フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

飲食業の利益の源泉は人時売上高に有り

 「売上高が減少した、若い人が集まらない、原材料価格が高くなった、石油価格高騰によりお客様が減った」日本の飲食業を取り巻く環境を表現するならば、このような言葉が一番適していると思う。
 しかし違う。この時期にも既存店売上高を16ケ月連続(06年3月~08年10月)でクリアーし、過去最高益を更新している企業がある。この企業の活動を通して、日本の飲食業のこれからの在り方を考えるのが、11月号の目的である。多くの悩める飲食業の社長や店長に読んでもらいたいと思い、まとめたものである。

Ⅰ 企業の概要と成果給支給による生産性の向上

1. 企業紹介

 埼玉県に本社を置く(有)パートナーが、その企業である。このFC市場レポートの07年の9月、10月、11月号の3ケ月に亘り連載した、風風ラーメン8店舗を展開する典型的な法人・複数出店社であり、社長は鈴木敏平氏(59歳)である。
 現在の年商は6億円(1店舗平均7500万円)で、営業利益は概ね1億円(営業利益率16%程度)である。店舗は埼玉県7店舗、東京都1店舗であり、来年には更に1店舗を出店する元気企業である。08年5月期の利益は過去最高を更新している。
もう少し、具体的に見てみると
 08年5月の全店売上高  5,150万円   前年対比 108.4%
 07年5月の全店売上高  4,750万円
社員は6名で、社員1人当たりの売上高は年間1億円となる。パート・アルバイト(以下P/A)の労働時間数は1年間で減少している。
07年度(06年6月~07年5月)のP/Aの労働時間 11,290時間
08年度(07年6月~08年5月)のP/Aの労働時間 10,202時間
1年間のP/Aの労働時間の減少は
 11,290-10,202=1,088時間
仮に時給1千円とすると 1,088時間×1,000円=108万8千円の減少となる。売上高は増加したが,P/Aの労働時間数、時給総額も減少したことになる。 これだけで、史上最高益を更新したのであろうか。違う。
ここで、重要な役割を果たすのが“人時売上高”という概念である。

2. 人時売上高の重要性

 鈴木社長に飲食業の成功のポイントを聞くと、必ず次の言葉が返ってくる。

論点の中心となっている人時売上高は、次の計算式で計算する。

月間売上高÷月間総労働時間数=人時売上高

 この人時売上高は、ある種の労働生産性であり、人時売上高が上がることは生産性が上がったことを示す指標である。
(有)パートナーの人時売上高の推移は次の通りである。

06年(1月~12月) 4,560円   100
07年 (1月~12月) 4,795円 +235円 105.2%
08年 (1月~10月) 5,140円 +345円 112.7%

 3年間の間に、生産性が12.7%上昇している。これが、過去最高益を更新した真の理由である。ちなみに、08年10月の全店人時売上高は 5,193円であり、多分ラーメン業界では、最高の数値であろう。これを店舗別に見ると次の通りである。

A店舗  6,301円  E店舗  4,702円
B店舗  4,848円  F店舗  5,114円
C店舗  5,359円  G店舗  5,118円
D店舗  4,747円  H店舗  5,263円

 最高A店舗 6,301円、最低D店舗 4,702円 この差は1,599円である。これは、店舗の動線の変化、お客の混雑度、客単価の差など様々な要因によるものであり、同じオーナーでも一律にすることは出来ない。

3. 成果給の導入(第一次)

 鈴木社長は、上記の理論③に従い、次のような手順で3年間に亘り成果給を導入し、成果を上げている。まず06年3月に3つの成果給を社員、P/Aに導入した。
 役職別成果給の一覧

役   職 前年売上高 人時売上高目標 粗利益率%
店   長 1万円 1万円 5千円
副 店 長 5千円 3千円 2千円
キャスト 時給+10円 時給+10円 時給+10円

 この一覧表を簡単に説明する。まず、商売にとって一番大切なことは売上高である。前年の売上高をクリアーすれば1点、102%になれば2点、104%になれば3点であり、1点につき店長は1万円、2点は2倍、3点は3倍の成果給を翌月の給料で支払う。副店長(P/A)は1点で5千円、以下同じである。キャスト(P/Aで副店長でない人)は時給が10円、翌月のみアップする。以下同じである。
 次に人時売上高に対する成果給を説明する。この人時売上高は店によって基準が異なるので、店長会議で、店舗毎のあるべき人時売上高を自主的に決めさせ、その基準値の達成によって成果給を翌月支払うものである。基準クリアーで1点、100円アップで2点、200円アップで3点とする。1点につき店長は1万円、2点なら2万円が翌月支払われる。副店長ならば、1点で3千円であり、キャストにも1点で時給が翌月10円アップ(3点ならば30円アップ)である。
 人時売上高を売上高と並んで成果給に反映している事例は、まず無いだろうと思う。
 続いて重要なものは粗利益率である。粗利益=売上高―原価であり、目標値である粗利益率%は、いかに原価を下げ、ロスを排除するかということである。
この粗利益率%は社内8店舗の上位2店に2ポイント、下位2店舗に0ポイントを与え、中間の4店舗には1ポイントを与える。店長は1ポイントで1万円、副店長は1ポイントで2千円、キャストは翌月の時給が+10円となる。
 この成果給で、オーナーが考えている政策は売上高とフードコスト(F)、労務費(L)の3つである。考えてみれば、飲食業の経営で最も重要な要素は売上高とFLコストである。いかなる飲食業でも、この2要素が利益の根源である。ちなみに、同社の08年10月度のFLコストは56.05%である。(人件費には勿論成果給を加算している)更にロイヤルティ3%を加算したFLRは59.05%であり、60%を切る「FCの成功の方程式」に収まっている。
 何故、成果給が結果として会社の売上高、利益に大きく貢献したか、という仕組みについては最後に触れる。

4. エネルギーに対する成果給

 昨今、省エネ、脱炭素社会が言われているが、パートナーでは06年12月に(3年前)に、省エネに対して配慮している。しかし、あくまでもコスト削減の観点からであったことは言うまでもない。
 電気、電力、ガス、水道の月初めのメーターから月末のメーター数を控除し、営業日数で割れば、1日のエネルギー使用量が出る。(エネルギー価格の高騰は除外する工夫)4つの指標が前年より下がれば、次の成果給を翌月支払う。

店長 5千円  副店長 2千円  キャスト 時給に+5円

5. 余裕出勤に対する成果給

 当社にはタイムレコーダーが無い。しかし、出勤した時刻にレジスターを打刻し、そのレジスターの印字したものを各自の名札に1ケ月分貯めることになっている。ギリギリに出勤する人もあれば、遅刻する人もある。若い人が多いのだから、それはある程度止むを得ないとオーナーは考えている。
 しかし早めに出勤すれば、その時間内に当日の仕事の段取りを考える余裕がある筈である。
 オーナーは30分前に入店することを、余裕率と呼び、その余裕時間の月間平均を出し、上位3名の人に成果給を支払うことにした。(07年9月導入)
 店長は1万円、副店長は5千円である。これにより、ギリギリ入店が減少して、常時5人は30分前に出勤するようになり、仕事の段取りが良くなり、生産性が上がったと評価している。
 店長、副店長が早めに出勤し、「仕事はしないが、段取りを考えている店長の姿勢」を見ることにより、キャストにも良い影響を与えているそうである。

6. 適性在庫に対する成果給

 同社の原材料在庫は0.8日分だそうである。この0.8日分より少なくすれば店長に5千円、副店長に2千円の成果給を支給する。(07年9月導入)
 オーナーによればゲーム感覚で挑戦しているそうである。

7. 的中率に対する成果給

 同社では売上高予算を店長の実行予算に任せている。これは珍しいケースである。どこの企業でも、部門別売上予算を積上げ、最後は代表者の「ヒトコト」で、何%かのカサアゲが行われるものであり、多分大企業でも事情は同じであろう。
 同社では月別売上高予算(実行予算)は店長に任せている。その実行予算の精度が高ければ適切なレイバーシフトを組み、適正発注に結びつく筈である。月別売上高予算は日別売上高予算に分解される。その日別予算が上下5千円以内に収まった場合は的中と呼び1回につき1ポイントとして、9ポイント(3割)に達したら、店長に5千円の的中率成果給を翌月支払う。但し、一番的中率の低い店長は、翌月5千円を控除する。07年10月から実施であるが、ここまで来ると、正にゲーム感覚である。

8. 10分前オープン

 副店長はP/Aから選抜し、キャストとは、副店長手当、各種成果給で区別している。07年8月から副店長を前半、後半出勤の2名制とした。同社の営業時刻は午前11時から午後10時50分となっているが、07年10月より10分前営業を開始した。即ち、営業開始の時刻を朝の10時50分にしたのである。この10分前オープンに対し、前半を担当する副店長に月間3千円を支給している。これは強制ではなく、お店の自主性に任せているが、大半のお店は10分前営業を行っている。勿論10分前営業にしたからと言って、10分前からお客が入る訳ではない。事前の準備を十分に取るためであり、スタンバイの時間を10分前営業と称したものである。
仕事は段取り6割と言う。段取りさえ出来れば、スピーディーな仕事が出来るであろう。

9. アイドルタイムの一人営業

 ラーメン、うどん、そばのような業態は1日フル営業をすると必ずアイドルタイムが生じる。従来はアイドルタイムも2人制を敷いてきたが、考えて見れば、一人営業も不可能ではない。そこで08年5月より、できる店からアイドルタイムを一人営業に切り替え、その時刻に働くP/A、副店長の時給を100円アップしている。これによりその時刻の人時売上高は高くなり、働く人も100円アップで収入が増える。

Ⅱ 労働条件の改善

 成果給の導入による人時売上高の向上や、エネルギーコストの削減を述べて来たが、それだけでは誰でも出来ることである。
 オーナーの真価が発揮されるのは、次に述べる労働条件の向上を図っている点である。

1. 店長に対する時間外手当の支払い

 日本マクドナルドが店長を管理監督者として扱い、残業代等を支払わないのは違法としてA店長が未払い残業代等の支払いを求めた訴訟で、東京地裁は08年1月28日に「店長は管理監督者ではない」として、日本マクドナルド社に対して未払い残業代等755万円の支払いを命じる判決を下した。(詳細はフランチャイズ研究所HPのFC市場レポート4,5月号を参照)
 この判決に対する大手チェーンの反応は早かった。セブンーイレブン・ジャパン社は「直営店の店長は管理職ではあるが、残業代は支払う」として、店長手当てを大幅に削減して、3月1日より残業代を支払うように変更した。
 この時点では、大手チェーンの直営店に限定された動きであったと思うが、なんと同社では、08年4月1日より店長に残業代を支払う制度に切り替えた。多分フランチャジーとしては、全国的に見ても稀な事例ではないだろうか。
 内容を詳しく分析しよう。法定労働時間は月間168時間である。労働基準法で認められている残業時間は月間45時間(実際には抜け道が沢山あり、無制限と言っても言い過ぎではない)である。そこで、基準法が認めた45時間の残業代は店長手当を支給する。213時間(168+45時間)を超える残業時間に対しては残業手当を支払う。但し、月間250時間までで、それを越えて残業することは認めず、万一不測の事態により250時間をオーバーした場合はマネージャー会議に申告し、その許可があった場合のみ残業代の支払い対象としている。
労働時間規制は、次の通りである。

店長  250時間
副店長  240時間
キャスト  200時間

 残業手当の支払いにより、オーナーと店長の関係はスッキリしたそうであり、「店長は管理職であるが、残業手当は払う」という方針(FC市場レポート5月号の提言)は、誠に時宜にかなった提言であったそうである。
たかだか店舗数8店舗、売上高6億円の企業にも、時代の波はヒタヒタと押し寄せている。
 しかし、驚くべき時代適応能力である。

2. 時給の30円アップ

 同社では08年5月期の決算は史上最高売上高、最高益の更新となり、会社の内容も著しく改善された。この状況を受けて、08年7月にP/A(副店長、キャスト)の時給を一律30円上げ、880円(最低)とした。世間が上げるから上げたのではなく、会社の決算を受けて30円アップしたのである。勿論、経験により940円まである。年間の会社負担の増加額は300万円の見込み。
 P/Aの時給を会社の経営改善に応じてアップする等は、通常できることではない。オーナーのバランス感覚の良さが見られる。

3. 社員の定期昇給制度の開始

 バブル崩壊の過程でデフレの進行により、定期昇給制度が無くなった会社は多い。毎年の春闘の時期には、せいぜい500円か600円の原資で、妥結し、成果はボーナス払いが当然とされる時代になった。多分今冬にはボーナスの増加もなくなり、むしろ減少する気企業が多いであろう。
 同社では08年9月から社員の定期昇給を始めた。初任給は18歳で20万円であるが、1年経過する度に毎年5千円づつ昇給させ、26万円まで昇給させる。26万円が高いか低いかは、意見のある所であるが、日本マクドナルド社の店長の基準給は31万円(一律)で、それに加えて評価手当がS(20%)の場合10万円、A(30%)の場合6万円、B(40%)の場合3万円、C(10%)の場合は0である。(東京地裁判決文より)
 かってマクドナルド社の店長の年間収入は1千万円と言われ、外食業の中では群を抜く好待遇であると噂された。S評価の店長の年収は779万2千円で、C評価の店長の年収は579万2千円である。(東京地裁判決文より)
 日本マクドナルド社の店長と、1加盟店の店長の年収は比較する方がおかしいが、毎年5千円の昇給を約束するオーナーのやり方には賛辞を呈したい。
 筆者は、日本の景気が上を向かないのは、従業員に対する配分が少なすぎたことが大きな要因であると考えている。確かに株主に対する配当金は増えた。場合によっては2倍近く増加した例もある。また経営者に対する報酬も著しく増加した。退職金をなくした代わりに、取締役の年収が著しく増加した事例は枚挙に暇がない。
 しかし、働く人に対する給与は全く上がっていない。国内消費が増えない限り、日本の景気が上を向く筈がない。
 1複数出店フランチャイジーではあるが、定期昇給の復活には、心から賛意を表したい。

4. 土日祭日の時給100円アップ

 P/Aに対する時給を、土、日、祭日は100円アップした。(08年10月より)従って、土日祭日の時給は980円(最低)となる。これも年額300万円の負担増になるそうである。
 オーナーは、求人募集費を年間300万円支払ってきたので、その費用の前払いであると説明してくれた。即ち、土日祭日の時給を100円アップすることにより、定着率が高くなり、これから成果が出てくるであろうと希望を語っていた。
 07年と08年(10月まで)の人時売上高は345円上がっているので、この100円アップは理論的には十分支払える金額である。しかし、それを「求人募集費の前払い」と位置付けるところがユニークである。

Ⅲ 成果給と労働条件のアップの結果はどうなったか。

1. 成果給は具体的に幾らになったか。

 08年10月の詳細なデータが手元にある。オーナーの許可をもらったので、出来る範囲で公開する。

店舗別 成果給 店舗別 成果給
A店舗(キャスト)  21,425円  C店舗(キャスト)  28,998円
店長  57,500円  店長  90,000円
副店長(前半)  17,000円  副店長(前半)  18,000円
副店長(後半)  17,000円  副店長(後半)  41,000円
B店舗(キャスト)  19,935円  D店舗(キャスト)   3,230円
店長  65,000円  店長   5,000円
副店長(前半)   22,000円  副店長(前半)   2,000円
副店長(後半)  30,000円  副店長(後半)   5,000円
E店舗(キャスト)  10,328円  G店舗(キャスト)  17,020円
店長  30,000円  店長  50,000円
副店長(前半)  17,000円  副店長(前半)  19,000円
副店長(後半)  13,000円  副店長(後半)  49,000円
F店舗(キャスト)  23,115円  H店舗(キャスト)  22,888円
店長  95,000円  店長  62,500円
副店長(前半)  23,000円  副店長(前半)  13,000円
副店長(後半)  35,000円  副店長(後半)  41,000円

成果給合計    963,938円
店長の最高は 95,000円  店長の最低は 5,000円 19倍の差
店長の成果給の平均は 56,875円
副店長の最高は49,000円  副店長の最低は2,000円 24倍の差
副店長の成果給の平均は 22,625円
 やはり店長にとっても、副店長にとっても成果給は、かなり大きな金額と言える。

2. 会社の年間負担額は

 成果給を月間100万円で計算すると、年間1,200万円の負担増となる。
 かつ労働条件の向上に対する負担額は(計算できる範囲で)次の通りである。
①P/Aの時給30円アップ
 年間負担増  300万円
②土日祭日の時給100円増
 年間負担増  300万円
③店長の残業手当、社員の定期昇給制度の開始
 まだ実績が1年間でていないため、不明だが、相当の負担増となる筈である。
④年間の減額
 Ⅰの1で述べたP/Aの年間労働時間数の減少(売上高が上がる中で)は1088時間であり、仮に時給1000円(成果給が乗るため正確な数字は出ない)で計算すると  1088時間×1000円= 1,088千円
 従って、年間の負担増は
①成果給の年間負担額    1,200万円
②P/Aの時給30円アップ   300万円
③土日祭日の時給100円アップ 300万円
④P/A労働時間数の減少   ―109万円

合   計     1,691万円  の負担増となる。

 3. 会社の利益はどうなったか
 Ⅰの3で述べた通り、一番大きなものは「売上高、人時売上高、粗利益率」に対する成果給であり、これは07年3月導入済みであり、06年度、07年度の決算で有効性(会社にとっての収益性のアップ)は実証済みである。06年度(07年5月度決算)、07年度(08年5月度)揃って史上最高売上高、史上最高益を更新している。
 この結果に基づいて、一連の労働条件向上策が実施された。
①店長残業手当の支払い  08年4月1日より
②P/Aの時給一律30円アップ 08年7月1日より
③社員の定期昇給の開始  08年9月1日より
④P/Aの土日祭日の時給100円アップ 08年10月1日より
 従って、一連の労働条件向上に伴う人件費アップは08年度決算(09年5月期)で明確になる。
 勿論、オーナーとしては十分な見込みがあって実施したものであり、日次決算を行っているが、十分会社の利益も上を向いているそうである。

4. P/Aの最終時給は幾らになったか

 オーナーによれば、P/Aの時給は1400円程度になるそうだ。人により、前月の成果により異なるが、結果としてP/Aの時給は1400円になるそうである。
 ちなみに、同社のスローガンは「時給地域一番に挑戦」である。
 ここまで述べると、「若い人が集まらない、売上高が低下した、ガソリン代価格の高騰でお客様が減った」という外食業の三重苦は、同社では全く関係ない。極めて順調な業績である。
 もう一つの「原材料価格が高騰した」は、フランチャイジーの同社としては手の打ちようがない問題である。これは本部が対応すべき問題であり、既に部分値上げの形で進行している。値上げをしてお客様数を減らさない工夫はフランチャイジーの努力に関わる問題である。

Ⅳ なぜ、成果給はこのように大きな成果を上げたか。

1. 情報の公開

 同社では、毎日○月○日現在実績数値を“全店比較表”として、全店の社員掲示板に掲示している。社員もP/Aも今日現在の自分の成果給の計算が出来る。この情報の公開は、全員のやる気と競争心をあおり、結果につながっている。
2 コンピューターの駆使
 オーナーは自力で開発した店舗管理システムである“スズ・ナビ”と呼ぶシステムを開発し、それを駆使して、あらゆる管理データをスズ・ナビで管理している。
 コンピューターは安くなった。15万円も出せば、性能の高いノートパソコンが買える。問題は活用力である。
 ロータス1・2・3を使用したシステムであるが、1店舗月1万円の使用料で売っている。システムはUBSメモリーカードで送られるため、いとも簡単に利用できる。
 しかし、システムは利用できても、オーナーの「日本の飲食業の社会的地位を上げたい」という熱意がないと、これだけの成果は上がらないだろう。

Ⅴ 再度、人時売上高は最重要かを説明する。

1. 人時売上高は  月間売上高÷月間総労働時間 で求められる。

 この値を高くするためには、売上高を上げるか、売上高を維持して労働時間を減らすか、2つに1つしか道がない。
 これと似た概念で人時生産性がある。これは 月間粗利益÷月間総労働時間で求められる。
 粗利益は売上高―原価であり、生産性を示す。原価率が一定ならば、人時生産性に代えて、人時売上高が利用できる。
 2008年中小企業白書になさけないデータが掲載されていた。中小業の労働生産性の水準である。白書によれば、飲食店・宿泊業の人時生産性(2005年度)は1842円であり、すべての産業の最下位である。
(ちなみに同社の人時生産性を計算して見ると5150円×0.68=3,502円である)
 白書の示した労働生産性は製造業3838円、情報通信業4687円、卸売業4026円、小売業2638円、その他サービス業3814円である。
 中小飲食業では一番高い部類に入る同社の労働生産性も、決して高くない。これが日本の飲食業の実態である。
 筆者は過去9年間に亘って、日本の飲食業108店舗の人時売上高を調査してきた。この9年間、全く向上していない。飲食業が産業と呼ばれるためには、せめて55000円程度の人時売上高を実現しなければならない。

2. 人時売上高は支払い能力を示す。

 人時売上高から原価、人件費、家賃、ロイヤルティ、光熱用水費等が支払われるのである。人時売上高は、その店舗の支払い能力を示す。この指標が高くなければ、十分な労務費も払えない。最低賃金(法定)がジリジリと上がり、今年は40円程上がった。民主党のマニフェストによれば、最低賃金は全国平均で1千円に引上げるとしている。参院第一党である民主党が遠からず政権を手にする時期もあるだろう。全国平均の最低賃金を1千円に引上げた場合に、どれだけの飲食店が生き残れるだろうか、貴方のお店は生き残れるか、真剣に考えてもらいたい。

参考資料

飲食店経営2001年9月号  「FC加盟店の成功者たち」

飲食店経営2002年11月号 「人時売上高5200円を達成するソフト」

飲食店経営2007年11月号 「中小飲食店でもできる社員独立制度」

フランチャイズ研究所HP「FC加盟の成功者を分析する」

「     〃    (その1)」2007年9月号

「     〃    (その2)」2007年10月号

「     〃    (その3)」2007年11月号

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