フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

オートバックスセブン住野代表(CEO)に聞く

 カー用品市場のガリバーであるオートバックスセブンは、加盟社の規模も大きく、メガフランチャイジーを多数排出している。
 8月28日、オートバックスセブンの住野代表取締役(CEO)と江東区豊洲の本社で、同社の現状や中期経営計画について伺った。実は、先に中小企業診断士・フランチャイズ研究会の有志により「成長するメガフランチャイジー」を同友館より出版した。(杉本収、伊藤恭編著、その他10名程度の中小企業診断士が調査・研究・執筆に当たっている)筆者も一部著述した部分があり、特にメガフランチャイジーを第一世代、第二世代に区分して、その中心となるフランチャイズ本部のフランチャイジー戦略を昔の図書や雑誌から引用して「複数出店を積極的に促す意向があった」とする仮設を発表した。発表後、この仮説を各社の創業者や社長、広報室長等に確認作業をしておけば、この仮説は第一級の資料となることに気づき、社名を挙げたフランチャイズ本部の取材を始めた。第一号がBOOK OFFの坂本代表であり、今回は第二号の取材となった。(弊社ホームページのFC市場レポート「成功するメガフランチャイジーを紹介する」を参照)
 従って、この対談は有力フランチャイズ本部の経営戦略と併せて、前記の仮説検証を目的とするものである。
 なお、住野代表取締役は後述するようにコーポレートガバナンスについて一家言があり、社長の名称は用いず、CEOで統一されているので、本稿では住野代表とさせていただく。

Ⅰ 経営の現状と加盟店の状況

1.オートバックスセブンの経営とカー用品市場の縮小

 当社を取り巻く経営環境は、かなり厳しい状況にある。

連結売上高及び営業利益の動向 (アニュアルレポートより) 単位:百万円

  2003年 2004年 2005年 2006年
売上高 230,479 227,078 226,780 240,207
営業利益 7,652 6,211 7,368 13,637
当期純利益 4,003 5,444 2,928 7,860

 04年、05年は連結売上高が低下し、当期純利益に至っては大幅な低下を示したが、06年の売上高は前年比5.9%、営業利益前年比85.1%、純利益168.4%増と大幅な増加に転じ、増収増益基調が明らかになった。
 住野代表によれば、1996年以降カー用品市場は縮小傾向にある。その原因は、次の通りである。

(1)若年層の車離れ
(2)カーオーディオ、アルミホイールの標準装備が進んだ(96年から99年)
(3)カーナビの標準装備が進んだ(2000年以降)
(4)カーディーラーがアフターマーケットに参入してきた
 その結果、2000年対比で、カー用品市場は10~15%程度縮小したそうである。

2.06年度3月期の店舗数

  直営店 FC店 子会社 海外店舗 合計
オートバックス 317 82 - 403
SオートバックスⅠ -
SオートバックスⅡ 43 15 - 59
セコハン市場 10 14 - 28
オートバックスEX - -
オートハローズ - - 11
海外店舗 - - - 19 19
合計 16 384 113 19 532

3.加盟社の数と平均店舗数

 加盟社は112社であり、平均4.4店舗である。1店舗の投資額(オートバックス)は1.5億円~2億円であり、売上高も1店舗当たり4~5億円である。

Ⅱ 店舗形態の多様性

 創業者の住野敏郎氏(故人)はオートバックスセブンの1業態で400店舗以上の多店舗展開をされたが、住野代表に代わってから、カー用品市場の縮小という市場の激変に伴い、多様な各種店舗が展開されるようになった。中期経営計画とも絡むが、事前に多様な店舗を説明しておく。
1. オートバックス
 中心業態であり、地域に蜜着したカー用品(消耗品、普及品中心)のワンストップショピング型店舗
 敷地面積       800坪
 売場面積      150~200坪
2. スーパーオートバックス  タイプⅠ            
 エンターテイメントカーライフメガストアであり、大商圏型のフラッグシップ店舗
 敷地面積      3000坪
 売場面積      500坪以上 
3. スーパーオートバックス  タイプⅡ           
 「最高の商品」と「最高のサービス」を
 「最高の設備」と「最高の技術」で提供し
 トータルカーライフを提案するエリアドミナントの中核店舗
 敷地面積     1700坪以上
 売場面積     300坪以上
4. オートバックス走り屋天国セコハン市場
 グループ店舗で下取りした中古カー用品やメーカーからのアウトレット商品の販売及び買取りの専門店(カーマニア向け商品の提供)
5. オートバックスエクスプレス                
 新しいコンセプトで、セルフガソリンスタンドと洗車を核として一般的カー用品を品揃えしている。小型店舗である。

Ⅲ 中期経営計画の背景

 Ⅰ 経営の現状でも明らかにした通り、競合環境の悪化、カー用品市場の縮小など厳しい事業環境に対応するために2005年5月にオートバックスグループは、2006年3月期から2009年3月期までの中期経営計画を発表した。
 オートバックスグループの主戦場である国内カー用品市場(アフターマーケット)は、アフターマーケットで普及が進んでいるカー用品が市販車の標準装備になってきていること、また全般に商品単価が下落していることにより、縮小傾向にある。同時にカーディーラーやガソリンスタンドなど、異業種との競合が激しくなっており、市場を圧迫する大きな要因となっている。
 これまで通りのカー用品に特化した商売では限界があると判断して、新業態の開発や新規事業への参入などの施策をとって、縮小する市場の中でもシエアーを伸ばして、業界第一位の座を守ってきた。しかし、これが売上高を維持した一方で、一時的な高コスト構造を招く結果となり、また競合環境の変化などにより一部フランチャイズ法人の競争力の低下が、グループ全体の業績にかなりの影響を与えた。(連結売上高及び営業利益の2003年、2004年に注目願いたい)
 これらの状況を打開するために、まず取り組んだのがフランチャイズ法人の統廃合(FC契約の解約、加盟法人の合併等)や子会社化を含む整理で、200年から2005年3月期までにほぼ終了した。
 次のステップとして、「カー用品販売業からトータルカーライフサポート業へ」を掲げて、大型店舗「スーパーオートバックス」の本格的展開や業容の拡大による顧客のニーズの取り組みに注力した。
 中期経営計画の柱として、店舗網の再編成を行う「エリアドミナント戦略」、お客様に対する間口を広げる「トータルカーライフ事業戦略」、重点地域を絞った展開の「海外事業戦略」を三つの成長戦略と位置付けている。
成果については「連結売上高及び営業利益」の2006年に注目願いたい。
(オートバックスセブン アニュアルレポート2005より引用、2006年3月期についてはHPより引用)

Ⅳ 三つの柱(1)「エリアドミナント戦略」

 従来の店舗毎の顧客対応からエリア単位の顧客対応に切り替えることである。
詳しく説明すれば、まず、全国を152のエリアに分割する。エリアとは独立商圏の意味であり、必ずしも人口や面積に比例するものではない。例えば愛知県は2エリア、東京都は6エリアに分割している。
 オートバックスグループにはオレンジ看板の「オートバックス」、規模が大きくより充実した品揃えとサービスを提供する「スーパーオートバックス(タイプⅠ、タイプⅡ)、さらに中古カー用品を販売する「オートバックス走り屋天国セコハン市場」など、複数の業態がある。それぞれ主な対象顧客を異にする業態を組み合わせることによって、様々な客層と個々のお客様の多様なニーズを全てカバーできるような店舗配置を行うのが、エリアドミナント戦略の目的である。
 エリアごとの店舗の最適配置を進めるには、従来の店舗単位からエリア単位に考え方を転換しなければならない。そのためには、オートバックス本部の主導が必須であり、本部の担当部署が最適の配置を求めて積極的な店舗開発活動を行う必要がある。
 確かにお客様は、エリアドミナント戦略に沿った店舗配置が進めば、用途や目的によって業態の異なる店舗を選択できる訳であり、大変使い勝手の良いチェーンになるだろう。
 しかし、問題はオートバックスセブンがフランチャイズ店舗を中心に展開されたチェーンであり、本部と加盟店は本来独立の関係にあり、フランチャイズ契約により対等の地位にある。資本関係の無い法人フランチャイジーの店舗の立地や業態を本部の意向で勝手に変更することはできないことである。
 全部直営店ならば、多くの固定資産処分損を出しながら、配置を行うことは理論的に可能である。しかし、フランチャイズ契約では、本部の意向が100%通る訳ではない。本部は加盟店に対して説得と納得の論理で、このエリアドミナント戦略を進めなければならない。
 店舗の統廃合や、業態転換等は法人フランチャイジーの説得が必要である。
大変な難事を、市場縮小と競合激化の中で敢行しようとするオートバックス本部と住野代表の真価が試される事態である。

Ⅴ 三つの柱(2) 「トータルカーライフ事業戦略」

 カー用品のアフターマーケット市場が縮小傾向を見せる中で、オートバックスグループが勝ち抜いていくためには、事業領域を広げる必要がある。メーカーで言えば新商品、新分野への進出、事業多角化である。
 オートバックスセブンの具体的な事業としては、「カー用品販売」と「車検・整備」および「車販売」である。
 売上を伸ばしている「車検・整備」においては、自店舗で受付~検査~整備までを行うことのできる「指定工場資格」の取得に努め、信頼の技術とカー用品販売で培ってきた知識、ノウハウをフルに活用し、付加価値の高いサービスを提供している。店舗の用途地域の関係で指定工場資格の取得が困難な店舗では、車検・整備の専門施設である「テクノキューブ」を付帯設備として設置して、05年3月期より実験運営を始めている。
 2006年度の車検・整備の売上高は90億円(システムワイドセールス)に達した。車検・整備のマーケットは5兆円であり、やっと0.2%のシエアーである。事業拡大の可能性は高い。
 ここでもオートバックスに対する安心感、修理箇所の明示、相対的に若干安い等の強みがあり、柱事業となる可能性を秘めている。
 車販売については、現在新車2割、中古車8割の比率である。日本の自動車メーカーのディーラー網は世界一と評しても良いほど強固な地盤を有している。
アメリカでは、フランチャイズ制度で新車販売が行われているが、日本では自前の流通経路構築の観点から、メーカーが50年以上に亘りチャネル戦略を固めてきたため、簡単には新車販売は難しかろうと思われる。
 事実、住野代表も「中古車は、メーカーのディーラーとの関係はない」として、オークネットと業務提携をし、中古車の在庫を供有しているそうである。オークネットをカスタマイズして「オートバックスカーズナビ」の名称で262店舗(2006年3月末)に設置している。年間の売上高は1万台以上に及び、この中古車販売も将来性に富んでいる。

Ⅵ 三つの事業の柱(3) 海外事業戦略

 日本は予定よりも2年早く、2005年に人口減少社会に突入した。長期的観点に立てば、日本の産業の発展は海外戦略に依存せざるを得ない時代になる。
オートバックスグループも、将来的な成長を牽引する事業として海外事業を位置づけている。しかし、収益性を重視する観点であるので、他のフランチャイズ・ビジネスに比較すれば、海外事業に対する取り組みが、リーガルリスクを意識するあまり、弱いと思われる感は否めない。
 海外戦略として、アメリカ、フランス、中国、台湾(2社)、タイ、シンガポールの6国(又は地域)に連結子会社を展開している。
 オートバックスの海外戦略の特徴は、現地の本部は、現地企業と原則として組まず、オートバックスセブンの資本と人事で展開している点である。
しかし、現実には現地資本と組んだ方が成功する事例は多い。例えば、日本に進出して成功したアメリカのフランチャイズ・ビジネスを見ると、いずれも日本の企業と組んだところが成功している。
 KFCは三菱商事、ミスタードーナッツはダスキン、マクドナルドは藤田商店、セブンーイレブンはイトーヨーカ堂系、ローソンはダイエー系、サークルKはユニーと組んでいる。
私見ではあるが、およそ流通業、サービス業、飲食業など生活産業は極めてドメスティックな産業であり、いきなり外国から来て成功する筈がない。流通企業の撤退の多さが証明している。世界最強のウオールマート・ストアーズでさえ、西友を傘下にしながら、再生の兆しは見えてない。
 もっとも、住野代表は、海外事業の社長は現地人を当てるべきであるが、しかるべき人材がいないので、現在は止むを得ず日本人社長を当てているところもあるとのことであった。
 オートバックスの海外戦略で、最も成功しているのがフランスである。
フランスは100%出資の子会社であり、現在7店舗を直営で展開しており、近いうちにフランチャイズ展開を開始するそうである。現在ヨーロッパの景気は好調である。フランスで成功した暁には、是非ドイツ、イタリア、イギリス等にも出店してもらいたい。日本のフランチャイズは、ヨーロッパの実績が少ない。高級自動車王国のヨーロッパに橋頭堡が築ければ、日本のフランチャイズの海外戦略の見本となる。
 また、海外企業との提携について住野代表は、「今までお付き合いのあった現地の大企業には当社のビジネスに相応しい人材がいない」として、フランスのルノー社との提携が旨く行かなかった事例を挙げられた。海外の提携先は大企業である必要はない。ダスキンも藤田商店も国際的には中小企業である。ルノーとの提携と言えば、さしずめ日本のトヨタとの提携の感じである。トヨタはオールマイティではない。トヨタ住宅を見れば明らかである。再度、提携戦略を提案したい。
 肝心のアメリカも100%出資の子会社であり、現在1店舗のみである。住野代表は「アメリカは訴訟社会であり、直営でも訴訟の恐れがある。到底フランチャイズ展開する気持ちはない。あくまでも直営得出店のみで行く」とのことであった。アメリカの訴訟社会は万人の認めるところであるが、あのセブンーイレブン・ジャパンさえ、親会社に当たるサウスランド社を買収したことを考えれば、アメリカにおけるフランチャイズ展開を考える時期がくるのではないだろうか?むしろ、日本が訴訟社会になるのが早いのではないだろうか。
中国での出店も中途半端である。店舗数は5店舗であるが、直営でもなければ、フランチャイズ店でもない。「ブランド店」と称して、「商標使用許諾契約」「技術使用ライセンス契約」「商品供給基本契約」の3本の契約で押さえた関係であり、あえて言えば「パッケージライセンス」(弊社のHP「FC市場レポート」参照)に近い契約内容である。
 中国の「フランチャイズ管理法」(弊社のHP「FC市場レポート」参照)では、外国の企業のフランチャイズ展開には、「直営で2店舗、1年以上の経験」を法律で強制している。住野代表は2010年頃には方向がはっきりするとの見解である。
 筆者の意見を述べれば、1店舗高々2億円の投資であるから2店舗4億円の投資をして、本格的にフランチャイズ展開するか、中国は捨てるか、どちらかであろう。メーカーでは数百億円の固定投資をして、中国の将来性を買っている。確かに法治国家として不安な部分はあるが、ここは勝負の時であろう。
 連結子会社として、小売を行っている子会社が台湾(4店)、タイ(2店)、アメリカ(1店)、中国(1店)に1社ずつある。また小売及び卸売りを行う会社がフランス、シンガポールに1社づつある。さらに台湾には卸売子会社が1社ある。中国にも卸売の子会社が1社ある。
海外戦略の要は、ヨーロッパ、アメリカ、中国である。アメリカ、中国については再考の余地があるように感ずる。住野代表によれば、先進国ほどオートバックス事業の展開はやりやすいそうである。日本の新車販売台数は、ここ数年微減傾向であり、今年中に、中国に追い抜かれる。必ずしも、若年層の車離れのみではなく、高齢化の進行(車に乗れない人口の増加)、車が社会的ステイタスであった価値観の転換など、多様な要因が新車販売台数の低下につながっているのではないだろうか。
 なお、オートバックスの国際化の視点は、早い段階から明らかであった。国際フランチャイズ協会(IFA)の加盟も早かったし、株式のロンドン市場への上場など、国際化に対する対応は日本のフランチャイズ企業の中では断然進んでいた。ダスキンもIFAに加盟し理事会社になっており、アメリカではダスキンが日本を代表するフランチャイズ企業として認知されている。それは、同じ国際化でも、アメリカから、あらゆるサービス業を導入して「サービス業日本一」の座を固めるという戦略であり、自社のフランチャイズ・システムを海外に展開する意向は無いように感じる。

Ⅶ コーポレートガバナンスについて

 取締役には2名の社外取締役、監査役には1名の社外監査役が就任してみえる。これらの方々の取締役会への出席率を伺ったところ、月曜日以外に取締役会を開催すれば100%の出席率だそうである。これは驚くべき出席率である。
日経新聞8月25日の記事によれば、社外監査役の出席率が100%であるのは丸紅、NTTデータなど8社である。(東証1部の時価総額100社のうち、社外監査役の取締役会出席率を東証HPで公開している35社の数字)
 住野代表は、日本のフランチャイズ本部の代表としては多分唯一人の経営学博士号の資格をお持ちである。資格のことを言えば、現在の日本フランチャイズチェーン協会の加藤充会長はMBAの有資格者である。従来の協会の会長職に付かれた方でMBAの有資格者はいない。
 学歴や資格の話ではない。それなりの基礎知識や教養の持ち主が、日本のフランチャイズ業界の代表者になる時代になったのである。特に国際会議の開催など、世界第2位のフランチャイズ大国に相応しい対応が求められる。英語が自由に操れないという弱みが、国際会議を日本で開催する機会を作らなかったのではなかろうか。フランチャイズ・ビジネスは知識集約産業である。本来、一番教養・知識・技術が求められる産業であることを確認したい。
 アニュアルレポートを読んでみると、コーポレートガバナンスに関する記述が多いし、充実している。経営学博士の教養であろうか。

Ⅷ 加盟社の多店舗化の推進

 「成功するメガフランチャイジー」の中で、オートバックスセブンが第1世代のメガフランチャイジー(店舗数30店舗以上または20億円以上の売上高)
の中核フランチャイズ本部になっているのが、今回の住野代表との面談をお願いした第一の目的である。
 全国のフランチャイズ法人の数は、既に述べた通り112社である。その内1店舗のみの法人フランチャイジーは18法人であるので、94法人が複数出店である。94法人のフランチャイジーの店舗数(含む持分法適用会社)は496店舗であるので、平均5.27店舗である。
 最大の法人フランチャイジーは(株)オートセブンであり、47店舗の展開である。店舗数5店舗以上の法人フランチャイジーは34法人である。
 また、オートバックス部門の売上高が20億円以上のフランチャイジーは48法人である。正にメガフランチャイジーの宝庫である。
 住野代表によれば、本部としては積極的に多店舗化を推進したそうである。本部は常に2号店、3号店と複数出店を推奨し、フランチャイジー側も自社のテリトリー(契約では定めていない)を防衛するために、積極出店した経緯がある。オートバックスセブンは非常に利益の出るビジネスモデルであったため、2~3年後には新規出店が出来る環境にあった。
 また、住野敏郎社長(故人)はグループ内に「SMI(サクセス・モチベーション・インスティチュート)」を導入し、全国のオーナーにこのテープを聞いてもらうことで、「願望実現」というオートバックスグループの思想の根幹を磐石のものにした点が大きいと言う。
 即ち、複数出店の経済的裏づけは、ビジネスモデルの優れていた結果であり、思想的には、「フランチャイズ精神の基本を「思想共同体」「運命共同体」という言葉で表し、SMIで「願望実現」の思想を、グループの土壌とした」(「オートバックス「願望実現」の経営」より引用)ためである。
 現在、株式公開しているフランチャイジーは、(株)オートセブン(兵庫県)、(株)アイエー(神奈川県)、(株)バッファロー(埼玉県)の3社である。フランチャイジーの株式公開については、住野代表は「賛成できない」との立場である。それは、オートバックスで築いた資金と人材が他の分野に流れた過去の経験からの発言であろう。

Ⅸ オートバックスのスーパーバイザーは何故計数管理に強いか

 筆者は、この10年ほど日本フランチャイズチェーン協会の主催する「スーパーバイザー(以下SV)学校」の講師を務め、協会の資格であるSV士(95年からスタートして、現在有資格者は300名程度に達している)の面接試験も行っている。このSV学校の講師の先生方や、SV士の面接試験を通して、オートバックスの派遣する受講生は、概して“計数管理”に強いことに気づいていた。
 今回、住野代表に面談できる機会が持てたので、企業としてSV(オートバックスではカウンセラーと呼ぶそうである)に対して、計数管理について特別な教育をしているかどうか聞いてみた。
 その結果、次のような教育課程が明らかになった。
(1)過去の研修
 1.決算書勉強会
  損益計算書、貸借対照表の理解
 2. 会社経営をゲーム形式で実施した研修会
  会社経営をゲーム形式で理解するマネジメント研修
(1法人を1SVが担当するのが原則であるため、オーナーと話す場合はマネジメント中心の話題にせざるを得ない。-SV士受験者の面接時の答) 
 3.流通ビジネス基礎講座
  流通に必要な知識を学ぶコース
(2)現在実施している講座
 4. 予算策定勉強会(全員参加)・・・年1回
 5.オートバックス基礎講座(全員参加)・・・年5~6回 
 オートバックスの基本的な知識を学ぶコース
自己啓発で簿記や販売士資格の取得のために勉強しているSVもいる。 
SVは経営会議等で数値を発表することが多いので、計数は切っても切れないものである。
 私見では次のように考えている。
一般的に外食業や小売業、サービス業のSVは店長経験者を昇格させてSVに登用するケースが多い。しかし、SVに昇格させる段階で、SVに対する特別な教育や心構えを指導するケースは少なく、店長時代に得意としたオペレーション重視のSVになり勝ちであり、マネジメントはSV学校で初めて勉強する人が多い。計数管理に費やす時間数は12時間(2日間)であり、12時間で計数管理をマスターすることは事実上不可能であり、企業の中で、自社のP/L,B/S等の勉強をしないと、実務的には計数は使いこなせない。
 このFC市場レポートを読んでいただいたFC本部の幹部の方は是非、自社のSVの計数管理の勉強会を開催していただきたい。現場の実情はかなり、厳しい状況である。

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