フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

フランチャイズ・ビジネスを活性化するための提言 

1. FCビジネスの発展をどう評価するか(どこまで進んだか)

(1)FCビジネスの伸び


 (社)日本フランチャイズチェーン協会の調査によれば、2003年度の我が国のFCビジネスの規模は次の通りであり、10年前の1993年と比較すれば成長は明瞭である。

   
   
2003年度 1993年度
売上高 17兆8688億円 11兆4216億円
本部(チェーン)数 1074 714
店舗数 220千店 139千店

 これを伸び率で表現すれば、下記の通りとなる。

売上高 156%
チェーン数 150%
店舗数 158%

 即ち、平成不況の中で10年間に、売上高、チェーン数、店舗数で夫々50%から60%以上の伸張率であり、他のビジネスと比較しても抜群の伸び率と言っても過言ではないだろう。
 この成長については、流通業、サービス業、飲食業では確かに最高の伸びであるが、これをここ数年で調査して見ると、以外なまでに成長率が低下している。

対前年比 2003年度 102.2%
2002年度 103.5%
2001年度 104.4%
2000年度 103.3%

1990年代が110%台から106%台の伸び率であったのに対して、2000年以降の伸び率はせいぜい2~4%台の伸び率であり、明らかに成長率は半分以下に鈍化しており、踊り場的様相を呈している。

(2)世界の中での比較

なお世界の中における日本のFCを評価するために、最近発表されたWFC(世界フランチャイズ会議)のデータを紹介しよう。(フランチャイズエイジ2004年9月号より引用)

アメリカ合衆国
売上高 68兆7060億円(1ドル=110円換算)
チェーン数 1400以上
店舗数 76万7千店
オーストラリア
売上高 6兆4000億円
チェーン数 700
店舗数 5万(ジーの数)
フランス
売上高 4兆6000億円
チェーン数 765
店舗数 3万4745店
ドイツ
売上高 3兆2130億円
チェーン数 760
店舗数 4万1200店
 

 イギリス、カナダ、イタリアが漏れているが、アメリカに続いて日本のFCの規模が断然大きいことは理解できるであろう。

(3)FCの発展を支えた3つの分野

 しかし、FCビジネスの発展は必ずしも売上高の増大のみで測れるものではない。特にFCビジネスは、そのパッケージの精巧さが強く求められものである。
日本のフランチャイズの発展を論ずるには、何と言ってもコンビニエンスストアの発展を抜きには語れない。セブンーイレブンを筆頭に日本のコンビニは世界に冠たるものであり、アメリカのコンビニとは異質な存在であり、今や日本の流通機構の中で最も生活者に蜜着したものであり、社会のインフラと評しても過言ではなかろう。

 これに比較すれば飲食業のFCの完成度がまだ低いことは認めざるを得ないが、多様な業態をわずか30年間で構築した外食業界の努力も高い評価に値するであろう。
また、サービスフランチャイズは今後の発展が最も期待されるが、東証1部に上場しているサービスフランチャイズは4社(学習研究社、白洋社、パーク24、明光ネットワーク)を数えるに到り、社会的認知を受けていると言えよう。

(4)情報の開示

 FCを評価するためには、客観的内容の評価が必要であり、そのためには第三者的評価機関が生まれることが重要であるが(後述する)、その前にFCの内容を加盟希望者にどこまで開示するかが、大きな問題である。

 日本では1973年にFCビジネスの情報開示を求める中小小売商業振興法が制定された。日本のフランチャイズに関する情報開示の法律制度は世界でも最も早い時期であった。しかし、開示の内容は極めて貧弱であり、わずか5項目に過ぎなかった。その後若干の補強がなされたが、2002年4月に画期的補強が行われ、一気に世界レベルまで引き上げられた。同じく02年4月には公正取引委員会による「フランチャイズシステムに関する独占禁止法上の考え方」が公表され(ガイドラインと呼ぶ)、独占禁止法上の問題点も明らかになった。

(5)まとめ

 売上高、チェーン数、店舗数等の10年間伸び率は極めて高く、フランチャイズの規模は世界レベルで見てもアメリカに次ぐ巨大市場であり、情報開示に関する法律もかなり整備されてきたことが判る。しかし、では今後もますます発展するかと言うと、ここ2~3年の動向では、必ずしもそのように断言できないのが実態である。

2. FCビジネスを囲む環境のどこにひずみがあるのか

(1)FC本部のノウハウ不足

 フランチャイズの中核となる部分はノウハウと商標である。中でもノウハウはフランチャイズの中核をなす技術であり、当然直営店で充分実証された成功のノウハウを持ってフランチャイズ展開を行うのが常識である。
 一般的に直営店によるノウハウの確立が、フランチャイズ化の前提であることは言うまでもないことであり、多数のフランチャイズ本部はそれなりのノウハウを確立している。しかし、中にはノウハウの確立がなかったり、ノウハウにオリジナリティが無い“ものまね”が多かったりする。
 むしろ、問題は直営店を数十店も展開して十分ノウハウを確立している本部が、新業態の開発と称して1店舗の数ヶ月の実証で安易にフランチャイズ募集を始めることである。既存業態で十分な実績を揚げ、世間から高い評価を受けながら、新業態となると、いとも簡単に1店舗の実験で半年後に加盟店募集をすることである。

 アーリーステージの本部が十分な金銭の余裕が無いため、実験不足のままフランチャイズを開始することは、許されないことであるが、金銭的に余裕の出来た既存の本部が、新業態と称して十分な検証を行わないまま、安易にフランチャイズ展開することは、厳しい表現を用いるならば“詐欺的”と呼ばれても、止むを得ない事態である。フランチャイズのノウハウ確立のために最低3店舗、2年以上の検証によって成功が証明されたもののみが、本部のノウハウの名称に値するものであり、これをスリー・ツー・イヤーズ・ルールと呼び、世界的に確立された最低限の原則である。

(2)SVの指導にはまだ問題が多い

 日本のフランチャイズ・ビジネスのスーパーバイザーの質は必ずしも高くない。特にSVの社内地位は、期待される役割の割りには低くて、いわゆる係長クラスが多く、統括SV(エリアマネージャー、ディストリクトマネージャー級)になって、始めて管理職である。
加盟店がSVに期待する最大の役割は、売上高の向上や利益の確保である。しかし、SVによって売上高が上がったり、利益が改善されたりする事例はあまり多くない。
FC協会では、協会設立とほぼ同じ時期にSV学校を開設して、SVの教育活動を行ってきた。また、95年度からSV士という資格を設け、筆記試験、面接試験に合格した者にSV士という資格を授与している。

 しかし、SV士の数はまだ400名程度で、到底SVの質の底上げが出来ているわけではない。
 FC協会としては、SV学校では受け入れ人数の限度があるため、通信教育を強化して、せめて協会の正会員社のSVには全員SV士の資格を取らせるような積極的な姿勢が必要であろう。
 また、各本部もFC協会のSV強化策と併せて、自社の実態に合ったSV教育を行い、加盟店から頼られ、信頼されるSVを多数生み出す努力が欠かせないであろう。
 フランチャイズ企業にとって、SVの資質向上のための社内教育は緊急の課題であり、協会のSV学校では個別企業の内部にまで立ち入った教育は出来ない。(「フランジャ」2005年3月号に「SVに求められる素養とその位置付け」に同趣旨の記事を掲載したので、興味のある方は同誌をご覧頂きたい)

(3)支援体制の未熟さ

 フランチャイズを支援する弁護士、会計士、コンサルタントの層が薄く、我が国のFCビジネスを囲む環境の厳しさの要因の一つに数えられる。
 特に弁護士は東京以外の地域では、フランチャイズに詳しい弁護士は極めて少ない。 会計士、コンサルタントもフランチャイズ専門は、極めて少ない。 また、大型コンサルタント・ファームにもフランチャイズ専門のコンサルタントは少ない。本部設立会社も加盟店希望者も、満足できるコンサルタントに出会える機会は少ないのが実態である。
遅まきながら、専門家の育成を図らねばならない。後述するように体系的フランチャイズ専門書を作成する動きがあるので、これを利用して専門的コンサルタントの育成が図られることが望まれる。

(4)協会の指導力の強化

 フランチャイズ協会は我が国唯一のFCに関する公益法人であるが、その会員社の数は多くない。我が国のFC本部の数は1060程度とされているが、FC協会の会員社は正会員、準会員、研究会員を併せても200社足らずであり、組織率としては20%以下である。FC協会の指導力を強化し、日本のフランチャイズの健全化を保つためには、せめて300社の加入が必要である。大型のFC本部で未加盟の本部は、是非加入するように推進し、FC協会の指導力を強化しなければならない。

(5)金融機関の理解度の低さ

 金融機関は過去のバブルの始末を付けるのに必死であり、フランチャイズを省みる余裕が無かった事情はわかるが、メガ・バンクの統合も終結を迎えて、今後は中小企業や個人に目を向けるリテイルの時代である。FCには本部機構と加盟店という二重構造に見えて、理解し難い存在であったかも知れないが、今後はFCに対する理解度を高め、積極的に中小、零細企業にも貸し込む攻めの戦略が必要である。

3. そのひずみを解消するには何が必要か

(1)フランチャイズ協会の指導力の強化

 FC協会は正会員社から各種役員を選出して、業務の執行に当たるが、意思決定機関である理事会は2ケ月に1回の割りでしか開催されない。これでは到底迅速な意思決定は出来ない。正規の機関では無いが、昔から正副会長会議を開催して、大まかな方向を決定してから理事会の決済を受ける慣行がある。
 新しい提案として、この正副会長会議を正規の機関とするよう定款を変更して、この正副会長会議に大幅に権限を委譲して、理事会では報告事項にして、理事会の決済は新会員の入会と、退会のみにしてはどうか。現実には、このように運営されており、理事会は追認しているのが実態であるのだから、実態に合わせて、機関の運営を変更してはどうだろうか。
 また、現在の事務局に一部の権限を委譲して、専務理事に事務的事項の決定権を与えて、長期的観点からFC協会の指導力を強化する体制にしてはどうか。アメリカのIFAでは、専務理事をチエーアマンと称して、権限を委譲しているようであるので、外国の事例を参考にしながら、日本のFC協会の強化を図るべき時代に来ているのではないか。

(2)フランチャイズに関する経営論的アプローチ

 かねて、我が国にはフランチャイズに関する専門書が少ないと嘆く声が大きかったが、この度、経済産業省の予算で、フランチャイズ協会が中心になって専門テキストを作成する運びとなった。
 学者と実務家との連携不足が常に言われてきたが、今回の専門テキストの作成の課程で、各種問題の解決が行われ、フランチャイズに関する経営論的アプローチが可能となる。
 具体的には「フランチャイズ人材育成基盤整備事業」として、フランチャイズに関する経営書を6分冊にして、学者、協会講師、実務家等の協力を得て、IFA(アメリカフランチャイズ協会)と並ぶテキストを05年3月末までに完成させる日程で進んでいる。更に、フランチャイズ企業の中堅幹部向けの「法律書」と、フランチャイジー向けの「テキスト」を作成して、合計8冊のテキストを作成する段取りである。

 フランチャイジー向けのテキストと言えば、始めて加盟する人向けの啓蒙書しか、日本には無かったが、今回は初級者向けと、2店舗以上展開するフランチャイズのプロ向けのテキストであり、その完成が待たれる。合計8冊のテキストは逐次、推敲を重ねて、商業出版する計画もある。このテキストが販売されるようになると、フランチャイズの専門家の育成に効果があり、日本のフランチャイズの発展に資する所が大きいであろう。

(3)法定開示書面の遵守

 我が国が法治国家である以上、法律で定められた法定開示書面はすべてのフランチャイズ本部で作成されて当然である。しかし、現実に新しい法定開示書面を用意しているのは、残念ながらフランチャイズ協会の会員社のみと言っても言い過ぎではない。特にサービス業は小振法の適用を受けないが、FCガイドラインの適用は受けるので、最低限ガイドラインが要求する開示書面を作成しなければならない。法律を遵守することは、最低限の遵守事項である。
 次のホームページから、「法定開示書面の作り方」にアプローチできる。www.franchise-ken.co.jp(このホームページのFC時評をクリックして、左側に過去のFC時評の一覧があるので、その中から「法定開示書面の作り方」をクリックすれば、閲覧できるし、ダウンロードしても差し支えない。

(4)人材育成の強化

 フランチャイズ企業の内部、及び外部の支援人材の育成が永年主張されながら、なかなか実現できなかった。上記の文献が今年3月までに一応の完成を見る予定であるので、そのテキストによる人材育成が可能となる。
 テキストの作成により、協会としては、各種教室の開催や資格の認定が可能になり、積年の課題の解決の目途が付いてきた。勿論、これで終わりではないが、一つの方向性が見えたことの意義は大きい。
 また、フランチャイズ企業の内部での中堅幹部向けのテキストでもあるので、是非活用していただきたい。

4. 自らの課題と業界全体の課題

(1)フランチャイズ本部自体のノウハウの高度化

 フランチャイズのノウハウは一度構築すれば終わりでは無い。むしろ、これだけ変化が激しく、競争に厳しい時代には絶えざる本部ノウハウのブラッシユァップが必要であり、これを怠るものは衰退の道を辿るのである。FC本部は常に自社のノウハウの高度化に努力をし続けねばならない。
 そもそも、ロイヤルティはフランチャイズ本部の維持費のみではない。本部の絶えざるブラッシュアップの費用でもある。加盟者は加盟後3年も経つと「ロイヤルティを払うのが馬鹿らしい」と良くこぼすものである。それはロイヤルティをSVの定期訪問費用と考えたり、古いノウハウの使用料としか考えないからである。フランチャイズ本部は常に「ノウハウ」のブラッシュアップを図り、常に新鮮さを感ずる商品やシステムを提供することが本部の使命であり、ロイヤルティの使い道である。

(2)フランチャイズ協会の指導力強化と、加盟社の増大

 フランチャイズ協会の指導力強化についての意見は3の1項に述べた。一つの試論として協会内部で検討をしていただきたい。また、加盟社の増大についても、FC協会が自らなすべきことは大きい。

(3)第三者機関によるフランチャイズ本部評価について

 第三者機関による公正で中立の立場でFC本部の能力を評価することが、具体的に求められている。現在では病院やホテルの評価が雑誌を賑わしているが、FC本部も公平、中立な第三者の評価を受けて、不本意な評価ならば、更に本部のブラッシュアップによって第三者評価を高める機能が必要である。
 本件については、2004年度の経済産業省の予算に計上されたと聞いたが、いまだに具体化が進んでいない。是非、早急に進めていただきたい。

(4)金融機関によるフランチャイズ業界に対する理解度アップ

 フランチャイジーが多店舗化したり、中小企業が多角化の一環としてフランチャイズに取り組む機会は多い。その場合のネックは金融機関のフランチャイズに対する無理解である。
 しかし、公平・中立な第三者機関による本部評価が行われるようになれば、金融機関の役割は加盟店の与信能力の査定である。フランチャイズ業界に対する理解度を高め、企業家精神に溢れる加盟店予備軍に是非、融資をお願いしたい。

 ご縁があって、筆者は(社)全国地方銀行協会が主催する本部担当者(審査部、経営支援担当部等)に対する「外食フランチャイズ企業の経営分析、経営改善指導の基本」と題する講演を2月中に2日間にわたって実施することになった。このような企画が随所で行われ、金融機関のフランチャイジーに対する融資が積極的に行われることを期待したい。
 地方銀行、信用金庫等は従来もフランチャイジーに対する融資や経営指導に熱心であり、最もフランチャイズに近い場所にある金融機関であった。今後も融資のみでなく、給与振込先、日常的引落し等に活用して、地方銀行等とのパイプを太くしておくことが、将来独立する時に有利に働くものである。

(5)相談窓口の増大とレベルアップ

 フランチャイズ協会は加盟店希望者の相談過度口を設け、かつ「やさしいフランチャイズ教室」を毎月第4土曜日の午後に開催している。これは(社)中小企業診断協会東京支部フランチャイズ研究会(杉本収会長)の協賛によるものであり、極めて実務的な、始めてフランチャイズ加盟を検討する方には最も適した講習会である。

しかし、これだけでは、到底十分な相談体制とは言えない。例えば、場所は東京(フランチャイズ協会の会議室)に限定されており、遠隔地の加盟店希望者には利用しにくい面も多々ある。(現実には、遠隔地から参加される加盟店希望者も多く、如何にこの種の良心的なセミナーが欠落しているかが判る。

 商工会議所、商工会等の全国組織と連携して、全国どこでもフランチャイズ相談が受けられるような体制を整備することも、フランチャイズ発展のベースとなる。この場合、フランチャイズ協会が商工会議所、商工会の指導員に「フランチャイズ加盟相談の仕方」などの教育を行い、場合によっては「協会認定フランチャイズ指導員」等の資格を付与するのも一つの方法であろう。

 なお、(社)日本フランチャイズチェーン協会は、会員社の会費によって成立している団体であり、財政状態も決して楽ではない。民の仕事はすべて民が行うべきであるが、「フランチャイズの健全な発展」が、大きく雇用の改善に役立っていることに配慮して、若干の予算(せいぜい年間1千万円程度)を国が付けることがあっても良いだろう。
(本稿は商業界「日本のフランチャイズチェーン2005」の「環境の整備がビジネスを活性化する」を大幅に加筆訂正したものである)

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