フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

2006年フランチャイズ業界を振り返る

I フランチャイズ全般

1. フランチャイズ全体の売上高は19兆円台に乗る

 10月中旬にJFAより発表された「2005年度フランチャイズチェーン統計調査」によれば全体売上高は19兆3889億円で、初めて19兆円台に乗せた。前年比は3.6%で、伸び率としては昨年の4.8%を下回った。90年代のコンビニの伸びがフランチャイズ全体の伸びを引き上げる方程式が変わり、むしろサービス業、外食業の伸びが全体を引き上げる図式に変わった。小売業、コンビニの伸びは相対的に低い伸びに終わった。

2. いざなぎ景気を上回る長期の経済回復

 小泉政権発足の翌年の02年1月を底に始まった景気回復(拡大)は、11月に戦後最長だった「いざなぎ景気」の57ケ月を抜いた。しかし、いざなぎ景気時代は年率10%を超える、経済規模の拡大が誰もが好況を実感できた時代であった。それに比して、今回の景気回復の実質成長率は、せいぜい年率2%台であり、殆ど景気回復の実感の無い拡大であった。
 全国の加盟店に面談する都度、「景気回復の実感」を聞いているが、100人が100人とも「全く景気回復の実感はない」という回答が返ってくるのが実態である。
 景気回復の実感のある業界は自動車メーカー、鉄鋼、素材産業、総合商社等限定された大企業のみであり、その他の業界は概して回復の実感の無い景気拡大であった。

3. 人手不足が深刻化

 人手不足が一段と厳しくなった1年であった。この人手不足は、景気回復よりも団塊の世代の定年、それを予測しての正社員採用の大量増加、少子化による若手労働力の不足などの側面が強い。
 東京都心部(中央、港、千代田区)のアルバイト時給は、1部で1200円とも言われているが、全国的にアルバイト不足は激しく、特に外食産業、コンビニ業界厳しくなってきている。外食産業の1部では当日払いという方式で、乗り切りを図っているが、所詮その程度のことでは、今回の構造的人手不足は解消するものではなく、女子労働力、高齢者労働力の活用、外国人労働者の活用など抜本的対策抜きでは、到底解消できない問題点である。

4.  M&A、MBOの盛行

 日本の経済界で今年はM&Aが盛んに行われた。(フランチャイズではないが)上場企業を対象としたTOB(株式公開買い付け)が急増している。2006年はすでに48件と05年を上回り、金額は2.5倍の1兆5千億円と過去最高に達した。(日経新聞11月23日)
また経営陣による企業買収(MBO)が「すかいらーく」「レックスホールディングス」等で行われたが、詳細は外食の部分で述べる。

5.  JFA「フランチャイジー懇談会」開催される

 (社)日本フランチャイズチェーン協会の主催で、今年の6月から9月の4ケ月の間に4回「フランチャイジー懇談会」を開催し、「意見集約」をまとめた。フランチャイジー懇談会のメンバーは比較的大規模フランチャイジーであると伝えられているが、「意見集約」に対するJFAの対応は明らかではない。
 この懇談会の伏線となったのは、03年の「サービスFC研究会」(経済産業省商務情報局長の私的研究会)の提言があると思われる。
今回の4回の「フランチャイジー懇談会」は正式な会合(理事会の承認を得ている)であり、その意見集約に対して、どのような回答が出されるか、注目されるところである。

II 小売業界の動き

1.  セブンーイレブン500mlのドリンクをPBで98円販売

 11月21日より、セブンーイレブン・ジャパンは独自開発の500ml入りのペットボトル飲料を98円で販売を始めた。
昨年9月、セブンーイレブンが500mlペットボトル飲料の一部を値下げしたが、125円という中途半端な価格で、スーパー、ドラッグストア、99ショップに比較すれば相対的に高い価格であったことは否めない。10月からは調味料も値下げしている。
 販売するのは「緑茶」「烏龍茶」「麦茶」の3品目で、北海道を除く全国である。セブンが独自開発した商品を清涼飲料メーカーであるジャスティス(東京・品川)に生産委託するものである。3品目でセブンの清涼飲料の売上高の1~2%を占める見通しである。(日経新聞11月2日)
 影響はどのように出るのであろうか。セブンの見通しでは、清涼飲料売上高の1~2%というからさほどの影響では無いように思われるが、事はそれ程単純ではない。12月19日の日経新聞で、「セブン&アイ・ホールディングスは来春、傘下のセブンーイレブン・ジャパンやイトーヨーカ堂など約1万2千店舗で扱う独自開発の食品・飲料を発売する」と発表した。まず百品目で始め、3年後には1200品目まで増やし、年間で約3600億円の売上高を目指すそうである。独自開発商品は大手メーカーと同等の商品を2割程度安く提供できると見ており、食品メーカーの価格政策にも影響を及ぼす可能性が高い。
 セブンーイレブンのみで年間20億本の清涼飲料を販売するそうだ。強い販売網を背景に独自商品を増やすことで、同じ分野の商品を製造するメーカーに納入価格の引き下げを求める力が増すことになる。  コンビニ同士の価格競争ではなく、メーカーの納入価格の引き下げを目的とする製販の争いとなる恐れが強い。

2. コンビニの新業態開発続く

 コンビニの新業態開発が昨年に続いて、今年も多数見られた。昨年ローソンが「ローソンストア100」を開発して生鮮コンビニとして話題を呼んだ。昨年はスリーエフ、am/pm、今年に入ってサークルK・サンクスが99イチバを2月にオープンして直営で多店舗化を図っている。2月22日の日経MJでは、07年2月期には10店舗まで拡大して、来年にはFC出店を考えると述べている。  新業態開発に一番熱心なのはローソンである。生鮮食品、飲料等大半の食品を税抜き100円で売る「ローソンストア100」を直営店で展開しているが一方、健康志向の「ナチュラルローソン」、高齢者対応店(店名はローソンのまま、看板の色を変える)、パン専門店、子育て向け「ハッピーローソン」等多彩である。

 am/pmは生鮮コンビニ「フードスタイル」を直営で出店する一方、FC展開も視野に入れ始めている。また同社はDVDレンタルと書籍売り場を併設した「エーピー・エンタ」を5月に出店し、多店舗化を図っている。また、女性専用の「HAPPILY(ハピリィ)」も出店している。
一方、店内調理を謡うコンビニも沢山出店している。従来はどちらかと言えば、中堅に属するココストアが弁当の店内調理店、ヤマザキデーリーストアが店内調理パンの店舗を多店舗化しているが、今年は、サークルKサンクスが9月28日に八重洲に「Fork Talk(フォークトーク)」を開店した。健康に配慮した惣菜や弁当を販売する他、パスタやパンを店内で調理し、飲食も出来るスペースが用意された20~30歳代のOLの利用を見込むコンビニである。(日経新聞9月27日)

 一方、セブンーイレブンやファミリーマートは、新業態には慎重であり、スタンダードな店構えとレイアウトで、品揃えとサービスメニューの充実を図り、コンビニの基本形を離れない態度である。
今、新業態型に将来性があるか、1業態型が良いかの結論は出せないが、仮に複数出店を意図するオーナーから質問を受ければ、文句なく1業態型で進むべきであるとアドバイスすることになるであろう。
それは、マニュアルの範囲内で運営が可能であり、パート/アルバイトに依存する経営の現状から言えば、1業態型が適しているからである。

 専門店型のコンビニには、それなりの商品知識やサービス技能が必要であり、従来の学生アルバイトや主婦パートのみでは対応が難しいと考えられる。何よりも専門店型コンビニは九九ショップを除けば、3ケタ出店した実績が無く、果たしてFC出店に向いているかどうかの検証も出来ていないからである。

3. コンビニ既存店売上高の不振6年連続

 コンビニ業界は00年度から6年連続で既存店売上高の減少が続いている。(日経新聞7月26日)
 タバコの値上げや、ハイカの販売中止などの理由で一時的に売上高が前年を上回った月もあるが、基調としては6年連続の既存店不調である。特に昨年10月以降は平均3%程度まで減収幅が拡大し、6月にたばこ増税に伴う駆け込み需要でプラスに転じるまで、22カ月連続で前年割れが続いた。
 このような環境下で、成長力を取り戻そうと、新業態開発を急ぐ本部が多数出る訳である。

 一方、新業態には否定的なセブン&アイHDの鈴木敏文会長は「顧客の家を回って注文を受けたり届けたりする御用聞きや食事の宅配などには大きな可能性がある。ネット販売の成長力を取り込むことも必要だ」と語っている。(日経新聞8月13日)

4. CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)M&A戦略加速

 「TSUTAYA」を展開するCCCがM&A戦略を加速している。5月15日に静岡を地盤とする中堅音楽CD店チェーン、すみやの買収を決めた。CCCは、新星堂との資本・業務提携も決めている。音楽ソフト販売店を続けて傘下に収め、音楽・映像ソフト流通でのシェアを3割に伸ばしている。(日経MJ5月17日)  CCCは昨年ヴァージン・メガネストアーズ・ジャパンを買収、6月には新星堂にも出資するなど、音楽・映像ソフト販売事業を拡大している。

 CCCグループの店舗はすみや、新星堂、ヴァージン・メガネストアーズ・ジャパン、TSUTAYA合計で1180店を超え、市場占有率は3割程度になったと推定される。

5. 「まちづくり三法」成立く

 「まちづくり三法」とは、大規模小売店舗立地法、中心市街地活性化法、改正都市計画法という3つの法律の総称である。
 大型店の郊外への出店規制を柱とする改正都市計画法がまず、5月24日の参院本会議で全会一致で可決、成立した。来年末までに施行する。

 改正法では、延べ床面積1万平方?を越す店舗や映画館などの大規模集客施設が出店できる地域は「近隣商業」「商業」「準工業」の3用途地域に縮小され、「第二種住居」「準住居」「工業」の各用途地域は原則出店できなくなる。
 また空洞化した中心市街地を再生し、高齢化社会に対応したコンパクトな街づくりを目指す「改正中心市街地活性化法」も5月31日に可決・成立した。やる気のある地域の計画を国が認定し、商業の活性化だけでなく公共的な施設や居住者の誘導を図る事業などに手厚い支援を講じる。今年、7月中に施行する。(日経MJ6月2日)

 この「まちづくり三法」が、直接フランチャイズに関係する訳ではないが、従来大型商業施設の中で、フランチャイズ展開してきた飲食業、小売業、サービス業に多大な影響が出ることが予想される。

III 外食業界の動き

1. 米国牛肉の輸入禁止と再開

 米国から輸入した牛肉に、除去が義務付けられている脊柱が混入していたため、政府は1月20日、すべての米国産牛肉の輸入停止を決めた。解禁からわずか1ケ月後のことである。  米国産牛肉に全面依存していた吉野家は、牛丼の販売再開を延期し、焼き肉店も出端をくじかれ、経営に多大な影響を受けるチェーンも続出した。
 日本政府と米国政府との間で、米国牛肉の取り扱いを巡り、様々な折衝の結果、7月27日にBSE対策本部などを開き、輸入解禁を正式決定した。しかし、輸入再開後の米牛肉を巡っては、課題が多く、全面的な利用を表明したのは吉野家のみという状況であった。その他の外食やスーパーは「当面販売せず」が基本姿勢であった。
 吉野家は9月18日に百万食の牛丼の販売を始め、全国1千店の店舗で完売した。12月からは昼限定で毎日販売に切り替えている。
 12月20日現在、米国産牛肉を一部使用している外食店は牛角、ステーキのどん、ペッパーフード、焼肉屋さかい、でん等少数にとどまる。食品スーパーはシージーシー・ジャパンの一部店舗にとどまり、大手のイオン、セブン&アイ等は販売を見合わせている。
 日本フードサービス協会が会員企業を対象にアンケート調査を実施したところ、かって米国産牛肉を使用していた企業で輸入再開後に使用している企業は3割弱にとどまることが判った。(日経MJ12月20日)
米国産を使用していない理由は、次の順で多かった。

1位
仕入れ価格が高い
50%
2位
他の牛肉を確保済み
45%
3位
消費者の反応を見て
42%
4位
必要な量が確保できない
40%

2. 飲酒運転による事故が社会問題となる

 9月に福岡市で起きた市職員の飲酒運転による自動車事故で幼児3名が死亡するという事件は、社会に大きなショックを与えた。この事件以降、警察による飲酒運転の取締り強化により、次々と飲酒運転が明らかとなり、特に国家公務員、地方公務員等の飲酒運転には厳しい世論が沸きあがった。
 飲酒運転が明らかになった時点で、公務員は懲戒解雇が行われるようになり、更に民間企業でも、就業規則の解雇事由に、「酒酔い運転または酒気帯び運転を行ったとき」という項目を付け加える事態となった。(日経新聞10月16日)

 郊外型居酒屋、焼肉屋等、郊外型店舗でアルコールを提供する業態は10月、11月と売上高が急減して、中には昨対比30%ダウンという店舗も現れ、タクシー代の一部負担、運転代行料の一部負担、送迎バスの導入、食事重視のメニューに変更等様々な対策を実行しているが、12月、1月の忘年会、新年宴会のシーズンが終わったら、経営上深刻な影響の出る店舗も出てくるであろうと推察される。

3. M&Aによる企業再建が続く

 今年の大きな出来事として、M&Aによる事業再生が多く見られた。
焼肉屋さかいは06年4月期の決算で最終損益が32億円の赤字になり、9億8千万円の債務超過になると発表した。3月9日、稲畑産業など3社が共同出資する投資会社に新株予約権を発行し、最大30億円を調達すると発表し、創業者の坂井哲史会長は臨時株主総会で退任した。(日経MJ3月13日)

 関西の老舗焼肉店「大同門」を経営するファミリーフーズは1月25日に民事再生法の適用を申請した。投資会社、日本リバイバル・インベストメントは、新会社の大同門を設立して、12月1日付けで旧運営会社のファミリーフーズから21店舗と従業員を引き継いだ。事業会社によるTOBも行われた。

すかいらーくは4月2日、小僧寿し本部を子会社化するため、TOBを実施すると発表し、TOBは成功した。またコロワイドは宮を子会社化、ロイヤルホールディングスは天丼チェーンのテンコーポレーションを子会社化、伊藤園はコヒーチェーン「タリーズコーヒー」を展開するフードエックス・グローブの発行済み株式の36.4%を取得した。 回転寿司のジー・テイストは、レストランチェーンの江戸沢をTOBで子会社化した。事業再生はファンドを主体に今後も進むであろう。

4. MBO(株式公開買い付け)による事業再編

 外食最大手のすかいらーくの創業者の一人で元会長の横川きわむ氏が、3月30日に会長兼最高経営責任者(CEO)に就任する人事を発表して、世間を驚かせたが、更に6月8日にすかいらーく経営陣による企業買収(MBO)を発表した。MBOは横川会長兼最高経営責任者ら創業者一族と経営陣などが特別目的会社(SPC)を設立し、同社がすかいらーくのTOBを実施する。SPCには野村證券グループの野村プリンシパル・ファイナンス、英投資ファンドCVCキャピタルパートナーズが出資。全株式を取得後に、すかいらーくを吸収合併する。(日経MJ6月9日)全株取得の費用は2600億円超に上り、国内最大(その時点で)のMB0となった。TOBは7月10日、株式の66.7%以上を集めて成立した。9月9月下旬に上場を廃止した。今後1年以内をメドに低収益の約150店舗を閉鎖する等事業再編に踏み出した。

 06年中間期の連結最終損益が13億円の赤字になったレックスHDは、11月10日に経営陣による企業買収(MBO)を実施し株式を非公開する方針を固めた。独立系投資会社のアドバンテッジパートナーズとレックスHDの西山社長が共同で特別目的会社(SPC)を設立し、SPCがレックスHD株式をTOBで取得する。SPCへの西山社長の出資比率は3分の1程度となる。(日経新聞11月10日)買い付け価格は23万円程度と、11月9日終値を1割程度上回る水準になる。12月13日にTOBは、発行済み株式の75.2%の応募があり、西山社長の資産管理会社の保有分と併せて91.51%となった。(日経新聞12月14日)
レックスHDは牛角、am/pm、成城石井等を傘下に持ち、特に牛角の不振が抜本改革を求め、経営多角化を見直す方向で企業再建が図られると思われる。

5. 値上げに動く

 マクドナルドは06年2月から売上高が上昇に転じ、100円メニューを増加させると同時に5月13日からセットメニューを10~30円値上げし、かつ単価の高い新商品「サラダマック」490円を投入すると発表した。5月の既存店売上高は、前年対比9.2%増加となった。客数が3.6%落ち込んだが、客単価が13.4%上昇した。(日経新聞4月20日、日経MJ6月16日)
これらは品質の向上(作り置きの廃止)、客室の改装、24時間営業店の増加等様々な経営努力の成果であるが、外食業界は、この成功事例を見逃さなかった。
まずスターバックスが11月8日から「スターバックスラテ」など20種類を20円から40円値上げした。リンガーハットの長崎チャンポンは税込みで10%値上げした。松屋が豚焼肉定食を20円値上げ、牛角はカルビを増量して105円値上げ、ガストはドリンクバーを63円値上げ、フレッシュネスはコーヒーを40円値上げした。外食全体の傾向として安さから質の向上へと向かった。単なる値上げではなく、増量なり品質改善が目に見える形での値上げであることが特徴である。
これに反して幸楽苑は基本メニューの「中華そば」1杯の値段を5月16日から逐次、390円から290円に値下げした。しかし、結果は単価も下落して収益も悪化し、今期は最終的に赤字になる見込みである。集客力強化を優先させた戦略が裏目に出た結果となった。商品の品質が継続的に改善され続けたどうかが問われる可能性がある。

6. 人手不足の深刻化

 若年労働力の不足により、製造業もサービス業もすべて人手不足に悩んでいるが、特に外食店舗において、不足が目立つ傾向がある。
日本フードサービス協会(JF)が会員企業400社を対象に7月に実施した外食産業の雇用状況アンケート調査では、必要とする人数に対する従業員の充足率は81.7%にとどまった。従業員に占めるパート・アルバイト比率は92.1%で、外国人を雇用している企業は77%に達している。必要な人数に対して実際の従業員は約2割少ないほど人手不足感が強いのは、外食産業は土曜、日曜や深夜時間帯の勤務も多く、働く側の人気が低いためである。
人手不足の対応策として、高齢者雇用、外国人雇用等が定番化しているが、最近では日払い制度を採用する企業が増加している。導入企業の具体例は ホットランド(築地銀だこ)、プライムリンク(牛角)、関門海(玄品ふぐ)、ペッパーフドサービス(ペッパーランチ)等である。ペッパーフードサービスによれば昨年12月から都内の20店で採用し、給料を日割り計算し2日後に支払う制度を始めた。利用者は9月末で60人と7月末に比べ50%増えたそうである。(日経新聞11月20日)
人件費の長期的な上昇が避けれないことから、松屋フーズやロイヤルHDといった都心に店舗が集中している業態を中心に株価の動きが鈍っている。(日経新聞8月18日)

IV サービス業界の動き

1. ダスキン株式を東証、大証1部に上場

 かねて株式公開を目指して、三井物産に5%の株式を譲渡していたダスキンが12月12日に、東証、大証1部に上場した。東証では午前9時の取引開始直後に、売出し価格と同じ1750円で初値が付いた。
かってダスキンは東のセブン、西のダスキンと並び称されるフランチャイズの名門企業であり、「サービス業日本一」を目指す名実共にフランチャイズ王国であり、ダスキンブランドのみでも30以上のサービスブランドがある。それが晴れて1部上場を果たしたことについては、まず「おめでとう」と喜びたい。 初値ベースの時価総額は1179億円であり(日経新聞12月12日夕刊)、これを外食産業の時価総額ベースで比較すると、次のような順になる。

1位 すかいらーく 2920億円(但し、05年度期末時価総額)
2位 日本マクドナルド 2418億円    〃
3位 ゼンショー 1684億円    〃
4位 吉野家 1417億円    〃
5位 サイゼリヤ 935億円     〃
                               (以上「飲食店経営」06年9月号)

時価総額の算出時期が違うため、厳密な比較にはならないが、一応第4位吉野家と第5位サイゼリヤの中間に入り、ダスキンを外食企業と認定すれば(ミスタードーナッの経営)第5位ということになる。
しかし、株価の高低を議論する前に、ここ10年足らずの間に起きた加盟店との内紛、公正取引委員会の調査、無認可添加物入り肉まん販売、資金の不正融資等の諸問題は、ダスキンの情報開示、事業の透明性に対する重大な欠陥があったと言わざるを得ない。今回の株式公開が、ダスキンの事業展開の透明性に対する保証になることを期待したい。 しかし、私見では、ダスキンのあまりにも強固なフランチャイズ同志的結合、祈りの経営に象徴される経営理念の閉鎖性に根本的な問題があるように感ずる。

2. 学習塾の再編・統合が進む

 学習塾の買収、統合、再編の激しい1年であった。 まず大手予備校「東進ハイスクール」を展開するナガセは8月18日、首都圏拠点の老舗学習塾、四谷大塚(東京・中野)を買収すると発表した。教材や受験指導で定評のある四谷大塚を傘下に収め、小学生向け塾部門を強化する。(日経新聞8月19日)また学習研究社は受験塾「桐杏学園」を運営するアンセス(東京・豊島)など2社を買収し、学習塾経営に乗り出した。また同社は宮城県が地盤の受験塾「あすなろ学院」を運営する東北ベストスタディ(仙台市)を買収し、東北地域のも学習塾の地盤を確保する狙いである。(日経新聞12月13日)ベネッセコーポレーションは進学塾、お茶の水ゼミナール(東京・千代田)を10月31日付けで完全買収し、学習塾事業に新規参入する。 また首都圏で「城南予備校」を運営する城南進学研究社は10月から、小学生以上を対象にした個別指導教室のフランチャイズチェーン展開に乗り出す。少子化の影響で主力の大学受験講座は受講生が減少しており、需要が大きい個別指導部門を強化する。5年後にFCと直営の合計で個別指導を200校に増やす計画である。(日経新聞7月4日)

 学習塾や外食店を全国展開するジーコミュニケーション(名古屋市)は子会社のジーエデュケーションを通してイー・シー(札幌市)を買収して英会話学校「EC英会話」の全国展開に乗り出す。 ジー・エデュケーションは「ITTO個別指導学院」など学習塾約8百校を全国展開する大手学習塾である。イー・シー社の英会話教室の運営ノウハウや教材ソフトを活用して、まず名古屋市を中心に学校開設を進め、将来は首都圏や関西圏などへ広げる計画であり、学習塾から教育産業へウイングを広げようとしている。(日経MJ10月25日)  これらの動きの背景には、上場している学習塾、予備校19社のうち、10社が経常益で最高を計上して(05年度決算)、生徒数が増加していることがある。経常最高益を見込むのは栄光、市進、秀英予備校、早稲田アカデミー、京進、ステップ、クリップコーポレーション、東京個別指導学院、明光ネットワークジャパン、ナガセ。いずれも首都圏や関西地区などが拠点である。(日経新聞3月28日)

3. 複合カフェ最高の伸びを示す

 第24回サービス業総合調査(日経MJ調査)によれば、サービス業の中で最高の伸びを示したのは複合カフェで、05年度は前年対比59.6%と過去最高の伸び率を示した。昨年の伸び率38.1%を上回り、回答17社の売上高は合計327億円に達した。

上位7社を示せば、次の通りである。
順位
社名
本社
部門売上高
伸び率
1位
フランシス
(スペースクリエイト自遊空間)
埼玉
56億円
---
2位
ヴァリック(快活CLUB) 神奈川
53億円
119.5%
3位
サイバック 福岡
35億円
51.9%
4位
アクロス(コミックバスター) 大阪
25億円
179.3%
5位
テイツー(アイ・カフェ) 岡山
25億円
93.5%
6位
メディアクリエイト(ゆう遊空間) 静岡
24億円
28.5%
7位
アプレシォ 東京
21億円
64.8%

4. 小型フィットネスが急進

 首都圏の駅前商店街を中心に、小型フィットネスクラブが急速に増えている。広さは百平方?弱で、運動時間は1回30分で、シャワーもない簡素な施設が殆どである。(日経新聞夕刊10月7日)
アルペンは女性専用の小型フィットネスクラブをフランチャイズ方式で始めた。1回30分で気軽にフィットネスを楽しめる「サーキットトレーニング」を主に提供、5年以内をメドに全国で1千店規模を目指す。1店舗当たりの売上高は3千万円を見込む。
ワイズ・フィット(東京・世田谷)が運営する「フィットネスエクスプレス サーティーサーティー」は1周30分程度で出来る気軽さと小規模な店舗が特徴である。従来「プール」「スポーツジム」「スタジオ」が集客のための3種の神器と言われてきた。しかしそれらを備えるためには大型の店舗が必要であり、投資額も4億円~10億円となる。そこで最近は初期投資が少なくて済み、小規模店でも運営できる「サーキットトレーニング」が台頭してきた。今年だけでも150店以上が出店している。(日経MJ9月10日)
ベンチャーリンクが主催する小型フィットネス「カーブス」は直営、FC店併せて269店(10月現在)を展開している。運動に縁遠かった中高年女性が継続して通えるための様々な工夫が、特徴であると述べている。(Bスタイル)

5. コインランドリー10年で5割増し

 厚生労働省によると、全国のコインランドリーの施設数は、05年度が約1万4千で、10年間で約5割増えた。全施設のうち大型の洗濯機を備え、延べ床面積が50平方?を超える店舗は既に「4千~5千店に達した」(モントバスクジャパン)との見方が多い。
全国に約1200店のFC店を展開するモントバスクジャパン(名古屋市)は洗濯機と乾燥機を合わせて20台前後ある大型の出店を加速している。
首都圏を中心に86店を展開する洗い屋本舗(八王子市)は、利用客の携帯電話に洗濯、乾燥機の空き状況に加え、仕上がり時間を知らせるサービスを約10店で提供中である。同店舗では更に、利用前に洗濯槽を無料で洗浄できる機能付の設備を導入し始めている。清潔さを重視する利用者への配慮である。(日経新聞8月30日)

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