フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

アメリカのスーパーバイザー業務について フランチャイズ時評

フランコープ・ジャパン(株)  代表取締役 池田安弘

 黒川氏のホームページの7月号で問題提起されたアメリカでのスーパーバイザー業務について、私の持っている情報が皆様の一助になればと思い、本稿を投稿させて頂きます。

Ⅰ アメリカにおける加盟店サポート機能の名称について

 黒川氏のご指摘にもあるように、スーパーバーザーという名称は最近ではほとんど使用されておらず、一般的には、“フィールドサポート”その上位職として“ディレクター・オブ・フィールドサポート”と呼ばれる職種を設置しているようです。
 黒川氏のご説明の中にある“フランチャイズ・コンサルタント”は更にその上位職の概念で、本部のなかの職位としては副社長クラスに相当するポジションになります。(アメリカの企業には副社長が大勢おり、インフレ状態ですので、日本でいえば部長級という感じです)
  ただ、一般的な職務名称として「スーパーバイザー」は現在も使用されており、例えばオフィスワーカーでは係長級の職位、メーカーなどでも特定の部署の班長クラスの職位を表す名称の様です。
 また、流通業では現在もマーチャンダイジングを管理する職種としてスーパーバイザーという名称が使用されているケースもあるようですし、一部、物販系のFC本部でもスーパーバイザーという名称を使用しているケースもあると聞いております。
 一方で、アメリカのフランチャイズチェーンではサービス業フランチャイズの占める割合が増加しており、こうした業界ではスーパーバイザーという名称を使用している例は記憶にないというのが当社の顧問をお願いしている方の意見でした。
 私自身、フランコープ社の研修でアメリカでのスーパーバイザーの機能について質問したときに、まず「スーパーバイザー」という言葉がアメリカ側のコンサルタントに理解されなかったこと(ちゃんとした通訳がアメリカ語に約しており、私の発音の問題では無いことは申し添えておきます)さらに、日本のスーパーバイザーの活動内容を説明したときに、そのような活動は通常アメリカではあり得ない、特に「コンビニのように週に1~2回、飲食でも月に1回の定期訪問が当然である」ような日本型のスーパーバイザーの仕組みはあり得ない、といわれたことを鮮明に記憶しております。
 ただし、今回の議論の発端となった“フランチャイズで成功する”の拙稿にも書いておりますが、「スーパーバイザー(コンサルタント)による専門的サポートと、「フェース・ツー・フェース」によるコミュニケーションが重要である、と考える点では日米に大きな差はない」というのは事実です。

Ⅱ アメリカでのフィールドサポートの概略

 アメリカのFCシステムは「アメリカのFC法」によって規定され、実際には州によって規定が異なっているということはすでにご理解頂けているものと思います。
 実際には、アーリーステージからミドルステージクラスのFC本部では、全米でFC展開をするのではなく、ごく一部の州で展開をし、成長につれて展開する州を拡大してゆくという成長過程をたどります。 
  FCシステムの設計では、「アメリカの国土は日本の約27倍」という空間的条件を抜きに考えることができません。通常のFC本部で、フィールドサポートの加盟店訪問頻度は年に3~4回。サービスFC本部では、本部のフィールドサポートはほとんど訪問せず、地域の優良なジーが他のジーに対する指導、トレーニングに当たるという仕組みを取っているケースもあります。
  フィールドサポートの加盟店サポートは、開業当時は比較的手厚く、ジーが業務になれるにつれて、通常の支援体制に移行します。
  通常の加盟店訪問の目的は、主として加盟店の経営チェックです。経営資料、伝票類、発注書類など詳細に調べ、FCシステムに対する違反行為がないかどうかをチェックします。
  日本のSVが行っているような店舗チェックは、ミステリーカスタマーチェックで行うのが普通です。私どものセミナーでも講師がご紹介しましたが、アメリカのマクドナルドが経営不振に陥ったときに強力なカスタマーチェックを実施し、サービスレベルを立て直すことで危機を脱したという事例があります。
  ザーとジーの間のコミュニケーションやマニュアルの提供、教育システムの提供などはITを活用したイントラネットをほとんどの本部が導入することで高度化し、本部経営の高い生産性を生み出す要因になっています。
  これに関しては、7月にアイスクリームのサーティワンがイントラネットとこれを活用したアルバイトのeラーニングシステムを導入する(6000万円を投入するそうですが)と発表された、あれです。
  イントラネットは、通常ではサーバースペースレンタル形態で提供され、150ユニット以上のチェーンでは、1ユニット(ID)当たり月額15ドル程度の利用料になるようです。アメリカのほとんどのチェーンでこうしたシステムを導入しているのは、本部の負担がほとんど無いことがその理由でしょう。(日本の6000万円と比較して下さい)
  私どもフランコープジャパンでは、9月からアメリカ型のイントラネットシステムを機能限定(広報、マルチメディアデータ配信(マニュアル配信)、相談・チャット、eラーニング)の形で日本に導入します。コストもほぼアメリカ並みの1ユニット当たり1900円~2900円で利用できるようにしますので、一度ご覧いただければと思います。

Ⅲ 本部と加盟店の関係の理解について

 「お客様あっての加盟店、加盟店あっての本部」という理解に対しては「アメリカ人はついに理解できなかった」と言う意見がありましたが、この部分については「FCシステムとは何か」という本質的な理解にその根源があるように思われます。
 例えば、黒川氏が例に引いておられる、フランコープの現会長“ドナルド・D・ボロイアン”と現社長“パトリック・J・ボロイアン”が書いた“フランチャイズ・アドバンテージ”でも、「チャイザーとチャイジーの関係」について次のようにかかれています。
  「あなたがフランチャイザーとして成功をつかみたいと思うのであれば、最初に1枚の額を作らせ、これをオフィスの壁に掛けておくとよいであろう。「チャイジーこそ王様である」と読めるように。これを、たちの悪い冗談と思ってもらっては困る。なぜなら、フランチャイジーの成功がない限り、あなたの成功もまた永遠に得られないからである。
 チャイザーとチャイジーの関係というのは、大きな成功の潜在的な源であると同時に、厳しい軋轢の源でもある。フランチャイザーであるあなたは、両者間の重大な危機、小さな問題の蓄積を避けるために、十分に意味のある指示、支援を行い、彼らの成功を確実なものにしていかなければならない。」
 つまり、「加盟店の繁栄無くして本部の繁栄はない」という点に関しては日米の理解に相違はないと思いますが、「本部と加盟店との関係」を議論している場に、顧客を持ち出すことは議論の飛躍であり、非論理的であり、あり得ないことなのです。
  もし、顧客との関係を議論するのであれば「FCパッケージそのもの」もしくは「マーケティングの議論」としてなされるべきであり、その意味での議論であれば、「顧客満足の実現無くしてビジネスの成功はない」という議論にNOというアメリカ人はたぶんいないと思います。(「顧客は常に正しい」というのはアメリカの有名なチェーン店の社是です)
 私の個人的な見解として言えば、本部と加盟店の関係の中に、ビジネスの対象である顧客を持ち込むことは、本部と加盟店の関係に関する議論を不明確にする「論点のすり替え」であるように感じています。

Ⅳ FC本部の生産性を決定する要因

 いずれにせよ、FC本部の生産性に日米で相当に大きな格差があることは事実です。商業界の原稿でご紹介したアメリカンの数値データは、アメリカのFC専門調査会社である「フランチョイズ社」のデータです。こうしたアメリカFCビジネスに関する本当の数値データが日本でも紹介されれば、この生産性格差を何とかしなければならない。あるいは、この生産性格差を解消することで日本のFC本部はもっと高い収益構造を作ることができる、と多くの方に理解して頂けるはずです。
 (こうした考えから、私どもでは業務提携をしているフランチャイズタイムズ・ジャパン社と協働・分業の形で、タイムズ社はジーに関するアメリカの情報を、フランコープ社はザーに関するアメリカの情報を主として提供する事業を9月から開始する準備を進めております。本当のアメリカFCの姿をアメリカのデータから知りたい方はこのサービスをご利用下さい。)

日米のFC本部の生産性格差の原因の一つが、フィールドサポートの生産性(水揚げ高)にあることは明らかです。1人のフィールドサポートが20~30のジー(ユニット)を担当するアメリカと、10~15店舗程度を越えるとFC本部としての加盟店サポート体制に問題があるかのような評価をされる日本では、その生産性に大きな開きが出るのは当然です。
 もう一つ、大きな要素は本部コストです。本部の不動産コスト、間接部門人件費(社員数)など、FC本部の組織構造をもっとシンプルなものにする必要があります。ちなみに、商業界別冊でもご紹介しましたが、アメリカの平均データとして「本部要員7人(オーナーを含む)で152店舗の加盟店をサポートする」というデータがあります。 この辺りのマネジメントの仕組み、加盟店開発の仕組みなど、まだまだアメリカに学ぶことは少なくないと思います。
 以上、学術的とはいえない内容ではありますが、こうした機会をご提供下さいました黒川氏に感謝申し上げます。

 (株)フランチャイズ研究所 代表  黒川 孝雄

 7月号で池田氏の「こんなに違う日米のFCシステム」(商業界別冊8月号)の中の「アメリカではスーパーバイザーの名称は使用しない」という部分について筆者の見聞、有識者の意見をご紹介したが、池田氏のご意見を直接このFC市場レポートで述べてもらうことが公平であり、かつ最新のアメリカ事情に触れる機会になるので、8月号は池田氏にお願いして記名論文の形を取ることにした。
 アメリカでは、フランチャイズ本部の生産性が高いことが論じられているが、SVのみならず、加盟店開発の代理店制度、経理のアウトソーシング等日米のビジネスの差が大きいと感じている。
 自前で全ての仕組みを持つ日本のフランチャイズ・システムと、殆どの業務を外部委託するアメリカのフランチャイズ・システムとの生産性の差異を論じるのは、いささか問題があるようにも思うが、間違いなく5~15店の加盟店をSVが巡回するSVシステムは優れているが、いずれコストの壁にぶつかり、 SVの将来の待遇等の課題が考えられる。
 今回の議論が、日本のフランチャイズ本部の「SVのあるべき姿論」になにがしの影響を与えることが出来れば幸いである。

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