フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

ライセンスビジネスを考える 

 最近フランチャイズ本部の経営者との会話の中で「ライセンスビジネス」をやってみたいと言う意見に接する機会が著しく増大した。「フランチャイズ・ショー&ビジネス・エキスポ2005を振り返る」の中で懸念した事実が既に進行している。
 筆者はFRANJA5月号の「胎動するニッポンのFC」で、パッケージ・ライセンス・ビジネス(PLB)について論じたが、2ページという限られた字数の中で議論し切れなかった部分もあり、新しい着想も一部にあるため、あえて「フランチャイズ時評」で論じてみることにした。

1. ライセンスビジネスが生まれてきた背景

 ライセンスビジネスの概念はフランチャイズより歴史も古く、むしろフランチャイズもフランチャイズ・パッケージをライセンスするビジネスと定義されている程、背景も広いが、今回はあえて最近の飲食業で頻繁に使用されているライセンスビジネスに限定して議論を進めたい。
 飲食業では10年以上にわたって既存店の売上高が毎年低下しており、この問題を新業態開発で解決する手法が広く採用されている。しかし、新業態開発はどこの会社でも簡単に成功するものではない。むしろ、殆どが失敗しており、新業態開発企画会社に依存するケースが続発した。例えば、ミュー・プランニングとか際コーポレーションに企画を依頼することが流行した時代があった。これをプロデュース会社とも呼んだ。
 プロデュース会社は1社の依頼により開発するので、当然開発費用は数千万円と高い価格になることが多い。そこへライセンス販売が現れたが、これは1店舗づつ同じ店舗名で販売するので、価格はプロデュース会社に比較すれば、著しく低下した。
 以上の経緯から分かる通り、プロの飲食業者が新業態開発の手法としてライセンス販売を利用したのである。この範囲に収まっていれば、何の問題もなく、新しいビジネスチャンスとして飲食業のプロから歓迎される存在であった。
 しかし、このライセンスビジネスをフランチャイズの新しい手法、もしくはフランチャイズに代替するビジネスモデルとして販売し始めたのが最近の問題である。

2.フランチャイズとライセンスの定義

 フランチャイズの定義は、次の通りである。(以下(社)日本フランチャイズチェーン協会編「フランチャイズ・ハンドブック」の用語集から引用)
「フランチャイズとは、フランチャイザーが他の事業者(「フランチャイジー」と呼ぶ)との間に契約を結び、自己の商標等や営業の象徴となる標識、および経営のノウハウを用いて、同一のイメージのもとに事業を行う権利を与え、フランチャイジーはその見返りとして一定の対価を支払い、事業に必要な資金を投下してフランチャイザーの指導および援助のもとに事業を行う両者の継続的関係をいう」(一部略した)
 これに対して、ライセンスについては次のように定義している。
「特許、ノウハウ、商標、サービス・マーク等の所有者がその特許の技術、ノウハウ、商標、サービス・マーク等の使用を一定期間他人に許諾すること。
ライセンスを与える者(法人を含む)をライセンサー、ライセンスを受ける者をライセンシーと呼ぶ。
単なるライセンス契約においては、ライセンサーはライセンシーの事業全体を指導、統制または管理することはしない。」 
 フランチャイズとライセンスは確かに商標の使用とか、ノウハウの使用許諾とか似た部分が多いが、根本的に異なる点は、いずれも定義の最後の部分である。
 フランチャイズは「フランチャイザーの指導および援助のもとに事業を行う両者の継続的関係をいう」これに対して、ライセンスは「ライセンサーはライセンシーの事業全体を指導、統制または管理することはしない」のである。
 ライセンス契約は様々であり、一概に表現できないが、基本的にはライセンスビジネスは売り切りであり、継続的な指導や管理はしないものである。(但しライセンサーに品質のチェック、広告のチェックなどの監督は「相当の注意」として必要であると商標法53条1項但書から読み取ることが出来る)従って継続的な指導や援助の対価であるロイヤルティの支払いは発生しない。
 これに対して、フランチャイズは、フランチャイザーの指導と援助のもとに事業を行う継続的関係であり、指導、援助の対価として通常ロイヤルティ(もしくはフィー)が徴収されるものである。
 以下ライセンスを供与する側をライセンサー、ライセンスを受ける側をライセンシーと呼ぶことにする。

3. ライセンスビジネスの責任は重い

 ライセンスビジネスはパッケージの売りっ放しの印象が強いが、ファッションや食品のライセンスビジネスの実態を調査してみると、ライセンサーには品質管理の責任があり、決して考えられているように安直なものではない。(商標法53条1項但書)
 かって筆者が勤務した明治乳業ではブルガリア国とブルガリア菌を使用した「ブルガリアヨーグルト」のライセンス契約を結んでいる。商品として完成した「ブルガリアヨーグルト」を1ケ月に数回ブルガリア本国に送り、品質チェックを受けて合格する(乳酸菌の数、組織の滑らかさ、ブルガリアの表示等)ように義務付けられており、かつ1年に数回ブルガリア国から検査担当官が明治乳業のブルガリアヨーグルトの生産工場の生産工程をチェックして、厳しい品質管理をしていた。多分今でも同じ検査が行われていると思うが、ライセンス契約でも厳格な品質管理の責任が課されている。
 ライセンスビジネスは決して売りっ放しではなく、一定の品質管理のもとで運営されるのが本来の姿である。ただし、フランチャイズ契約と異なり、品質管理はするが、その売れ行きや利益、店舗運営に関する指導、援助についてライセンサーは責任を負うものではない。それはライセンシーの責任である。従って、不振店対策とか、販売促進はライセンシーの責任であり、ここがフランチャイズ契約と根本的に異なる部分である。 

4. ライセンスビジネスは軽装備

 フランチャイズは商標の登録、グッドウイルの形成、ノウハウのブラッシュアップ、スーパーバイザーの育成、食材の開発、物流、教育・研修、不振店対策、クレーム処理等様々な業務が発生する。言ってみれば、フランチャイズはフルセット型であり、完成までに時間が懸かり、装備として重い。
これに対してライセンスビジネスは最初の店舗内外装、什器備品類の指定、開業準備の店長研修、一通りのメニューの準備などは行うが、その後の継続的指導は行わない。フランチャイズのフルセット型に比較すれば、軽装備で事業が始められる。
飲食業のフランチャイズで100店舗を超える店舗網を構築できる企業の数はかなり少ないのではないだろうか。厳密に調査したわけではないが、飲食フランチャイズの1割にも満たないのではないだろうか。100店舗を超えれば、フランチャイズ・システムは適している。
 30~50店舗で店舗展開が止まってしまう本部にすれば、重装備のフランチャイズよりは軽装備のライセンスビジネスに魅力を感ずるであろう。そこから、冒頭に述べた飲食フランチャイズの経営者から「ライセンスで店舗展開したい」という安直な意見が出てくる理由である。

5.ロイヤルティの内容

 2項でフランチャイズとライセンスビジネスとの差異は「継続的指導とロイヤルティの徴収」であることを明らかにした。
 現在のライセンスビジネスでは、「継続的指導はしない。ロイヤルティは徴収しない」が基本であるが、レインズインターナシヨナルの大内社長、甲羅グループ・グッドブレーンの水谷社長から直接伺った話を紹介すると、「SV指導はしない。売上高スライドのロイヤルティは徴収しない」のがライセンスビジネスの共通点である。
 しかし、ロイヤルティは売上高スライドのみではない。むしろ早くフランチャイズ業態を確立したラーメン、居酒屋等では固定制、面積比例、客席比例等のロイヤルティが多い。日本の飲食フランチャイズで最も本部と加盟店双方が成功したと絶賛されるピザーラのロイヤルティは定額の月額15万円である。
 従って、固定制ロイヤルティを徴収するライセンスビジネスは、基本的にはフランチャイズ・ビジネスとの差はない。数店舗の店舗を展開する複数出店者には「SVは満足な経営指導をしない。ロイヤルティは払いたくない。だからライセンスビジネスの方が有利である」と考える加盟者はいる。しかし、ロイヤルティはSV指導の対価のみではない。メニュー開発、物流改善、ITの活用、業態のブラッシュアップ等すべての対価がロイヤルティであり、SV指導はロイヤルティのごく一部に過ぎない。
 ロイヤルティとSV指導を短絡的に結びつけて、SV指導の効果が上がらないので、ロイヤルティは払いたくないという意見は間違いであり、ロイヤルティが払いたく人はFCに加盟してはいけない。直ちに脱退し、自分で商売を始めたらよい。現実に自分の力だけで店舗経営してみれば、フランチャイズ契約の優れていることが理解できるものである。

6. ライセンスフィーは異常に高い

 通常、ライセンスフィー(ライセンスの購入費用)は加盟金に比較して、非常に高い。感触として私見を述べれば、加盟金の2倍程度である。仮にライセンスフィーが1千万円とすると、FCの加盟金500万円相当の感覚である。そうすると差額の500万円はロイヤルティの前払い分である。仮に契約期間5年間で計算すると、年額100万円、月額8万円強となり、結構な金額である。(ピザーラの15万円のロイヤルティと比較してもらいたい)
 この初期費用の高さもライセンスビジネスを購入する時の注意点である。また、2店、3店と複数店舗を購入しても、1店舗目と同じ価格の例もあるので、多数店舗の展開には不向きな場合も多い。

7. 食材供給とメニュー開発について

 ライセンスビジネスでは食材供給をしない契約が多い。「食材はライセンシーが調達」を基本とするものが多い。勿論、食材を供給するライセンサーもある。食材供給しないタイプは、食材販売のメリットが無いから販売しないのである。通常、食材には差益が乗せてあるのが日本の常識である。ライセンサーは食材調達のメリットは承知しているが、それでも食材販売しないのは、①店舗数が少ないため規模のメリットが発生しない②ライセンシーが全国に散在するため(この部分は初期段階のFCにも共通する)食材供給の流通コストが高くなり、利益が取れない等が真の理由であろう。
 また、ライセンス契約の基本はスタート時のメニューは提供するが、継続的メニュー開発は行わないか、別料金になる。FC契約ならば、新メニューの継続的開発はロイヤルティに含まれるが、ライセンス契約では別料金が基本である。
 ライセンサーの中には異業種(内装業、開発専門業者等)が含まれており、メニュー開発能力を十分に保有していないケースもある。ライセンシーがすべてメニュー開発までやるとなると負担は大きいし、その都度メニュー・レシピを購入していては、ロイヤルティの方が安くなることもある。

8. ライセンス購入に適した業者

 飲食業の専門家が、新業態開発が不得手のため、外部の業態開発専門業者に委託すれば、数千万円の委託料を請求されることもあるので、新業態開発の一つとしてライセンスビジネスを購入するケースが一番相応しい。飲食業の専門家であるから、食材の調達、メニュー開発は自社の力で出来るし、SV活動も自社のSVを教育すればよい。この場合は、2店、3店と多店舗化する場合のライセンスフィーを確認する必要がある。複数店舗購入しても値引きがない場合は、外部に開発委託した方が安くつくことになる。
 これに対して、全くの外食の素人への販売は問題が多い。継続的指導なしに、飲食の素人がライセンスビジネスを軌道に乗せることは考え難い。まして、食材調達、メニュー開発が自社で出来るはずがない。フランチャイズ契約でロイヤルティを支払った方がはるかに安上がりであることは論を待たない。ライセンサーは飲食の未経験者にライセンス販売をするような過ちを起してはならない。
 数店舗の飲食フランチャイジーはどうであろうか。これも決して飲食のプロとは認めがたい。店舗運営についてはかなり高いレベルに達しているものと思うが、自社の力で食材調達、新メニュー開発、SV活動は多分出来ないであろう。メニューを1アイテム幾らで購入するならば、かえってFC契約の方が安上がりであり、成功の可能性も高い。
 数十店舗を経営する飲食フランチャイジーならば、複数のフランチャイズ本部と契約して、専門性も高くなるので、ライセンスビジネスを購入して成功させる可能性は高い。
しかし、アルシア フード システムの近藤浩之社長は飲食店経営4月号で次のように述べている。
「ライセンス契約にも接点を持っていますが、ライセンスだと、本部の社長の顔が出てこないのです。私はガッチリ本部と組みたいから、信用できるところ、この社長ならいいというところにしか加盟しておらず、全部FC契約です。FC契約は、契約書に押印しておしまいではなく、その社長と一緒に仕事をしていくということなので、それができるかどうかが重要なのです」
 大規模フランチャイジーの言葉であるだけに、はるかに説得性の高い発言である。

9.ライセンスビジネスを購入する場合の注意点

 既に、FRANJA5月号で概要は述べているが、若干の追加もあるので重複の愚を冒しながら、購入時の注意点をまとめる。
(1)ライセンスの購入者(ライセンシー)は、外食のプロか数十店を経営する大型飲食加盟店で、飲食のプロとして「自己責任」の原則が貫徹できる人(法人)に限られる。口が裂けても「ライセンサーに騙された」と言ってはならない。それ相応の覚悟で購入したはずである。当然、食材の調達能力、メニュー開発能力を備えていることが条件だ。
(2) ライセンスビジネスは継続的指導を行わないため、中小小売商業振興法に定める「特定連鎖化事業者」ではない。そのため、法定開示書面の交付・説明の義務はないと解される。ライセンシーは開示書面なしで、ライセンサーの事業内容を読み取る眼力が必要になる。
(3) 当該ライセンスビジネスの既存店を全部回って、その繁盛度を自身の眼でチェックする必要がある。既存のライセンシーの意見を聞いてみれば、ほぼその経営実態が浮かびあがるであろう。FCでも加盟する場合には、既存加盟店を調査するのと同じ理屈である。ライセンスビジネスは、外食では新しいビジネスであるため、全部調査しても10店舗か20店舗であろう。調査の面倒を嫌ってはいけない。
 また、ライセンスビジネスの直営店の経験年数、店舗数、実態調査も欠かせない。何分にも初期投資が800万円とか1千万円と高いのが特徴であるので、調査には念を入れねばならない。
(4) 社長面談
 例えば「ピソリーノ」というイタリアン業態は、開発者がセイエンタプライズ、販売者がウイズ・コスモス・コンテンツ、その再販売先がベンチャーリンクと2重、3重の関係になっているので、開発主体の社長に面談を求めて、業態のコンセプト、今後の方針等について確認しておくことが必要である。
 フランチャイズは理念共同体であるため、この部分が極めて重要なステップであるが、ライセンス販売は2重、3重の販売形態があるため、当初のコンセプトをきちんと理解して購入することが大切である。
(5) 複数購入の意図があるなら、開発委託を勧める
 複数店舗を購入しても割引がない場合は、複数出店するメリットが減少する。例えば、ライセンスフィーが1千万円で、何店舗購入しても値引きがなければ、3店舗で3千万円支払うことになる。それならば、業態を開発するプロデュース会社に委託して新業態を開発した方が割安となる。ライセンスの場合、継続的指導がないまま同一店舗名で出店するので、イメージの統一が行い難く、イメージの異なる店舗が開店する恐れがある。それならば、いっそのこと自社専属のブランドを開発して、直営なり加盟店なりで多数店舗を出店する政策の方がメリットが出しやすい。

10. 部外者の意見

 ある雑誌に経済記者の対談が掲載されていた。以下エッセンスを抜粋する。
 まず外食業界、特にFC業界でライセンス販売というビジネスが注目されており、新規参入が増加している状況を報告して、「ライセンスビジネス」の内容をかいつまんで説明している。
 「ライセンスビジネス」は基本的に“売り切り”が大きな特徴であり、フランチャイズのスーパーバイザーによる経営指導とは一線を画している。ライセンス購入後の店舗経営はすべて購入者の責任であり、ロイヤルティの支払いや本部からの指導がなくなり「自分の店が作れる」ことが特徴である。
 これに対して、「同じチェーンでも店によって中味が違う結果にならないか」という質問に対して、短期的には利益が出るかもしれないが、中長期的には課題が多い。時間の経過に連れて店舗の老朽化、コンセプトの陳腐化が進む恐れがある。ブランドイメージの低下は、他店への悪影響にもなりかねない。
 このイメージの統一という問題を解消することがライセンスビジネスの課題であるが、既に大手フランチャイザーが「ライセンスビジネス」を始めており、その結果は未知数であるが、注目の必要性があることを指摘している。

部外者の意見であるが、極めて鋭く問題の本質を把握していると言えよう。

11.フランチャイズ契約とライセンス契約の比較

 FRANJA5月号に掲載しておいたが、若干の補強をして参考に供したい。

契約内容 フランチャイズ契約 ライセンス契約
開示義務 あり、小振法により開示義務あり 開示義務なし
ロイヤルティ あり。売上スライド、固定制、面積比例等多様である 原則なし
継続的指導 SVによる継続的指導 原則、継続的指導なし
複数店舗の値引き 複数出店奨励の意味で導入している事例が多い 値引きしない事例が多い
購入に適した人(法人) 外食の素人でも差し支えない 飲食業のプロ、飲食フランチャイズのプロに適している
加盟金とライセンスフィー 相対的に安い 相対的に高い
商品仕入れ義務 本部の一括仕入れが原則 独自仕入れが可能、PB商品には購入義務を課する例もあり

【参考文献】

飲食店経営
2004年4月号
安藤 素 「進化したFC業態売買が誕生した背景と有効な運営方法」
FRANJA
2004年7月号 22号
杉本收 『「流行のパッケージライセンスビジネス」を導入する際の留意点』
2005年1月号 25号
金井高志 「パッケージライセンスとフランチャイズ、法的にどう違う」
2005年3月号 26号
川上聖二  インサイド アイ
「パッケージライセンス販売に打って出たベンチャーリンク」
2005年5月号 27号
金井高志  「パッケージライセンスとFCの違いが分からない? 」

黒川孝雄   胎動するニッポンのFC 第8回
「FCとパッケージライセンスの差異は何か」

川上聖二   インサイド アイ
「ライセンスビジネスのブームはFC不信の申し子的存在か!」
デイリー テイコク ニュース
2005年4月13日号  5ページ


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