フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

「ハーバードのフランチャイズ組織論」を紹介する

 この度、ジェフリー.L.ブラダック氏の「ハーバードのフランチャイズ組織論」が河野昭三教授(東北大学大学院)の監訳によって、文真堂(価格2940円)より出版された。全文8章からなる大著であるので、その一部を紹介してみたい。

 本書はチェーン組織のマネジメントについて研究したものであるが、大規模レストラン・チェーン組織を検討対象にしている。著者によれば、殆どの大規模チェーン組織は直営店及びフランチャイズ店の双方を抱え込んでいる。更に、チェーン組織の両端である本部経営幹部とフランチャイジーとが、相互に様々な方法で影響しあっていることが観察される。
 著者が本書で述べる主要な考え方は、直営方式とフランチャイズ方式という2つの異なった方式の複合形態を通じて、2つの方式がそれぞれ強化されて、組織全体が部分の総和以上になるような一連のプロセスが生み出されるという主張である。
 この調査研究はハーバード大学ビジネス・スクールからの資金援助によって完成しえたものであり、著作名にあえて「ハーバードの」と記した次第である。本書の原著は1997年8月であり、出版されてから10年近い歳月を経ていることを念頭においていただきたい。
また、本書の紹介をするにあたり、簡潔に紹介するために、訳文をそのまま借用した事例が多数に上ることをご了承願いたい。

第1章 序 論

 1996年、全米小売業売上高の40%がフランチャイズを展開しているチェーン組織(以下組織は省略する)によって占められた。(但し、「製品商標型フランチャイズ」が含まれていることに注意が必要である)
 本書は、レストラン産業のファーストフードというセグメントに属する5つのチェーンを研究することによって、チェーンの課題と、それら課題に対応するための実践的方法について検討するものである。
 直営店とフランチャイズ店という全く異なるタイプの店舗が存在している。直営店の管理者は、伝統的なマネジメント観念に従い、上司は権限を行使し、その指示に服従させる。フランチャイジーたちは自らを独立した事業者と考え、チェーン組織との関係はビジネスパートナーと考えている。KFCの直営店従業員の職務記述書には、会社従業員を管理する(manages)一方で、フランチャイジーと協働する(works with)ことが示されている。この業界では「会社従業員には命令できるが、フランチャイジーには説得しなければならない」という格言がある。
 あるCEOは、複合的形態の持つ利点を次のように説明した。「チェーン[直営店]は全社的視点を、他方フランチャイジーは部分的視点を与えてくれます。われわれの仕事は常に両視点の均衡を図ることにあるが、直営店とフランチャイズ店の双方を持つことによって、それが可能となります」と。

 本書の目的は次の2つからなる。第1はレストラン・チェーンがどのように組織化され管理されているかに関するモデルを提供することである。本書の提示するモデルは、チェーンが4つの主要な経営課題、すなわち①新店舗の増設、②店舗間での統一性の維持、③必要に応じた現地適合、および④脅威や機会が生じた場合のシステム全体の適応、にどのように対処しているかを示すものである。
 第2の目的は、複合形態という新しい組織範疇を説明するものである。複合形態の持つ多様性は、経営者が統制の行使と革新の促進をバランスよく行おうとする際に必須なのである。複合形態は、自己補正と自己再生を支援するための背景を提供するのである。
 チェーンは、現代の支配的な組織形態の1つとなっている。チェーンの運営上、最も重要な側面をなすものはフランチャイジングである。
 フランチャイジングは、1996年、米国経済に8000億ドルの貢献をし、800万人以上を雇用し、全米小売業の40%を超えたのである。(FRANCHISE GUIDE1996)。IFA(国際フランチャイズ協会)の調査によれば、フランチャイズ店は直営店のほぼ2倍の成長率を続けていると記されている。

 米国で最も著名なチエーンはマクドナルド社である。マック社は、最近、米国青年を最も多くー10代の人々を毎年70万人―訓練する機関として、米陸軍に取って代わった。同社は世界中に2万ものレストラン店のうち、およそ15%を直接管理し、残りの85%は4500のフランチャイジーと系列会社によって運営されている。(日本マクドナルド社は系列会社になる)多くのフランチャイジーは、本部の戦略とプログラムについて、本部経営幹部に対し助言を行う諮問会議(advisory boards)に属し、このコラボレーションを通じて、しばしば革新的な新製品が生み出された。ビッグマック、フィレ・オ・フィッシュ、エッグ・マフイン等は、すべてマクドナルド社のフランチャイジーたちがもともと考案したものである。
 1995年米国において最も多くの店舗数をもつレストラン・チェーン100社のうち、13社は直営店のみ、8社はフランチャイズ店のみから、79社は複合形態であった。チェーンン・レストラン産業で優位を占める最大規模のチェーンにおいて、複合形態が普及している。これに加え、複合形態は長期にわたり安定的であることが言える。
 複合形態の基礎的な定義は、次のようになる。すなわち、類似の業務を遂行するために採られる、2つの異なった構造―ここでは、直営方式とフランチャイズ方式―が同時的に運用されている形態のことである。
 レストラン産業における複合形態の最も強力な特徴は、統一性とシステム全体の適応、すなわち統制と革新をもたらす能力にある。2つの方式を同時に扱うことは、階層化された会社構造の硬直的傾向を克服することに役立ち、また、緩やかな分権的構造を有するフランチャイズ方式が組織の金太郎飴方式を克服するのに役立ったのである。

 本書は、5つのチェーン・レストランの調査研究の結果を報告するものであり、この計画の意図は、もともとチェーンがなぜ直営店もしくはフランチャイズ店を抱えるのかを究明することにあった。
 本書での調査研究の対象は5つの主要なレストラン・チェーン―KFC社、PIZZA HUT社、HARDEE′S社、JACK in the BOX社、及びFISHERMEN′S LANDING社(仮称)―である。

表1-1  研究対象チェーン組織の概要(1989年)

会社名 取り扱い商品 店舗総数 直営店 フランチャイズ店 売上高 
(百万ドル)
KFC社 チキン、サンドイツチ 4,899店 1, 262店
(26%)
2, 637店
(74%)
2,900
ピザハット社 ピザ、パスタ 5,707店 2,770店
(48%)
2,937店
(52%)
2,800
ハーディーズ社 ハンバーガー 3,075店 1,018店
(33%)
2,058店
(67%)
2,725
ジャックインザボックス社 ハンバーガー
朝食
957店 637店
(65%)
320店
(35%)
775
フィッシーマンズ・ランディング フィッシュ&チップス 800店 440店
(55%)
360店
(45%)
310

 本書はレストラン・チェーンが直面する4つの主要な経営課題をめぐって構成されている。すなわち、店舗の増設、統一性、現地適合、およびシステム全体の適応の4つである。

第2章 レストラン・チェーンの直面する経営課題

 ピザハット社のCEOのステイーブン レイモンド氏は「わが社のことを本質的に言えば、世界中に広がった6千もの同一的工場を経営しているということです」と語った。この簡潔な会社紹介は、チェーンがいかに伝統的組織とは異なったものであるかを強調するものである。
 組織それ自体を大量に増殖することー地理的に分散した店舗に共通する運営方法のクローン化をチェーンが実際に行っていることーについては、これまであまり注目されなかった。チェーンの独自の特徴から、4つの経営課題が生じている。すなわち、店舗の増設、店舗間の統一性、現地適合、システム全体の適応が、それである。
 成功しているどのチェーン組織も、必ず4つの経営課題を一定程度に達成しているのである。
 4つの経営課題は、レストラン・チェーン組織の3つの基礎的な特徴からもたらされたものである。すなわち、①レストラン間で共有される同一性②製品・サービス・物的生産設備の現地生産、および③地理的に分散した小規模店舗の利用が、それである。
 まず、同一性の共有について考える。共有された同一性は、チェーン組織の視覚的マークであり、商標、店舗外観、シンボルマーク等である。店舗間で同一性を共有する価値は、同一性が顧客に送るメッセージや同一性が顧客の中に創り出す期待感から生じ、まるで商品のブランド化のようである。
 店舗によって共有された同一性は、共通の視覚的同一性によって表示される画一的な製品とサービスの提供を、チェーン本部が保証する仕方であるがために、「ビジネスの遂行方法」を含むのである。チェーンの店舗間で共有されている同一性には、視覚的な商標だけではなく、店舗の設計、メニュー、製造プロセス、およびサービスが含まれている。

 レストラン・チェーンが共有の同一性を構築し強化していくための1つの重要な方法は広告宣伝にある。テレビによる宣伝広告に伴う規模の経済性は、大規模チェーンに競争優位の重要な源泉であり、またレストラン事業が大規模チェーンへますます集中していくことを一部説明している。
 チェーン・レストラン産業にあっては、製品・サービス・調理設備の大部分が現場レベルで生産・保持されている。共有された同一性によって大量生産の様式が生み出されている一方、自社のチェーンが数千もの同一工場から成り立っていると言うスティーブン レイマン氏の主張は、チェーンに対する現地対応の重要性を示すものである。
 レストラン・チェーンでは製品の大部分は各店舗で作られており、自動車、セーター、アイスクリームのような中央で生産された品目を販売する流通チェーンとは異なる。チェーン・レストラン店のビジネス・フォーマットを構成するサービスもまた、現地生産である。
 物的設備―店舗の立地と建設―は現地で「生み出される」。中央の本部が最終的な決定権をもつことがあるにせよ、レストランの設定場所を選んだり、そのための現地交渉は現地で行われる。
 チェーンは、少数の大規模店よりもむしろ地理的に分散した小規模店を多数設立し運営することによって、顧客のニーズを充足している。
 チェーンは、ビジネス・フォーマットをそのまま複製するというクローン化原理にもとづいて構築されたのである。この基本的な組織化原理―当該産業の3つの特徴の所産―から、チェーン運営者の直面する4つの経営課題が導かれる。
 チェーン・レストランにおける4つの経営課題に言及する。
 既存店舗の売上高を増大させることは極めて難しい仕事である。チェーンはビジネスの成長を考えて、新規店舗の増加という手段を用いることになる。
各チェーンにおいては、店舗数の成長率は、既存店舗のもたらす売上高の成長をはるかに超えている。

表2-1 売上高及び店舗数の年間平均成長率(83年~88)

チェーン組織名 店舗の実質売上高成長率 店舗の増加率
KFC社 -1.4% 1.8%
ピザ・ハット社 0.7% 7.3%
ハーディーズ社 0.1% 9.9%
ジャック・インザ・ボックス社 1.1% 4.1%

ビジネス・フォーマット自体が製品となり、各新規店舗の開店に伴って本質的な意味で「販売されている(sold)」ということが示される。実際、フランチャイジーがチェーンに加盟する際に購入するものは、紛れもなくビジネス・フォーマットという製品にほかならないのである。(日本でフランチャイズと言えばビジネス・フォーマットに限定される。)
 店舗の増設による成長は、重要ではあるが、今日における成功は既存店舗の経営に関連する諸課題―店舗の統一性、現地適合、システム全体の適応―の充足にますます大きく依存していることの方が更に重要である。
 ビジネス・フォーマット型フランチャイズでは、統一性は店舗運営の殆どすべての面に浸透している。この経営課題が重要になるのは、ビジネス・フォーマットの重要な要素として多様な現地遂行の諸活動が必要とされているからである。
 店舗の地理的分散と結びついた製品・サービス・調理場の現地生産は、統一性の維持を、チェーン管理者の不断の経営課題としている。統一性を維持するために、分厚い運営マニュアルが用いられる。
 個々のレストランは様々な現地市場において運営されるので、現地適合はいかなる店舗でも、その管理上決定的な要因となる。
 現地適合は2つのカテゴリーに分類できる。第1は「戦術的な現地適合」であり、ビジネスの多様な政策と実践を市場に適合させることである。その政策と実践は、例えば、現地での農産物や乳製品のサプライヤーの選択、価格の設定、および従業員の採用は、現地市場に適合しているが、統一的なフォーマットを変更するものではない。第2は「戦略的現地適合」であり、現地の事情から生じる必要性に対して一層の適合を図るべく、統一的なビジネス・フォーマットに変更を加えるものである。例えば、ハーディーズ社のレストラン店は、現地の豚肉供給者の求めに応じて、アイオワ州ではポーク・サンドイッチを提供した。

 システム全体の適応は、チエーンの同一性を変化させ、新しい統一性の標準を確立することである。チェーンにおける新メニューの導入は、最も顕著なシステム全体の適応である。
 チェーンの同一性にとってビジネス・フォーマットのすべてが重要であるが、大部分のチェーンにとっては、同一性の中核的な要素はメニューである。メニュー品目の改定は、直ちにチェーンの売上高と収入と利益に直接影響をもたらす。チェーンにメニュー変更を行わせるもう一つの重要な要因は、米国の一般大衆が健康と栄養に関心を増大させていることである。チェーンの幹部達は、システム全体の適応はすべての経営課題のうちで最も複雑で困難である。
 1980年代、チェーン・レストラン産業におけるダイナミックスは、新規店舗の増加から既存店舗の管理へと、その強調点を変更させた。
 1980年代後半を通して、チェーンは主に店舗の増加によってその成長率を維持した。しかし、80年代を過ぎると、この成長源泉は乏しくなった。
1985年には100の大規模チェーン・レストランにおいて、店舗の増加率は8.3%で、売上高の実質成長率は6%であった。1990年までに、店舗の増加率は4%へ下がり、売上高の実質成長率は1.5%まで落ち込んだ。店舗の増加は既存店舗の業績を弱めてしまうという問題をはらんでいた。
 店舗の増加は1980年代の終わりまで重要であったのに対して、同時代を通じてチェーンの成功には、統一性、現地適合、およびシステム全体の適応を遂行することに、一層大きく依存するようになった。既存店舗の効果的な管理が、新店舗の増設を凌ぐことはなかったにしても、それと同じ程度に、チェーンの成功にとってまさに重要なものとなったのである。

第3章 チェーンの構成要素:直営方式とフランチャイズ方式

 著者が調査・研究したチェーン組織のうちの4つでは、直営店とフランチャイズ店を管理する責任部署は別々にあった。直営方式とフランチャイズ方式には互換性はなく、それぞれ異なった管理手法が必要とされたのである。フランチャイズ部門と直営部門に配属されたチェーン本部所属の現場担当者の肩書きを見ると、それぞれ「フランチャイズ・コンサルタント」と「エリアマネージャー」となっており、これはまさしく直営方式とフランチャイズ方式において対照的な管理戦略が用いられていることを示している。すなわち、エリアマネージャーは会社従業員を「管理(managed)」し、フランチャイズ・コンサルタントはフランチャイジーと「協働(worked with)」していたのである。
 多くのフランチャイジーは複数店舗を所有しており、ここではそれを多店舗フランチャイジー(multi―unit franchisees)と呼ぶことにする。多店舗フランチャイジーは、通常、直営店方式の多くの特徴を真似したような内部構造を持っている。また、横断的なキャリア・パスの存在によって、人々は直営方式からフランチャイズ方式へ、あるいは逆の方向へ、しばしば移動している。

図3-1 直営方式とフランチャイズ方式の特徴

特 徴 直営方式 フランチャイズ方式
契約関係 従業員:受容圏 パートナー:公式契約
チェーン組織本部の経済的利害 利益 加盟料:ロイヤルティ
店舗運営の報酬と指向性 給料:内部システム 純所得:外部市場
チェーン組織本部の影響力源泉 権限 説得
情報の構造 業務の透明性:“豊かでない” 業務の不透明性:“豊か”
構造のタイプ 階層別・安定構造:人員の移動性 連邦制:流動的構造:人員の安定性

多店舗フランチャイジー:連邦制のなかの階層性
横断的キャリアパス:フランチャイジーの“育成”

 「従業員(employee)」と「フランチャイジー(franchisee)」という名称は、チェーン本部と店舗従業員との関係を示している。これら2つの関係は通例、従業員との雇用関係およびフランチャイジーとのパートナー契約という、2つの異なった契約として特徴づけられる。雇用契約の本質は「受容圏」-上司の下した決定を部下が進んで受け入れる範囲―という概念で捉えられる。これとは対照的にチェーン本部とフランチャイジーとの関係は、ビジネス所有者間のパートナーシップであった。47店舗を所有するフランチャイジーは次のように述べている。「チェーン本部はマーケティング活動の大部分を行い、彼らはその分野の専門家なのです。また立地の選定プロセスにおいても、私たちが見逃してしまう事柄を指摘してくれます。彼らは様々な質問を投げかけてきます。恐らく私たち「フランチャイジー」の多くは彼らよりも自分たちの方が良く知っていると考えるかもしれませんが、それでも確かに彼らはわれわれを助けてくれるのです。私は独立時業者でありますが、同時に会社とのパートナーでもあるのです」

 経営者がフランチャイズ関係を表現する場合、最も頻繁に使われるメタファーとして、人間同士のパートナーシップのうちで最も親密かつ複雑なものー結婚―が引き合いに出される。あるフランチャイジング担当責任者は、次のように表現した。「チェーンに加盟することは大きな決断なのです。人生の全てーまたは少なくともかなりの長期間―を賭けることになりますから、協働という共存関係に入ることを本当に認識する必要があります。私はその関係を成功した結婚と同じだと考えています。意思疎通が鍵となります。それゆえ、わが社ではフランチャイジーの主張に耳を傾けます」と。

 直営方式におけるマネージャーの報酬は、主に固定給と高い地位への昇進が基礎になっている。対照的に、フランチャイジーの報酬は、店舗の生み出す所得にあった。フランチャイジーにとって主要な経済的関心事は既存店の所得にあった。一般的に言えば、会社従業員の関心は内部システムに向けられ、他方フランチャイジーの関心は外部市場に向けられていた。

 フランチャイズ方式の経済的得失が理由で、フランチャイジーは外部に関心を示し、彼らの直面する現地市場の状況に鋭敏となっていた。業務基準を維持することも重要ではあったが、フランチャイジーの直面する主要課題は、現地市場で効果的な競争を通じて実際の利益を生み出していくことであった。

 チェーン本部は地域店運営者への影響力行使にあたって、直営方式では権限を、フランチャイズ方式では説得を用いていた。これは影響力の源泉と一致している。直営店マネージャーは上からの命令に服従し、フランチャイジーは命令の取捨選択を行っていた。

 チェーン本部は、フランチャイジーを説得して会社の行動方針を受け入れさせるために、情報の共有、経済合理性の明示、店舗増加の統制といった手段を用いていた。KFC社のフランチャイズ・コンサルタントの1人は、次のように表現している。「業務基準に従わないフランチャイジーを管理する最も重要な手法は、彼らを成長させないことです」と。

 直営方式は現地店舗の服従を基礎に構築されていたが、他方フランチャイズ方式は現地店舗の選択、究極的には現地店舗の同意に依存していた。

 チェーンは、フランチャイズ店の業績に関しては殆ど情報を受け取っていなかったのである。直営方式ではMIS(経営情報システム)が情報構造の基礎になっていた。チェーン本部の経済的利得(ロイヤルティ)はフランチャイジーの売上高に起因するため、利得がフランチャイジーの利益額に起因する場合と比べ、店舗運営の良し悪しによって影響されることは少なく、それゆえ、チェーン本部による監視の必要性が少ないのである。フランチャイジーの業務は、チェーン本部にとっては不透明である、という結果になる。

 直営方式におけるMISは、伝統的な様式で簡単に要約・伝達可能な「一般情報」を大量に生み出していた。他方、フランチャイズ方式は、フランチャイジーが直面する現地市場の特殊事情を伝達し、その伝達にもコストの掛かる「特殊情報」を生み出していた。チェーン組織では、しばしばシステムの要求と多様な現地市場の要求とを均衡させる必要があったが、まさに直営方式およびフランチャイズ方式から得られる異なった類型の情報がその均衡達成を助けていたのである。これら2つの情報構造は互いに補完的な関係にあり、この補完性こそが複合形態の主要な利点の1つとなっている。

 組織構造の類型は、概要的に言えば、直営店に対しては階層的構造が用いられ、フランチャイジーに対しては連邦的(federal)構造が用いられた。

 直営方式と比べて、フランチャイズ方式では管理スパンが広くなるのは、多店舗所有のフランチャイジーたちが、直営方式と同じ管理構造を採用している結果であった。大部分のフランチャイジーたちは、自身の誘因と自身の管理構造をもとにして、自分自身を監視・管理しているために、チェーン本部による統制の必要性が少なくて済むのである。

 全てのチェーンにおいて、毎年ないし半年ごとにフランチャイズ大会が開催され、チェーン組織の最高経営者たちと全フランチャイジーが一堂に会し、ビジネス上の重要問題に関し討議がなされていた。3つの大手チェーン組織では、同様の会議が、現地レベルでかなり頻繁にもたれていた。これら会議での議題は通例、チェーン組織本部とフランチャイジーとの共同で設定されたり、あるいは双方が交替して会議を主催し運営をしていた。4つのチェーン本部では、選出されたフランチャイジーの代表者からなる「フランチャイズ連合会」もしくは「フランチャイズ諮問委員会」が設けられ、チェーンの最高幹部たちと定期的な話し合いが持たれていた。

 直営とフランチャイズ方式の両方式が相互に影響を及ぼしあう2つの主要な経路が存在した。即ち、直営方式にみられる管理構造を複製する多店舗フランチャイジーによって、また各方式に横断的に形成されるキャリア・パスを通じてである。

 多店舗フランチャイジーは、圧倒的多数のフランチャイズ店を代表していた。意味深いことは、多店舗フランチャイジーが自分の組織で、直営方式の利用している構造・システム・プロセスを自己複製していたことである。換言すれば、フランチャイジーは、自らの小規模チェーンを管理するために階層性を用いたのである。フランチャイズ方式における構造はフランチャイジーの連邦制であったが、ここでのフランチャイズ店は通例、階層性構造によって統治されていた。表3-2は、各チェーン組織におけるフランチャイズ店の構成状況を示している。


表3-2  フランチャイズ方式に関する数値データ

会社名 フランチャイズ店舗数 フランチャイジー数 フランチャイジー所有の平均店舗数 最大フランチャイジーの店舗数 全店舗の半分を何%のフランチャイジーで所有するか 全店舗の半分を何人のフランチャイジーで所有するか 1店舗のみを所有するフランチャイジーの数
KFC社 3592 778 4.6 270 11 17 350
ピザ・ハット社 2984 149 20.0 339 29 18
ハーディーズ社 2058 250 8.2 432 88
ジャック・インザ・ボックス社 320 120 2.7 30 16 19 51
フィッシャマンズ・ランディング社 360 15 22.5 100 19

KFC社では、単一店舗フランチャイジーは一般的ではなく、例外的な存在であった。単一店舗フランチャイジーは暫定的であって、その多くは後に多店舗運営者へと発展していった。

 フランチャイズ組織本部にとって「協働する」人数が少ないことの有利性は、すべての経営諸課題に対し説得による影響力行使が最重要となるシステム全体の適応において顕著であった。大規模フランチャイジーはチェーン組織本部にそれほど依存しておらず、場合によってはビジネス基盤を自分自身で堅固に構築していた。多店舗フランチャイジーが大規模化するにつれて、効率性の利点は消失していくのである。とは言え、多店舗フランチャイジーを利用するチェーン本部には、効率性の低下という欠点を補って余りある様々な利点がもたらされている。すなわち、組織成長の急速化と低費用化、統一性の高レベル化、および、管理すべき関係の減少といった利点がそれである。

 会社従業員は、階層的構造の会社組織の中を移動するのに対し、フランチャイジーは新規店舗を追加して小規模な階層組織を形成していく。この2つの異なるキャリア・パスの他に、2つの方式を横断する、他の3つのキャリア・パスが存在している。それは①会社従業員がフランチャイジーになること、②会社マネージャーがフランチャイズ・コンサルタントになること、③会社マネージャーがフランチャイジー組織の管理者になることの3つであり、横断的キャリア・パスとも呼ぶべきものである。

 複合組織における両方式を横断する多店舗フランチャイジーとキャリア・パスは、互いに他の機能に影響を及ぼすダイナミックスを形成している。

以下  第4章 店舗の増設、 第5章統一性  第6章 現地適合 
第7章 システム全体の適応      第8章 結論
において、複合組織が単一組織よりも如何に優れているかを、様々な事例を用いて詳説している。
 アメリカのレストラン産業におけるフランチャイズの実態、なかんずく多店舗フランチャイジーの実態に関する様々な調査は貴重な資料である。
 複雑な本書を翻訳された諸先生に厚くお礼申し上げる。


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