フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

ロイヤルティを考える

1.ロイヤルティの意味

 ロイヤルティとは、フランチャイズ・ハンドブックの定義によれば「特許、商標、ノウ・ハウ、著作権等を目的とする種々のライセンス契約やフランチャイズ契約におけるライセンシーまたはフランチャイジーが支払う対価をいう。特許やノウ・ハウのライセンスにおいては「実施料」商標や著作権のライセンスにおいては「使用料」ともいう。一般的にはライセンスやフランチャイズの対価のうち定額払いのものに対して、特定の基準に一定の率を乗じて算出するものを「ロイヤルティ」または「ランニング・ロイヤルティ」と呼んでいる。著作物の出版において出版社が著者に支払ういわゆる「印税」は、ロイヤルティである。」定義自体が古いせいもあるが、どうもこの定義ではフランチャイズ契約に関するロイヤルティの性格が明らかにはならない。川越健治氏の著作から引用した、下記の文言がロイヤルティの定義に相応しいように感ずる。
 「フランチャイズ契約におけるロイヤルティは、フランチャイズ契約の期間中、フランチャイジーからフランチャイザーに定期的に支払われる金銭である。
フランチャイズ・パッケージの対価の一部(加盟金の対象を除く部分)であり、よりブレークダウンしていうと、ノウハウの付与と商標等の使用許諾の対価であるのが一般だと考えられている。」(川越健治「フランチャイズシステムの法理論」より)

2.現実の規定

 中小小売商業振興法試行規則(昭和48年9月29日通商産業省令第百号)
(平成14年3月1部改定)の12によれば「加盟者から定期的に金銭を徴収するときは、当該金銭に関する事項」として、次の項目を上げている。

イ  徴収する金銭の額又は算定に用いた売上、費用等の根拠を明らかにした算定方法
ロ  商号使用料、経営指導料その他の徴収する金銭の性質
ハ  徴収の時期
ニ  徴収の方法

 ロイヤルティの性格を考える場合、ロの「徴収する金銭の性質」に当たり、これは開示事項として、開示がフランチャイズ本部に義務付けられている。(但し、商号使用料とは、あまりにもお粗末である。正しくは標章等の使用料とすべきであろう)
現実に、各フランチャイズ本部がどのように規定しているかを「ザ・フランチャイズ」によぅて調べて見た。
以下、その抜粋を抜き出してみる。

■ モスフードサービス
1.継続的商標使用料
2.継続的経営指導料

■ ドトール・コーヒー
1. 商標使用料
2.本部が実施するメニュー開発、販促活動、経営マニュアルの作成及び指導等対価

■ TSUTAYA
1.ノウハウ及びシステムの継続的地位
2.標章等の使用料
3.その他本社が実施するレンタル商品の発注代行業料を含む経営指導及び技術援助の対価

■ 明光ネットワーク・ジャパン 
1.商標使用料
2.本部が継続的に行う指導、技術援助の対価
3.定期便その他の諸連絡業務および無料提供物発送の対価
4.共同広告等の費用

■ ダスキン・ホームインステッド
1.商標等の使用料
2. ノウハウの提供及び当該事業パッケージの使用の対価

■ BOOK OFF
1.商標、マークの使用料
2. 本部が定期的に行う指導、技術援助
   a 継続的経営指導
   b シエアー拡大及び売上指導 
3.諸連絡業務等に要する費用

■ 日本マクドナルド
 当社が推進する経営指導及び継続的サービスやインノベーション、プロモーション、アライアンス、新商品、新しい調理システム等を含むマクドナルドシステムから受ける恩恵の対価

■ セブンーイレブン・ジャパン
 当社が実施するサービス等の対価及び商標等権利使用の許諾、当社の援助および費用負担の実費を含みます。

 日本を代表すると思われるフランチャイズシステム8社の、「ロイヤルティの性格」を、書き出してみたが、概ね次のようにまとめられる。

1. 商標の継続的使用料
2. ノウハウの使用料
3. 継続的指導料(スーパーバイザーによる指導を明記している本部は無い)
4. 連絡費、通信費、配送費用等


 これに対して、例外的定義はマクドナルドの「ロイヤルティの性格」であろう。これに対しては後述する。

3.ロイヤルティの決め方

 ロイヤルティの計算方法も、法定開示書面で開示することになっている。「ザ・フランチャイズ」を見れば分かる。
ここで、その類型を分類してみたい。

1.売上高比例方式
 加盟店の売上高に一定比率を乗じて算出する方法で、一番多い。

2.粗利分配方式
 加盟店のあげた粗利益(売上総利益)に一定の比率を乗じて、算出する。コンビニの大手が採用しているケースが多い。

3.固定額方式
 一定の金額を設定して、これをロイヤルティの金額とする方式。店舗の坪数や席数に比例するもの等、いくつかの事例がある。ラーメン、居酒屋等比較的古くからの事業に固定額方式が多いように感ずる。

4.混合型
 固定額方式と売上高比例方式を併用したり、売上高の種類により複数の比率を乗じたりする混合型も多く見られる。

5.無料
 ロイヤルティを徴収しない方式であり、ライセンス・ビジネスに多い。
しかし、ビジネスフォーマット型にも、しばしば見受けられる。

本部の利益の源泉は、斡旋する商品や原材料の売上等から挙げようとするものであろうが、実態は不明である。これも比較的早い段階で成立した「日本型フランチャイズ・システム」に多いように感ずる。 

4.フランチャイズ契約におけるノウハウの意義と提供方法・提供時期

 ロイヤルティの基本は、商標の継続的使用料、ノウハウの使用料、継続的指導料であることは、各社の開示書面からも明らかになった。そこで、フランチャイズ契約におけるノウハウの意義と提供方法・提供時期について考えてみたい。
  幸い、昨年4月に金井高志弁護士によって「フランチャイズ契約裁判例の理論分析」という優れた文献が出版された。以後、この理論分析を頼りに、ノウハウの意義と提供方法・提供時期について考慮してみる。
 「ビジネス・フォーマット型フランチャイズにおいては、フランチャイザーがフランチャイジーに対して経営に関するノウハウを提供することに本質があり、フランチャイズ契約においてフランチャイザーからフランチャイジーに対して提供されるノウハウは、工業上・技術上のノウハウに限定されるものではなく、商業上・営業上のノウハウを含む広義のノウハウである」として一般論を展開しながら、具体的なノウハウの事例を挙げて説明している。
「例を挙げれば、資金調達方法、立地選定の情報、店舗の内外装、レイアウト、設備、什器備品、商品等の調達方法、(中略)売上管理方法、会計経理情報、経営改善策などの事業の開始からその運営にかかわる様々な分野における情報である」
「これらのノウハウについては、マニュアルを含む文書や図面等の書類として提供されることが多い。そして、これらの書類はフランチャイザーからフランチャイジーに対して譲渡されるものではなく、貸与されることが多いものである。ただノウハウにはマニュアルを含む文書や図面等の書類またはビデオ等の映像メディアにより有形化しうるものがある一方で、書類等として有形化できないものも多くある。」
「フランチャイズ契約でのノウハウの提供方法には、提供されるノウハウの有形化の有無により差異が生じると考えられる。有形化されうるノウハウの場合には、主にフランチャイザーがフランチャイジーに対して書類等で開示・交付する、ということで提供がなされることになる」
「有形化されえないノウハウの場合には、フランチャイザーがフランチャイジーに対してそのようなノウハウを習得させるために、フランチャイザーが研修会の開催、実習での指導などを含む積極的な行為を行うことで提供がなされることになる」
実務的にも、この通りであり、マニュアルだけで指導できない場合は、講習会を開催したり、スーパーバイザー(以下SV)による店舗での実地指導で教え込むことが通常である。
「次に、フランチャイザーからフランチャイジーに提供される時期的観点からも二つの種類に分類することができる。
一つはフランチャイズ契約の締結時において、フランチャイザーが過去の事業運営の経験等により取得し既に保有していて、その契約の締結時にフランチャイジーに提供されるノウハウであり、もう一つは、フランチャイズ契約締結後において、フランチャイザーがその後の事業運営の経験等から改良・開発して、その契約締結後にフランチャイジーに提供するノウハウである」
「その事業活動を取り巻く市場環境が、変化することからすれば、フランチャイザーがフランチャイズ契約締結時に保有しているノウハウに加えて、フランチャイズ契約締結後に新たに改良・開発したノウハウも、フランチャイズ契約においてフランチャイザーからフランチャイジーに対して提供されるノウハウということができる。フランチャイザーからフランチャイジーに対して提供されるノウハウは、フランチャイズ契約締結時においてフランチャイザーが保有するノウハウとその後に改良・開発されるノウハウの二種類を含むものということができる」
更に、金井高志弁護士は「ノウハウの修理および改良・開発ならびに指導・援助の法的性質」として、次のように論じている。
「フランチャイズ契約は、フランチャイジーが加盟して長期間事業活動を行うためのもので、フランチャイジーが市場の変化等に応じて経営することができるようにするものであること、また、フランチャイザーからの継続的なノウハウの提供や指導・援助を受けることで、徐々に事業運営について習熟し、高い能力を獲得するフランチャイジーの要求に対応すべきであることから、フランチャイザーとしては、その本質的な義務として、ノウハウが陳腐化しないようにする補修義務の範囲を超えて、継続的にノウハウの改良・開発をしなければならず、かつ、その改良・開発されたノウハウを積極的にフランチャイジーに対して開示・交付し、指導・援助を行わなければならないと考えられる」
として、その法的性質について、次のように考察している。
「フランチャイズ契約締結時においてフランチャイザーが保有していないノウハウについては、使用許諾の合意時点において存在しないものである以上、契約締結時点における使用許諾ということは論理的にありえない。将来に向かい継続的にノウハウを改良・開発し、それをフランチャイジーに開示・交付し、指導・援助するというノウハウに関する債務は、契約締結時におけるノウハウの使用許諾に関する債務とは異なる継続的な債務であると位置づけられる。このようなノウハウの継続的な改良・開発義務は技術ノウハウの使用許諾契約における議論では、ほとんで言及されていない。」
「フランチャイザーが継続的に契約締結時のノウハウが陳腐化しないようにする修補義務の範囲を超えて、新しくノウハウを改良・開発しなければならず、かつ新規に改良・開発されたノウハウを積極的にフランチャイジーに対して開示・交付し、かつ指導、援助を行わなければならないという契約上の債務に関しては、フランチャイズ契約におけるノウハウの使用許諾契約的部分(賃貸借契約類似の性質を有する契約)の義務としての位置づけではできないと考えられる。」
「新たにノウハウを改良・開発しなければならない義務、そして、そのようなノウハウに関しての指導・援助しなければならない義務が考えられる以上、そのような義務の法的性質は、ノウハウの使用許諾契約の要素の一部として説明することはできず、フランチャイザーを受任者、そしてフランチャイジーを委任者と考えうる準委任契約的要素として評価するべきものであると考えられる」
 以上、くどいくらい金井高志弁護士の「フランチャイズ契約裁判例の理論分析」を引用しながら、考えてきたが、筆者の結論として「加盟金」に属するノウハウ及び指導・援助は、以下の部分である。
「フランチャイザーが契約締結時において保有するノウハウの開示・交付し、使用許諾する点、ノウハウを伝授するための研修・訓練等の実施などの指導・援助義務があるという点、さらに、ノウハウが陳腐化しないように価値を維持する修補義務があるという点」
 これに対して、ロイヤルティに属するノウハウ及び指導・援助義務は
「フランチャイズ契約締結時においては、フランチャイザーが保有していないノウハウの部分、フランチィザーが継続的にノウハウの改良・開発を義務付けられ、その開示・交付と付随する指導・援助を義務付けられる部分」
 が該当すると考えられる。
  ロイヤルティの法的性質を考慮すると、前に挙げたフランチャイザーの法定開示書面に記された「ロイヤルティの性格」としては、日本マクドナルド社のものが、一番正確に開示しているように読める。

5.ロイヤルティはSVによる継続的指導料のみではない

 俗論として、「ロイヤルティはSVによる継続的指導料である」として、「SVによる継続的指導は不要、ロイヤルティは減免せよ」という大型加盟店の意見がしばしば雑誌等で報告されたり、耳にすることが多い。
 しかし、金井高志弁護士の著作に示された、ロイヤルティの法的性格からすれば、SVによる継続的指導はロイヤルティのごく一部であり、もっと大きい部分は「フランチャイザーが継続的にノウハウの改良・開発を行い、その開示・交付と付随する指導・援助」を行う義務があると規定している点が新しく、かつ正しい見解であると思う。

6.ロイヤルティはフランチャイザーの唯一の継続的収入である

 フランチャイズ契約書や法定開示書面を読む限り、フランチャイザーの継続的収入は、ほぼロイヤルティのみであり、商品販売差益とか原材料販売差益をフランチャイズ契約書に明記している事例はみたことがない。
 勿論、筆者の知らないフランチャイズ契約書は多く、中には原材料販売差益を本部の収入にすることが明記されている契約書があるかも知れない。
 原則として、加盟金等の一時金を除いた、フランチャイザーの継続的収入はロイヤルティに大半を依存していることは事実である。
 事業収入の柱である、ロイヤルティの率を下げたり、免除するようなことは、ロイヤルティの性格からして、行うべきではない。筆者がしばしば、複数加盟店を展開するフランチャイジーに対して「ロイヤルティの一部減免」等を行っている事例を挙げることがあるが、それは、正確には「ロイヤルティには手を付けず、販売奨励金として売上高の一定パーセントをインセンチブとして支払っている事例」を紹介しているのみである。

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