フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

フランチャイズチェーン経営品質向上プログラムについて


 「フランチャイズチェーン経営品質向上プログラム」が(社)日本フランチオャイズチェーン協会のホームページに公開された。(トップページの調査/研究の項目からクリックする)  筆者は、本プログラムの作成の当初から関わったので、ここに、このプログラムの策定の経緯を詳述して、研究者のための手引きとしたい。



Ⅰ フランチャイズ品質向上プログラム策定の背景

1.経済誌の本部評価掲載に端を発する

 

 日本では有力な経済雑誌の2001年5月7日号に、「本邦初!フランチャイズ100社格付」が掲載された。その内容が公正で妥当な評価であるならばともかく、経済雑誌とは無関係な第三者が持ち込んだ、かなりいい加減な内容であり、不適切な評価を受けた本部から、不満の声が生じて、(社)日本フランチャイズチェーン協会(以下JFAと略す)としては、適切な本部評価を行う必要が生じた。これが第一の背景である。(ちなみに、その格付け評価を持ち込んだ調査会社の社長は、後日詐欺容疑で逮捕された)

2. サービス・フランチャイズ研究会の提言が背中を押した

 

 経済産業省サービス課長の私的審問機関である「サービス・フランチャイズ研究会」が03年7月に「サービス業フランチャイズの環境整備の在り方について」という提言をまとめて、公表した。 具体的施策の第5項として「フランチャイズ本部に対する客観的な評価の促進」が提言された。以下、簡略にその内容を紹介する。 「サービス業フランチャイズ本部を選定する際の情報としては、本部による情報開示を補完する観点からも、本部に対する継続的かつ中立的な評価等が重要である。また継続的な評価の実施によって、結果的には、本部の能力向上促進、金融機関等における適正な審査、悪意を持ってフランチャイズを詐称する事業者の出現防止の効果も期待される。(中略)客観的評価が難しい面もあり、民間における多様な主体による評価を促進する観点から、必要な環境整備を行うべきである」 この提言も、フランチャイズ品質向上プログラムを促進する要素となった。

Ⅱ 諮問委員の指名と諮問委員会の活動

1. 諮問委員の指名

 

 01年8月31日付けで、次の諮問委員会の名簿が発表された。
 情報開示と本部評価基準に関する諮問委員会  名簿(肩書きは当時)

委員長 学校法人学習院 専務理事   田島義博
副院長 西武文理大学 サービス経済学部 教授 小山周三
委員 (財)流通経済研究所 専務理事 寺沢利雄
委員 日経産業消費研究所 研究主管 長尾邦彦
委員 (株)三菱総合研究所 シニアコンサルタント 田島良房
委員 ゴールドマン・サックス証券 マネージングディレクター 諸江幸紘
委員 リルリンチ日本証券(株) シニアアナリスト 鈴木孝之
委員 監査法人トーマツ 公認会計士 川上 豊
委員 川越法律事務所 弁護士 高橋善樹
委員 (株)フランチャイズ研究所 中小企業診断士 黒川孝雄
委員 オストコンサルティング(株 中小企業診断士 杉本 収
委員 (有)池田経営デザイン研究所 中小企業診断士 池田安弘
委員 (有)アール・アンド・シー >中小企業診断士 西野公晴

2.委員会の活動

 

 第1回の情報開示・評価諮問委員会は、指名名簿の公表に先立ち01年7月31日に開催されて、次のような事項を検討している。

1. 情報開示について
 (1)情報開示の拡充が必要である
  ・レベルを引き上げるための内容とルール
  ・本部のために/加盟店のために/(社会的視点)
  ・隠していないか/変化の状況/直営店/不振店/訴訟
  ・自主開示項目内容は決まっていない
  ・アカウンタビリティー(説明責任のレベル向上)
 (2)中小小売商業振興法の対象業種拡充が必要である
  ・サービス業(フードビジネス表現の明確化)
2. 評価について
 (1)例:経営品質賞(社会生産性本部)的なものをつくる
  (他社比較ではない/自社経営レベルアップ/ベンチマークとして公開)
 (2)加盟店満足度評価ならよい
  ・加盟店調査データのランクなら良い(本部に役に立つ「例:(自動車)」
 (3)業種別、中項目レベルはレーダーチャートで評価する
  ・総合点では意味がない
  ・序列しない評価
  ・若い方向き/年寄りの方向き/女性の方向き/多段階評価
 (4)定性的なものに限り評価したら良い
3. 本部評価について
 (1)公平な第3者機関(例:JIS)のようなものを作ったら良い
   (定量的評価)
   (フランチャイジーを募集するためには)
4. その他
 (1)ザー/ジーの利益バランス
 (2)ジーの経営の主体性は(ジーの本部依存が強い)
 (3)仕組み評価で解決できない問題をどうするか
 (4)ザー/ジー/双方/グループ/どこを評価するか
 (5)セーフティーネットの評価の要(コンセプト変化への対応)
 (6)目的、何を、誰のために、シナリオの整理

「コメント」  諮問会議の名称が、「情報開示・評価諮問委員会」になっていることについて、若干説明をしておきたい。
  フランチャイズ・ビジネスの情報開示については、中小小売商業振興法が定めているが、2001年時点においては、いまだ法改正が行われておらず、開示項目はわずか7項目に過ぎなかった。丁度、フランチャイズに関する加盟店の不満を法廷で解決する動きが全国に広がり、JFAでは99年に「フランチャイジー希望者への情報開示と説明等に関する自主開示基準」を定め、JFAモデル書式で作成した開示書面をJFA及び経済産業省に各1通を届け出でることにした。
 しかし、この程度の情報開示では不十分との意見もあり、JFAとしては、「本部評価」と同時に「情報開示の在り方」を諮問委員会に求めたものである。
  なお、この第1回目の議事録抄を見ると、当時の騒然とした世相と、各部門のスペシャリストの指摘の鋭さが伺われ、現在でも通用する問題点を指摘している。

 第2回目の諮問委員会は8月31日に開催され、次の事項が検討されている。
1. 情報開示について
①JFAの自主開示基準に、川越弁護士の「フランチャイズシステム法理論」の開示すべき
  項目を加えることを検討する。
②株式公開企業の情報開示のレベルまで高める必要がある。
③フランチャイズの契約はジーに対して、一定のリスクを求めている。それに見合うだけの
  情報開示を客観的にすべきである。例えば加盟店実態、リーガルリスクへの備え等。
2. 本部評価基準の作成について
①ザー及びジーの満足度につながる、本部の評価基準を作成する。
②評価項目は定量的項目と定性的項目で最終ゴールを明示し、そのレベル達成状況及び
  ステップを明らかにする。
③基準は業種・業態毎に定める必要性の確認
 第3回目の諮問委員会は10月12日に開催された。ワーキングチームを代表して杉本委員から,JFA正会員のあるべきフランチャイズ品質の定性的ウエイトを高めた構成項目・内容を提示した。
 小山副委員長より、誰のために、なにをするか再度整理するために、フランチャイズ品質の基本的考え方について提案があり、討議の結果全員の承認があった。
  第3回より、JFAの正会員3社(セブンーイレブン・ジャパン、ファミリーマート、ストロベリーオーンズ)と、協会事務局として専務理事、事務局長、企画部長が諮問委員会の委員として追加された。
 第4回諮問委員会は12月14日に開催され、「フランチャイズ経営品質モデル」が検討された。
 ワーキングチームは、その後5回(合計6回)の会合を持ち、最終的に2002年2月13日にJFA藤井会長宛てに、答申書を提出して、諮問委員会の役割は終わった。答申書は、委員長 田島義博、副委員長 小山周三の名義で提出され、添付された「フランチャイズチェーン経営向上品質プログラムについて」は、副委員長である小山周三教授が作成されたものである。

 なお、採用された「フランチャイズチェーン経営品質向上」評価項目は、次の内容であった。
1.経営理念・経営ビジョンと本部体制
  9項目を5段階評価
2.フランチャイズ契約
  5項目を5段階評価
3.フランチャイズの仕組み
  10項目を5段階評価
4.加盟店の満足
  12項目を5段階評価
5.事業活動の成果
   8項目を5段階評価
6.地域社会の理解と対応
   8項目を5段階評価
7. 顧客からの情報の反映と革新
   8項目を5段階評価
即ち7大区分、60項目であり、各区分の項目にバラツキがあるが、ほぼ現在の「フランチャイズチェーン経営品質向上」評価項目と同じ内容になっている。

Ⅲ 経営品質向上プログラム研究チームの活動

 JFAは、2002年5月の30周年記念総会において「JFA30年・新フランチャイズ宣言」を発表し、本部と加盟者がともに、"よりレベルの高い顧客満足度を目指すフランチャイズチェーン経営品質の向上"へ向け積極的かつ着実な活動の推進を誓った。
  02年8月1日に、JFA外食・小売・サービス合同部会が開催され、杉本収氏より「フランチャイズチェーン経営向上プログラム」の報告が行われ、吉野家代表取締役会長の村田光雄氏他22名が出席した。  席上、杉本収氏より"「フランチャイズチェーン経営品質向上プログラム」における評価の進め方と活用ポイント"というパンフレットが配布され、講演が行われた。 02年9月25日に、再度JFA外食・小売・サービス合同部会が開催された。その時正会員の中で、8月1日以降に従業員のアンケート調査を行った事例の発表があり、今後の進め方として外食部会長、諮問委員会ワーキングチーム及び導入に積極的な正会員社数社による「経営品質向上プログラム研究チーム」(以下QIPチームと略す)を立上げ、具体的な手順、チック項目等につき検討・実験を行うこととした。(QIPチームの座長は杉本収氏を選出した)
 第1回研究チームは02年12月17日に行われ、正会員としては、吉野家、ストロベリーコーンズ、ジー・コミュニケーション、ペッパーフードサービスから参加した。諮問委員会のメンバーは杉本、黒川、西野、豊田が参加した。  正会員の企業においては、各層の従業員による「プログラム」のチェック、採点等を行い、中には加盟店まで広げて採点をした企業もあった。
 その後、数回に亘るQIPチームの検討により、「フランチャイズチェーン経営品質向上プログラム☆活用マニュアル」が2003年5月15日に完成した。  その内容は活用マニュアル、評価項目、用語解説から成るものであり、各社の実施テスト、及び加盟店からの採点まで含めた実用レベルのものとなった。
 QIPチーム最終会議となった02年8月5日の会合では、会員、非会員に関わりなくフランチャイズ企業に呼びかけ、オープンなものにしてはどうか等の意見が出された。

Ⅳ FC品質向上委員会の活動

 QIPチームによる社内、加盟店の採点、チェックを行い、実用レベルまで高める目的で、03年10月3日に第1回FC品質向上委員会が開催された。出席したメンバーは、次の通りである。

委員長 小山周三 西武文理大学教授
委員 近藤隆雄 多摩大学教授
委員 豊田裕貴 多摩大学講師
委員 杉本収 オストコンサルティング代表
委員 黒川孝雄 フランチャイズ研究所代表取締役
委員 西野公晴 アール・アンド・シー代表取締役

第1回FC品質向上委員会の検討事項は、次のような内容であった。
(1)チェック項目等の問題点と改善策
(2)質問用紙の書式
(3)今後のスケジュール
FC品質向上委員会は第4回(2003年2月9日)まで行われ、「加盟店からみた本部評価調査」、一般公募の方法、表彰制度等について検討された。

Ⅴ 基本方針の理事会決定と3カ年計画の策定

 諮問委員会、QIP研究会、FC品質向上委員会等名称を変更しながら、合計で十数回の検討会を持ち、「フランチャイズチェーン経営品質向上プログラム」は体裁を整え、実用化できるレベルまでブラッシュアップを図って、最終的に2003年11月の理事会で、“「フランチャイズ品質向上」活動の取り組み”についての基本方針を決定した。

 実に、第1回諮問委員会を開催してから2年3カ月の歳月を要した。この間に経済産業省においても、サービス・フランチャイズ研究会を開催し、第三者による本部評価の重要性について、提言した。

 JFAの機関誌である、フランチャイズエイジ04年1月号で、特報として“「フランチャイズ品質向上」活動の取り組みについて”と題する文書が公表された。それに拠れば、{サービス・フランチャイズ研究会で取り上げた具体的な論点の一つとして「本部に対する客観的な評価の促進」があり、すでに行政も取り組みを始めたところであるが、今後は各種の「第三者評価」が行われることが想定される。

 従って、このたびの活動により、これらの動きに先駆けて、本部が率先して自己点検、自己評価をしつつ品質向上に取り組む経営姿勢を明確化し、フランチャイズの信頼性と健全性・透明性を高めることにしたい。}としている。 「フランチャイズはクオリティの時代」を合言葉にして、「フランチャイズ品質向上」活動を3カ年計画で実施することを発表した。

 今回、JFAのホームページに「フランチャイズチェーン経営品質向上プログラムについて」を公表して、誰でも、何時でも閲覧できるようにしたことは、3カ年計画の最終年度を目処にしたのであろう。

Ⅵ まとめ

 以上、縷々5年間に亘る「フランチャイズ経営品質向上プログラム」の作成過程を述べてきたが、内容については,JFAのホームページをご覧頂きたい。
 これまでの活動から、次のようにまとめることが出来る。

1. 十分に実用出来るよう、工夫してある。
2. 評定者は、当初経営層を想定したが、中間管理職、従業員、加盟店オーナーの参加まで考慮している。
3. このような自己評価を行うプログラムは、世界中を探してもこれ一つであると思う。ある意味でJFAの30年の体験を具体化したものであり、会員、非会員を問わず広く活用されることを期待したい。
4. いずれ第三者機関による本部評価が行われる時代が必ず来る。その時の備えとしても、広くこのプログラムが実用化されることを期待する。
5. フランチャイズ本部のみではなく、加盟店も本部評価を行い、本部に対して意見、提案を行う時に参考にしてもらいたい。

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