フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

2004年フランチャイズ業界を振り返る 

Ⅰ フランチャイズ全般

1.フランチャイズの伸び鈍る

 2003年度のフランチャイズ統計が過日、(社)日本フランチャイズチェーン協会から発表された。
 それによれば、売上高は17兆8千億円で前年比2.9%の伸び率であり、低い成長率である。
 この現象は、実は2000年頃から現れており、1990年代の8~10%の伸び率から一転して低成長に転じている。店舗数にいたっては、わずか3千店の増加に終わっている。(増減の差し引きの結果であり、撤退店舗が如何に多かったかを示す指標である。)
 伸び率が低下する要因は様々であるが、一つは90年代の成長を引っ張ったコンビニ全体の伸び率がわずか0.6%に鈍化していることが大きな要因である。これも大手寡占化が明瞭になり、最大手のセブンーイレブン・ジャパンは800店の開店、200店の閉鎖で実質600店と最大級の成長を示しているが、下位のコンビニ群が店舗を減らしているため、コンビニ全体としての伸び率は極めて低い状態になったのである。
 一方、外食は数字だけみれば、やや元気を取り戻したように見えるが、お客様や新規加盟者を引き付けるような魅力あるパッケージが開発されなかったことが最大の要因であろう。
 サービス業は4.8%の伸び率(修正後)と比較的高い成長率になったが、成長の期待が大きいだけに、健康・福祉・美容・環境など今後成長が期待される分野での新業態の開発が進まなかったのであろう。

2.フランチャイジー・フォーラムの開催

 今年の1月30日に東京大手町の日本経済新聞社で第1回「フランチャイジー・フォーラム」が開催された。
 表面的には大規模加盟店(筆者はメガフランチャイジーと呼んでいる)が
 主催したことになっているが、事実上は経済産業省のサービス経済課の強力な後押しによって生まれたことは周知の事実である。
  「官から民」への時代に、官庁主導でフランチャイジーの団体が生まれること自体が時代錯誤としか思われないが、フランチャイジーの団体が生まれ、自主的に後輩フランチャイジーを指導・援護しようとする企画そのものには大賛成である。
 フランチャイズ・ビジネスは決してフランチャイザーだけで完結するものではない。フランチャイジーや、サプライヤーの協力・支援によって始めてビジネスとしての体をなすものであり、現在の(社)日本フランチャイズチェーン協会の構成員のみが、日本のフランチャイズ・ビジネスを代表するものではないはずである。
 その意味でもジー団体の結成には大きな意義を認めたいが、官庁主導で、経費すら本部企業が一部負担するようないびつな形態では、多分ジー全体の協賛も得られないことは、既にフランチャイズ時評(フランチャイズフォーラムを考える)で論評した通りである。
 聴くところによれば、サービス経済課のメンバーも一新したそうであり、今こそフランチャイジー団体が自主的に、自分の頭で考え、自前の資金で動き出す絶好のチャンスである。
 お金の掛からないようにネットを駆使して全国の加盟店に参加を呼びかければ、「日本のフランチャイズの健全化」の目的さえ外さなければ、困難でも必ず一定の成果が上がるはずである。

3.FCビジネスの基盤強化の政策

 経済産業省(サービス経済課)は、2004年度からフランチャイズ・ビジネス振興に本格的に乗り出すとして、(04年1月29日日経MJ)研究機関や大学などと連携し、FCビジネスについて体系的に学べる教育プログラムを作ったり、FC企業の客観的な格付けを行うなどの政策を発表した。
 この内、テキストの作成については、「フランチャイズ人材育成基盤等整備事業」として予算化され、日本フランチャイズチェーン協会が経済産業省から事業を受託して、来年3月までに数冊のテキストが完成する予定である。 従来、日本には法律関係を除いて、フランチャイズに関する経営学のテキストが存在せず、大学なり、研究機関がフランチャイズに関する教育を行おうとしても、テキストが無いという問題に常に悩まされてきた。
 今回、経済産業省の予算により、(社)日本フランチャイズチェーン協会が日本でも有数の学者に依頼して、実務家や協会の講師を動員して、IFA(アメリカフランチャイズ協会)を凌ぐテキストを作ることにより、日本のフランチャイズの健全な発展や、専門家の育成に役立つであろう。いずれ商業出版される図書もあるだろうから、大いに期待したい。

4. 消費税総額表示へ変更

4月1日より、消費税の総額表示が義務付けられた。小売業ではほぼすべての業態で総額表示に一本化された。
 外食業やサービス業では対応が分かれた。完全に総額表示一本に切り替えた企業や、企業の自主努力で消費税を自社負担した企業や、消費税込み価格と本体価格を表示する企業など、様々な対応に分かれた。
 年明けと供に、消費税の総額表示の結果が判明するであろうが、一応各社の反応は、「総額表示によって顧客は減少した」と受け止めているようである。総額表示は、明らかに単なる表示方法の問題であり、売上には中立である筈だが、結果的には消費者は総額表示にNOの反応をしたとみるべきであろう。消費が回復基調にある中とは言え、今回の消費税総額表示は失敗と言うべきであろう。

5. 中国フランチャイズを解禁

 12月7日の各紙は、中国はWTO加盟から3年となる12月11日以降、
 流通分野の外資規制緩和としてフランチャイズを解禁すると発表した。
 フランチャイズ展開により、現地資本を活用した店舗網の急拡大が可能になり、高成長が続く中国へ日本のフランチャイズ企業が進出して市場拡大に動くであろう。
 ファミリーマートは27日にも上海市内の直営店をFC1号店に転換して、08年度には上海、北京など5都市で2千店の加盟店展開を目指す。ローソンは現在200店ある直営店の9割以上をFC店に切り替える。2010年度に2千店まで広げる計画である。
 吉野家ディー・アンド・シーは04年2月末の74店を07年2月までの3年間で倍増させる計画である。

Ⅱ 小売業界の動き

1.サークルKサンクスの誕生

 昨年から既定の路線であったが、9月1日にコンビニ第4位のサークルKと第5位のサンクスアンドアソシエイツ、持ち株会社シーアンドエスが合併して「サークルKサンクス」がスタートした。社長にはサークルKの社長であった土方清氏が就任した。  
03年2月末の店舗数は4,851店、チェーン全体売上高は8,838億円、経常利益197億円であり、いずれの数値も業界第4位であるが、一応中堅から大手に転じたことは間違いない。
 登記上の本社は名古屋市に置くも、実質的な本部機能は東京都に移転した。当面、両ブランドはそのままにして展開すると言うが、かってローソンがサンチェーンを吸収合併した時にも、サンチェーンの看板をローソンに統一するために10年の歳月を掛けた経緯がある。
今回の合併も社名が示す通り、「サークルK」と「サンクス」の2ブランド依存の状態が続くであろう。
 統合のメリットを真に出すためには、相当な時間が掛かるであろうと思われる。土方新社長は日経MJのインタビューで06年度までに新体制に移行したいと希望を語られている。
合併効果を1日も早く実現して、名実共にトップグループになることを期待したい。

2.ローソン「ゆうパック」を導入、ヤマトが郵政公社を提訴 

 コンビニ業界第2位のローソンが日本郵政公社の「ゆうパック」の取次店になることを8月に発表した。これに対してヤマト運輸(以下ヤマト)は、ローソンでの宅急便の取り扱いを11月18日から停止するとし、更にヤマトは日本郵政公社が不公正な取引方法でローソンを勧誘したとして、不公正取引の差し止めを求める訴訟を東京地裁に起した。ヤマトの言い分は「税制面で優遇されている郵政公社のコンビニ宅配便参入は不公平」であると主張する。しかし、何故ヤマトがローソンとの提携を解消するのか「良く分からない」と言うのが一般論ではなかろうか。
 ヤマトの宅配便のパイオニアとしての地位も、品質レベルの高い宅急便の優位もいささかも揺るがないと思われるのに、何故独禁法違反で郵政公社を訴えるのか、理解に苦しむ。日経新聞の伝えるところによれば、ヤマトは「宅急便1億個に対し社員1万人」と言う過剰とも言うべき人員配置により、宅配便の品質のレベルを維持している。しかし、品質が高い分、値段も高い。
 CtoCで利用されている分には、高コスト体質もさほど問題ではないが、
 BtoB(例えばフランチャイズ本部から加盟店へ小口配送に利用する等)になるとヤマトは高すぎて利用しにくい面は筆者も体験している。
 BtoBでは、必ずしも到着の時間の確定まで必要はない訳で、指定した曜日に到着すれば十分という荷も多いのではないだろうか。
 むしろ、品質、コスト、サービス等様々な選択肢の中からお客様のニーズに合わせて利用されるべきものであり、ローソンが「ゆうパック」を導入するなら契約中止とか、告訴する等一連のヤマトの行為は理解に苦しむものである。
 むしろ、ローソンでお客様が安さを取るか、品質を取るかじっくり様子を見たいというのが筆者の気持ちである。 

3.ブックオフ東証第2部に上場

 中古本販売チェーンとして独自の業態を生み出したブックオフコーポレーションが3月16日に東証第2部に上場した。個人投資家などの買い注文が膨らみ、株価は公募・売り出し価格(1300円)の2倍の2600円まで買い気配を切り上げたが、上場初日は取引が成立しない人気ぶりとなった。
 初値は翌日の2560円であった。
 2004年3月期の連結売上高は366億円、経常利益は18億円であり、
 来期以降は直営店とフランチャイズを合計して年間60店を出店する計画である。

Ⅲ 外食業界の動き

1. 米国発BSEと米国産牛肉輸入禁止

 昨年12月24日にアメリカで始めてBSE牛が発見された。日本として は直ちに米国牛の輸入を全面的に禁止した。その影響は大きかった。連日のように米国産牛肉の在庫切れによる牛丼販売の停止が報道された。また焼肉店、ステーキ店もオーストリア産牛肉への切り替えが順調に進んだチェーンと、切り替えが進まなかったチェーンとの格差が歴然とした。
 牛丼各社は豚丼、カレー等代替商品に切り替えたが、到底牛丼の穴は埋められず、その後豪州産、中国産等の牛肉に切り替えて牛丼を再開するチェーンと、米国産の解禁を待つチェーンとの格差が開いた。
 米国産牛肉の輸入再開は年内の目途はたたず、来年春以降に持ち越される模様である。
 牛丼、焼肉チェーンの本部はもとより、加盟店の収益の悪化が心配される。

2.鶏インフルエンザの発生が鶏肉使用チェーンを直撃

 1月12日、山口県で79年振りに鶏インフルエンザの発生が報じられた。感染経路が不明確なまま、風評被害が広がった。また国内のみではなく、タイや中国にも感染が広がり、タイ・中国からの輸入も停止した。  
 また2月27日には京都府丹波町の浅田農産船井農場で鶏の大量死が発覚して、焼鳥チェーン・フライドチキン店等が大きな打撃を受けた。
 2004年は牛肉、鶏肉等主要食材に端を発した食の安心・安全が厳しく問われる年になった。

3. 日本マクドナルド・原田氏をCEOに起用

 価格政策の迷走で販売不振が続いた日本マクドナルドホールディングスは2月13日に2003年12月期連結決算は、最終損益で71億円の赤字と発表した。前年同期は23億円の赤字であり、一段と悪化した。これに先立ち同社はアップルコンピューター(東京・新宿)の原田永幸社長(55)を代表取締役CEOに迎える人事を発表した。3月30日に就任した。ウインドウズが圧倒的なパソコン市場で「マッキントッシュ」のブランド力を高めた原田氏の手腕を活かし、業績回復を目指したものであった。

4. 日本マクドナルド創業者・藤田田氏死去

 日本マクドナルドの創業者で元同社会長謙CEOの藤田田氏が4月21日心不全のため死去した。78歳であった。
東大在学中に高級雑貨輸出入業の藤田商店を創業し、後の株式会社化して社長、会長に就任した。
 1971年、日本マクドナルドの設立と同時に社長に就任。82年には外食産業で売上高トップに立った。2000年2月からは平日にハンバーガーを半額で販売するなど新戦略を採用して「デフレの勝ち組み」と言われた。01年7月には店頭公開を果たした。
 しかし、日本のBSE騒動や半額セールの打ち切りで業績が下降。02年3月に会長兼CEOに就くが、同年12月期には連結最終損益が赤字に転落し、03年3月に退任した。「勝てば官軍」が口ぐせであり、不本意な中での退陣であったろう。

5.国産牛の生産履歴を店頭開示

 国産牛肉の品種や出生地の開示を義務付ける「牛肉トレーサビリティ法」の適用が12月1日から小売店や飲食店に広がった。1日から新たに適用されるのはスーパーや精肉店など約4万店と、焼肉、しゃぶしゃぶなど「特定料理」を提供する飲食店のうち国産牛肉を使用する約1万店である。輸入牛肉のみのステーキ店は対象外である。
 適用対象の店は牛肉パックのラベルやメニューなどに10ケタの「固体識別番号」か、複数の固体番号を一つにまとめた「ロット番号」を表示する。個体番号を家畜改良センターのホームページに入力すると、品種や出生から賭畜までの履歴が分かる。
 すでに一部の外食店やスーパーは適用範囲拡大に先行して情報開示に踏み切っていた。
 来春には米、野菜にも適用が検討されている。
 食の安全・安心の切り札と見られるが、輸入牛肉には適用されないため、同法の施行が消費者の信頼回復に直ちにつながるわけではない。

Ⅳ サービス業界の動き

1. 明光ネットワークジャパンが東証1部に上場

 (株)明光ネットワークジャパン(明光義塾)は8月2日付けで東証1部に上場した。フランチャイズによる学習塾が東証1部に上場したのは同社が最初であり、フランチャイズ学習塾が社会から1人前の企業として認知されたことになる。同社設立から20年目に達成された。2003年3月期の教室数は直営校138校、加盟校1055校合計1193校(「日本のフランチャイズチェーン2004」から引用)で年商は69億円であり、フランチャイズによる学習塾では最大手である。

2. ダスキン、東証1部上場を目指す

 清掃用品レンタル及びミスタードーナツを経営するダスキン(本社・大阪府吹田市、伊藤英幸社長)は、2年後の東証1部上場を目指して、まず三井物産と業務・資本提携する方針を固め、株式の5%を譲渡し、三井物産に大株主になってもらう。ダスキンの株の約20%を持つダスキン共益(大阪市)が三井物産に株式を譲渡する。売却額が約50億円と見られる。
 ダスキンは大手商社の持つ物流や資材開発などのノウハウを活かしたい意向である。
 ダスキンはここ数年、ミスタードーナツ事業で無許可添加物の使用、前会長の逮捕等不祥事が続いた。三井物産を大株主に迎えてコンプライアンスを強化する意向もある。
 また、これとは別に発行済み株式の25%に当たる約370万株を約100社の法人に譲渡した。譲渡先は社員、フランチャイズオーナー、社員持株会、 三井住友銀行、ロイヤル等であり、2年後の東証1部上場を目指したものと思われる。
 日本のフランチャイズのパイオニアである「ダスキン」が、1日も早く健全な企業体質に戻り、日本を代表するフランチャイズ企業になることを強く期待する。


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