理綱領、用語の定義、関係法令、判例など、日本のフランチャイズ・システムの発展が読み取れるものであり、特に各種指針は日本のフランチャイズの発展史を語る上で欠かせない項目であり、旧判が絶版になって入手できないのは残念である。
   フランチャイズ協会30周年記念事業の一つとして、フランチャイズ・ハンドブックの全面的見直しが行われ、川越弁護士を座長として編集委員会が設置されて(新版)「フランチャイズ・ハンドブック」が商業界から出版、発売されたのが2003(平成15)年11月であり、以下の内容である。
  第1部 フランチャイズ・システム総論
  第2部 フランチャイズ・システム関係法
   第1章 フランチャイズ・システムの中核となる法令とガイドライン
   第2章 関係法令
第3章 フランチャイジングに関する判例集
  第3部  協会関係規範
      第4部  海外の倫理綱領と規則
  第5部  統計資料・年表・参考資料
第6部  フランチャイズ用語集
   旧版に比較すると、フランチャイズ協会の果たす役割の変化(啓蒙から自主規制へ)、海外の協会の倫理綱領その他の規則の充実、変化したフランチャイズ関係法規の収録、新しく編纂した用語集、フランチャイズ・システム総論の収録など、新規の企画が見られる。現時点におけるフランチャイズに関する網羅的ハンドブックであり、フランチャイズを研究する人にとって必須の文献である。
  旧版と比較すると、全体的によく整備され、体系化されている点が特徴である。市販されて、全国どこの書店、ウエッブからも購入できる点が画期的である。売価2400円(消費税別)

4. JFA20周年史、25周年史、30周年史

 (社)日本フランチャイズチェーン協会は1972(昭和47)年2月に設立され、以降82年に10周年史、87年に15周年史を発刊しているが、特に20周年史、25周年史、30周年史が現在でも入手できるし、かつ日本のフランチャイズの発展を概観するのに、最も適した図書である。以下、簡単にその章立てを紹介する。
(1)JFA20周年史
 Ⅰ 巻頭言
 Ⅱ 新春講演録
 Ⅲ データ  1982年度FC統計調査
 Ⅳ JFA20年小史
 Ⅴ 月例講演会
 Ⅵ 環境対策シリーズ
 Ⅶ フランチャイズの判例
 Ⅷ 巻末特別企画  JFA20周年に寄せる
 20周年史の特徴は「環境対策シリーズ」を特集している点であり、時代のニーズを表している。1992年と言う時代を象徴するものである。
 また別冊で「設立20周年記念講演録」を収録している点も特徴である。
 ちなみに、その内容を見てみると、次のようなものである。
 Ⅰ IFA記念講演  IFAからスピーカー3名を招いて、3つの講演会を行っている。
 Ⅱ 記念講演     城山三郎氏及び竹内宏氏
 Ⅲ パネルディスカッション 「21世紀の主役―われらフランチャイズ・ビジネス」 
 Ⅳ テーマ別専門研究会  環境問題研究会
             教育問題研究会
             法務問題研究会
パネルディスカッションのテーマ「21世紀の主役―われらフランチャイズ・ビジネス」は売上高が年率10%以上の勢いで伸びていたフランチャイズ・ビジネスの勢いが感じられる。

(1)JFA25周年史
 Ⅰ JFA25年の動き
 Ⅱ 月例セミナー講演録、登録制度説明会講演録
 Ⅲ インタビュー
 Ⅳ FCビジネスの群像
 Ⅴ 正会員アンケート  産業としての位置づけ、経営理念、21世紀ビジョン
 特に「FCビジネスの群像」は、フランチャイズエイジに連載された企画
 ものであり、日本のフランチャイズの誕生と揺籃期を語る貴重な第1級の
 資料である。
(2)JFA30周年史
  第一部  フランチャイズの未来と展望
  特別インタビュー
  寄稿・フランチャイズ発展のために
  フランチャイズビジネスへのメッセージ
  特別座談会
  JFA正会員からの提言
  特別寄稿・あの日、あの時
 第二部 フランチャイズの発展とともに 30年 
  第1章  協会の設立から運営基盤の確立へ
  第2章  フランチャイズの健全な発展に向かって
  第3章  フランチャイズ発展の足跡
 資料編
  年表:JFA30年の歩み
  JFA会員名簿
 この30周年史より外部機関に依頼して編集したため、従来の周年史とは一味違う編集となっている。特に第一部の「フランチャイズの未来と展望」は、新しい企画であり、今後の協会の発展に役立つ提言が多い。

5.よくわかるフランチャイズ入門

 フランチャイズ協会では、かねて加盟店希望者向けの「フランチャイズ・チェーン加盟の手引き」(1994年6月発刊、800円)を販売して、特に
毎年3月に行われる「日経フランチャイズショー&ビジネスエキスポ」には協会ブースを設けて、加盟店の加盟相談の受付けと、この「加盟の手引き」を販売して好評を博してきた。
 しかし、2002年の法律の改定やガイドラインの見直しを受けて全面的な改訂を企画した。従来協会では、この種類のテキストは内部作成を行ってきたが、今回は(社)中小企業診断協会東京支部・フランチャイズ研究会のメンバーに委嘱して改訂を行った。勿論、協会の発行する文書であるから、協会の事務局から専務理事を始め多くの関係者の意見を採用して、協会の刊行物として論旨の一貫性には意を用いた。
最終的には、フランチャイズ研究会の会長杉本收氏と顧問の筆者が監修を行い、同友館より発売することになった。(発売日04年11月予定、価格1600円予定)
 元来は加盟希望者にフランチャイズ加盟が良く判るための書籍であったが、今回はフランチャイズ本部希望者に向けた記事も採用されている。 
 第1章  フランチャイズビジネスの基礎知識
 第2章  フランチャイズ加盟で成功する心構え
 第3章 加盟検討から契約・開店までのステップ
 第4章  開業後の失敗しないポイント
 第5章  成功するフランチャイズ本部の作り方
 第6章  関係法令等
 第7章  知って得するフランチャイズチェーン活用Q&A
 第8章  資料編「フランチャイズの知恵袋」
十数名の中小企業診断士や弁護士の集団が作った「フランチャイズ入門書」であり、非常にオリジナルな意見や知識満載の書物であり、価格とのバランスも十分計算された作品である。
読めば、必ず得をした気分になれる図書である。

6.フランチャイズシステム講座書

 2003年に「サービスフランチャイズ研究会」が組織され、同年7月に「サービス業フランチャイズの環境整備の在り方について」という報告書が発表された。その中の3項にサービス業フランチャイズに係わる具体的論点の一つとして「専門人材の育成」を揚げて、「サービス業フランチャイズにおいては、学術研究や専門講座が少なく講学的蓄積も薄い」として、「我が国でも、大学院などの教育機関において専門講座を設けるなど、本部や加盟者等の資質の向上や、フランチャイズに関する専門知識を持った人材の体系的な養成に向けた環境整備を図るべきである」との提言がなされた。
 この提言を受けて、「フランチャイズ・ビジネスの環境整備事業」として、フランチャイズ・システム講座書の開発が経済産業省で予算化され、(社)日本フランチャイズチェーン協会を中心に開発されようとしている。いまだ、最終決定ではないが、このフランチャイズ・システム講座書は、次の3点の用途を考慮している。
 ①JFA主催の各種講習における教科書としての利用
 ②フランチャイズ関連企業の社内教育事業としての利用
 ③大学等における「講座用教科書」としての利用
更にフランチャイザー中級管理職向けの「フランチャイズ関連法令講座書」及び、フランチャイジー向けの「フランチャイズ・システム講座書」の3部構成である。
 監修委員会としては、フランチャイズに詳しい学者グループを想定しており、編集委員会には学識経験者やJFA役員を予定している。
執筆者としてはSV学校講師、JFA委員会代表、JFA企業等を考えている。フランチャイズ体系としては、一般的なMBAのカリキュラムにIFA(アメリカ・フランチャイズ協会)のプログラムを参考にして、10数冊の分冊になることが予想される。
 具体的にはこれから人選を進めて、2005年の3月までに一応の完成を目指すものである。
過去の経営シリーズ、フランチャイズ・テキストの経験を活かして、今後の日本のフランチャイズの発展に役立つ「フランチャイズ・システム講座書」が誕生することを期待する。


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