フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

「フランチャイズ・トラブル」を紹介する

 JFAの推薦図書に「フランチャイズ・トラブル」が推されてから2年程が経過する。かねて一度読んで見たいと思っていたが、調べてみると書店でもアマゾンでも購入できないことが分かった。要するに私家本であり、ジャンコードが取得されていない。買い難さに併せて、定価5、250円も安くない。
 何となく躊躇している間に、どうしても購入せざるを得ない事情が発生した。それは、フランチャイズ関係で裁判にはならないが、不平・不満・苦情が実に多く、このまま放置するならばフランチャイズは「クレーム産業」になるとの思いがあったからである。勿論、筆者の事務所にも加盟店、もしくは加盟希望者から、毎日のようにフランチャイズに関する不平・不満・苦情が寄せられる。裁判になる前に、これのクレームを受け止め、解決する機関が必要であると日常的に感じていた。
 その時に、「フランチャイズ・トラブル」と言う著作は、著者の長年に亘る実務経験の中から蓄積されたフランチャイズに関する不平・不満・クレームの事例が沢山出ていて、大いに役立つだろうと思い、漸く購入する段取りとなった。
 この本の購入の仕方は,JFAの推薦図書をクリックすれば岩波ブックセンターにリンクされ、そこで購入申込すれば2日後位に到着する。代金は到着時払い、送料・梱包費を含めて6090円であった。一見、高い本に見えるが、読んでみれば、「フランチャイズ実務家が書いた最高のFCテキスト」と評価し得る優良図書である。この本を推薦図書にしたFC協会に敬意を表したい。
 フランチャイズについては弁護士の図書が多い。いずれも優れているが、判決に多数のページを割き、決して読みやすい本ではない。また、経営コンサルタントの書いた「ノウハウ本」も多い。しかし、いずれも実務の裏づけが乏しかったり、論理性に欠けたり、希薄な内容が多く、がっかりする本が実に多い。
 その中で、この「フランチャイズ・トラブル」は一段と高く聳えるFCテキストであり、単なる不平・不満・苦情の集大成ではなく、「フランチャイズ本部のあるべき姿、理想形」を追い求め、それに誰しも共感できる図書である。是非、ご一読を薦める。

Ⅰ 作者のプロフィール

 作者の金光秀文氏は、残念ながらお目に掛かったことがない。奥書に著者略歴があるので、そこから紹介したい。
   「1939(昭和14)年生まれ。(今年69歳)1963(昭和38)年関西学院大学経済学部卒業。同年4月(株)不二家入社。不二家にて、店舗開発、スーパーバイザー、地区部長を歴任する。1994年1月B・Rサーティーワンアイスクリーム株式会社監査役就任。同年2月より(株)不二家FC部長。1999(平成11)年6月不二家退職後、2000年7月にコンサルタント会社入社。 2003年6月に独立、「フランチャイズ情報提供サイト」を開設し現在に至る。」http://www.franchising.jp/
 著者が不二家に入社された昭和38年は、日本でビジネスフォーマット型フランチャイズが開始された年であり、不二家とダスキンがその名誉を担っている。フランチャイズハンドブックによればダスキンのFC1号店の開店は同年7月、不二家のFC1号店は10月と伝えている。著者が不二家に入社されたのは、正に昭和38年であり、日本のフランチャイズの開始と同時に、フランチャイズビジネスの実務に携わった稀有の人材と言えよう。
 しかも、著作の内容は不二家の題材に限定せず、広くフランチャイズ業界全体の話題であり、広範囲に情報を収集されたことが分かる。引用されている文献も多岐に亘り、ハリー・カーシュ著「フランチャイズチェーン」等古典に属する文献まで引用されている。その読書の範囲の広さにも驚かせられる。なお、参考文献として、先程のWEBの中に歴史的著作も紹介されているので、ここも必見である。また、法律家の意見として川越憲治弁護士の「フランチャイズシステムの法理論」と、金井高志弁護士の「フランチャイズ契約裁判例の理論分析」が多数引用されている。いずれも定評のある良書であり、妥当であると考える。

Ⅱ 全体の章建て

 本章は12章から成り立っている。「フランチャイズ・トラブル」については、各段階毎に分析し、5章を充てている。しかし、本書の特徴は第9章の「フランチャイズ本部のあるべき姿」と第5章の「フランチャイズとチェーンストアー理論」、第12章の「ADRによるフランチャイズ・トラブル解決策」の3章である。
 最初に、本書の目的である「フランチャイズ・トラブル」について説明し、最後に「フランチャイズ本部のあるべき姿」について触れる。
 筆者は、書評を書くことが目的ではなく、本書を広く世間に紹介し、大勢のフランチャイズ関係者(本部スタッフ、加盟店、加盟希望者、フランチャイズ研究者)に、本書を読んでいただくことを目的としている。その性格上、決して紹介文は面白いものではない。しかし、著者の溢れるようなフランチャイズに関する情熱を感じていただければ、幸いである。

Ⅲ 加盟店募集段階のトラブル

 筆者は、加盟店とのトラブルの種は大半、加盟店募集の段階に発生していると常に考えている。
 しかし、著者は、ここでは慎重に加盟店募集段階のみのトラブルを挙げて説明している。以下、本文に従う。

1. 加盟店希望者が出会う可能性が高いトラブル

(1)本部の強引な加盟店勧誘に関するトラブル

 加盟希望者が、フランチャイズに加盟するために最初に交渉する相手は、本部の開発担当者である。開発担当者は、開発目標を背負わされている。年間に何店舗開発という予算である。これが時にはノルマとなり、加盟店に不利な話やリスクを開示しない傾向があることは免れない。
しかし、これが強引すぎると「ぎまん的顧客誘引」とみなされる恐れがある。しかし、開発担当のセールストークが誇大で欺瞞的であったかどうかは、開業後でないと分からない。フランチャイズに内在するリスクと考えるべきである。

(2)加盟申込金をめぐるトラブル

加盟希望者の加盟の意思を確認する目的で、事前に若干の金銭を徴収することがある。これを加盟申込金と称する。

 この金銭の性格(目的、返還の有無等)を事前に明確にしておかないとトラブルに発展する恐れがある。

(3)店舗物件の商圏調査・立地の選定をめぐるトラブル

本部と加盟希望者との間の加盟交渉は、事業を行う店舗物件を探すところから始まる。希望者としては、店舗物件が見つからない限り、加盟交渉の次のステップを進めてはならない。フランチャイズの加盟交渉はまず店舗物件ありきである。

(4)イニシアルフィーの支払いをめぐるトラブル

 イニシアルフィーとは、具体的には加盟金、契約金などと呼ばれ、総称して対価と呼ばれる。イニシアルフィーが高いか安いかをめぐってトラブルが起きることは少ない。加盟希望者は、それが不当に高いと思えば、加盟を中止すれば済む話である。(しかし、現実にはイニシアルフィーを払ってから「取り戻せないか」という相談は実に多い)

 重要な問題は、見返りが対価に値するかどうかが判明するのは、支払い時ではなく開業後に判明することである。対価に値しないフランチャイズ・パッケージをつかまされたとするなら、当該加盟店は契約期間中ずっと本部に対して潜在的不満を抱くことになる。

(5)開業後のトラブルを招く無理な資金調達

 開業後の加盟店の資金繰りの悪化は、本部からの仕入れ代金やロイヤルティの支払い遅延となりトラブルの最大原因となる。この資金繰りの悪化の要因は、本部が提案する開業資金の甘さと、加盟希望者の無理な資金調達による場合が多い。事実、本部の提示する開業資金モデルには、物件取得費、開業当初数ヶ月の生活費を盛り込んだ事例は皆無に等しい。万一、物件取得費がケースバイケースとするならば、物件取得費は別枠であることを明示するべきである。

2. 加盟希望者がトラブルに巻き込まれないために

(1)過剰な期待の排除

 フランチャイズ加盟は成功の確率が高いと宣伝されることにより、加盟希望者自身がフランチャイズに対して過剰な期待を持つことである。フランチャイズは決して成功を保証する仕組みでもないし、加盟担当者が言うほど安直に成功するものでもない。フランチャイズというものは、加盟後に地道な加盟店の努力と本部の献身的な指導が相まって成功するものである。

(2)フランチャイズは素人でもできるか

 加盟店募集パンフレットには、大抵「商売の素人でもできます」と書いてある。事実、フランチャイズとは、開業支援的色彩が強いので、この表現を一概に誤りとは言えない。
 しかし、加盟店が素人でいられるのは、開業して本部の開業応援の期間(せいぜい1週間)が過ぎる頃までである。開業応援スタッフが引上げた後は、1日も早く仕事をマスターして、素人の域を脱しなければならない。
 開業までは素人でも、開業後は早くオペレーションのプロにならないと成功は難しい。

(3)はじめに事業をする場所ありき

 事業を行う場所(店舗物件)を決めることが、すべてに優先する。どのようなフランチャイズ事業でも、場所が決まらなければ、何も決まらないし、決めようがない。物件確定の前にフランチャイズ契約を締結して加盟金を徴収するビジネスには絶対乗ってはならない。
(4)最高の立地よりも納得の立地
 最高の立地は簡単に見つかるものでは無いし、見つかっても家賃や保証金の面で採算が合わない場合が多い。それよりも、できるだけ多く、納得がいくまで立地を探しまわることが大切である。
(5)本部の事業計画を理解する能力を養う
 加盟交渉が進み、契約が近づくと本部から事業計画書が提出される。加盟希望者は、この事業計画書を鵜呑みにしてはいけない。加盟希望者に要求されるのは、資金管理能力である。せめて損益計算書、損益分岐点計算書、投資回収期間計算書等は理解する力が必要である。

Ⅳ 開業時のトレーニング段階のトラブル

1. 開業を目前にしての解約申出で

 それ程多いケースではないが、稀に発生するトラブルである。この場合には、本部が解約違約金を徴収するものである。それは、ノウハウの開示がすでに段階的に進行していること、加盟店の交渉に要した人件費や時間、出費した調査費などの実費等を、本部がカバーするためのものである。

2. トレーニングの内容と条件をめぐるトラブル

 加盟希望者に対するトレーニングは、通常契約締結後に行われる。このトラブルで深刻なものは、一つは加盟希望者が当該ビジネスに不向きであることが判明した場合である。具体的には、トレーニングの不合格、事業に不向きと判断した時である。再トレーニングという方法もあるが、事業不適者である場合には深刻である。加盟希望者の選別が絶対必要である。
 更に、深刻なのは、加盟希望者がトレーニングを受けた結果、本部に経営ノウハウや技術がないと判断した場合である。これは、フランチャイズ事業にまつわるリスクとして割り切るほかにない。事業で難しいのは、開業までである。開業してしまえば、努力次第で何とかなるものである。

3. 開店時の本部応援・販売促進に関するトラブル

 この段階のトラブルは大きな問題にはならない。むしろ、加盟店に取っては、開業と同時に多数の来客が来るのに驚く筈である。

Ⅴ  契約期間中に発生するトラブル

 当然のことながら、この期間中のトラブルが一番多い。あまりにもケースが多いので、特に問題が大きいものに限定して述べてみる。

1. 本部に起因するトラブル

(1)本部の売上・収益予測の実績との乖離

 本部の予測違いは、加盟店の事業基盤を揺るがしかねないので、深刻で裁判に発展するケースが最も高い。「経済産業省の調査」を見ても、加盟店が本部を訴える理由の役6割が、この売上・収益予測の実績との乖離になっている。
 この問題の解決は、本部主導であらゆる営業の建て直し策を計画し、それを加盟店共々実行に移す以外にない。

(2)本部の不振店対策がない

 加盟店が営業不振に陥ったときに、本部が何も対策を打たないが故に加盟店が抱く潜在的不満である。本部が対策を打つためには、その要因が判明していないと出来ない。優良本部は、過去の成功事例を積み重ね作成した「不振店対策マニュアル」を持っており、不振の要因を見極め、何らかの対策を打ってくれる筈である。

(3)本部の競合店対策がない

 競合のない商売はない。競合店が出店すると、加盟店は少なからず影響を受けるものである。優良本部は、過去の対策成功事例をノウハウとして集約した「競合店対策マニュアル」を持っている。
 本来の競合店対策とは、常日頃いつ近くに競合店が出店してもいいように、オペレーションを優れた状態に保っておくことを意味する。
(しかし、この意見ではアーリーステージの本部には競合店対策が無いことになり、加盟しては不安であることになる)

(4)本部のスーパーバイジングが行われない

 この不満は実に多い。極論するならば、半分以上の加盟店が「満足なスーパーバイジングが行われていない」と感じているのではないだろうか。あるメガフランチャイジー(売上高20億円以上)から「ロイヤルティの支払い意義が分からない。私は年間1億円以上のロイヤルティを支払っているが、それに値するスーパーバイジングを受けた覚えはない」との不満を漏らされたことがある。
 しかし、スーパーバイジングがないことが、トラブルとして表面化するのは、他の要因、たとえば売上・収益予測の未達をめぐる潜在的不満が顕在化したときに、表面化するものである。

(5)新商品・新メニュー・新サービスがない

 これらは、本部の最も重要な責務の一つであり、フランチャイズ・パッケージの将来に向かってのバージョンアップ(後で詳説する)を意味する。
 本部がこの責務を果たす意思や機能を持っていないことはトラブル発生の有無に関係なく、チェーンと本部そのものの存在が危なくなると言っていい。

(6)新業態や乗換え業態がない

 業態の陳腐化は、確立したときから始まる。本部は、来るべき新業態を開発しておかなければならない。
 古参の加盟店にとっては、古くなった店舗の改装時期が新業態への乗り換えのチャンスでもある。

2. 加盟店に起因するトラブル

 ここも重要と思う事例のみを記載する。

(1)経営姿勢とオペレーションに問題がある

 本部から見て不良店と不振店とは同じではない。不良店とは店が汚い、整理整頓がなされていない、マニュアルを守らない、お客さんからのクレームが多い、本部の提案に非協力的であるといった加盟店のことである。
 不振店とは、一生懸命に営業努力しているにもかかわらず業績が上向かない店である。加盟店が不良店になる最大の原因は、オーナーの経営姿勢にあると言っていい。勿論、不良店になるようなオーナーを加盟店として選んだ本部にも責任がある。

(2)支払い債務の遅延や滞留

 本部の売上・収益予測の見込み違いや無理な開業資金調達など、本部にもその責任の一端があるものを除き、それらの原因は、大半が加盟店の資金管理と労務管理能力に問題がある場合に絞られる。

(3)意図的なロイヤルティの不払い

 これは、加盟店が本部に対してロイヤルティが高い、その見返りがないとして、不払いの手段をとる要求貫徹行為の一つである。
 ロイヤルティ問題は、フランチャイズの基本的な部分に触れる問題である。本部が、加盟店のロイヤルティに対する不満に応える唯一の道は、フランチャイズ・パッケージのバージョンアップ(一般的にはブラッシュアップと呼ぶ)を継続して行うことである。本部の継続的指導援助は、フランチャイズ・パッケージのバージョンアップが行われて初めて可能になる。

3. 加盟店がとるべきトラブル対策

(1)本部が一目置く加盟店になる

 契約上なすべきことを果たし、ルールを守り、優良なオペレーションをしている加盟店に対しては、本部もそれなりの対応を迫られるものである。加盟店は、本部が一目置く加盟店になることである。
(2)事業者として自店の経営体制を構築する
 事業者として最も重要な管理能力は、労務管理と資金管理である。中でも労務管理能力のウエイトは高い。
 従業員を管理・監督し育成するのはオーナーの重要な役割である。人を使えるかどうかは、本部が加盟店オーナーを選定する際の最も重要な評価項目である。加盟店にとってフランチャイズ事業がうまく行くかどうかは、パートタイマーやアルバイトの協力を得て、その力をいかに戦力化するかにかかっていると言ってもよい。
(3)本部のオペレーションの基本方針は守る
 どこの本部にも営業の基本方針がある。どれも極めて基本的なことで、分かりやすい内容が多い。しかし、完全に継続徹底することは難しい。
 このような基本方針(例えば、QSC等)がある場合には、加盟店は、これを実行に移し守るべきである。
(4)報告の義務をきちんと果たす
 フランチャイズ契約書には、加盟店に対し、本部へさまざまな情報を報告する義務を負っていることが記されている。可能な限り自店の現状を報告しておくべきである。

Ⅵ フランチャイズ契約の中途解約に関するトラブル

1. 本部からの解約通知

 通常、契約書で解約原因を定めるものである。
しかし、解約原因に加盟店が違反した場合には、本部はどのようにすれば中途解約に踏み切ることができるのか。実際に解約に踏み切るタイミングと手続きは難しい。
 一般的には、「催告書」「改善申し入れ書」「警告書」「始末書」のような、本部が加盟店へ出す文書をどの時点でどの役職レベルで出すかなど、マニュアル化しておくものである。本部が解約権を行使する場合には、慎重な上にも慎重でなければいけない。

2. 加盟店からの解約申出でによるトラブル

 加盟店からの解約権行使に関する規定を定めた契約書は比較的少ない。しかし、中には「加盟店は、○ケ月前までに文書でもって解約を申し入れることができる」とする場合もある。この場合、解約違約金を支払う義務のある違約金条項は悲劇である。
 中途解約がトラブルになるのは、加盟店が現在のまま事業を継続しても開業資金の回収の目処がなく、赤字が常態化した場合である。更に深刻なケースでは、中途解約したくとも解約違約金の支払い能力がなく、事業を辞めるに止められない事態に追い込まれる時である。

Ⅶ フランチャイズ本部のあるべき姿

 本書はフランチャイズ・トラブルをフランチャイズビジネスの進行に併せて類型化し、トラブルの原因と解決方法を解説することを主目的とする著作である。しかし、随所に、フランチャイズに関する各種法規・規範類、例えば中小小売商業振興法、独占禁止法に関わる「ガイドライン」、倫理綱領、フランチャイズ契約等について解説をしており、いずれも的を得た紹介であり、説得性が高い。
 しかし、本書の白眉は、「フランチャイズ本部のあるべき姿」であり、これだけ理想的に本部を描き、明確にFC本部の指針を示した文献はいまだ見たことがない。是非、この一文のみでも良いから原典に当ってもらいたい。

1. 経営トップの機能

(1)創業者の役割と組織運営

 フランチャイズにおいては、本部の創業者が果たす役割と存在は極めて大きい。創業者の強烈な個性とカリスマ性が、加盟店から見た本部の魅力でもある。
 フランチャイズにおいては、時にフランチャイズ事業を起した創業者の発想、ロマン、熱意、事業意欲、経営能力なども人的無形資産としてソフトウエアに加えてもよい。
 重要なことは、創業者が作り上げたチェーンの経営哲学と理念が、本部の人と組織に伝承されているかどうかを見ることである。

(2)店舗出店戦略の策定とテリトリー制にまつわるトラブル回避

 フランチャイズ・ビジネスの店舗展開戦略を決めるのは、経営トップの重要な戦略的判断である。
 この店舗出店戦略が、本部の経営全般に与える影響は大きい。フランチャイズの維持運営というものは、新規店舗の開発よりも、既存店を長期に継続してスーパーバイジングして行く方がはるかに難しい。何故なら、既存店が安定して成長するには、加盟店オーナーの自助努力もさることながら、本部のフランチャイズ・パッケージの将来に向かっての地味で継続的なバージョンアップが不可欠であるからだ。

(3)店舗のスクラップ&ビルド政策上の超法規的措置

 経営トップの機能として、もう一つ重要な機能がある。それは、加盟店が経営不振に陥りクラップせざるを得ないときに、本部としてどう対処するかの経営上の判断である。
 フランチャイズ事業の展開には、チェーンストアー理論が根底にある。チェーン網を拡大するには、スクラップ&ビルド政策をとることが基本になる。それは、店舗のスクラップというものは、必然的に起こるからだ。あるいは意図的にスクラップせざるを得ない場合もある。
 難しいのは、原因が加盟店の経営不振による場合である。特に厄介なのは、経営不振の原因が本部の売上・収益予測の未達にある場合である。更に、中途解約する場合には、解約違約金を支払わねばならない契約が多い。
 本部としてあらゆる対策を打ったが、スクラップせざるを得ないという結論に達した時に、どのような幕引きをするかは、本部の経営トップが持つ健全な常識と超法規的措置に委ねることになる。

2. 本部スタッフの機能

 本部スタッフとは、経営・企画・計画・商品開発・管理と言った名称が付いた本部の組織上の部門である。加盟店開発やスーパーバイジングを行う部門をライン部門とするなら、スタッフ部門は、本部の中枢機能を受け持つ参謀本部に該当する。

(1)フランチャイズ・パッケージのバージョンアップ

 加盟店を指導援助する立場の本部は、加盟店の一歩は二歩先を、将来を見据えて歩かなければならない。それは、本部スタッフが、フランチャイズ。パッケージを継続的にバージョンアップし続けることを意味する。
 バージョンアップには二通りある。一つは創造的に変革することである。もう一つは営業上のアイデアや改良・改善で効率化が図れるもので、生産性が向上するバージョンアップである。
 加盟店を新規に開発するよりも、フランチャイズ・パッケージが陳腐化しないように維持し続けることの方がはるかに難しい。この難しいことをやるのが本部のスタッフ部門である。

(3)店舗の標準化の継続

 バージョンアップの中でも重要なのは、店舗の標準化の継続である、これは本部スタッフの重要な役割となる。
 店舗の標準化とは、直営店の営業実績からデータを蓄積し、蓄積されたデータをベースにチェーン展開に最適な規模のユニットを作り上げることを言う。

3. 加盟店開発機能

 加盟店開発に関しては、次の三つの機能がある。一つは店舗の標準化支援であり、二つ目は商圏調査と立地選定、三つ目に加盟店―ナーの募集と選定である。
 ここでは、加盟店オーナーの選定のみを取り上げる。

(1)加盟店オーナーの選定

 加盟店オーナーの事業者としての資質を見抜くことは、やさしいことではない。ここでも本部独自に、加盟希望者の資質、信用、資金調達力、オペレーション能力などを見分ける方法をノウハウとして確立する必要がある。多くのパートタイマーやアルバイトを、シフトを組んで使用する外食産業と、個人的な技能・技術を必要とするサービス業のそれとでは、加盟店オーナーを選定する基準は視点が違ってくるはずだ。

4. スーパーバイジング機能

 スーパーバイザーの職務内容は、加盟店の商標・サービスマークの使用方法に違反はないか、チェーンとしての統一的イメージは守られているか、オペレーションのレベルはどうかなどをチェックする管理・監督の仕事と、フランチャイズ・パッケージの内容を伝え、指導・援助する仕事、そして本部と加盟店との間で信頼関係を構築し、情報の橋渡し役を果たす役割などが挙げられる。
 特に、バージョンアップした内容を、加盟店に対して指導・援助することは、本部の契約上の重要な義務であることを忘れてはならない。

5. 知識共有の仕組みの構築

 人の知識は互いに共有し合うことで増幅される。フランチャイズにおいて、知識を互いに共有し合うことの重要性は、それがノウハウ形成の源泉となり、短期的には効率を高めコストダウンにつながり、長期的にはフランチャイズパッケージのバージョンアップにつながることにある。
 ここで、著者は本部内部で知識を共有する場合と、チェーン内部で知識を共有するケースを上げ、フランチャイズは「ナレッジマネジメント」であることを述べている。

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