フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

フランチャイズに関する文献について(2)

「フランチャイズに関する文献について(1)」では、(社)日本フランチャイズチェーン協会が発行もしくは監修したフランチャイズ関連図書について報告した。今回は、その他の市販されているフランチャイズ文献について報告する。
 原則として、日本語で現在市販されており、どこでも入手可能な文献に限定するが、一部絶版もある。前回同様、ハウツーものは省略した。

Ⅰ 基礎文献

 フランチャイズを語る上で欠かせない図書であり、かつ定番として世間の評価が定着している文献である。

1.田島義博編「フランチャイズチェーンの知識」 日経文庫 830円(税別)

 1983年に初版が出て、90年に2版に改定され、今日に至るまで約20年間の間に8万部発行された、隠れたベストセラーであり、入門書としては、今でも最も優れた図書である。しかい、2002年の中小小売商業振興法の改定や、ガイドラインの改定を採用していないため、内容的には古くなっており、新版改定が望まれる。共著であり、次のような内容である。
第Ⅰ章  フランチャイズ・チェーンとは    田島義博
第Ⅱ章  フランチャイズ・チェーンの組織・運営と問題点 和田 茂穂 
第Ⅲ章  フランチャイズ契約と法律      川越 憲治
まとめ  FCシステムによる経営近代化の方向 田島義博
 このまとめにあるように、通産省と中小企業庁は82年にフランチャイズ・システム経営近代化推進協議会を設け、フランチャイズ・システムによる、中小企業と中小サービス業の経営近代化の基本的方向を策定した。その内容は、同書の付録Ⅰとして「フランチャイズ・システム経営近代化について」(昭和57年7月5日)に詳しい。この提言はフランチャイズ・システムのその後の発展の基礎となっており、極めて的を得た内容である。これだけの提言の出来る人材は誰かが、筆者にとって永年の謎であった。フランチャイズ・ハンドブックの新版の編集委員として、旧藩を丁寧に読み直したところ、旧藩には委員の名称まで残っていた。田島義博教授を座長として、川越弁護士、松崎JFA専務理事、駒井ダスキン社長、鈴木セブンーイレブン社長等と並んで、小僧寿し、ファミリーマート、珈琲館、KFC、ミスタードーナッツのオーナー会会長(名称は企業により異なる)が参加している。正に、日本のフランチャイズチェーンを代表する学者、弁護士、専務理事、社長、オーナー会会長による合作であり、80年代、90年代のフランチャイズ・システムに関する政策の基本が策定されており、20年後の今日でも十分生命力のある提言である。
 この図書は、その提言を発表する場として活用されたものであり、それが20年後の今日まで、生命力を発揮している所以である。

2.トーマス・サカモト著「フランチャイズ・チェーン」  日本経済新聞社

 昭和48(1973)年2月に発刊されたものであり、日本では最も早いアメリカのフランチャイズを紹介した文献である。本来アメリカの文献を紹介するならばハリー・カーシュ「フランチャイズ・チェーン」1960年(商業界)、ハリー・カーシュ「フランチャイズ・ビジネス」1970年(商業界)、R・メッツ「フランチャイズ入門」1972年(ビジネス社)等が代表的であり、これらを紹介すべきであるが、筆者の個人的嗜好でトーマス・サカモト氏とは親交があり、かつこの本は昭和46年5月から47年7月までの1年2ケ月間、日本流通新聞に連載された「フランチャイズ入門」というコラムを再編集し加筆されたものであり、日本のフランチャイズの実務に大きな影響を与えた書物のため、あえて紹介する次第である。(FC時評の03年7月号にトーマス・サカモト氏との関係や、コラムの連載時代に川越先生が興味を持たれ、サカモト氏と連絡をとり最新のアメリカ事情を聞かれたこと等が記されている。)
 トーマス・サカモト氏は日系2世であり、カリホルニアのコーリンフーズ・インターナショナル社のフランチャイズ部門の責任者であった。コリンフーズはケンタッキー・フライド・チキンのエリアフランチャイジーであり、約300店のKFC店舗を展開すると同時に、自社ブランドで「シズラー」というステーキ・レストランを展開していた。三菱商事が1970年にKFC社とマスターフランチャイズ契約を交わした時に、日本に渡り、KFCの展開と日本におけるフランチャイズ・チェーンのコンサルタントとして最新のアメリカ情報を持つ人として珍重された。
 本書はトーマス・サカモト氏の唯一の著作であり、アメリカの「プロダクトフランチャイズ」をそのまま日本にも定着するものとして紹介しているが、内容は極めて今日的であり、フランチャイズが最新情報として日本に伝えられた雰囲気をそのまま再現している。内容は次の通りである。
1. 流通革命の先兵“フランチャイズ”
2. フランチャイズとは
3. “脱サラ”とフランチャイズ
4. フランチャイズ企業の運営
5. フランチャイズ契約の実態 
6. 来るか“フランチャイズ時代”
7. “フランチャイズ化“の具体例
 (社)日本フランチャイズチェーン協会の設立とほぼ同じ時期に出版された書物であり、非常に読みやすい文体であり、かっての啓蒙書としての役割は十分に果たしている。
 フランチャイジングを流通革命の先兵と位置づける当りに、70年代の歴史を感ずるのは筆者のみではあるまい。(絶版)

Ⅱ 歴史書

1.トーマス・S・ディッキー著「フランチャイジング米国における発展過程」   まほろば書房  平成14年6月出版   2300円(税別)
  翻訳者  東北大学教授  河野昭二氏  東洋大学教授  小嶋正稔氏

 フランチャイズの歴史は、通常概説書の最初の数ページを飾る程度であるが、本書は1850年代から始まるアメリカに於ける「プロダクトフランチャイジング」と1950年代の「ビジネスフォーマット・フランチャイジング」の両者を紹介して、フランチャイジングの歴史を各社の経営史的観点から眺めている。非常に難解な文書であり(多分原書も訳書も難解である)、簡単に読める本ではないが、筆者のFC時評で5回に分けて紹介する予定である。内容は次の通りである。
序論
第1章  フランチャイジング序曲
      マコーミック刈取機会社とシンガーミシン社
第2章  代理店から特約店へ
      フォード自動車会社(1903~56年)
第3章  システムの拡張
      サン石油会社(1919~59年)
第4章  フランチャイズ産業とドミノピザ社
結論
 一般的に第1章から第3章までが「プロダクト・フランチャイジング」であり、第4章のみが「ビジネスフォーマット・フランチャイジング」である。
 フランチャイジングの将来に対して、絶大な希望と楽観を持っているのが、現在の日本から見るとまぶしく感ずる。日本の経営史学会にも紹介された著作であり、経営史の観点からも注目を浴びた文献である。

Ⅲ 創業者による出版物

1.鈴木敏文著 「商売の創造」 講談社 2003年10月刊 1400円

フランチャイズの創業者は必ずと言って良いほど、自社の創業や歴史について語るものである。例えば、ドトールコーヒーの鳥場博道氏やモスフードサービスの桜田慧氏等に優れた創業史がある。しかし、中でも優れているのがセブンーイレブン・ジャパンを創業された鈴木敏文氏の創業史である。既にFC時評で「商売の原点」については詳しく紹介したので、ここでは「商売の創造」を紹介する。「商売の原点」と同様に、本書はセブンーイレブン・ジャパンで毎週行われる「FC会議」で、鈴木敏文氏が社員や幹部たちを前にして話した内容の速記録を緒方知行氏が題材別にまとまたものである。緒方氏によれば、鈴木敏文氏の「基本の徹底」に該当するのが「商売の原点」であり、「変化への対応」に該当するのが「商売の創造」だそうである。
以下に本書の核心に当る部分を再現してみる。
いまでこそ「コンビニエンスストアの時代」などと言われているが、CVSの形態は、日本のセブンーイレブンのスタイルが世界で初めてのもので、私たちセブンーイレブン・ジャパンが日本で作り出したものである。日本で私たちがこの事業をスタートさせる以前から、CVSを名乗るチェーンはあった。しかし、そこではファーストフードなどは扱っていなかった。当時は、営業時間が長く、加工食品を中心に売っている小さな店という認識でしかなかったし、CVSは世界的にもそういう存在であった。しかし、私たちは、CVSはファーストフード中心にやっていかなければならないということで、今のような形態を独自に作り上げてきた。
 日本で私たちがやっているようなフランチャイズシステムは、私たち日本のセブンーイレブンがつくり上げてきたものである。(筆者注:CVSに限定)海外のセブンーイレブンでは、本部が物件を開発し、そこでフランチャイジーを募集して、加盟店になってもらうというのが一般的である。(Cタイプ)日本では、むしろ、既存の小売業の人にフランチャイジーになっていただくというやりかたのほうが主流になっている。(Aタイプ)
 例えば街の酒屋さんとフランチャイズ契約を結ぶというようなやり方は、日本においても、私たちがやるまでは、ほとんど見られなかったチェーンの形態である。いま日本ではそういうことが当たり前のように考えられているが、世界的には、いまでもCタイプが主流で、Aタイプはほとんど見られない。
 私たちがAタイプをベースにやってこられたのは、独自の商品開発、個個の加盟店の業績を支援するトータルなイノベーション、オペレーションの革新を柱にしてきたからだと自負している。
 チェーンストア組織の一員として私たちが理解しておかなければならないのはドミナント戦略という考え方である。ドミナント戦略とは、一定の地域に集中的に出店していくやり方です。この戦略にはいくつかの効果があるが、その一つは、配送の距離を短くするという点にある。粗利を稼ぐためには、マーチャンダイジング面では配送コストを下げるのがもっとも効果的である。ドミナント戦略をとると、近くに同じ看板の店がいくつもあることになるから、お客様に私たちの店が認知されやすいという宣伝効果も出てくる。私たちは創業間もないころから、ドミナント戦略のあり方とその効果を検証してきた。
 鈴木会長の「FC会議」における発言をまとまたものが本書であり、すべて語り口調になっているのは、そのせいである。内容はほぼ上記の文章に尽くされるが、念のため章立てを紹介する。
第1章   価値創造への挑戦
第2章   自分を否定し、自分で考える
第3章   攻めの商売
第4章   常識を打ち破る

Ⅳ 法律と判例

 フランチャイジングは契約で成り立っているので、法律とは極めて深い関係にある。フランチャイズ関連では、最も文献的に充実した分野であるが、中でも川越憲治弁護士は、(社)日本フランチャイズチェーン協会設立と同時に顧問として、協会の活動と深く関わって来られた先生であるので、川越弁護士の著作を、法律分野の代表作として紹介させていただく。

1. 川越憲治著 「フランチャイズシステムの法理論」 商事法務研究会刊      平成13年8月刊    6200円(税別)

 フランチャイズに関する法理論書の数は多いが、本書はフランチャイズシステムに関する法律書の第一に挙げられる力作である。出版時のフランチャイズ協会の藤井会長が推薦の辞を述べられているが、「ここにフランチャイズ・ビジネス業界が待望した、世界的に通用する本が出版されたことに敬意を表したい」と記されている。 
 単なる法律解釈ではなく、例えばガイドラインの売上高予測の項では次の文献が参考文献に挙げられている。
古屋良隆著 加盟店のための立地調査手法(日本フランチャイズチェーン協会)
林原安徳著 売上予測と立地判定(商業界)
 実務書に至るまで丹念に調査して、完成されたことがこの一事でわかる。
難点を言えば、2002年の開示事項以前の著作であるため、改訂版が出版されることが期待される。
 内容は次の通りである。
第Ⅰ編   総   論
第Ⅱ編   フランチャイズ契約
第Ⅲ編   フランチャイジーの保護
第Ⅳ編   フランチャイズ・システムと知的財産権・製造物責任
第Ⅴ編   フランチャイズ・システムと独占禁止法
 なお、本書内に引用される判例は58件に及ぶ。

2. 川越憲治著「新版 フランチャイズ・システムの判例分析」商事法務研究会 
    平成12年4月刊     3780円(税込み)

 平成6年版の「はしがき」に「しばしば感じたのは、フランチャイジングに関する判例が1冊にまとまっていたらどんなに便利であろうかということであった」として、「協会20年史にある程度まとめて出版したが、今回全体を集大成する形で1冊の本にまとめることにした」と述べられている。
 フランチャイズに関する判例は51例が掲載されており、平成10年の判例が一番新しいものである。各判例を次のようにしてまとめてある。
Ⅰ    ピロビタン事件1
  一   事実関係
(1)原告の主張
(2)被告の主張
  二   判決
(1)原被告間の契約
(2)契約解除
(3)現状回復
(4)結論
  三   解説
(1)フランチャイズ契約の意味
(2)契約期間中における契約内容の変更
(3)責任販売量
(4)同時履行の抗弁
(5)解約の方法
(6)分担金・権利金の返還の有無
 解説は事件によって異なることは言うまでもない。
判例は時代と共に変るものであり、それを一読すれば理解できる。

Ⅴ 実 務 書 

1. フランチャイズ・アドバンテージ(FCビジネス起ち上げの極意)
  ドナルド・D・ボロイアン  パトリック・J・ボロイアン著
  木原健一郎監修  藤本 直訳  ダイヤモンド社 2330円(税別)

 1996年に翻訳された、やや古い情報が多い。しかも原本は1987年頃
に書かれたものであり、丁度ブラックマンデイで株式の大暴落、金融機関の倒産、レイオフ、企業リストラの時代であり、丁度日本の96年ごろの社会情勢と似通った状況であった。
 アメリカ経済が苦しい時代に、本書はフランチャイズ制度に対して自信溢れるメッセージを送った名著である。著者は世界最大の規模を誇ったフランチャイズ・コンサルタント企業「フランコープ社」の会長兼CEOのドナルド(父親)と前社長のパトリック(子息)の共著である。内容は次の章立てになっている。
序章  アメリカ・ビジネス界の潮流
1章  レイ・クロックとマクドナルド・チェーン
2章  事業の拡大に備える
3章  フランチャイズの優位性とは
4章  フランチャイズ化が可能なビジネスは
5章  フランチャイズ界の勝利者たち
6章  台頭する新興フランチャイザー
7章  フランチャイズ事業と法律
8章  システムの立ち上げに向けて
9章  フランチャイズ・システムの販売
10章 チャイザーとチャイジーの関係
11章 フランチャイズ事業と資金調達
終章  フランチャイズ・ビジネスの将来
 フランチャイズ本部を起ち上げ、フランチャイズ・システムを販売する要点、フランチャイズ事業を起す資金とその調達方法など、凡そフランチャイズ本部起ち上げのすべてが判る内容である。
 数多くある「ノウハウ本」と異なる点は、アメリカにおけるフランチャイズ全体の位置づけを明確にして、その将来像を明るく描いていることである。
 特に7章の「フランチャイズ事業と法律」の項で、情報開示に関するUFOCとFTCルールや、フランチャイズ・アグリーメントを詳細に日本に伝えた最初の専門書である。
 やや気になるのは監修者の木原氏が「監修者あとがき」の項で、次のようなコメントを寄せている点である。
 「我が国ではやっと数年前に「FC倫理綱領」が業界団体の手によって任意に制定された段階であり、いまだ生産体系的販路支配の色彩を脱しえない「日本型フランチャイズ」業界に対して、このフランチャイズ・ビジネスの極意書とも言える本書が寄与するところは大なるものがある」
 念のために付言すれば、我が国のフランチャイズチェーン協会が倫理綱領を定めたのは、協会設立の1974年11月であり、本訳書が出版される20年前である。また、倫理綱領はあきまで、民間団体である協会が自主的に制定するものであり、「任意に制定」するのは当然であり、まるでお役所の指導の下に作らないことが、レベルが低いと考えているようである。また、日本のフランチャイズ・システムが生産体系型販路支配の色彩を脱していないとは、認識不足も甚だしい。そもそも日本の「フランチャイズ」の定義は「ビジネスフォーマット型フランチャイズ」のみであり、アメリカで早期に発展した「プロダクトフランチャイズ」は、定義から除外して、生産体系的販路支配の見本である自動車販売ヤガソリンスタンドは、フランチャイズから除外するところからスタートしている。
 本書の持つ歴史的意義、役割はいささかも劣るものではないが、監修者はまるで日本のフランチャイズを理解しないまま、「あとがき」を書いて、自己の不明振りを世間に晒したようなものである 。


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