フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

2006年フランチャイズ業界を展望する 

 2006年のフランチャイズ業界を展望する前に、経済・社会・政治の動向について予測してみたい。

Ⅰ 社会・経済・政治の動き

1.人口減少社会の到来

 国立社会保障・人口問題研究所の予測によれば、日本の人口は2007年から減少に転ずる予想であったが、2005年の日本人口は約2万人程度の減少過程に入ったと伝えられている。予測よりも2年早い人口減少社会の到来は、フランチャイズに限らず、すべてのビジネスに大きな転機をもたらすと考えられる。
 当面の減少人口は微減であるが、5年後、10年後を予測する場合(例えば新規投資を行う場合等)には慎重な対応が求められるであろう。

2.少子高齢化社会の到来

 人口減少社会と原因は同じであるが、当面の対応は少子高齢化社会への対応となる。日本の合計特殊出生率は2003年に1.29まで低下して「1.3ショツク」と呼ばれたが、それ以降も確実に減少しており、先進国ではドイツ、イタリアと並んで合計特殊出生率は低下している。
 また、2007年には団塊の世代の定年が始まり3年間の間に700万人近い人がリタイヤーすることが確実である。(もっとも半分近い人は既に退職しているとの調査もある)

3.景気の上昇

 暗い話題が続く中で、日本の景気は2002年以降回復の兆しを見せ、いざなぎ景気を抜く長期にわたる景気回復の過程にある。
新年の経営者やアナリストの展望によれば、年間2%程度のGDPの伸び率が予測される。日本経団連も、今年に限っては賃上げ、定期昇給の実施、賞与の増額について、肯定的であり、大企業に限定すれば今年の賃金の増額は間違いないと思われる。
景気の上昇は個人消費の回復を通して、更に上向きに転ずる可能性もある。事実一部とは言え土地価格の上昇、株価の上昇(昨年の日経平均株価は年初めに比較して4割上昇している)、脱デフレ、日銀の金融政策の転換も近いと思われる。

4. 安定政権の誕生

 昨年の郵政解散による選挙の結果、自民党は圧勝して衆議院で300近い議席を獲得した。今年9月には、小泉首相が退陣するが、退陣までの間に財政再建や、小さな政府によるプライマリーバランスの回復への道作りが期待されている。また、財政再建には消費税の増税も避けて通れない道であることも世論は見通している。
 21世紀政策研究所理事の田中直毅氏は1月9日の日経紙で「05年の総選挙後には日本の風景が変わった。永田町が国民の目線に合わせて国民的なベースで議論できる?2005年体制?が成立した」とまで評価している。
 またソフトバンクの孫正義社長は「将来像に対する国民共通のビジョンを持つことが何よりも大切だ」として、「国家全体をどうするかが重要であり、目標は30年後であり、明確にすべき項目は①国内総生産(GDP)②税収③国家予算④国家のバランスシート⑤人口と出生率の5つである」(日経本紙1月8日)と述べている。
 経営者も評論家も日本に対する強い自信を持ち始めた年である。

Ⅱ フランチャイズ業界の動向

1.個人フランチャイジーの減少

 ここ1~2年、いろいろなフランチャイズ本部の話を総合すると個人フランチャイジーの希望者が減少している。これは社会・経済・政治の動向で見たように、景気の上昇、大規模なリストラの終焉、団塊の世代の定年をまじかにして、企業が定期採用、中途採用を積極的に行い、個人フランチャイジーの希望者が相対的に減少したことが大きな要因であろう。
 個人フランチャイジーの減少は、特にコンビニのいわゆるC型の希望者の減少となり、コンビニの下位陣の開発困難となって現れている。

2.求人が困難

 これも社会・経済・政治の動向で見たように、30年以上も続いた少子化の影響で、労働力人口(15歳から65歳までの人口)は1997年に頂点を超えて、昨年の人口動態では、頂点より労働力人口は700万人減少している。当然減少しているのは若い労働力であり、これからは構造的に若手労働者が減少していく。
 フランチャイズビジネスは概して、若年労働力に依存する傾向が強く、今後フランチャイズ加盟店にとって最大の課題はアルバイト、フリーターが集まらず、店舗を作っても働き手がいないという現象であり、当然長期化し、かつ年々その傾向は厳しくなると予想できる。

3.法人フランチャイジーの活躍

 わが国には約1万9千社の法人加盟社が存在すると推計できる。(弊社ホームページ「日本のフランチャイジー像を考える」を参照)この法人加盟社の平均的店舗数は6.5店舗に及び、実にわが国の加盟店数の7割に達すると想定される。
 よくメガフランチャイジーと呼ぶ大型法人フランチャイジーが話題を集めているが、筆者の調査では精々100社程度であり、その社会的影響力は話題になるほど大きくはないと認識している。確かに、法人フランチャイジーに聞くと、将来は「メガフランチャイジーになりたい」という回答が帰ってくる場合が多い。それは法人フランチャイジーの多くが希望していることであるが、メガフランチャイジーの領域に達する法人フランチャイジーの数は多くはない。むしろ数店舗の経営で、年間所得が数千万円に達する法人フランチャイジーの社長に接すると、無理な規模拡大よりも、相応の規模で年間所得の最大化を考える法人フランチャイジーの方が割が良いように感ずる。

4.アジアへの展開

 人口減少社会では、基本的に物量は伸びない。店舗数の伸びも限界がある。フランチャイズ本部としては海外へ目を転ずることになるだろう。
 既に多くのフランチャイズ本部は海外、特にアジアに店舗展開している。中国では、05年2月に外国資本のフランチャイズの規制が解除された。(但し、2店舗1年間の直営店経験がないとフランチャイズは認められない。詳しくは弊社ホームページ「中国フランチャイズ管理法に関する一考察」を参照)また、韓国では04年に開示事項の法整備が完了している。

 しかし安易な海外フランチャイズ展開は大怪我の元である。(社)日本フランチャイズ協会の国際部会の調査によれば、海外事業が軌道に乗るまでに、10年近い歳月が必要と考えている会員が多い。国内人口が減少するからと言って、安易に海外展開に乗り出してはいけない。十分な調査と準備の上で展開する必要がある。
 今年は、特にコンビニ、外食の海外展開が予想される。

5.債権法の整備

 法務省は民法の主要部分となる「債権法」の抜本的な見直しに着手する。2009年の法案提出を目指す。1896年の法律制定から100年以上が経過し、現代社会に対応できていない面が多いと判断したからである。ITや国際化の進展で多様化する契約形態を法律で明確に位置づけることが目的である。
 フランチャイズ契約はフランチャイズ本部の定めて約款に基づいて契約関係が成立している。フランチャイズ契約では「出店を断念したのに加盟金が変換されない」などのトラブルも多い。法務省は債権法を整備すれば取引の安定感が増し、トラブル抑止にも効果があるとみている。(日経本紙1月4日)
 フランチャイズ契約については、問題点が多いことは既にこのフランチャイズ時評でもしばしば指摘しているが、本来加盟金は加盟が具体化した時点で(例えば物件確定、研修開始等)初めて徴収すべき金額であり、物件も決まらないまま、エリア契約と称して多額の加盟金相当額を徴収するフランチャイズ契約は違法とまでは言わないが、多分に危険を孕んだ契約であり、本部側も加盟店側も慎重な対応を求めてきたが、ついに債権法の改正の対象にまでなることは、極めて遺憾であり、業界の自主基準の弱さを露呈したものと言うべきであろう。
過剰な規制にならないよう、債権法の改正に当たっては、関係方面の意見聴取を十分行うよう強く求める。

6.M&Aブーム

 昨年に続いて、今年もM&Aが企業拡大戦略として大きく伸びるであろう。特に大手チェーンによる衰退チェーンの買収や、後継者難のフランチャイズ本部の買収が行われるであろう。
 いわゆるファンドと呼ばれる資本と、業界大手のベテラン企業による友好的M&Aの差が明確に別れる年になるであろう。

7.フランチャイズ売上高の伸び率高まる

 2004年度のフランチャイズ統計によれば、売上高は18兆7223億円で、初めて18兆円台に乗せた。伸び率も4.8%で、2000年以降の2~3%の低い伸び率に比較すれば、良く伸びた。2005年度は2006年3月末の決算で確定するが、発表されるのは2006年10月頃である。筆者の想定では2004年度以上の伸び率を示すと思う。
 フランチャイズ統計の内実を詳しく知る人から、この「予測については慎重にした方が良い」とのアドバイスを受けた。何故ならば、フランチャイズ統計はアンケートによるものであり、過去の統計にはブレが生じているので、2~3年の流れを見ないと予断を許さないとのことである。
 1990年代にフランチャイズ売上高は急進した。それは多分にコンビニの出店が急速に進み、コンビニ依存の伸びであった。しかし、2000年以降、コンビニの売上高の急進は止まり、むしろ数字だけ見れば停滞感すら見える。これは大手コンビニが寡占化を進め、下位コンビニが店舗数を減らしたり、フランチャイズ展開を中止したりしているせいである。コンビニに変わって小売業、外食業、サービス業等多様な業種に伸びが見られるようになった。2006年には専門店業界の最大手の家電のヤマダ電機、ドラッグストアのマツモトキヨシがフランチャイズ化を本格的に開始する。
 2005年度には5%台の伸び率を期待したい。

8.WFC(世界フランチャイズ協議会)及びAPFC(アジア太平洋フランチャイズ連盟)の総会を東京で3月に開催

 今年3月上旬にWFC及びAPFCの総会が(社)日本フランチャイズチェーン協会の主催幹事で開催される。フランチャイズの世界会議が日本で開催されるのは初めてであり、むしろ世界第二位のフランチャイズ大国としては遅すぎた嫌いがある。
3月の日経フランチャイズショーと連動して開催される。従来のフランチャイズ国際会議では、アメリカから日本へのフランチャイズの進出が常に話題になったが、今回は日本のフランチャイズの海外展開が課題になる年であるため、日本のフランチャイズ業界にとって、大いに役立つ情報が得られると同時に、人的交流を深める機会でもある。今年の日経フランチャィズショーへの出展社は、せめて英語のパンフレットを用意すべきであろう。

Ⅲ 小売業界の見通し

1.コンビニ業界の動向

 昨年の流れを受けて、生鮮コンビニ、女性特化型コンビニ、ナチュラルストア等新業態開発型ビジネスモデルと、セブンーイレブンに代表される「コンビニ基本モデル」型と、大きく二つに大別され、その結果がある程度予測できる年になるであろう。
 コンビニは既存店ベースで見れば、5年連続の前年割れであり、加盟店としては売上高はともあれ、売上総利益は拡大したい年である。コンビニ本部としても既存店の前年割れを、新規店舗のオープンのみでカバーする今の手法が永続するものでないことは百も承知である。
 各社のトップも2006年は厳しい年になると予測している。ローソンの新波社長は「相当苦しい1年だ。(中略)各社とも今までと違うやり方を模索し、フォーマット分化も進む。今年何もアクションを起こさないところはアウト。3年後には大きく下がっていく」として、ローソンとしては通常のローソン、健康志向のナチュラルローソン、生鮮コンビニのローソンストア100の3フォーマットを軌道に乗せる年としている。ファミリーマートの上田社長は「厳しい競争の中で大手チェーンがITなどにこれまで以上の投資をし始めており、ついていけない中小チェーンは厳しい。業界内でM&Aや淘汰が自然発生的に増えることは避けられない」「05年は厳しい1年であった。天候要因もあるが、コンビニがまだ若者中心の営業を続けており、中高年に支持される商品・サービスの開発が不十分だ」として「今年はこの認識を踏まえ、現在のコア層である若者と、50~60代へのそれぞれに向けて明確に違いが分かる売り場作りをしていく」と述べている。(日経MJ1月9日)
 月刊コンビニ1月号では「24時間対応にシフトせよ」という特集を組み、①宅配市場への参入②チケット・収納・取次ぎ③金融サービス④予約商品⑤医薬品販売⑥クリーニング⑦コンビニの郵便局化の7項目を上げて提案している。
 06年はコンビニ各社の戦略が、今後の各社の成長に大きな格差を生む年になるであろう。
 また「まちづくり三法」の改正を機に大型商業施設の郊外出店を規制する方針が固まる恐れからイトーヨーカ堂、ダイエー等大手スーパー5社は今後2~3年で約1500億円を投じ、1千店の改装に乗り出す。(日経本紙1月10日)イオンは都市部向けの直営小型スーパーの出店に乗り出す。実験店を複数出し、採算などを検証したうえで今夏にも多店舗展開に乗り出す。人口の都心回帰や高齢化をにらんだ新しい店舗モデルを探る狙いである。近隣の徒歩客を取り込める新型店の育成で、郊外中心だった店舗戦略を補完する。
 新型スーパーの店名は「まいばすけっと」で、昨年末に横浜市保土ヶ谷区内の住宅街に実験店を開いた。売り場面積は約150平方㍍と、むしろコンビニの標準サイズに近い店舗であり、年商で3億円程度を見込んでいる。ダイエーの小型スーパー「フーディアム」も、都市立地重視の姿勢を打ち出しており、24時間営業で、コンビニの持つ利便性を取り込んだのが特徴である。「コンビニ」と「スーパー」を足した「コン・スパ」という造語は、そんな両者の持ち味を融合した店舗という意味である。(日経本紙1月7日)
 コンビニの持つ利便性や商品開発力からして、簡単に牙城が崩せるものではないが、「コン・スパ」や「生鮮コンビニ」との競合が激化することは間違いないであろう。

2.小売業界の動向

 相変わらず小売業のフランチャイズはリサイクル系が伸びると思われる。やはり社会がリサイクルによる資源の循環を求めているからであろう。しかし、それ以上に注目すべきは専門店の大手業者の動きである。
 例えば家電小売業界最大手のヤマダ電機は、今年は本格的にフランチャイズ展開を行うとしている。山田社長は「FCは当社の考え方に同調してもらえる企業でなければならない。(フランチャイジーの)東海テックランドは売上高が2.5倍に増え、収益も上がっているが、こうした実験の様子を見極めよという企業も少なくないようだ」(日経MJ1月9日)と述べ、フランチャイズ化の手応えを感じているようである。
 やや旧聞に属するがドラッグストア最大手のマツモトキヨシは05年7月31日付けで、九州の中堅ドラッグストア、ナチュラルとの業務提携を解消した。売上高201億円のナチュラルがグループを脱退することにより、マツモトキヨシの業務提携先は12社となり、グループ売上高は約5600億円となる見通しである。(日経MJ2005年7月6日)
 緩やかに連携するグループ化では、共同仕入れや共同物流などで必ずしもマツモトキヨシの戦略通りに提携先が動かない場合が多い。このため、今後は業務提携よりも深く経営に参画できるフランチャイズ展開とM&Aに店舗網の拡大に軸足を移す計画である。
 マツモトキヨシは今年3月期からフランチャイズチェーンの全国展開に乗り出す。来期は約100店のフランチャイズ出店を計画している。地域の独立系中小のドラッグストアや個人経営店をフランチャイズ店として取り込み、全国的な店舗網拡大のスピードを上げる。(日経本紙05年1月5日)

3.セブン&アイ・ホルディングスがミレニアムリテイリングと経営統合

 セブン&アイ・ホールディングスは12月26日、そごう、西武百貨店を参加にもつミレニアムリテイリングの発行済み株式の65%を取得し、傘下に収めることを正式決定した。2006年6月までに残り35%の株式も取得して、完全子会社化を目指す。経営面での統合は段階的に進め、5年後を目途にミレニアムを解散、両百貨店をセブン&アイ・ホールディングスの子会社にする。
 発行済み株式の65%は野村プリンシパルから06年1月に取得し、取得金額は1311億円である。人事面ではミレニアムの和田敏明社長がセブン&アイ・ホールディングスの代表権を持つ副会長を兼任することも正式に決めた。(日経本紙05年12月26日)
 既存店売上高の不振が続くイトーヨーカ堂、生鮮コンビニ等との競合激化するセブンーイレブン。消費者の在り方をとらえ切れずにいるセブン&アイの鈴木会長にとって和田氏の危機感は共通のものであった。丁度、脱デフレの足音が高まる中で、高額消費をとらえる百貨店をグループ内に持つ強みが鈴木会長を動かした。和田社長は「百貨店から総合スーパー、専門店やコンビニに消費の主役は変わってきた」と判断して、株式上場を目指した和田社長は「営業強化するためには安定株主対策が必要」と判断したのであろう。(日経本紙05年12月27日)
 流通業のコングロマリットの誕生は、当分生みの苦しみを伴うであろうが、長期的には、やはり日本には無かったビジネスモデルとして威力を発揮する時代が来るであろう。特に衣料の品揃えでは、今年にも力を発揮するであろう。

4.まちづくり三法の見直し

 福島県議会が「商業まちづくりの推進に関する条例案」を05年10月に可決した。売り場面積6千平方㍍以上の店舗を対象に大規模小売店舗立地法(大店立地法)の手続き前に、計画段階での届け出を義務化する。市街地の空洞化など街づくりへの悪影響がないかなどを調整し、問題があれば店舗規模の縮小など計画の見直しを勧告するもので、今年の10月1日から試行する。
 見直し勧告には強制力はないが、県はその内容をホームページ等で公表するという。小売業にとって最も重要な消費者の評価を損なう恐れもある。「致命傷で刑罰に匹敵する」とイオンは深刻に受け止めている。
 「郊外の主役はいまや専門店。大型店を規制しても空洞化は避けられない」(大手スーパー幹部)という見方も小売業界にはある。県などは大型店の郊外出店の規制は中心市街地活性化に向けた一歩と主張するものの、直接市街地の再生につながるわけではない。市街地に消費者をつなぎ止める魅力ある街づくりの実行力そのものが問われている。(日経MJ05年10月17日)
 「このままでは大店立地法がどんどん骨抜きになる」日本チェーンストア協会の専務理事は危機感を示す。チエーンストア協会は「絶対反対」を貫くが、地方スーパーにとっては、「県外から乗り込んでくる大型店の出店を食い止めたい」という本音も聞かれる。
 福島ショックの影響は郊外に大型店を展開しているホームセンター業界にも及ぶ。「今の時代にそんな条例が本当に通るのか」。中四国地盤の大手HCダイキの山下社長は首をかしげる。大型店の駐車台数の規制が引き下げられるなど、「時代は着実に規制緩和に向かっている」と見ていたからである。
 イオンの岡田社長は「日本にはこれまで環境や景観に配慮した計画的な街づくりの発想がなかった。中心市街地の再生のためにテナント誘致のノウハウを提供するなど、当社としてできることがあれば参加したい」「しかし、それと郊外大型店の出店を規制することは別で議論のすり替えだ。再開発などを通じて魅力ある中心市街地をどう作るかという話をしなくてはならない」「大店立地法が禁じる需給調整に当たる可能性があり、営業の自由を妨げるという点から見ても、憲法上、問題がある。行政訴訟も辞さないという強い気持ちをもっている」と述べている。(日経MJ05年10月17日)
 これとは別に、政府与党は都市計画法改正案を年末にまとめた。大規模小売店舗立地法、中心市街地活性化法、改正都市計画法のまちづくり三法見直しの一環である。延べ床面積1万平方㍍超の大型店の郊外立地を、基本的に商業用地など三地域に制限するという、大手スーパーには厳しい内容である。流通、サービス業各社の戦略は抜本的見直しを迫られる。
 政府は改正案を今年の通常国会に提出、07年にも施行される見通しである。
イオンの岡田社長は「大型店だけを規制しても、ロードサイドに小型店が林立するだけで中心市街地の再生にはつながらない。郊外出店にブレーキをかけるのではなく、市街地の新店は5年間は無税にするなどのインセンティブを与えるという発想にならないのか。これでは郊外も市街地も沈んで尻すぼみなる」と述べている。(日経MJ05年12月23日)
 延べ床面積1万平方㍍超の大型店の郊外出店を制限することを軸にした都市計画法改正案によれば、規制対象業種は物販のほか、飲食店、劇場なども加えており、流通・サービス業の出店戦略に大きな影響が出そうである。
 都市開発を進める市街化区域の12分類のうち、1万平方㍍超の施設が出店できる地域を商業地域、近隣商業地域、準工業地域の3地域に絞った。従来はこの三地域に加えて、第二種住居地域、準住居地域、工業地域を合わせた6地域について自由に大型店の出店ができた。
 三大都市圏と政令指定都市以外の地方圏では、原則、市町村が特別用途地区を指定して準工業地域への大型店立地を抑制する方針のため、改正後は地方圏で1万平方㍍超の大型店が出店できる面積は市街化区域全体の31%から7.9%に絞られることになる。(2004年3月末時点)(日経MJ05年12月23日)
 大店立地法の時より準備期間ははるかに短く、施行時までに「駆け込み出店が相当起きる可能性もある」と関係者は見ている。
 日本商工会議所常務理事の篠原徹氏は「1年がかりで議論してきたことは人口減少社会のなかで、いかに都市としての機能を拡散させず集約するか、既存のストックを使いながらコンパクトな街をつくるという点だ。日商は見直し論議全体を通じ、大型店も商店街の個店も消費者にとって必要で、共存共栄できる枠組みが必要と主張してきた。自由競争の下で郊外の大規模開発ばかりが進むと、コミュニティーが成り立たなくなる。単なる商店街の活性化だけを目指したものではない」「土地の使用目的を用途規制するゾーニング強化は受け入れられないと言う経団連の主張には違和感があった。米国でもウォルマート・ストアーズが全米各地で自由に出店できなくなっている。用途規制は世界各国で使われており、グローバルスタンダードな法体系だ」と述べている。(日経MJ1月11日)
 この都市計画法改正案が通過すれば、フランチャイズ企業の出店政策に大きな影響が出てくる。
 政府・与党が「まちづくり三法」改正を機に大型商業施設の郊外型出店を規制する方針を固めたことから、大手流通業は新規出店より既存店改装を重視する路線に転換する。
 大手五社が改装を計画する店舗は総店舗数(約1500店)の7割に達し、03~05年度実績のほぼ2倍に当たる。老朽化しているが駅前など中心部にある立地条件を生かすため、改装で店の寿命を延ばす計画である。
 ほぼ全店の改装に乗り出すのがヨーカ堂、イオン、ダイエーの三社。西友、ユニーも既存店を順次改装する。(日経本紙1月10日)

Ⅳ  外食業界の動き

1.既存店売上高はやや明るくなる

 昨年の10月以来、外食大手の既存店ベースの売上高にやや明るさが戻った。
まず、10月の既存店は7カ月振りにプラスに転じた。ファーストフードやディナーレストランが好調であった。また11月は主要30社の既存店売上高は12社が前年を上回った。12月の実績はまだ発表されていないが、賞与の増加などから考えても、それほど悪い数字にはならないだろう。
 06年の外食需要を考えると、景気の上昇、賃金引上げ等の要因により、少なくとも2~3年前の既存店が10%以上も低下する状態にはならないだろう。
ある意味では下がるだけ下がったということであり、むしろ長期的には少子高齢社会、人口減少社会の到来を、外食としても真剣に受け止め、無益な安売り合戦を止めて、高付加価値経営(飲食店経営2000年8月号参照)に転換する時代である。

2.アメリカ牛の輸入開禁

 昨年の12月12日にアメリカ牛の輸入禁止措置が条件付きで解禁された。月齢20ケ月以内という条件では、到底需要量は満たされない。輸入量は当面、禁輸前の2割程度の止まると見られる。かって米国産牛に大きく依存していたタンや牛丼用のバラ肉などの品薄は続く。安全性に対する消費者の不安も消えていない。外食チェーンの多くは豪州産や国産との併用を続ける見通しである。
アメリカでは早くも、月齢30ケ月に延長すべきであるとの論調が目立つが、消費者の不安が解消されるまで、下手な輸入拡大措置は見送るべきである。フードサービス協会も、ここはじっくりと構え、消費者の反応を見てから行動を起こすべきである。世論を敵に回すような愚作は取るべきではない。
 米国の食肉加工大手ナショナルビーフ(ミズリー州)は生産情報の公表を義務付けた「生産情報公表JAS(日本農林規格)」を米国企業として初めて取得した。ナショナルビーフは米国の牛肉出荷市場で12%のシエアーを握る大手。
カンザス州の工場が生産情報公表JASの認定を受けた。今春から「JAS認定の牛肉」として日本に輸出する。日本の商社と関係が深い米国の食肉加工業者などの間でもJAS取得を検討する動きが広がっている。(日経本紙1月7日)このような地道な活動こそが、消費者がアメリカ牛は安全と思う一つの方法である。

3.外食大手、6割が出店拡大

 日経MJが大手外食チェーン30社を対象に、昨年12月に調査を実施して、27社から回答を得た。2006年の外食市場全体の成長見通しについては、14社が拡大を予想、横ばいが9社で、縮小という回答は4社に止まった。ファミリーレストランが低調なのに対して、居酒屋、中食・宅配は軒並み拡大予想となっている。
 06年の出店計画について聞いたところ、「増やす」と答えたのは18社で、「減らす」の3社を大幅に上回った。逆に閉店計画については「減少」が11社だったのに対して、「増加」は5社で、店舗のリストラに一応のメドをつけた企業がおおいようである。
 個別に見ると、レインズインターナショナルは「牛角」「しゃぶしゃぶ温野菜」などを積極出店して、前年比227店増の400店の出店を目指す。居酒屋のワタミは前年を60店上回る145店を新規出店する。コロワイドは80店規模の拡大を目指す。「オリジン弁当」のオリジン東秀は年間100店舗の出店を計画。ラーメンの幸楽苑が60店、ハイディ日高が30店の新規出店を目指している。(日経MJ1月6日)

4.大型店出店規制の強化による出店戦略の変更

 予定では07年以降に大型店の出店が規制され、今年及び来年の前半位までは、大型店内の出店は続けられるが、法改正以降は大型店の出店は大幅にダウンすると思われる。
 特に大型商業施設の中で店舗展開をしてきた飲食業にとっては、会社の生死をかけた事項であり、早急に出店戦略の見直しなり、場合によっては新業態への転換を今年中に行わなければならない緊急事態である。
 今年中に出店戦略の転換を行わないと、07年の後半から店舗展開のスピードが急速に衰える恐れがあり、会社の存否を賭けた年になる。

5.宅配ビジネス

 高齢社会には宅配ビジネスは不可欠である。富士経済の調査によるとルート宅配の市場規模は、02年で1兆9146億円であり、下記のように分類されている。

有機野菜宅配 1兆2678億円 67%
生協宅配 2686億円 14%
牛乳等 2580億円 13%
食材宅配 416億円 2%
完成食宅配 405億円 2%
冷凍食品宅配 381億円 2%

 フードサービスとしての宅配ビジネスは、広く取れば食材宅配と完成食宅配の合計で約3000億円(15%)の市場規模である。
 食材宅配の代表的業者はタイヘイ、ヨシケイ、ショクブンの3社であり、いずれもフランチャイズ展開を行っている。これら業者も、最近では、高齢層に配慮して健康や栄養バランスに気を配った食事、いわゆる「カロリーコントロール食」としての完成食宅配を手掛けるようになってきている。
 調理済みの食事を扱う「完成食宅配」は416億円で、わずか2%程度のシェアーである。宅配ビジネスとしてフランチャイズ化しているのは、宅配ピザ、宅配寿司、中華料理宅配、カレー宅配、高齢者向け弁当宅配等である。
 すかいらーくは「ガスト」や「バーミヤン」などで実施している宅配事業を強化するため、1月1日付けで宅配部門を「ガストカンパニー」から独立させ、「オール・フーズ・デリバリー(AFD)カンパニー」に格上げした。独立採算制のカンパニー組織にすることで、事業責任を明確にする目的である。年間売上高は約150億円で、ルームサービスを実施している店では宅配が、全売上高の約2割を占めるという。高齢化社会が進むとともに、宅配の比率はさらに高まるとみている。今後はAFDが人材管理やマーケティングなどの効率化を進め、実施店舗を増やし、2009年12月期をメドに、宅配事業の売上高を現状の3倍にあたる450億円にまで拡大する計画である。(日経MJ1月6日)
 このマーケットにはコンビニも着目している。セブンーイレブンは2000年に「セブンミールサービス」を立ち上げて以来、首都圏での展開に限られていたが、05年に一気に拡大の様相を示した。自前での「配食サービス」の展開は難しいと思われたが、05年2月に北関東地域、9月には甲信越地域へ拡大した。これにより1都9県、5000店舗をカバーすることになった。つまりセブンーイレブンの約1万1千店舗の半数をカバーしたことになる。セブンーイレブンの「お食事配達サービス」は、1週間単位で栄養のバランスを考えた食材乃至は完成食を配達しようとするものである。セブンーイレブンの「お食事配達サービス」は大別すると「お惣菜」「日替わり弁当」「食材メニュー」に分類できる。「お惣菜」と「日替わり弁当」は完成食宅配、「食材メニュー」は食材宅配になる。セブンーイレブンによると、その売り上げ比率は7対3で「完成食宅配」の方が圧倒的に支持されている。実際の契約者の年齢は、50歳以上が6割に及び、高齢者の割合も高いが、糖尿病や腎臓病の人向けのようにカロリーや塩分などがコントロールされてはいない。(月刊コンビニ1月号)
 新しいフランチャイズとして期待されるのが、完成食の宅配サービスであり、まだマーケットは小さく、これからである。宅配には独自のノウハウがあるので、宅配ビジネスのフランチャイズ本部が多角化するか、全く新規に宅配ビジネスを立ち上げるか、いずれにせよ2006年は完成食宅配のフランチャイズが期待される年である。

Ⅴ サービス業界の動き

1.複合カフェの隆盛

 インターネット・漫画・フリードリンクの三点を中心にしたサービスを時間課金制で提供する、複合カフェ(ネットカフェ、漫画喫茶)業界の2004年度売上高伸び率は38.1%で全サービス業種では第三位である。
 成長の第一要因は積極的出店政策である。全体設備投資額の伸び率は92.5%。従来は都心の雑居ビルなどの小さなスペースへの出店が中心だったが、最近は郊外ロードサイドや大型ショッピングセンターへの出店が加速している。客数については回答した13社のうち11社が「増えた」「やや増えた」と回答。平均滞留時間は2.5時間。最も多かったのは2.5~3時間で全体の45.5%となった。
 サービス内容の拡充ではファーストフード以外の和食・洋食・中華などの食事を提供するのが75%、ビリヤード50%、温泉などの温浴施設12.5%となった。出店地域の多様化に伴い、主要客層もサラリーマン層から、女性やファミリー層へと変わりつつある。団塊世代のリタイヤーをにらんだ客層構成の見直しが今年の課題になる。(日経MJ05年11月23日)
 現在、フランチャイズで一番伸びている業態であり、今後も急進が期待される。サービス業と飲食業の中間に位置する業態である。
 最近、座席によって価格の引き上げが行われている。テイツーやアプレシオは席を重厚感のある大型ひじ掛けイスにしたり、高性能パソコンを利用できる席を設けて料金に幅を持たせている。
 基本料金の引き上げに加え、食事メニューの向上やエステなどのサービスを付加することで客単価上昇を狙う。(日経MJ1月11日)

2.医師と栄養士とのコラボレーションによるフランチャイズ化

 政府は拡大を続ける医療費を抑制するために検討していた医療給付費の将来目標を2025年度時点で45兆円程度とする方針を決めた。国民の保険料と税金を元手にする医療給付費は放置すれば25年度に56兆円に倍増する見通し。診療報酬下げや患者負担でこれを絞り込む。給付抑制の事実上の「公約」となるが、45兆円はまだ高水準として一段の削減を求める声もある。(日経本紙1月11日)
 少子高齢化の進行と人口減少社会は、厚生年金や医療費負担の拡大を誰が負担するのか、給付水準を引き下げるのか等深刻な課題を孕んでいる。日経紙が伝える2025年度の給付抑制には無理がある。医師側にも11兆円の削減は大きすぎるし、支払いサイドの患者負担も大きく成りすぎる。
 一番お金の掛かる生活習慣病は医者では治せない。日常の食生活のコントロールが重要であるが、医師なり看護師には食生活の指導は出来ない。常に医師側と患者側との衝突が起きている。医師の紹介で栄養士が生活習慣病の患者の食事指導を行う、栄養士のフランチャイズ化が考えられる。現にヘルシーピット(世田谷区、杉本恵子社長)は、栄養士による健康管理事業を始め、世田谷区成城学園前に直営1号店を開設して、栄養バランスを考えた料理を直営店で提供したり、病気に見合った食事メニューの提供や助言を行っている。生活習慣病の予防や食事指導を目的としたプログラムを販売して、栄養士のフランチャイズ化を始めようとしている。
 これは、まだフランチャイズ化が始まった訳ではないが、直営で実験を重ねて、近い将来フランチャイズ化をしようとするものであり、今後もこれと似た医療費抑制を間接的に可能にするビジネスの開発が考えられる。

3.介護関連ビジネス

 高齢者が増加して、かつ高齢者の単身所帯が急増している。介護ビジネスは全国で増加しているが、どこの施設でも重労働で、従業員の退職、疲労の蓄積が課題となっている。誰でも簡単に介護ビジネスに参入できるものではない。
 しかし、介護ビジネスをサポートする介護関連ビジネスが面白い。布おむつのフランチャイズ化(失敗)、尿量測定システム販売のフランチャイズ化など様々なフランチャイズが生まれている。新しいサービスフランチャイズであり、今後伸びることは間違いないが、果たしてビジネスとして定着できるかどうかは今後の課題であり、高齢化社会を支えるインフラとしての機能の育成が求められている。

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