フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

2008年フランチャイズ業界を展望する

 2008年は動乱の年になることが予想される。フランチャイズ業界を展望する前に、政治、経済、社会の動向について予測してみたい。

Ⅰ 政治・経済・社会の動き

1. 混迷を深める政治の動き

 政治が混迷の色を深めている。発端は言うまでもなく、7月29日の参議院選挙における自民党の歴史的大敗である。
 選挙前から自民党の敗色は濃厚であったが、自民党の37議席という惨敗ぶりと、民主党の60議席の大台乗せも驚きであった。結果として与党の自民、公明党議員は参議院では過半数割れとなり、逆に民主、共産、社民、国民新党の野党が過半を制するようになった。衆議院と参議院のねじれ現象である。
 勿論、参議院は政権選択選挙ではないので、衆議院で2/3の議席を制する自民党が政権を掌握するのは当然であるが、大敗の責任者である、安倍総理が引き続き政権を担当することも異常であった。8月27日に改造内閣が発足したが、臨時国会で所信表明を行い、代表質問初日に突如辞意を表明した。参議院選挙の直後の辞任ならば、常識的であるが、何故、臨時国会の大切な時に政権を投げ出すような辞任をしたのか、世間は唖然とし、未熟で無責任な辞任と批判した。自民党総裁選の結果、福田総理が誕生した。

 一方、民主党は小沢党首が、福田総理と10月30日、11月2日の2回の党首会談を行い、連立政権への打診を受けたとされる。小沢氏は「党内で協議する」と回答を保留したが、民主党は役員会で拒否する方針を確認した。11月4日午後に小沢党首は、記者会見し、党首を辞任する意向を明らかにした。理由として党役員会に提起した自民党との連立協議入りの了承が得られなかったことは、「私が不信任を受けたに等しい」と説明した。記者会見の席上「民主党はまださまざまな面で力量不足で、次期総選挙での勝利は大変厳しい情勢だ」とも述べた。この小沢党首の迷走振りに拍車をかけたのが、民主党の役員が小沢氏に慰留を働きかけ、結局小沢党首が「恥をさらすようだが」と断って、辞意を撤回した。ここも政治の未熟と無責任を感じさせられた1幕であった。
 その後、民主党は事あるごとに、「問責決議」を振りかざし、自民党に脅かしをかけながら、テロ特措法は参院否決、衆院2/3で再可決となり、臨時国会の最大の山場は終わった。野党の力量不足に呆れる事態であった。

 1月18日に通常国会が召集され、今国会は「ガソリン国会」と名づけれた。焦点は揮発油税の暫定税率維持を盛り込んだ租税特別措置法改正案など期限切れが迫る「日切れ法案」の扱いである。民主党は当初「ガソリン値下げ」という人気取り的な政策だけを強調し、財政再建などに無責任な主張だと批判されると「道路財源の改革」に論点をすり変えている。結局、衆参両院議長のあっせんで、ようやく一段落しそうであるが、政治の混迷は深まるばかりであり、経済も社会も無責任な政治の混迷に翻弄される1年になるだろう。

2. 好景気の終焉・アメリカ経済はリセッションか

 アメリカのサブプライム問題に端を発した世界同時株安は1月4日の大発会で、日経平均株価は終値で616円安となり、昨年11月に付けた安値を割り込んだ。
  1月2日には、ニューヨーク市場で、原油が初めて1バレル100ドル台に乗り、米株式市場は急落した。同時に、世界中の株価が乱高下しながら、下値を切り下げている。
  石油大幅高に連れて、各種原材料、食料品、貴金属等が高騰して、今年の世界経済は年初から大揺れに揺れた。また、住宅着工戸数の減少も大きな痛手であった。

 日本の「いざなぎ景気超え」も、ようやく終焉を迎えたようであり、景気後退とまでは言わないが、景気が減速し、成長率は大幅に低下することは間違いなさそうである。景気高揚感を全く感じさせない好景気であった。

 一方、世界経済の牽引役を果たしてきたアメリカ経済は、サブプライム問題に揺れて、5回にわたるFF金利を下げ、特に今年に入って1.25%の大幅金利下げを実行した。また、ブッシュ大統領は16兆円に上る緊急景気対策の骨格を発表した。アメリカ経済は景気減速から景気後退への不安が高まってきた。

3. 経済成長か配分重視か

 最近の政治の世界では、経済成長よりも配分の話題が多くなった。例えば,農政を例に取れば、農業の大規模化による競争力強化よりも、どんな零細農家にも所得保障をすうるバラマキ行政が多く語られる。農家もその方が耳障りが良いので、選挙ではその政党に1票を投じる行動に出た。果たして、低成長が予測される時代に配分のみを論じていて良いのであろうか。
 大田経済財政担当大臣は、通常国会の冒頭の経済演説で「日本はもはや“経済は一流”と呼ばれる状況にはない」と断言した。それは、次の2つの理由からであると語っている。(日経新聞、2月8日)

 「一つは、人口減少の中で成長を続けるのは並大抵ではない、という危機感である。日本にとって当たり前であった「成長」はきわめて難しい課題になりつつある。二つめは、今なら間に合うということである。
 長い目で見れば、デフレからの脱却が視野に入り、ようやく正常な状態に近づき、成長力強化に本格的に取り組む状況が整ってきた。人口減少やグローバル化を克服する新たな成長モデルを模索して改革を続ければ、必ずや日本経済はよみがえる」
 経済成長を放棄して、分配のみに終始するならば、日本経済は永久に立ち直れないだろう。今こそ、国民のための「成長」とは何か、どうすれば「成長」できるかを議論する時であろう。

4. 年金問題をどうするか

 日経新聞社が1月7日に「基礎年金、全額消費税で」という研究会報告(年金制度改革研究会)を発表した。年金研究会報告の骨子は、次のようなものである。

1. 税方式に全面移行

 ・基礎年金(厚生、共済年金受給者の基礎年金部分を含む国民年金)の財源を 保険料から全額消費税に置き換える
 ・税率の上げ幅は5%前後
 ・置き換えで全体の負担に増減は生じない

2. 給付水準は現状維持

 ・月額給付は満額で6万6千円
 ・国内居住10年程度を支給要件に
 ・移行期間は旧制度に基づく保険料負担を給付に反映
 ・支給開始年齢の引き上げを検討

3. 制度安定へ成長促進

 ・3.7兆円の企業負担軽減分は非正規労働者への厚生年金への加入拡大に
 ・成長戦略や少子化対策を充実
 ・与野党は党派を超えて成案を

 消費税を5%も上げて、景気への影響をどのように勘案するのか等まだ問題点は多々あるが、まずこの叩き台の提案に対して賛意を表したい。年金問題というと、与野党の駆け引きや、党利党略に用いられ、真剣に国民に立場に立った議論が行われなかったことが残念である。
 今回、日経新聞社という中立的な機関が、ある一定の年金問題への解決策を提案したことは大きな意味があり、内容も概ね妥当な内容であると思う。
 最終的に決めるのは、国会の場であるから、一度年金問題に対する提案を各方面から提案して、国民的議論をしてみてはどうか。
 場合によっては、年金問題に絞って総選挙を行い、国民世論を聞いてみることも必要ではないだろうか。

5. 賃上げはどうなる

 日本経団連は「賃上げ容認」の方針を掲げたが、世界的な株式市場の動揺や資源高に伴う景気減速懸念など企業収益の先行きには不透明材料も増えてきた。
 経団連側は「支払い能力のある企業は従業員に成果配分をするということになろう。そうすれば、それが国内消費に貢献する。ただ、米国のサブプライム問題と原油など原材料の高騰、更に国内の建築着工へのブレーキと“三つのリスク”が不透明感を増している」として、今年の賃金交渉はバラツイタ展開にならざるを得ないとしている。
 一方、労働側は、「景気拡大は6年目に入ったといわれるが、労働分配率は5年連続で低下している。その結果、内需が拡大せず経済の自律的な回復につながらない。積極的に賃金を改善し、成長の成果から置き去りにされている家計を改善しなければならない」と主張している。
 足元の景気減速懸念は賃上げムードに水を差す1面はあるが、昨年11月から消費者物価が上昇しており家計を圧迫している。更に、4月以降は生活必需品の値上げが目白押しである。消費が拡大しないとこれ以上の景気の持続は無理と思われる。
 やはり、世界経済の波乱は予想されるが、企業はここで、賃上げに踏み切らないと個人消費が凋んでしまい、自ら墓穴を掘ることになるのではないか。

Ⅱ フランチャイズ業界の動向

1. 環境問題が企業経営の最大課題に

 今年も、環境問題・地球温暖化問題がフランチャイズ企業の経営を左右する年になるだろう。今年のサミットは、日本が主催国となり、地球温暖化が最大のテーマである。
 改正食品リサイクル法が07年12月1日より施行された。外食チェーンや食品を扱う小売店等の間で食品の廃棄物処理への関心が高まっている。
 フランチャイズ・チェーンでは、従来は加盟店は“独立経営”という観点から、環境問題は個店対応で済んだが、新しい法律では、フランチャイズは全店舗を対象とするように変化した。
 環境、農林水産両省は合同の審議会で、業種別リサイクル実施率を示した。

  20012年度目標
食品製造業 85%
食品卸売り業 70%
食品小売業 45%
外食業 40%

 コンビニや外食に多いフランチャイズチェーンは,FC全体を1事業者として見なした取り組みが必要である。
 改正容器リサイクル法が、昨年の4月に施行された。スーパーやコンビニ等 の小売業者にレジ袋や紙製手提げ袋等の減量目標を自主的に策定するよう求めている。特に包装材を年間50トン以上利用する企業に削減目標や実績を年度ごとに国に報告することを義務付けている。削減努力が不足する企業に対しては国が改善命令を勧告・命令する制度も盛り込まれ、罰金も導入された。

 日本フランチャイズチェーン協会の調べによると、コンビニの売り場面積1平方㍍当りのエネルギー使用量は、2006年度に0.125?時となり、1990年度比で23%減少した。
 世間には24時間営業を見直す声も上がっているが、協会では営業時間を16時間に短縮しても、削減できるエネルギー消費量は5~6%に止まると反論している。

2. 企業倫理の徹底と情報開示

 昨年は食の安全・安心の問題で食品業界は大揺れに揺れた。フランチャイズ企業も関係する企業があった。
 食の安全・安心は元より、企業倫理の徹底が求めらた年であり、今年は更に、その徹底が求められる。企業倫理を忘れると、その企業の存続すら危うくなることを肝に銘じる必要がある。
 企業倫理との関連で、企業が内部に保有する情報を、危機に先んじて開示する姿勢も重要であり、情報開示が企業を危うくする場合と、救う場合に分かれることもある。

3. 労務問題の重要性

 パートタイム改正労働法が今年の4月1日から施行される。①労働条件の文書交付②待遇の決定についての説明義務③均衡の取れた待遇の確保の推進④通常の労働者への転換の推進⑤苦情処理・紛争解決の援助等の内容であるが、いずれも真摯な対応が求められる。
 また3月1日より「労働契約法」が施行されるが、この法律も労働者を雇用する場合に、心がけねばならない法律である。①労働契約の原則と内容の理解の促進②労働者の安全への配慮③労働契約の成立④就業規則による労働契約の内容の変更⑤就業規則違反の労働契約⑥出向・懲戒・解雇等の規定があり、人の雇用に密接に関係する法律であるので、良く理解して法に従う必要がある。
 また1月28日に、東京地裁が「日本マクドナルドの店長は管理職に当らない」として、同社に未払い残業代約750万円の支払いを命じた判決は、外食や小売業等チェーン化を進めている企業には大きな課題を突きつけた。
 小売業・外食業では多くの場合、店長を管理職として残業代を支払わないケースがある。店長が管理・監督者に当るかどうかは①労務管理などで経営側と一体の立場にあるか②勤務時間の拘束はないか③管理職に相応しい賃金を得ているかどうか等職務や職責、待遇などが基準となると定めている。

4. M&Aは更に進行する

 日経新聞社が昨年実施した「買収ファンド調査」によれば、投資対象として目立つ業種は流通、外食、食品、電機、サービス、ヘルスケアー、金融等いずれも市場成熟化や競争激化で業界再編が不可避と見られる業種である。これらの業種には、フランチャイズ企業も多い。これらを対象に、今年も一段とM&Aが進行するであろう。
 但し,MBOについては、株価の買取価格を巡って株主と企業の対立が増加しているため、法的リスクを回避する意味からも、数は減少するであろう。

5. 国際化の進行

 高齢社会への転換、人口減少時代を目前に控えて、フランチャイズ本部の国際化は一段と進むであろう。当面、中国、韓国、タイ、ベトナム、台湾等アジアへの進出に拍車がかかり、オセアニア地区、アメリカ本土への進出もいずれ盛んになるだろう。

6. 既存店活性化がすべての鍵

 日本国内でフランチャイズ展開するチェーンの再生の鍵は、既存加盟店の活性化がすべての課題に優先する問題である。JFA35年史の巻頭を飾る会長・副会長4氏による座談(司会・海江田専務理事)の中でオートバックスセブンの住野社長は、次のように述べている。

 「大きな課題は既存店の活性化です。当社のような業種業態では、少子高齢化の影響ばかりでなく、最近の若者が車に乗らなくなったという状況にございます。このことは、きちんとした調査にも現れております。言ってみれば、マーケットが縮小傾向にあるなかで既存店の売上を増やさなければならないという難しい局面に立たされているわけです。オートバックスチェーンの場合、周辺の関連事業、たとえば自動車保険の取扱い開始、車検サービスの導入、中古車販売の展開に取り組みました。ですから、10年前と現在を比べると、事業内容がだいぶ変わりました」
 また、協会35周年の、同じメンバーによる「パネル討論会」(司会為定明雄日経MJ編集長)でも、セブンーイレブン代表取締役の山口俊郎氏が「CVSにとっては、既存店の活性化が最大の課題」と述べられた。

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