フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

「フランチャイズ・ショー&ビジネス・エキスポ2007」を振り返る フランチャイズ時評

1. 最大級の規模であった

 2007年3月6日より8日まで、東京都江東区有明の東京国際展示場「東京ビッグサイト」で、第23回「フランチャイズ・ショー&ビジネス・エキスポ2007」(主催:日本経済新聞社、特別協力:日本フランチャイズチェーン協会)が開催された。
 今年の出店社はフードサービス業41社(前年比9社減)、小売業24社(前年比2社減)、サービス業46社(前年比11社増)、ビジネス・エキスポ16社(前年比13社)合計127社となり、前年に比較すると13社減である。
 出展社は減少しているが、1社当りのの小間数が増加して、会場の賑わいは前年と変わらないものがあった。
 更に、フランチャイズ支援ビジネス16社(前年比5社増)、フードサービス関連支援ビジネス9社(前年比6社減)、フランチャイズ無料相談・出版社11社(前年比1社減)を合算すると163社で、前年比14社減少であるが、出展小間数は393小間で前年と全く同じ小間数で、昨年同様最大の規模となり、西4ホールと西3ホール全体を借り切る盛会となった。  
 3日間の入場者数は31,550人となり、昨年より若干減少した。
 またTSUTAYAの20小間を始め、ネットカフェ大手各社が大規模な小間数を使用して、映像・ネット・音楽(コンテンツ系)の全盛時代を思わせるシヨーであった。
 海外勢の出展は今年も見られなかった。やはり海外勢が日本のフランチャイズ・ショーに出展して日本法人との提携を求める時代から、日本のフランチャイズ本部が海外、特にアジアに進出する時代に変化したのであろう。
 例年同様、日本フランチャイズチェーン協会の正会員の出展は少なく、ベンチャー的なフランチャイズ本部や、フランチャイズ支援ビジネスの増加が目立った。出展社の規模の増大や、賑やかさを一概に「フランチャイズの発展」と言い切れない点に一抹の寂しさを感じる。

2. フードサービス業

 出展社41社(内フードコート8社)のうち、実に20社が新規出展である。サービス業同様新陳代謝の激しい業界である。ラーメン8社は昨年比2社減であるが、最大の出展数であり、フードコートにも3社出展で、これは過去最大である。ラーメンは日本人の国民食と位置付けられるだけのことはある。
 続いて多いのは宅配ビジネスである。従来型の宅配寿司、宅配中華がある中で、高齢者向け宅配弁当が3社出展しており、うち2社は新規出展である。 高齢者向け宅配ビジネスは、今後発展が予測される業態であるが、漸く3社が宅配弁当、買物代行などのフランチャイズ・ビジネスとして登場してきた。いずれも手堅い説明をしており、今後の動向に期待したい。 次に多いのは、お好み焼き・たこ焼きの4社であり、うち2社がフードコート出展であった。日本の旧い食文化の代表であるが、それぞれブラッシュアップをして、特徴を出していた。中でも物語コーポレーションの「大阪梅田お好み焼き本舗」は、売上高1千万円以上(月商)、年間営業利益2000万円を打ち出して、大勢の顧客集めに成功していた。 居酒屋は、3社出展であり、比較的少ない印象である。やはり郊外型居酒屋の飲酒運転の影響が出ているのであろうか。 ジー・コミュニケーションの「アントニオ・猪木酒場」が大きなブースを構えて話題を集めていた。場所的には、やや離れた場所であったが8小間を取ったレインズ・インターナショナルはフードサービス業最大の小間数であり、「牛角」、「土間土間」、「しゃぶしゃぶ温野菜」を中心にアッピールしていた。昨年と比較して集客数がやや減少しているように見えたのは、立地の関係もあるだろうが、MBOによる株式非公開の影響もあるのだろうか。
  一昨年、ブームを呼んだライセンスビジネスは、昨年も今年も減少した。フランチャイズ本部としてはグッドブレインの「赤から」のみであった。継続的指導を伴わないライセンスビジネスは、日本に定着するのは難しいのだろうか。

3. 小売業

 小売業は24社であり、昨年と比較して3社減である。 循環型社会のビジネスモデルとして、リサイクル関連本部が7社出展であり、過去最大の出店社数である。釣具、ゴルフ、バイク、高級ブティック、ファッション等分野は広い。  リサイクル・ビジネスは会員制が基本であり、売り手が同時に買い手になるワン・ツー・ワン・マーケテングの仕組みになっており、会員登録により、究極の販売促進が出来るシステムであり、これがリサイクルショップを増加させた最大の要因であろう。  コンビニエンス・ストアは「ファミリーマート」と「エーエム・ピーエム・ジャパン」の2社出展である。特に「ファミリーマート」は6小間出展であり、小売りでは、TSUTAYAに続く大型ブースである。多分、日本で唯一の移動研修車「SQC号」を展示していた。コンビニでは店舗間競合の激化の中で、スタッフ(パート・アルバイト)研修に力を入れる本部が増えているが、特にファミリーマートのスタッフ研修には定評がある。初級、中級、上級のスタッフ研修マニュアルが完備しており、本部の認定によって合否が決まり、上級者に到っては、全社で10名と言うから、そのレベルの高さがうかがえる。「ファミリーマート」のスタッフ数は全社で15万人程度と推定されるが、その中で選ばれる上級スタッフは僅か10名であり、店長代行を務めることが出来るレベルであるそうだ。
 移動研修車は、遠隔地の店舗に出かけ、近隣の店舗のスタッフにも集まってもらって、一種の集合研修に利用されている。現在は1台のみであるが、更に車両を増加させたいとの説明であった。  移動研修車の内部を見せていただいたが、カウンターにレジが2台並び、発注端末機も用意され、本番さながらの研修であり、一度に8人が研修を受けることが出来るそうである。
 大手コンビニで唯一「ファミリーマート」が、このフランチャイズシヨーに出展するのは、多分、法人の複数出店に一番意欲的であり、02年4月に新たに1FC-Cという契約形態を打ち出したことが原因であろう。これは加盟店に内装費と加盟金を負担してもらい、ロイヤルティを低減して、複数出店を促すという内容である。複数出店している法人加盟社から、筆者が聞き取り調査をしたところに拠れば、2号店以降の投資額は1050万円程度だそうである。 しかも5店舗、10店舗と店舗数が増加するに連れて、毎月奨励金が支払われる仕組みを導入している。即ち、個人加盟者が減少している中で、ファミリーマートはいち早く法人加盟社の獲得に動き出し、相当の成果を挙げているようである。
 今回のショーで最大の小間数を誇ったのは、昨年に続いてカルチャー・コンビニエンス・クラブ(CCC)のTSUTAYAで20小間を使用しており、会場入り口の右に位置しており、一番目立つ小間であった。出展目的は加盟企業募集であり、全国3000店構想の実現である。現在の店舗数は1282店、TSUTAYA会員数1974万人という圧倒的なシエアーを持ち、ゲオと業界を2分する最大の勢力である。会員ビジネスはワン・ツー・ワン・マーケティングが力を発揮する分野であり、会員数の増大はビジネス展開に好都合である。

4. サービス業

 サービス業は46社出展であり、昨年より11社増で、唯一の増加組みである。46社のうち、今年新規に出展したのは26社であり、実に半数以上のフランチャイズ本部が新規出展である。言葉を換えれば、昨年のサービス業出展社の半数以上が今年の出展を見送っている。
 これから一番伸びるのは、サービス業フランチャイズであるが、同時に新陳代謝の激しい業界でもある。何故、半数以上のフランチャイズ本部が出展を見送ったのであろうか。様々な理由があるだろうが、1つは出展コスト(人件費を含めば最低100万円)の回収ができなかったのであろう。もっとはっきり言えば、せっかくフランチャイズ・ショーに出展しても、加盟店開発が1社も無かったのであろう。もう一つは、事業基盤が弱いため、事業規模の縮小かフランチャイズ開発の停止も考えられる。このフランチャイズ・ショーに出展する以上は、数年の単位で考えて、5~6年の出展で1~2店の加盟店が開発できると言う息の長いものであり、会社として力量を蓄えてから出展するのが常道であろう。
 最大の出展数は学習塾で、8本部である。いずれも個別学習塾であり、第1位の明光ネットワークジャパン(明光義塾、1500教室以上、東証1部上場)、 第2位のジー・エデュケーション(ITTO個別指導学院、がんばる学園等900教室以上)、第3位の拓人(スクールIE等、590教室以上,HPより)が揃って出展していた。全く新規に個学舎など4本部も出展した。
 安倍内閣の最大のテーマである教育再生は、公教育の強化を狙うものであり、教育再生会議の野依座長の「塾は不要」という発言にも関わらず、学習塾は増加を続けており、私立の中学校の受験生は東京都では5人に1人とも言われ、塾に通学せずに名門私立中学は合格不可とも言われている。
 日本における公教育の強化は、誰が見ても緊急の課題であり、果たして公教育の再生が短期間にできるものかどうか、注目を集めるところである。  続いて多いのは、複合カフェで6本部の出展である。大手3社の「アプレシオ(アプレシオ)が8小間、「自遊空間」(ランシステム)が10小間、コミックバスター(アクロス)が10小間と、派手な展開により、集客をしていた。千明カルチャー等新規参入も3本部あり、サービス業の中で最大の伸び率(前年比59.6%)を誇るだけに、市場制覇を賭けての争いである。投資額も大きいが、今後の伸びも期待できる業態である。
 エステ関係は3本部出展で、昨年の半分であり、この業界の競争の激しさを示すものであろう。
 介護、福祉関係が1社の出展に終わったことは寂しい。高齢化社会で間違いなく伸びるマーケットであるが、介護保険料の制約で、介護、福祉ビジネスの利益性の低い点が、低調な理由であろう。

5. フランチャイズ支援ビジネス

 今年は16社出展で、昨年より6社増加している。相変わらず集客力が高いのはベンチャーリンクである。しかし、外食フランチャイズ本部でベンチャーリンクに開発依頼しているのは、フジオフードシステムのみであり、「まいどおおきに食堂」と「かっぽうぎ」の2ブランドに過ぎない。それ以外のブランドは海外から購入,VLが本部になった「七つの習慣」と「カーブス」(フィットネスクラブ)、及び自社ブランドの「陳麻家」(ライセンスビジネス)の3チェーンであり、篠崎屋の豆腐を販売する「三代目茂蔵」は、篠崎屋と手を切り、自社ブランドの豆腐販売店チェーンに転換したそうであるが、その詳細は今回のショーでは見出せなかった。
  フランコープジャパンが池田新社長を迎えての再出発で、出展していたが、出版物の販売に専念しており、今後の進路が見えなかったのは残念である。アメリカのフランチャイズ情報が豊富であることに期待したい。フランチャイズタイムス・ジャパンは、ネットで情報発信する予定と聞いているが、併せて注目したい。

6. セミナー

 フランチャイズ・ショーのセミナーも見逃せない重要なものである。今年のセミナーはオープニングセッション(無料)、フランチャイズ本部・新規ビジネス立上げセミナー3本(会費1万円)、特別セミナー(無料)、フランチャイズ希望者向けセミナー12本(無料)の4本立てであった。
 まず、オープニングセッションは、(社)日本フランチャイズチェーン協会の海江田専務理事の挨拶、筆者のオーバービューに始まり、ワイエスフードの緒方正年社長の「わが社の経営理念と戦略」、ジー・コミュニケーションの稲吉正樹会長の「M&Aのコツ」が語られた。
 緒方社長は、昭和45年に「九州筑豊ラーメン 山小屋」を個人で創業し、「味」へのこだわり、こだわりの「製法」、「厳格な品質管理」を創業以来の基本理念として掲げ、平成4年8月に新聞広告で「FC加盟募集」を掲載したところ、問い合わせが殺到し、大きな反響があったそうである。それまでに「山小屋ラーメン」の「味」へのこだわりが広く理解されていたことが伺われる。同年10月にFC本部を開設して、FC店舗10店舗を開店し、平成6年5月にワイエスフード株式会社を設立して、山小屋ラーメンの全国展開を視野に入れて本格的なFC展開を開始した。品質管理は、まず原料へのこだわりからスタートして、麺に使用する小麦粉は最上質のものを使用、焼豚は良質なバラ肉を鹿児島経済連が購入し、食の安全、安心のために工場でISO9001を取得し、年々売上高は伸びた。社長の体験は「やれば出来る」であり、過去の成功談を訥々と話された。現在、同社は団塊の世代が夫婦二人で運営できる小型店を北九州でテスト中であり、売上は小さいが利益の出る店作りをしているそうであり、今後の展開に期待しているとのことであった。
 現在の店舗数170店、売上高70億円であり、決して大企業ではないが、 「ラーメン店」としては、安定的な売上が見込める手堅い事業という印象であった。
 ジー・コミュニケーションの稲吉正樹会長は現在37歳。創業したのは12年前であるが、資産もなく、親の援助もなく、第三者の支援も無くて、現在子会社が20社、うち上場企業が3社であり、3年前からM&Aを駆使して拡大してきた。現在、加盟店売上を含むグループ売上(システムワイドセールス)は1千億円、連結売上高500億円、連結経常利益25億円の規模である。 全国各地に上場子会社を持ち、仙台にはジーテイスト(旧平録)、静岡にはグローバルアクト(旧江戸沢)、山口にはパオが地域中核会社となっている。未上場ではあるが、名古屋にはジー・エデュケーシヨンが900校の学習塾を展開している。
 稲吉会長の話は次のような内容であった。M&Aには二つのタイプがある。一つはお金のある大企業が買収するケースである。二つめは、小さな会社が大きな会社をM&Aするケースである。この2番目のケースは通常失敗する。我々には失敗は許されない。今まで3ケ月で、すべて黒字会社にしてきた。M&Aされる企業は本業に自信を失ってきている。 安売りをする→従業員のモチベーションが下がる→経営陣が自分の保身しか考えない という経路を辿ることが多い。
 M&Aのコツは、次の二つである。
① 資産価値を見て、価値ある企業を買う。たたき売られた会社の価値を、1年後に10倍~30倍に出来る。業績改善によって企業価値が高まる。
② しかし、M&Aをすることによって本体の負債が大きくなる。
我々は、ジー・コミュニケーションの株式を売却する(第三者割当増資の意味か)ことによって負債を消したり、M&Aした子会社の株式を支障の無い範囲で売却して、負債を減らしてきた。
  現在の本体会社の資産価値は300億円である。1株230万円で引き受けてもらっており、会社の1%が3億円の価値を持っている。
 ジーコミュニケーションは、内部に工務店機能を持っている。100席、面積50~60坪の店を1千万円程度のコストで旬の業態に転換することが出来る。ジーコミュニケーション本体を上場させたいし、子会社も上場させたい。 3~4年後には、外食の世界で日本一になりたい。また、学習塾も3~4年以内にNO1になりたい。
  37歳の青年経営者が熱い思いを語った。3月11日の日経MJはゼンショーが「かっぱ寿司」を傘下に収め、今後のM&A次第では、すかいらーく、日本マクドナルドに次いで、連結売上高3千億円を2008年3月期に達成する可能性があると報じている。青年よ大志を抱け。しかし慎重に行動せよ。 ジーコミュニケーションがゼンショーに続く外食企業に育つことを望みたい。
 次いで、注目のセミナーは本部向け特別セミナー(無料)の「〝JFAフランチャイズ経営品質向上プログラム〝のやさしい解説」で、中小業診断士の杉本收氏の講演である。杉本氏はJFAが、このプログラムを作成する一番初期の段階から関わってこられ、3年近い歳月の中で中心的役割を果たした関係者であり、この講演には最も相応しい講師である。フランチャイズ協会の正会員社による解説も良いが、このプログラムの全体を知り尽くした方の講演が正しい理解につながる筈である。現在、このプログラムを活用して、自社のフランチャイズ・パッケージの活性化を図っている本部もあるが、広くフランチャイズ業界に採用されることを期待したい。
  毎年、中小企業診断協会東京支部フランチャイズ研究会(西野公晴会長)の会員による「フランチャイズ加盟希望者向けセミナー」(無料)が行われるが、 無料セミナーでは、最も完成されたセミナーであり、毎年受講者が多い。今年は、セミナー室の環境も整備され、受講者には聞きやすい内容であったと思う。 3日間、連続で行われ、入場者も多かった。
 このセミナーを見逃した加盟希望者は、隔月で(社)日本フランチャイズチェーン協会が、第3土曜日に同じ講師で開催しているので、是非聞いてもらいたい。(開催日は協会のHPを参照のこと)

7. 参加企業と主催者への提案

 最後に参加企業と主催社に次の提案をしたい。
①フランチャイズショーへの参加は、長期展望で
 既に述べたが、1年と言う短いスパンでフランチャイズショーを見ないでもらいたい。せめて3年~5年の中長期の視点で、採算を考えないと、フランチャイズショーへの出展が無駄金になる恐れがある。会社として、ある程度の力を蓄えてから、出展することをお勧めする。
②自社の強みの強調
 163社も出展する中で、注目を浴びるのは、かなり難しい問題である。飲食業ならば、フードコート出展をお勧めしたい。食べてもらって、味を知ってもらえば、記憶に残る筈である。何か、自社ならではのオリジナリティを訴える内容を展示してもらいたい。ペッパーフードサービスのフードコート連続出展が、良い見本である。
③大きな小間を取るなら、教室方式が良い
 1小間や2小間では難しいが、4~6小間以上取れるならば、是非教室方式を採用することをお勧めする。今年目だったのは、TSUTAYA、レインズ・インターナショナル、物語コーポレーション等の教室方式による説明会の開催と、その後の商談を分離して行う方法が有効である。上記3社はいずれも、教室方式で多数の顧客動員に成功しており、商談ベースでも良い結果が出たようである。この方法は、元来、ストロベリーコーンズ(今回未出展)が開発した手法であり、かねて注目していたが、今年は効果の確認が出来たので、大型出展する場合にお勧めしたい。
④主催者へのお願い
 年々出展社が増大して、今回は予定通り10月末で満杯になったと聞いているが、昨年も今年も、会場が込みすぎて、どこに出展しているのか、探すのに苦労するような混雑状況であった。
 元々、ジャパンショップショーを補完する形で生まれたのが、このフランチャイズ&ビジネス・エキスポ展の由来である。
 しかし、出展社が増加して、これ以上参加できない状況になった以上、ショップショーと切り離して、独自(もしくは何らかのショーと同時)開催の形で続けられないかどうか、ご検討をお願いしたい。もし、それが実現できたならば、会場をもっと広く取り、見やすい展示会にしていただきたい。

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