フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

日本のフランチャイジー像を考える

1. はじめに

 日本には何社(何人)のフランチャイジーがいるのであろうか。そして1社当たり、何店の加盟店を保有しているのであろうか。
 日本のフランチャイズ・システムに関する長期的統計は、一つは日本フランチャイズチェーン協会の「フランチャイズ統計」である。今一つは、商業界が発行している「日本のフランチャイズチェーン」である。前者はチェーン数、店舗数(直営・加盟込み)、売上高(直営・加盟込み)を小売業、外食業、サービス業に分けて統計を取っている。1975年以来の継続的統計であり、30年に亘って毎年統計を発表しているのは世界中で日本のみである。これは十分に誇って良い成果である。
 しかし、店舗数、売上高は直営・加盟込みであり、加盟店の実数なり、オーナー数は不明である。商業界の「日本のフランチャイズチェーン」はフランチャイズ企業の内容まで立ち至った優れた年鑑である。かつ20年近く継続している年鑑であり、我が国唯一のフランチャイズ企業年鑑である。その調査内容は詳細である。(以下2005年版による)
 企業概要、企業業績、FC業績(ここでFC店と直営店の数と売上高が出てくる)、本部及びSVの指導・援助、供与するマニュアル、商品・使用原材料の供給体制と開発状況、代表的な加盟店、契約概要、本部の希望する加盟条件、標準店の概要と販売効率、モデル収支、モデル開業資金、備考と到れる尽くせりの内容である。しかし、仔細にその結果を調査して見ると、記載必要事項をすべて記載しているフランチャイズ本部はゼロに等しい。中にはFC店舗数と直営店の数も不明であったり、まして売上高を公開しないチェーン等が多々あり、問題点が多いことも事実である。2005年版の編集後記に「今回は例年よりパーフェクトにアンケートに応えて頂いたチェーンが多くありました」と述べている通り、確かに記入の内容が高度化したことは事実であるが、まだまだアンケートにきちんと応えていないチェーンが多いことも事実である。
 しかし、このアンケートに不満足な点は、オーナー社数(もしくは個人)が統計上取られていない点である。もし730チェーン(2005年版のチェーン数)のオーナー社数(以下この表示に統一する)がアンケートに加えられていれば、一番最初に提起したオーナー社数、1社当たりの所有店舗数もかなりはっきりしてくる。幸い、今年の調査(2006年版)から、オーナー社数をアンケートに加えるとのことなので、来年1月の発売が待たれる。「日本のフランチャイズチェーン」を見て加盟を検討したと答えられたケースが筆者の調査で10%以上に及んでいるので、「日本のフランチャイズチェーン」の影響力は予想以上に大きなものがある。

2. 加盟店の店舗数を推定する


 「日本のフランチャイズチェーン」年鑑には、直営店と加盟店の別及び夫々の売上高を記載することになっているが、現実には店舗数を記載しなかったり、
売上高を記載しなかったり、様々であり、到底統計として利用できる状態ではない。そこで、以下のような推定数値を用いて、まず加盟店の業態別店舗数を推参してみる。

(1)コンビニ
 「フランチャイズ統計」では最大の店舗数と売上高を誇るコンビニの加盟店の店舗数を推定してみる。2003年度の統計によれば、コンビニの店舗数は、総計で41,114店である。直営店と加盟店の比率は各社の数値から推参すると直営5%対加盟店95%と想定して、それほど大きな差はないように感じられる。そこで、やや大雑把ではあるがコンビニの

直営店は・・・41,114店*5%=2、055店
加盟店は・・・41,114店*95%=39,059店

となる。

(2)その他小売業
 2003年度の「フランチャイズ統計」では、コンビニを除く「その他小売業」は38,384店である。比較的店舗数の多いブックオフを見てみると、直営20%、加盟店80%の比率である。眼鏡関係のフランチャイズは逆に直営店95%、加盟店5%であり、なかなか業界の平均値は出し難い状況である。
 ここでは、思い切って「その他小売業」の直営店と加盟店の比率は、お互いに50%として推参してみる

直営店・・・3万8384店*50%=19,192店
加盟店・・・3万8384店*50%=19,192店

 従って、小売業の直営店はコンビニと合算して21,247店となる。
小売業の加盟店数は、コンビニと合算して58,251店となる。

(3)外食業
 2003年度の「フランチャイズ統計」によれば外食業のフランチャイズ店舗数は53,322店である。店舗数の多いファーストフードでは、モスバーガーが直営店6%、加盟店94%であり、圧倒的に加盟店が多い。KFCは直営店32%、加盟店68%の比率であり、創業以来直営店3割、加盟店7割の考え方は守られている。逆に日本マクドナルドは直営店8割、加盟店2割と圧倒的に直営店が多い。ドトールコーヒーは直営店12%に対して加盟店は88%である。ミスタードーナッツは直営店が8%、加盟店が92%である。ファーストフード関係は概して加盟店比率が高いと言える。
 しかし、専門店を見ると必ずしも加盟店比率は高くない。例えばびっくりドンキーはほぼ50対50である。焼肉屋さかいも、ほぼ50対50である。和風ファーストフードの雄吉野家では直営店6割に対して加盟店4割である。宅配系の雄である、ピザーラを見ると直営店25%対加盟店75%の比率である。
ラーメンは概して加盟店比率が高い。例えば、北陸の雄である8番ラーメンを見てみると、直営店は13%、加盟店は87%である。
 外食業の平均値は各社の政策によって直営店比率は10%から50%程度に分散している。しかし店舗数の多い洋食、和食ファーストフード、ラーメン、宅配ピザのウエイトから判断して、外食業の直営店は3割、加盟店は7割程度と推参してそれほど大きな誤差はないであろう。

外食業の直営店は・・・53,322店*30%=15,997店
加盟店は・・・53,322店*70%=37,325店

となる。

(4)サービス業
 2003年度の「フランチャイズ統計」によれば、サービス業の店舗数は最多の87,890店である。大手フランチャイザーの直営店比率を調査して見る。店舗数最多の学習塾では、最大手の明光義塾を調査してみると、直営店12%、加盟店88%の比率である。フランチャイズ最大手のダスキンサービスマスターの直営店は12%、加盟店88%である。クリーニングの最大手白洋社は直営店が37%、加盟店が63%である。DPE最大手のパレットプラザを調べてみると、直営店は11%、加盟店は89%である。レンタルビデオ最大手のTSUTAYAの直営店は3%で、加盟店比率は97%である。住宅大手のアイフルホームを見ると直営店は2%、加盟店は98%である。ホテル大手のサンルートホテルは直営店9%、加盟店91%である。
 概して、サービス系フランチャイズは加盟店比率が高いと言える。仮に直営店比率10%とすると

直営店・・・87,890店*10%=8,789店
加盟店・・・87,890店*90%=79,101店

(5)以上を合計すると、次のような数字となる。

   
直営店 コンビニ 2,055店
その他小売業 19,192店
外食業 15,997店
サービス業 8,789店
小計 46,033店(20,9%)
加盟店 コンビニ 39,059店
その他小売業 19,192店
外食業 37,325店
サービス業 79,101店
小計 174,677店(79,1%)
合計 220,710店
 

 フランチャイズ店合計の20,9%が直営店、79,1%が加盟店という比率であり、筆者の想定より加盟店比率が10%ほど高く出た。

3. 独立行政法人経済研究所の委託調査

 データとしてはやや古いが、独立行政経済研究所から(株)フランチャイズ・アドバンテージに委託した研究事業によるアンケート調査がある。(03年8月~9月に実施)
 アンケート調査は「日本のフランチャイズチェーン2003年版」商業界、及び「ザ・フランチャイズ」のいずれかに掲載されているフランチャイズ本部全体(672本部)に対して調査表を送付し、回収率26%を得た集計結果に従ったもの。

店舗別オーナー数の割合 (2002年度)   (単位) %

   
  全業種 飲食 サービス 小売
1店舗 74.2 62.5 82.3 81.5
2~4店舗 21.8 32.6 14.4 14.5
5~9店舗 2.6 3.2 2.1 2.5
10~19店舗 0.8 1.0 0.4 1.0
20店舗以上 0.8 0.6 20.8 0.5
 

 加盟店オーナー数は、フランチャイズ統計からも、商業界の調査からも、従来把握されていなかったが、この委託調査で明らかになった。全業種では、1店舗のみを所有するオーナーは全体の7割強で、それ以外は複数出店社の所有する店舗である。業種別に見ると、飲食業の複数出店が一番多く、1店舗のみを所有するオーナーの比率は6割強である。
 この数字を店舗の所有者の観点から見直してみると、1店舗のみを所有する加盟店が保有している店舗数は全体の3割強であり、加盟店舗数の7割は複数出店者が所有していることが判った。
 加盟店は脱サラや商店主の業態転換は中心で、個人加盟店が大半を占めるという状態は大きく変わりつつあり、フランチャイズ本部の大型化と併せて加盟店像も複数出店の大型加盟社が増加していることが、この調査から伺い知れる。
この調査が2002年度の数値を基礎に算出されているので、その後更にこの傾向は進化したものと思われる。

オーナーのタイプ別加盟店店舗構成比 (2002年度) 単位 %

   
1店舗のみを所有するオーナー
により所有されている店舗比率
複数出店社が所有する店舗比率
30.8% 69.2%
 

 複数出店者(2店舗以上を所有する加盟者全体を指す)が予想以上に多くの店舗を所有しているには、それだけの理由があるのだろう。筆者は次のような推定をしている。(仮説であり、事実かどうかは分からない)
個人に比較して、法人化した加盟者に対する信用機能が相対的に高い。だか ら比較的大きな投資に耐えられる。
情報量が飛躍的に拡大する。
加盟店候補者を探す有力な手法として、複数出店者のホームページを探すこと、求人広告誌(含むウエッブ)から探し出す方法が新しいフランチャイジー候補者を探し出す新手法として注目されている。
探し出した複数出店者(本部サイドから見れば優良フランチャイジーになる可能性が高いジー候補者)に本部から加盟情報を送ったり、事業説明会への参加案内書が来たり、面談を求めたりして、複数出店者のフランチャイズに関する情報は急拡大する。
同一店舗の多店舗展開なので、オペレーション能力は高くなる。
物件情報が入り易い。
マルチブランド化(複数の本部とフランチャイズ契約をしてマルチブランド・フランチャイジーとなる)すれば、各種の不動産物件を有効活用することにより、不動産業者や商業施設からの情報提供が増加する。
従業員教育の環境を整えることが可能になる。
フランチャイジーの規模が拡大することにより、従業員の数が増加して、人員のやり繰りが可能になり、自社内での従業員教育の環境を整えることが可能になる。フランチャイズ本部による研修も多いに利用すべきであるが、フランチャイジーのオリジナルな教育が、新しいフランチャイズ展開には必須の要件である。

4. メガフランチャイジーとの関係

 メガフランチャイジーという言葉が新聞や雑誌に登場して日常会話の中にでも利用されるようになった。しかし、メガフランチャイジーに関する定義はない。2004年に中小企業診断士東京支部の「フランチャイズ研究会」(当時は杉本収氏が会長)が「メガフランチャイジー調査・研究」という書籍を出版(非売品)した。その中でメガフランチャイジーを次のように定義している。
「メガフランチャイジーとは加盟店部門の売上高が年間20億円以上か、もしくは店舗数が30店舗以上のフランチャイジーを指す」
 この定義に対しては異論はないようなので、以後この定義でメガフランチャイジーという言葉を使用する。
 今までの複数出店者の一部がメガフランチャイジーである。その数はそれほど多くはなく、せいぜい100社以下ではないかと推計している。

5. 加盟店オーナー数の仮説

 では、加盟店オーナーの全数はどの位になるであろうか。先述の、委託調査の原票にはデータはあるだろうが、公表されていないので、荒っぽい方法ではあるが、一応の計算をしてみる。
 2003年度のフランチャイズ店舗数は22万700店舗である。その内、加盟店は17万4677店と推測した。(2. 加盟店の店舗数推定する)

1店舗のみのオーナーに所有されている店舗数は、30.8%である。従って1店舗のみのオーナー数、及び店舗数は次の数字になる。
17万4677店*0.308=53,800名(店舗)
複数出店者の所有する店舗数は、次の数字になる。
17万4677店―53800店=12万877店
日本全国のオーナー数をXとすると
 X*0.742=53.800名
 X=53.800名 / 0.742=72,507名となる。
まとめれば
1店舗のみのオーナー数と店舗数は、全国で53,800名で、53,800店舗  となる。
複数出店者の数は
72,507名―53,800名=18,707名 となる。
この18,707名のオーナーが所有する店舗数は12万877店舗であり、複数出店オーナーの平均店舗数は、次の通りである。
120、877店舗/ 18,707名=6.46店舗
日本全国のオーナーの平均店舗数は、次の通りとなる。
17万877店/ 72,507名=2.36店舗
仮説の上に仮説を重ねて、かつ年度の違う数字を使用しているため、どの程度正しいかは不明である。一つの叩き台としての意味はあるであろう。
重ねて、まとめれば日本のフランチャイジー像は次のようになっているであろう。
全体のオーナー数    72,507名
1店舗のみのオーナー数 53,800名
複数出店のオーナー数  18,707名
1オーナーの平均所有店舗数 2.36店舗

「日本のフランチャイズチェーン2006年版」からオーナー数をデータとして
求めるそうであるが、是非この仮説と実態を来年1月には突き合せてみたいものである。
 

6. 多数店舗展開社に対する優遇策の事例

 今まで、1店舗オーナーと複数出店者と2区分して考えてきたが、複数出店者の平均店舗数が6.46店舗と判明したため、今後は複数出店者を多数店舗展開社(法人)と呼ぶことにする。
 多数店舗展開社はフランチャイズ本部にとっては、一般的に有力なパートナーとなる資質があり、様々な優遇策により、自社の店舗の展開を求めるものである。では、どのような優遇策を講じているか、収集した範囲で事例紹介をしたい。

ロイヤルティの逓減
 年商や店舗数がある範囲を超えると、ロイヤルティを逓減させる本部は幾つもある。特定の加盟店のみの優遇策ではなく、条件を公開して、店舗数の増大を図る本部がある。契約書に明記された学習塾の事例がある。
インセンティブの導入
 最近知った事例であるが、モスフードサービスは既存店が新規にモス店を開店した場合は2年間に限定して5%のインセンティブ(逆ロイヤルティ)を支払っている。これは素晴らしい制度である。この外食売上高不振の時代に5千万円もの投資をして新規出店する法人には、この程度の支援をすれば更に店舗数を増やす気持ちのもなるであろう。モスのように好感度日本一に輝く実績を持つ企業ですら、このようなインセンティブを行なっているのであるから、他のチェーンも検討する余地はあるであろう。
加盟金の逓減
 この事例は多い。例えば1号店の加盟金は500万円であるが、2号店目以降は半額の250万円にする等の事例は多数見られる。本部にとっても多数店舗を展開する法人の増加は望むところである。
物件情報を優先的に流す
 外食や小売業で、立地が重要な問題である場合には、本部が獲得した不動産情報を優先的に多店舗展開社に流す事例は多い。
社内SV育成の応援
 ①のロイヤルティの逓減と併せて、社内SVの育成により本部のSVの訪店頻度を落とす等の施策を採用する本部は多い。この場合、社内SVの育成について、本部が積極的に研修プログラムを作ったり、社内SVの能力アップに寄与することは間々ある事例である。

7. 多数店舗展開社がこれからの日本のフランチャイズ業界を支える

 従来、日本のフランチャイズは個人の脱サラ、商店の事業転換の手段等比較的加盟店の立場が弱いことを前提に考えられてきたが、上記の通り、多店舗展開社の平均展開数が6.46店舗となり、法人化した加盟店が圧倒的な店舗を所有していることが判った。
 個人の脱サラ、商店主の事業転換がフランチャイズの重要なスキームであることは承知の上で、今やフランチャイズは多数店舗展開社が主力を握る状態であることを理解しなければならない。
 フランチャイズ業界は2000年以降、伸び率が低迷して踊り場にあるが、この状態を救い出し、改めてフランチャイズ業界が大きく飛躍するためには、この多数店舗展開社の役割が大きく、この企業群に相応しい新しい業態を生み出すことが出来るかどうかが、今後の日本のフランチャイズの鍵となるであろう。(本文は商業界「FC白書」(非売品)に書いた「法人加盟で新しい活路を求めるFCビジネスの新段階」に手を加え、書き改めたものである。)


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