フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

飲食業の社員独立制度の作り方

 飲食業の従業員は、独立希望者が他の事業よりも格段に多いと言われている。飲食業の従業員に入社動機を聞いてみると、「独立開業」「起業」という回答が一番多い。
 飲食業の中には、社員独立制度を作りたいと考えている企業も多い。今回は「飲食業の社員独立制度の作り方」を考え、事例として大成功をしている二例を上げて、参考に供したい。

Ⅰ 社員独立制度導入の目的

 社員独立制度の導入は各企業の経営理念、業態、直面した課題等により様々であるが、一応次のような導入目的が多いように思う。

1.  社員の高齢化への対応

 外食産業全体が成長期から成熟期に入り、社員の平均年齢が高くなる傾向がある。社員の待遇の問題が大きな経営問題になる時期がある。(マクドナルドの店長残業代問題等)
 一方、全ての店長を本部要員、もしくはスーパーバイザーに異動できるものではなく、本人の適正・能力等から店舗オーナーにすることが一番相応しいことが多い。これが、従業員独立制度を導入する目的にする会社の大半を占める。

2. 優良な加盟店育成の必要性

 毎年開催されるフランチャイズ・ショーを見ても明らかな通り、折角ショーに参加しても翌年から参加を見送るFC本部が多数あり、外食を事例にすれば、今年のFCショーの外食部門の参加社は50社に登ったが、新規出店社が実に26社(過半数)に達し、かつ過去に出展して久しぶりにFCショーに参加された企業も数社に達し、過去3年間連続出展した企業はわずか15社程度に止まる。
 これは折角、FCショーに多額の投資をして出展しても1社の加盟店も獲得出来なかったせいと判断される。
 そうなると外部からFC候補者を募るよりは、むしろ自社で経験を積んだ社員をFCとして独立させた方が間違いなく成功の可能性が高く、規模の拡大につながると判断するケースもある。

3. 社員を募集する際に「社員独立制度」があると、有利である

 新規に学卒社員を採用することは少子化の影響で年々難しくなる。特に外食は相変わらず3K職場と見られ、最初から外食希望の新卒社員は極めて少数であるとする調査がある。
 外食業の従業員の独立希望者は34.6%というデータ(フードサービス協会)があり、肯ける数値である。社員独立制度があれば、従業員が採用し易くなることも事実である。(新卒よりも外食業界からの移動)

4. 社員の定着性が悪い場合

 外食業の離職率は一般的に高いとされている。定着率を高めることと、人員採用は外食業にとって大きな問題であり、社員のモラルアップを図り、目的意識を持たせる観点からも独立制度を導入する会社がある。

5. 企業理念として経営者の育成を使命と考えている

 企業経営者を育成することが企業の目的であると考えている経営者がいる。フランチャイジーから起業して、多数店舗を経営するに到った複数出店者、もしくはメガフランチャイジーと呼ばれる人に多い。経営者育成が経営理念になっている事例は、フランチャイジーの成功者には多い。

Ⅱ 社員独立制度の概要

1. 資金問題

 社員独立制度を計画する場合の最大の課題は資金問題である。飲食業で独立する場合には、最低でも数千万円の資金が必要である。その資金を独自で調達できる社員はまずいない。
 しかし、独立する以上、最低500万円の自己資金(含む退職金)を貯金することが前提になるであろう。この程度の自己資金も用意できない人を独立させてはいけない。店舗経営者の最大の課題は資金管理と労務管理である。資金管理能力に欠ける人は独立に相応しくない。
 貴社が社員独立制度を考える場合、新築よりも既存の直営店の売却が望ましいと思う。それは、既に確定した売り上げ実績と利益実績があるからであり、不確かな売上高予測、利益予測よりも確実なデータがあるからである。
 この場合の売却金額は、帳簿価格がベースになり、利益額の何年分を暖簾として計上するかが問題である。独立する社員(以下ライセンシーと呼ぶ)には暖簾代は安くしてもらえる方が有難いし、後に続く人も出てくるであろう。
 500万円を超える金額の処理は次のような方法が考えられる。

地方自治体、国民生活金融公庫、銀行の融資等である。数千万円の資金を退職した社員に貸す金融機関は無いと思われるので、会社が保証したり、銀行融資の斡旋をする必要がある。
保証する場合、貸借対照表の脚注に保証の内容を記載する必要があるので、事前に「社員独立制度について」をリリースし、保証することがある旨を記載しておけば問題にはならないだろう。社員も独立のリスクを冒すので、会社も社員に対して斡旋、融資、保証等のリスクを分担することは必要である。
直営店の売却と並んで、リースする方法がある。リース会社に物件を売却して、ライセンシーにリースをしてもらう方法と、会社が直接リースする方法がある。
リース会社がライセンシーにリースする場合は、会社が保証する必要があるだろう。
直営店を5~6年の割賦販売する方法もある。その場合は金利の設定、回収金額の決定等煩雑な手数が必要となるが、ライセンシーはロイヤルティー、割賦金額、賃料等を本部に毎月支払うことになる。毎月の支払い金額が大きくなるので、売上金の本部送金が必要になるだろう。

2. 適格性審査

 独立希望者を全員無条件で独立させる訳にはいかないだろう。当然、資格審査、社内資格、審査基準等が必要になる。

① ライセンシーの資格付与
 すかいらーくは店長経験10年以上の独立希望者は、逐次独立させ、最終的には1千店のライセンシーを想定していると伝えられている。これは、店長の残業代の問題(店長は管理監督者)の中で出てきた解決策の一つと思われるので、やや例外として論じた方が無難である。
 一般論として、店長経験10年以上はいかにも長い。入社後5~6年程度、店長経験3年以上が適度な資格付与になるだろう。
 社員独立制度が新入社員を引き付ける力となるためには、精々入社後5年以内の独立でないと魅力に写らないであろう。現在、何人程度の独立希望者がいるか、直営店を何店舗まで売却できるか等の個別要因を検討して資格付与を決定することになるであろう。

② 審査基準
 ライセンシーの資格付与はあくまでも独立可能者を決めたのみで、それは言ってみれば、ライセンシーの最低基準を満たしたのみである。現実にライセンシーとして独立するためには、社内の資格審査が必要である。
 審査基準は各社の事例を見ると多様であり、貴社に適合した審査基準を作成する必要があるだろう。審査基準の事例は次のような例がある。
社内資格(5等級以上)、3期連続B評価(5段階評価の2番目)以上、会社への貢献度が高い者、本部が経営者として適格と認めた者等である。
 審査基準は透明性を高め、外部から判断できるようにすることが望ましい。もし、審査基準から外れた者には、外れた理由を明示し、その問題点をクリアすれば、来年度以降には合格する可能性がある等のケアーが必要である。
 勿論、年間独立者何名と定め、それ以上の人数は希望者が多くても「独立できない」等当初から明らかにしておいた方が無難である。

3. 独立希望者への特別教育

 優秀な店長がすべて経営者として優秀であるとは限らない。30代、40代で独立していくためには、会社はそれ相応の教育を施さねばならない。難しく言えば経営者教育であるが、世間を見渡しても、満足な経営者教育は殆ど存在しない。だから、京セラの稲盛和夫氏の盛和塾がもてはやされるのである。
 一般的な店長教育とは切り離して、最低でも経理(簿記3級程度)、財務(資金繰り等)、労務管理等の基礎知識を教えるカリキュラムが必要である。

4. ライセンシーへのその他の支援

 店長経験者は、立地調査、不動産契約、フランチャイズ契約書、法定開示書面等は教育されていない筈である。
 一般の加盟者以上に丁寧に、上記の知識の教育と支援は欠かせない。

Ⅲ 社員独立制度を成功させるための要因

1. 新店での独立

 既存直営店の売却では、いずれ限度が出てくる。将来的には新店で独立させる方式も検討しておく必要がある。新店の場合の問題点は、資金額の高騰、売上高予測の正確性、業態の選択等問題点は多い。
 特に新店で独立させる場合は、立地調査、不動産契約等の問題点が大きな課題となる。

2. 不動産契約

 直営店売却にせよ、新店独立にせよ、不動産契約は、多分本部と不動産オーナーとの賃貸借契約となり、ライセンシーには転貸することになるだろう。この場合、不動産所有者との間で、転貸借契約を可能とする契約(氏名もしくは社名特定)を締結する必要があり、かつ賃貸料は本部よりの支払いを求めるケースが多いと思われる。
 万一、ライセンシーにフランチャイズ契約違反があった場合(例えば競合禁止条項に違反した場合)には、転貸借契約は無効にして、本部と不動産オーナーの契約に戻して、直営店として経営を続行することもあり得る。
3. フランチャイズ契約の締結
 独立に際しては、本部とライセンシーとの間でフランチャイズ契約を締結することになる。あくまでも一般のフランチャイズ契約書と同じ内容であるが、場合によっては加盟金の一部免除(例えば半額)等の例外は、あっても良いと思う。
 ロイヤルティーは本部にとって継続的収入となるため、定められたロイヤルティーは徴収すべきであるが、加盟金は一時金であり、長い目で見れば大した金額ではないため、半額控除程度の恩恵は与えても良いと思う。

4. 成功例を作る

 社員独立制度を軌道に乗せるためには、まず独立1号店を必ず成功させることである。成功させるための要因は、売却する直営店の選択、ライセンシーの選択、経営者教育の徹底、支援策の徹底等全社を挙げてバックアップする心がけが必要である。

5. 複数出店のケース

 独立したライセンシーが事業に成功し、2号店、3号店と複数出店する可能性は高い。この場合、本部としてはどのような対応が必要であろうか。
 複数出店の場合は、加盟店の複数出店と全く同じ扱いで良いと思う。既に、加盟店と同じロイヤルティーを支払い、経営基盤が出来たから複数出店するのであり、ライセンシーだからと言って特別扱いする理由は無い。加盟金も他のジーと同様に2号店目、3号店目の加盟金をもらい、特別扱いする必要はない。
しかし、元社員であるので、当然本部に対する帰属意識も高く、それを阻害することの無い様、例えばFC部長や、たまには社長が訪店することがあっても可笑しくない。友好的関係の構築には常に留意する必要があるだろう。

6. 他チェーンへの加盟禁止

 独立したライセンシーが財務基盤を強化し、将来、他のFCチェーンに加盟することも考えられる。競合業態ならば競合禁止義務で止めることは出来るが、全く競合しない業態への加盟は、本部としては見過ごさざるをえないだろうか。
 筆者は、最初のフランチャイズ契約の際に覚書を交わし、貴社以外のFC加盟は認めないとするか、最低でも本部の承認を得なければならないとすることは問題ないと思う。このような規制を掛けるのは、独立に際して、本部は他の加盟店希望者とは異なる特例を認め、実施したために今日がある訳で、ある程度の規制は当然であると思う。
 しかし、一方ライセンシーには憲法に定められた「職業選択の自由」があり、どのようなFCに加盟しようが自由であることも、また事実である。覚書で貴社以外のFC加盟を排除することは、契約自由の原則に基づき、許されるけれども、いざ他チェーンの加盟を理由にフランチャイズ契約の破棄、更新拒否を行うと、法律上は問題になるであろう。
 筆者が取材した大庄の加盟店である(有)博庄の吉田敏博社長は、会社の定款で「大庄のチェーン店のみを展開する」と定めていると話された。本部と加盟店の信頼があれば、このような定款規定も可能であろう。
 即ち、力に任せて他チェーンの加盟を禁止するのではなく、ライセンシーがこの本部と手を携えて、チェーン展開をしようと考えるような関係の構築が重要である。
 また、ライセンシーが自分の力で新業態を立ち上げることも将来考えられる。FC加盟ではないので、これは問題視する必要はないだろう。事実、大庄の加盟店である(株)かんなん丸は、オリジナルブランドの居酒屋2店を経営している。

Ⅳ 直営店(RC)のみの場合の独立制度

 今までは、既にFC展開をしている企業の場合を考えてきたが、直営店のみで、FC展開していない企業の方が多い。しかし心配はいらない。直営店展開でわが国最大規模のFRを展開したすかいらーくグループのジョナサンが既に10店舗以上のライセンシーを独立させいずれも成功している。また、すかいらーくグループとして、将来1千店の社員独立制度も発表された。以下、簡単に直営店からFC店展開への道を示す。

1. 店舗運営マニュアルは必ず必要

 大きなチェーンではなく、10~20店舗程度の直営チェーンで、社員独立制度を導入する場合に、最低限必要なツールはまず店舗運営マニュアルである。直営店のみでも、店舗運営マニュアルは備えているものであるが、万一準備できていない場合は、これを機会に是非作成して、独立希望者に与えてもらいたい。マニュアルはしばしば改訂するし、メニュー改訂の都度、メニューの部分の差し替えが必要となる。

2. フランチャイズ契約書の作成

 独立社員対象でもフランチャイズ契約書を明確に作成する必要がある。社員独立制度のみであれば、詳細な規定は不必要かもしれないが、これを機会にFC化を進めるならば、弁護士に依頼してキチンとしたフランチャイズ契約書の作成が必要である。
 加盟金、保証金、ロイヤルティー等の決定が必要である。

3. 法定開示書面

 中小小売商業振興法では、加盟店希望者に、あらかじめ開示書面を交付し、かつ説明することを求めており、罰則規定もある。
 法定開示書面の作り方は、フランチャイズ研究所のHPを参照のこと。

4. スーパーバイザーによる経営指導

 直営店のSVが兼務で、FC店のSVを行えば良い。FC店が少数の場合は兼務で十分である。加盟店の数が増加したら(例えば10店舗以上)、FC専門のSVを育成する方が有効である。
 なお、FC化をしていない飲食企業のために、フランチャイズ研究所では、「社員独立制度の作り方」という無料セミナーを開催するので、希望社は下記へ申し込んでいただきたい。
fc@franchise-ken.co.jp

Ⅴ 独立制度で成功している他社事例に学ぶ(1)

 社員独立制度で大成功を収めている事例が、飲食FC企業には多数ある。中でも特徴のある2社の事例を紹介したい。
 まず、1社は居酒屋で最大規模を誇る(株)大庄の独立制度である。(株)大庄の記事は飲食店経営02年6月号より03年5月号まで12回に亘り連載された中村芳平氏の記事を参考にし、数字は同社のHPの最新の数字を基礎にした。

1. 庄やの社員独立制度

 (株)大庄は、昭和43年、たった6坪の若鳥焼店からスタートしたが、その後「庄や」「日本海庄や」など47の業態をほぼ全国で展開する日本でも有数の居酒屋である。
HPによれば、平成19年8月末の店舗数は

直営店舗 648店
小会社直営店舗   59店
FC店舗 214店
合計 921店舗

であり、多分平成20年8月末日には1千店舗の大台を超えているだろうと推定される。
 この大庄のフランチャイズ制度は独特である。原則として、フランチャイジーは外部から募集しない。すべて内部から独立希望者を募り、手堅い内部選抜をくぐり抜けた者のみが独立を許可される「社員独立制度」が特徴である。
 「庄やグループの歴史は既存の調理師会との戦いの歴史であった」と関係者が語るように、多店舗化を進めると、調理師会から派遣されてくる板前が全くいなかったり、店の一番忙しい時に「総上がり」(一種のストライキ)と称して、調理場を全員で放棄してしまう事態がしばしば発生するようになった。
 平社長は、この時期(1974年頃)、庄やの店舗運営の基本方針を次のように固めた。
①調理人は自前で育てる
②従業員のモチベーションづくり(独立制度、持ち店制度、所得倍増制度など)
③駅前立地
 この基本方針から読み取れることは、会社の規模拡大を調理師制度に依存せず、自らの力で調理人を育て、その調理人の中から独立希望者を独立させるのが、庄やの社員独立制度の基本であった。
 今や調理人の自社育成は常識であるが、そこに至るプロセスとして庄やのような苦闘があったことは記憶に残したいものである。

2. 社員独立制度のスタート

 平社長は社員に約束した独立支援を実行に移した。75年(昭和50年)には「春日店」「ひだ店」「西荻窪店」「神谷町店」をオープンさせた。これらはすべて平社長の個人保証による独立支援であった。
 個人保証では限度があるため、平社長は「中小企業協同組合法」に着目した。窓口は農林水産省であったが、「そんな協同組合は前例がない」といわれたが、81年3月に農林水産省の認可が正式に下りた。当初、組合員は19人、出資金410万円(1口1万円)、組合の借入限度額は1億円、独立者への貸付上限は1千万円でスタートした。90年には組合の借入れ限度額は15億円、独立者への貸付上限額は5千万円に引き上げられて、本格的にスタートした。
 「共同組合庄や和食グループ」は資金貸付けのほかに食材及び営業用消耗品を一括購入して、組合員に安く供給している

3. 社員教育制度

 庄やの人材育成は店長の育成のみではない。技術を生かした和食居酒屋というスタンスを保つには、調理人も自ら育成する必要があった。勿論、ただ技術を教えるのみではなく、将来の独立に備えてマネジメントの教育も必要としたことから、78年には社内研修施設として「日本料理専門学院」をスタートしている。この教育研修部門は、81年設立の「協同組合庄や和食グループ」に組み込まれていった。
 85年には労働省(当時)認可・東京都認定の「東京都調理高等職業訓練校」が設立され、本格的な社員研修制度がスタートすることになった。

4. 庄やの独立制度

 大庄グループの躍進を支えているのが「独立・オーナー制度」(独立のれん分けシステム)である。
 原則的に勤続5年以上、店長・調理長経験が3年以上になり、借入金の10%を自己負担できる社員は「協同組合庄や和食グループ」から5千万円を上限とする無担保融資を受け、会社を設立、独立店のオーナーになれる。この制度で独立したオーナーは110人(02年8月現在)で、独立FC店は214店(07年8月末日)であり、1店舗だけではなく、複数店を経営するオーナーが 3分の1を数える。最も多数店舗を誇るのは埼玉県に本社を置く「(株)かんなん丸」であり、67店舗、オリジナル業態2店舗、合計69店舗(2005年11月現在)63億円の売上高であり、新興市場に株式公開している。

Ⅵ 独立制度で成功している他社事例に学ぶ(2)

 ココ壱番屋は1974年に愛知県で喫茶店として起業した宗次徳二氏が、自店の3店舗目の店として78年1月にカレー専門店(1号店)をオープンしたことに始まる。80年4月にはフランチャイズ化に着手した。ココ壱番屋については、飲食店経営2008年4月号にトップインタビューの記事がある。また、やや古いが、宗次徳二氏著の「驚異の社長製造法」の内容から引用した。

1. ココ壱番屋はフランチャイズ制度から始まった

 ココ壱番屋の社員独立制度「ブルームシステム」は有名であり、1981年にスタートしている。70年代から80年代の初めにかけて、ココ壱番屋は毎年3月のフランチャイズ・ショーに出展し、加盟店募集を行っていた。
 事実、宗次氏の著作でも「ブルームシステムの1号店は1981年(昭和56年)4月に誕生した。BS店の誕生によってココ壱番屋の店舗は、直営店、FC店、BS店の3本立てになった。その比率は直営25%、FC25%、BS50%だ。これからもこの比率でいくのが良いと思っている」と述べている。
 しかし、現実には2007年5月期の店舗数は次の通りである。

 直営店舗数 298店舗
 FC店舗数  824店舗
 合計 1,122店舗 (海外店舗を含む)

 一般加盟を打ち切ったのは95年6月であり、上記のFC店舗の中には社員独立のBS店と、外部から募集したFC店が含まれていると思われる。

2. ブルームシステムの仕組みと独立開業までのステップ

 ブルームシステムとは「独立候補社員として壱番屋に入社し、安定した収入を得ながら、店舗のオペレーション、人材マネジメント、教育、経営のノウハウを学ぶ。独立まで最短2年、平均4~5年である。

 ステップ1 正社員として入社
 ステップ2 9つの等級をクリアしていく
9等級~5等級(5等級までは、調理技術を身に付ける)
4等級  人件費適正コントロール (マネジメント能力の習得)
3,2,1等級(店長)
 ステップ3 独立資格取得
独立候補社員として入社
最低2年の勤務期間が必要
3等級以上の取得
独立時の自己資金として200万円以上が必要
 ステップ4 独立準備
資金相談(自己資金以外に壱番屋の債務保証制度が利用できる)
物件探し(本部にストックされた全国の物件情報から選択可)
工事打合せ
店舗完成
 ステップ5  開店
開店2日間は本部のメンバーが手伝う

3.出店形態別店舗数とオーナー数(93年5月末)

 創業者の宗次徳二氏が、ブルームシステムが軌道に乗り、先行きがはっきりしてきた93年5月に旭屋出版より「驚異の社長製造法」という図書を出版された。FC企業は概してフランチャイジー情報を公開しないものであるが、本書は稀にみるフランチャイジー情報を公開している図書である。筆者が現在一番興味を持っている「複数出店社」に関する詳細な情報であり、データとしては古いが、BSシステムとFCの共存状態を理解するためには貴重な資料である。
 現在、同社は一般のフランチャイズ募集は打ち切り、社員独立制度(ブルームシステム)のみに変わったが、その途中の経過が判る公開情報であり、研究者にとっては、喉から手が出るほど欲しい情報である。
表―1 総店舗数とオーナー数

  ブルームシステム店(BS) フランチャイズ店(FC店) 直営店(RC)
  RC社員からの独立 FC及びBS社員からの独立
総店舗数 72店 51店 49店 58店 230店
オーナー数 40名 33名 31名   104名

表―2 所有店舗数別オーナー数
  ブルームシステム店(BS) フランチャイズ店(FC) 直営店(RC) 合計
  RC社員からの独立 FC及びBSからの独立
1店舗 26名 22名 19名   67名
2店舗 8名 8名 7名   23名
3店舗 4名 1名 4名   9名
4店舗   1名 1名   2名
5店舗          
6店舗   1名     1名
7店舗          
8店舗 1名       1名
9店舗          
10店舗 1名       1名
合計 40名 33名 31名   104名
社長(法人成り) 25名 14名 20名   59名

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