フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

BOOK OFF 坂本代表に聞く

 6月7日、BOOK OFFの銀座コンファレンスルームにて坂本社長と面談して、同社の現状や将来展望について伺った。実は、先に中小企業診断士・フランチャイズ研究会の有志により「成長するメガフランチャイジー」を同友館より出版した。(杉本収、伊藤恭編著、その他10名程度の中小企業診断士が調査・著作に当たっている)筆者も一部著述した部分があり、特にメガフランチャイジーを第一世代、第二世代と区分して、その中心となるフランチャイズ本部のフランチャイジー戦略を昔の図書や雑誌から引用して、「複数出店を積極的に促す意向があった」とする仮設を発表した。発表後、この仮説を各社の創業者や社長、広報室等に確認作業をしておけば、この仮説は第一級の資料となることに気づき、社名を挙げたフランチャイズ本部の取材を始めた、第一号がBOOK OFFであった。(弊社ホームページのFC時評「成功するメガフランチャイジーを紹介する」を参照)

 従って、この対談は単なるフランチャイズ本部の近況報告のみではなく、前記の仮説検証を大きな目的としている。
 なお、坂本社長は6月24日の株主総会で、代表取締役会長に就任され、新社長には橋本真由美氏(1号店のパートとして入社された方としてニュースになった)が就任された。従って、坂本氏は面談時は社長であったが、その後会長に就任されたので、本稿では坂本代表で統一する。

1. 最近のブックオフコーポレーションの業績と加盟店の状況

 今更言うまでもないが、ボックオフコーポレーション(以下ブックオフ)は1990年に創業、中古書店のBOOK OFF1号店を開業した。91年8月に会社組織として、91年11月に加盟店1号店をオープンしている。94年12月に100号店を達成して、2004年3月に東証2部に上場し、2005年3月には東証1部に昇格している。
 中古書店の最大手であり、優良フランチャイズ本部と言われている。事実、2006年3月期の決算は次のような内容であり、過去最高の売上高、経常利益、店舗数を達成している。

06年3月期売上高 422億1千万円 (前年比 7.0%増)
  〃  経常利益 29億73百万円(前年比 18.2%増)
  〃  店舗数 863店(直営店214店、関係会社81店、加盟店568店)

店舗数の推移は次の通りである。

  2002年度 2003年度 2004年度 2005年度
直営店 146 175 196 214
子会社店舗 63 61 72 81
加盟店 494 518 532 568
合 計 703 754 800 863

 加盟店は着実に年間20~30店舗の割合で増加している。
既存店売上高は次のように、ほぼ確実に前年売上高をオーバーしている。

  06年1月 06年2月 06年3月 06年4月
直営店 103.2 100.0 102.3 102.5
関係会社 102.3 100.0 103.1 102.6
加盟店 100.7 100.8 100.7 102.9

 チェーンビジネスで前年売上高をオーバーしている企業の数が少なく、特に外食、コンビニが長期に亘り不振にあえいでいる中で、直営店、加盟店共に前年を上回る売上高を上げているのは立派である。

2.子会社の目的と成果

 ブックオフには多数の子会社や関係会社がある。子会社7社は国内4社、海外3社の7社であり、その他関係会社7社合計14社がブックオフに加盟して店舗運営している。
 子会社のブックオフ一ツ橋、ブックオフ駒沢、ブックオフ慶応等学校名を付した会社は、学生(設立当時)に経営を任せ、経営のトレーニングを行い、いずれ他の事業に挑戦する機会を与える趣旨であった。資金は学生には無いため、100%ブックオフが出資して事業を始めたものである。
 また従業員独立のための関係会社もあり、ブックオフ本体の大企業病を予防する意味があったそうである。本体を大きくするよりも、別会社にして、従業員を経営者に育成する趣旨であり、BOOK OFFは普通の人が真面目にやれば、誰でも成功する業態であると考えているそうである。
 また、ブックオフではTSUTAYA、HARD OFFに加盟して関係会社としてTSUTAYAでは8社、HARD OFFでは13社がBOOK OFFと複合業態として出店している。

 リユースの新業態としてB.KIDS(子供、ベビー服、マタニティー用品)が38店(関係会社30店、加盟店8店)、B.STYLE(レディース・メンズカジュアル)が26店(関係会社20店、加盟店6店)B.LIFE(雑貨、インテリア、ギフト商品)が9店(関係会社5店、加盟店4店)
B.SPORTSが16店(関係会社16店)、B.Select(貴金属、腕時計、アクセサリー)が10店(関係会社8店、加盟店2店)となっている。
ブックオフメディアは、ハードオフ、ツタヤ、ブックオフの運営に当たる子会社である。
リユースプロデュース(株)は100%出資の子会社であり、中古本以外のリユース事業のフランチャイズ本部であり、BOOK OFF加盟店のみを加盟店対象とするビジネスであり、3億円以上の利益を出す優良子会社である。

 リユースの新規事業はすべてBOOK OFFの複合業態であり、複合大型化すれば、中古本が買い易くなるそうである。顧客にしてみれば、1ケ所ですべての不用品が売れて、欲しい物が買える場所となり、複合ビジネスはワンストップビジネスとなる。坂本代表は、この複合大型業態を“中古劇場”と呼んでいると説明された。
 坂本代表によれば、売りの商圏は狭く、買いの商圏は広いのが一般的であり、両商圏がピッタリ合う場合は間違いなく繁盛店となるそうである。

3.他業態へのフランチャイズ加盟の目的

 複合業態化を図るためにTSUTAYA、HARD OFFに加盟して既に多店舗展開を図っていることは述べたが、ブックオフはそれ以外に多数のフランチャイズ本部とフランチャイズ契約を結び、フランチャイジーとしての一面も併せ持っている。
 例えば、外食の三代目茂蔵(篠崎屋)1店舗、だがし夢や(駄菓子屋)2店舗、たんすや(古着)1店舗等である。
 他業態へのフランチャイズ加盟はBOOK OFFの店長のキャリアプランの1過程であり、ジョブローテーションを行うことにより、本人のためにも、BOOK OFFのためにも活性化につながると評価しているそうである。フランチャイズ本部としては珍しい試みである。

4.加盟店指導の方法

 ブックオフはかねてスーパーバイザーを持たないフランチャイズ本部として名高い。
 勿論、ブックオフも当初はスーパーバイザー(以下SV)を養成して、店舗の巡回指導を行ったが、あまり効果がなかったという。小売業のように完成した商品を陳列して、クレンリネスとフレンドリーな接客で販売するのと比較して、BOOK OFFは店舗で自ら仕入れて、値付けして、商品を手入れして販売するビジネスであり、工程が3工程も4工程も多いビジネスである。この場合「人をやる気にさせる」ことが一番重要であり、通常のSVの巡回指導では到底目的が達せられないことに気づいた。会社設立の91年はバブル崩壊の年であり、当時の加盟店希望者は大型店舗を構えた電器屋、紳士服、玩具店のチェーン店が多く流れ込んできた業態であった。バブル直後の大型店はP/Aを使用していたが、P/Aを信用して使いこなす状態ではなかった。

 店頭に並べる商品が規格化されているならば、SVによる巡回指導で済んだと思う。コンビニは本部のやるべき業務と加盟店が行う業務が整然と分かれている。ブックオフはそこが違う。
 そこで、全国8つの支店にモデル直営店を置いて、マネージャー1名の下に5名のインストラクターを配置して、研修の仕組みを再構築した。坂本代表は「直営店と加盟店の生産性の差異がロイヤルティの源泉である」と断言された。
前年対比の数値は加盟店も最近100%に近い数字になっているが、直営店は37ケ月連続して前年を越えている。(詳細は既に述べた)
 06年5月の加盟店の平均売上高は658万円、直営店の平均売上高は1051万円、関連会社の店舗の平均売上高は856万円であり、全店の合計の平均売上高は771万円である。
 「直営店と加盟店の差異がロイヤルティの源泉であり、万一差が無くなれば、ロイヤルティは廃止して1%の懇親会費にする」と加盟店に公言しているそうであり、常にそうでなければならないと自戒しているそうである。

 加盟店に不振店が出た場合は、直営店の店長に赤紙(召集令状)を出して、13ケ月(7ケ月+6ケ月)を掛けて、基準損益を0にするよう命じて、利益店舗になれば、その利益を加盟店と折半する経営委託方式に切り替えるそうである。派遣された店長は、派遣先のP/Aの四面楚歌の中で再建に励み、成果が上がれば、社員に磨きが掛かり、FC支援の柱としているそうである。
 加盟店からも「直営店長にまた来てもらいたい」という要望が出ている。これが社員の訓練の場になっていると語られた。
 直営店が前年をクリアーすることがFCの成立要件であると考えている。坪当たり売上高、利益、賃料いずれも直営店が加盟店よりも高い状態でなければならない。
 BOOK OFF業態は賃料*面積との戦いであり、人口の多い場所で(賃料の高い場所)成立しなければ一人前のビジネスではないと考えている。賃料の高い場所が本部の直営店のエリアであり、東京都心部、大阪都心部等に直営店を出店していく方針である。銀座、赤坂等一流といわれる立地に出店できなければ、一流のビジネスとは呼べない。
 中古自動車の流れを追ってみると、新車の品川ナンバーが、中古車として春日部ナンバーになり、鹿児島ナンバーになり、やがて海外へ輸出される。
 文化財(中古本)は、人の集まる場所に集まるものであり、一流の場所(古本ならば神保町)へ出店しなければ、良い中古本は集まらない。

5.ビジネスモデルの再確認

 BOOK OFFのビジネスモデルは簡単である。仕入れは原則として店舗仕入れであり、買値は定価の10%を基本とする。最近、中古本への転換が早いが(例えば発売1週間後にBOOK OFFの店頭に並ぶことが間々ある)、原則通りの運用だそうである。仕入れた本は定価の半額で値付けして販売する。3ケ月経っても売れない場合は、一律100円で販売する。また同じ本が5冊たまったら、これも需要が少ないと判断して100円に値下げして販売する。
 現実の価格は、40円で買い取って、200円で売っており、粗利8割の世界である。
 新本屋は返品自在であり、価格に無頓着であり、委託品の感覚であるため売れないのが実情である。粗利は22~23%であり、再販制度に守られているが、再販制度が未来永久に続くものではないと思う。
 再販制度の見直しが進めば、活字文化を守るのはBOOK OFFであると自負している。

6.加盟店政策とメガフランチャイジーの将来像

 現在ブックオフの加盟店オーナーは110社であり、加盟店舗数は568店であるため、1オーナー当たりの店舗数は5.16店である。1店舗のみのオーナーは4社であり、106社が複数出店をしている。
 20店舗以上のオーナー社は10社、最大のオーナーはブックレット(オンワードの連結子会社)の34店舗であり、今後更に出店の意向である。
 坂本代表は、この事業は3店舗やらなければ事業としての妙味がないと考えている。店長への登用、在庫本のやり繰り、マネージャー職の新設による社長の業務の軽減等を考慮すると、経営としての旨みが出るのは3店舗以上の展開である。年商2億円程度の規模にならないと、事業として認められないであろう。しかし、加盟店の店舗増加の道筋を見ていると、2店舗目が一番難しい。それを超えると、そこから先の店舗数の増加は早いそうである。
 創業が1990年であること、加盟店政策として3店舗以上の加盟店展開を事業展開の妙味と考え推奨している点、97%のオーナーが複数出店している点等を総合的に勘案すれば、ブックオフは間違いなく、第二世代メガフランチャイジーを支えるフランチャイズ本部である。
 メガフランチャイジーへの感想を聞いてみた。(なお、坂本代表は平成15年に設置された「サービス・フランチャイズ研究会」の委員でもある)

 「今冶デパートがBOOK OFFの加盟店でもある。現在は“ありがとうグループ”と改称している。この“ありがとうグループ”が株式公開すればメガフランチャイジーは一段と有名になるだろう。事業の規模拡大の手段としてメガフランチャイジーの道を取るのが一番早いと思う。本部を作って全国展開を図るよりも、遥かに早く目的が達成できる。メガフランチャイジーがフランチャイズビジネスの主流になって欲しいと考えている」というエールを送られた。

7.新しい会長と社長の担当について

 冒頭で述べた通り、6月24日の株主総会で坂本氏は代表取締役会長に、橋本真由美氏は代表取締役社長に就任されることになった。
 両者の業務分担について伺ったら、次のように話された。
 「新社長は、連結売上高の82%を占めるBOOK OFF事業に特化してもらう。現在、BOOK OFFは採点すれば直営店で60点と診ている。これを80点に引き上げてもらいたい。また店舗数も1500店舗に引き上げてもらいたい。現場に特化した能力の持ち主であるので、その優れた面を発揮してもらいた」
 「新会長はBOOK OFF以外の事業すべてと、未来戦略を担当する。海外事業は、現在8店舗に過ぎないが、日本語の本は日本で仕入れて送るが、現地で仕入れて、現地で売る体制を構築する。それぞれの国の優良法人とジョイントベンチャーを組む。国際的フランチャイズとなる。会長は海外事業を直轄して、BOOK OFFを世界ブランドに育成する」と抱負を語られた。
 ブックオフの取締役は増田宗明氏(C.C.C.代表取締役)鈴木孝之氏(元メリルリンチ日本証券(株)シニアアナリスト)であり、執行役員はプロパー社員が担当している。コーポレートガバナンスにも十分目配りした役員構成であり、日本のフランチャイズ本部の先進的事例でもある。
 ブックオフコーポレーションの将来に注目したい。

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