フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

2008年フランチャイズ業界を振り返る

Ⅰ  フランチャイズ全般

1. 20兆円の大台に乗ったフランチャイズ業界

 (社)日本フランチャイズチェーン協会は2007年度(08年3月決算含む)のフランチャイズ統計を10月に発表した。
直営店・加盟店の全店売上高(システムワイドセールス)は、遂に20兆3,037億円となり、20兆円の大台に乗った。これは前年比3.6%増であり、伸び率も06年度の1.1%増に比較すると、相対的に伸びた。
 チェーン数は1,246チェーンで52チェーン増加した。しかし店舗数は23万5,686店舗に止まり、前年比246店舗増となった。チェーン数が増加した割には、店舗の伸びは低迷。FCチェーンが小型化したせいである。
 小売業の店舗数は249店舗減少した。2ケタの伸びを見せる「自動車・自転車関係小売」「家具・什器・家庭用品関係小売」「衣服・靴・身の回り品小売」に対して、「各種食料品小売」は758店舗、「飲食料品関係小売」は1,216店舗、「菓子・パン小売」は458店舗の減少であり、食料品関係だけで2,432店舗減少している。
 外食業全体の店舗数は723店舗の減少である。 外食業で落ち込みが大きいのは「ラーメン・餃子」が211店、「持ち帰り寿司・弁当店」が326店、「焼肉店・その他一般レストラン」が313店である。この3業態の減少は850店に達する。
 サービス業は1,218店舗増加したが、特に増加が著しいのは「理容・美容」が376店、「リース・レンタルサービス」が873店、「その他サービス」が1,996店である。
 売上高では、総売上高は7000億円以上増加して3.6%増である。小売業は約13兆6千億円で4.9%増である。外食業は4兆36億円で0.9%減となった。サービス業は2兆6600億円で前年を3.8%上回った。

2. 世界経済は金融恐慌から実態経済の大幅悪化に進む

 2008年のフランチャイズ業界の動向を考える上で、世界的な金融恐慌と実態経済の大幅な悪化を考慮せざるを得ない。100年に一度と言われる米欧の金融恐慌は9月中旬の米大手証券リーマン・ブラザースの経営破綻により、世界的な大不況になった。
 グローバル化が進んだ世界経済で初めて起こった大規模な金融・経済危機は、世界同時に高速度で進行した。
 11月の経済指標は記録ずくめである。国内自動車販売は27.3%減、工作機械受注は62.2%減、企業倒産件数は1万4,284件、企業物価は1.9%下落、ガソリン店頭価格は15.5%下落、東証1部売買代金は37%下落である。トヨタ自動車は、創業以来初めての営業赤字となった。
 海外に目を転ずると米国の雇用者数53.3万人減、米主要小売業の売上高2.7%減、NY原油19.7%下落、中国の輸出2.2%減と先進国もブリックスも記録的な大幅悪化である。(日経新聞・12月12日)
 特に、日本では雇用者全体に占める非正規雇用者の割合が34.5%に増加しているため、派遣、臨時従業員の解雇、採用内定の取り消し等が急速に進み、雇用などへの先行き不安から消費者も財布のヒモを急激に引き締めている。
 この金融恐慌、大不況は08年のフランチャイズ業界を直撃している。それは消費の不振と銀行融資の引き締めである。

3. 国際化の進行

 少子高齢化の進む日本市場は、長い目で見れば成長に限界があることは自明である。長期的展望に立つならば、アジア・オセアニア・アメリカ等へフランチャイズ企業も国際化を進めざるを得ない状況にある。
 勿論、国内市場が成熟化して発展の余地が無い等と言っているわけではない。相変わらず、日本の人口は1億人を超える大市場であり、経済的にも豊かであり、「クールジャパン」として世界の評価は高い。
 しかし、30年~50年というロングスパンで考える場合、フランチャイズ企業にとっては、国際化は今から手を打つべき重要課題である。
 (社)日本フランチャイズチェーン協会は1996年に国際委員会を設けて国際化の進展を図ってきた。「フランチャイズエイジ11月号」は2008年度海外展開状況のアンケート結果を発表しているので、招介したい。この調査は今年で8年目となり「海外展開状況に関する質問」を正会員および準会員を対象に実施し、回答率は約79%(98社)となり、精度の高い調査となった。
 以下、簡略化のため、表で示す。

表―1  海外展開状況について

回     答 企業数 構成比% 増  減
①すでに展開している 45 45.9 +5社
②検討中または近い将来展開予定  6  6.1 ▲4社
③全く展開していない 41 41.8 +5社
④対象外  6  6.1  0社
合       計 98 100.0 +6社

対象外:日本国内のみをテリトリーとしたマスターフランチャイズ契約等

表―1-①既存展開40社の業種別内訳

業    種 企業数 前回増減数
CVS  0社
小売業  0社
外食業 28 +4社
サービス業 +1社
外食&サービス  0社
合     計 45 +5社

表―1-② 海外展開検討中6社の予定地域

業種・業態 地    域
外 食 業 ラーメン 中国
宅配ピザ カナダ
居酒屋 未定
持ち帰り弁当 未定
サービス業 複合カフェ 中国,韓国、東南アジア
複合レンタル 未定

表―2 展開先国(地域)及び業種別店舗数

国・地域名 企業数 業種別店舗数 合計店舗数
CVS 小売業 外食業 サービス業
韓国 12 4911 746 5660
台湾 19 2280 280 42 2606
フィリピン 201 1342 1543
中国 19 501 16 377 22 916
タイ 11 530 319 853
アメリカ 14 69 97 114 282
香港 82 84
シンガポール 66 67
ベトナム 38 38
インドネシア 14 13 27
マレーシア 14 14
フランス 12 12
その他 12 14
合   計 8492 137 3404 83 12116

4. (社)日本フランチャイズチェーン協会35周年を迎える

 (社)日本フランチャイズチェーン協会は1972(昭和47)年2月に設立され、昨年設立35周年を迎えた。
 2008年1月7日の賀詞交換会の席上、JFA35周年記念シンポジュームが開催された。

テーマ 「JFA35年の軌跡と今後の方向」
コーディネーター 為定 明雄氏(日経MJ編集長)
パネリスト 加藤 充氏(JFA会長/ユニバーサルホームサービス代表)
櫻田 厚氏(JFA副会長/モスフードサービス代表)
山口俊郎氏(JFA副会長/セブンーイレブン・ジャオパン代表)
住野公一氏(JFA副会長/オートバックスセブン代表)

 この記念シンポジュームについては、フランチャイズエイジ3月号、及びフランチャイズ研究所のHP(FC市場レポート1月号)に詳しく掲載している。
 また、協会活動功労者に表彰状と盾が贈られた。名誉会員として松岡康雄氏、 35年永続会員として(株)トーカイ等9社、30年永続会員として(株)スイートガーデン等8社に表彰状が贈られた。
 また出席者には「JFA35年史」が配布された。

5. スーパーバイザー士の資格取得者は07年度までに526名に達する

 1995年度にスタートしたスーパーバイザー(SV)士は13年後の2007年度で資格取得者は526名となり、初めて500名を突破した。
 SV士は各社の中心的SVとして活躍中であり、今後も資格取得者の増加が見込まれる。
 SV士は単なる資格ではなく、広く加盟店のオーナーから信頼されるSVとしての活動が望まれる。

Ⅱ サービス業界の動き

1.「08年 サービス業総合調査」の伸び率2.0%増に低下

 日本経済新聞社がまとめた2008年の「サービス業総合調査」によると、サービス業全体の売上高の伸び率は2.0%増しと、1995年調査(1.5%増)以来13年振りの低い水準となり、前年調査と比較しても2.9%低下した。
 その中で伸びた業種は生活に蜜着したサービス業であった。
 伸び率の高い順に記せば、保育サービス(21.1%増)、トランクルーム(18.3%増)、理美容(17.7%増)、クレジットカード、貸し駐車場、有料老人ホーム、都市型CATV等であった。
 一方、売上高が減少したサービスはエステイック、カルチヤー教室、パチンコホール、複合カフェ、アミューズメント施設等である。
 消費者が生活防衛色を強めるなか、“ゆとり”を提供してきた業種の多くが減収に転じた反面、暮らしに蜜着したサービスは手堅く売上を伸ばした。(日経MJ、11月5日)

2. 複合カフェは一転減少へ

 2005年調査では59.6%増加、2007年調査では15.3%増加であった複合カフェは、増加基調から一転して2.0%減少した。
 「スペースクリエイト自遊空間」を展開するランシステムは9.7%減少した。コミックバスターも29.2%と大幅に低下した。(日経MJ、11月5日)
 複合カフェは投資金額が1億円超と大きいこと、「ネットカフェ難民」等の風評被害で新規加盟店の募集が思うように集まらなかったこと等が減少の要因と考えられる。今後は、業界の再編、淘汰が進み、勝ち組と負け組みが明らかになると思われる。
 業績が低迷するアプレシオ(名証セントレックス上場)は9月12日に、ドトールコーヒーなどを引受け先先とする3億3千万円の第三者割当増資を実施すると発表した。2008年3月期の中間決算で約2億円の債務超過に陥っており、この増資で08年9月期末の債務超過を解消する見通しである。(日経MJ、9月13日)

3. 個別学習塾は競争激化、FCは大手3社にシエアーが集まる動き

 少子化が進み、「大学全入時代」に突入したため、高校生向けの塾、予備校では個別指導教室を拡充したり、受験熱が高まっている小中学生部門に参入したりする動きが活発化している。
 これに伴いM&Aも広がっている。07年には早稲田アカデミーが「野田クルゼ」を展開する野田学園を買収、通信教育大手のベネッセコーポレーションが東京個別指導学院を子会社化する等の動きがあった。
 中学受験熱の高まりの中、FCの明光ネットワークジャパン、ジー・エドュケーション、拓人(スクールIE)3社のシエアーが高まる傾向が見られる。

4. フィットネスクラブ競争激化

 フィットネスクラブは大型施設から女性専用の小型施設の開設に転換した。
 経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」によると、07年度の会員数は275万人で、前年度費2,200人の減少である。一方、施設は各社の強気の出店により4%増加し、過等競争に陥いり、入会金の無料キャンペーンも当たり前となり、全国で赤字店舗も増加している。(日経新聞、11月27日)

5. DPE店は写真集に活路を見出す

 DPE(写真の現像・焼付け・引き伸ばし)関連各社がデジタル写真などを写真集に加工するサービスを拡充している。
 プラザクリエイトは昨年7月に写真集作成サービス「フォトブック」を開始した。大島社長は「3年後をメドに店頭でのフォトブックの売上高をデジカメプリントと同等の規模まで増やしたい」と意欲的である。
 フランチャイズ統計によれば、06年、07年の調査でいずれもDPE店の落ち込みが大きいが、写真集で是非活路を見出してもらいたい。

Ⅲ  小売業界の動き

1. コンビニ24時間営業に対する批判相次ぐ

 コンビニ24時間営業を規制しようとする動きが地方自治体にある。一応新聞記事、テレビ等で目にした自治体は埼玉県、東京都、神奈川県、長野県、京都市、宇部市等である。
 規制の根拠は、二酸化炭素排出量規制と省エネのためというのが主眼であったが、いつの間にか青少年育成問題や景観問題にすり替わった意見もある。
 もし、環境対策ならば、一応筋の通った話である。しかし、その場合は何故、コンビニだけが問題かという難問にぶつかる。かって第一次石油ショックの時代は、ガソリンスタンドの日曜日休業だとか、昼休みの消灯等規制だけではなく、企業や個人の自主努力で省エネに努めたものである。
 コンビニが24時間営業を始めたのは、深夜、早朝に大きなマーケットがあるから始めたのであり、決してコンビニが深夜ライフを推し進めた訳ではない。深夜ライフを規制するならば、コンビニだけではなく、吉野家、マクドナルドの24時間営業も同等に論ずるべきであり、また深夜バス、新幹線の営業時間の長時間化、地下鉄・私鉄・JR各社の営業時間の長時間化も問題にするべきである。ほんの30年前を思い出して欲しい。東京から大阪へ行ける新幹線は20時頃には終わっていた筈である。また私鉄の特急、急行も22時頃には終わり、早く帰らないと家に帰れない思いをしたものである。
 環境対策、省エネ対策ならば、日本中のすべての夜の営業を論ずるべきであり、コンビニのみを規制の対象にするのは、憲法違反の疑いもある。コンビニのみの規制は行うべきではない。

2. 最高裁がセブンーイレブンに仕入れ代金を報告する義務があると判断

 セブンーイレブン・ジャパンの加盟店オーナー2名が、仕入れ代金の開示を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁は7月4日「セブンーイレブンには加盟店に仕入れ代金を報告する義務がある」として、原告側敗訴の2審・東京高裁判決を破棄し、その上で、報告すべき具体的内容を審理し直すため、東京高裁に差し戻した。
 今回の裁判で、原告側は加盟店が本部に支払った金額と、本部がベンダーに実際に支払った金額に差がある疑いがあると主張して、本部からベンダーへの支払い内容の開示を求めていた。その主張の根拠になったのが、一部商品で加盟店の仕入れ価格がディスカウント店の店頭価格を上回るケースがあった点である。(日経MJ、7月7日)
 最高裁の小法廷は「オーナーが具体的内容を知りたいのは当然」と指摘して、「準委任の性質を有する本件委託について、民法の規定する受任者の報告義務が認められない理由はない」(最高裁判決文)として、セブンーイレブンに報告義務があるとした。その上で、オーナー側が開示を求める支払先、支払日、支払い金額、単価、値引きの有無等のうち、セブンーイレブン・ジャパンが何を報告すべきか審理を尽くすため東京高裁に差し戻した。
 他のコンビニも同様の裁判を抱えており、今後の審議に影響を与えると思われる。

3. コンビニの既存店ベース売上高が上を向く

 コンビニの既存店ベースの売上高は08年2月期まで、8年連続のマナスであった。しかし08年5月以降、フランチャイズ協会が発表するコンビニの既存店ベースの売上高は、前年を大きく上回るようになった。原因はタバコ自動販売機に必要なタスポカードを持たない人が、タバコをコンビニで購入するようになったからであり、業界では「タスポ効果」と言われている。従って、この突然の売上高アップは所詮、来年4月までの特殊効果と言われている。
 しかし、この世界大不況の中での1年間の猶予効果は大きい。また、ローソンでは「タスポ効果のみではない。ローソンの10月の既存店売上高は9.4%であったが、うちタスポ効果は6~7%、それ以外の要素が2~3%程度ある」と分析している。(日経新聞、12月9日)
 来年4月までは、タスポ効果は続くと思われるので、コンビニ各社はこの間に商品のブラッシュアップや、ホスピタリティに努力を傾け、タスポ効果がなくなる5月以降に備えてもらいたい。

4. ローソンが九九プラスを子会社化

 ローソンは7月15日に、筆頭株主になっている九九プラスに対して、7月16日から8月28日まで株式公開買付け(TOB)を実施すると発表した。(日経新聞7月16日)07年2月27日にローソンは生鮮コンビニを運営する九九プラスに20%を出資し、業務・資本提携を発表した。その後07年12月に九九プラスの第三者割当増資を引き受け、34.6%を出資する筆頭株主になっていた。
 今回はキョウデンが保有する約30%を下限に買取り、子会社化する。買取り価格はキョウデンで保有分で約40億円とされる。現時点で上場廃止は予定していない。
 ローソンは子会社(バリューローソン)が展開する生鮮コンビニ「ローソンストア100」が手がけるPB商品の共同開発を進めてきた経緯がある。生鮮コンビニの来店客は増えており、ローソンストア100の既存店売上高は、現在、前年を1割上回るペースで推移しているそうだ。九九プラスは08年3月末で837店を展開し、うち直営店が718店と86%を占めている。今後はバリューローソンと九九プラスの経営統合を進め、生鮮コンビニの運営の一体化する方針である。(日経MJ、7月18日)
 予定通り、九九プラスは08年9月にローソンの子会社となった。
 更に、店名「ショップ99」を09年9月末までに、全店舗を「ローソンストア100」に切り替えることにした。この決断は親会社であるローソンの意向ではなく、九九プラスの深堀高巨社長が決断したものである。
 その理由は「中国の冷凍食品問題が浮上して以降、中国産イコール粗悪品という誤ったイメージが広がった」ことにある。店名の全面変更に先立ち、九九プラスでは自社のPB商品「QQレーベル」をローソンの「バリューライン」に転換した。
 九九プラスとバリューローソンは09年3月末までに経営統合し、生鮮コンビニ事業を一本化し、経営を効率化し、両社合わせた店舗数を現在の900店から1200店まで拡大させる方針である。(日経MJ、10月6日)

5. ブックオフ新書販売に参入

 全国で900店を超える古本屋を運営するブックオフは、これまで新刊書を扱ってこなかった。古本屋で急成長したことに加え、既存の出版社・大手取次店とは対立的関係にあったとされる。
 同社は消費者から直接本を買取り、安値で販売するビジネスモデルである。既存の出版流通は一切経由しない。出版業界からは「著作権も払わずに安売りしている」などの批判を浴びていた。
 ブックオフは7月末に民事再生法を申請した洋販ブックサービスが運営していた新刊書店「青山ブックセンター」「流水書房」の12店を引き継ぎ、受け皿会社「青山ブックオフセンター」を設立して、そこで運営する。
 また、ブックオフは9月にTSUTAYAの新刊書籍も扱う埼玉県の中堅食品スーパーのヤオコーの子会社「ワイシーシー」の全株式を取得して、TSUTAYAのFC約20店で新刊本の販売に乗り出した。
 また、出版社が再販指定を解き、書店が独自に価格設定できる「自由価格本」の販売も始めた。原則半値で販売し、来春までに200店に専門売場を設ける予定である。
 消費者以外の仕入れルートを確立することで、品揃えを拡充し、集客力を高める狙いである。しかし、新刊本は古本に比べて利益率が低いため、従来の新刊書店の運営のままでは収益確保は難しいと思われる。古本事業とのシナジー効果を早急に打ち出す必要があるだろう。(日経MJ、11月28日)

Ⅳ 外食業界の動き

1. 食の安全・安心が最大の課題となる

 昨年12月に千葉・兵庫両県で中国製冷凍餃子を食べた計10人が吐き気や下痢などの中毒症状を訴え、女児1名が1時意識不明の重体になった事件は、その後日本たばこ産業の子会社「JTフーズ」が輸入したもので、毒性の強い有機リン系殺虫剤「メタミドホス」が検出された。
 問題の商品は千葉県が「CO・OP手作り餃子」、兵庫県が「中華deごちそう ひとくち餃子」で、いずれも委託先の中国・河北省天洋食品工場の同一ラインで製造されたものであった。
 08年12月現在、毒物混入の経緯は不明であるが、中国製食品を不安視する傾向が強まっているが、小売や外食では、中国産抜きに価格訴求は難しい。
 また9月には中国産牛乳にメラミンが混入され、その乳製品を使った食品が次々と発覚し、サイゼリアでは東日本の店舗で使用したピザからメラミンを検出し、一時販売を中止する事態となった。
 中国産の食品、原材料に殺虫剤やメラミンの混入が相次ぎ食の安全・安心が今年の最重要課題となった。

2. 原材料値上げ、消費者価格値上げ広がる

 世界的な穀物価格の上昇で、今年7月までは原材料の価格高騰が飲食業を直撃した。小麦価格の高騰によるパン、パスタの値上げ、またバター、チーズ、牛乳も値上げとなり、ほぼすべての食材が値上がりした。
 これに対して、外食各社は値上げで対応した。また同じ時期にガソリン代が高騰して、消費者は遠出を避け、外食各社は売上高が低下し収益も減少傾向が強くでた。
 秋以降、円高や、世界同時不況により一転して穀物価格や原材料価格は値下がりし、小売業界では「円高値下げ」が目立つが、飲食業界では値下げの動きはまだ、まばらである。

3. 「マクドナルド店長は管理職でない」の判決の影響広がる

 日本マクドナルド社は店長を管理監督者として扱い、残業代を支払わないのは労働基準法違反として、店長A氏が同社を相手に未払い残業代等の支払いを求めた判決で、東京地裁は1月28日、「店長の職務内容から管理監督者とは言えない」と断じ、同社に約750万円の支払いを命じた。マスコミは「名ばかり管理職」として広く報道した。
 日本マクドナルド社は、この判決を不服として東京高裁に上告したが、この判決とは別に、8月より店長等に残業代を支払う新報酬制度を導入すると発表したが、新報酬制度の導入は2~3年先に見送り、残業代等のみを支払うようになった。
 外食に限らず、小売、流通各社では、店長を管理職として残業代を支払わない慣行が長年にわたり存在したが、このマクドナルド社への判決は大きな影響を与えた。紳士服小売、コンビニ、メガネ小売、更には複数出店するフランチャイジーにまで波及して、店長の残業代を支払う会社が増加した。
 その意味で大きな影響を与えた判決であったが、労働基準局も9月9日に「多店舗展開する小売業、飲食店等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」という文書を発して、管理監督者の範囲についての解釈を示した。

4. ほっかほっか亭分裂する

 「ほっかほっか亭」は全国に3500店を展開するわが国最大の弁当チェーンであったが、東部・九州エリアを担当する地域本部プレナス(東証1部上場)は、ほっかほっか亭総本部と対立し、「商標権はプレナスが所有する」として総本部に対し損害賠償請求訴訟を提起した。(総本部が勝訴した)
 一方、総本部はプレナスに対し、弁当の作り置き販売、ビル内のランチカート販売の中止等を求めたが、プレナスは応じず、結局5月15日に独自ブランド「ほっともっと」を立上げ、ほっかほっか亭から離脱した。
 プレナスの直営店はともあれ、プレナス傘下のほっかほっか亭の加盟店を巡って、激しい攻防戦が展開され、フランチャイズビジネスとしては、最も「やってはいけない紛争」となった。
 分裂時点における店舗数は、ほっかほっか亭が約1400店、ほっともっとが2000店となり、店舗数の上ではほっともっとが勝利を占めているようだが、実態は必ずしもそうではないようである。
 プレナスは9月29日に今期の連結営業利益を前期比47%減の59億円になると発表し、従来予想を28億円引き下げた。新店の売上が落ち込んでいるほか、鶏肉など主要食材の価格高騰が利益を圧迫していることが要因であると説明している。独自ブランド「ほっともっと」を立ち上げた際、236店舗の加盟店がプレナスを離脱したことで、直営店比率が55%となり、前期末の48%に比較すると7%上昇して、人件費負担が増加している。
 業績修正と同時に上限25億円の自社株買いを発表したが、株価のテコ入れには力不足であった。(日経新聞、10月8日)
 ほっかほっか亭総本部(東京・港、青木達也社長)は12月16日、総本部を離脱したプレナスに対して約100億円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起した。これは、フランチャイズ契約で禁じた競合禁止契約に対する違反があったためと見られる。
 これからは、裁判の行方が気になるが、最後はフランチャイズパッケージとしていずれが優れているかが(どちらのブランドがお客様に好まれるか)競争となるであろう。

5.すかいらーく激震

 すかいらーくは経営陣による買収(MBO)に伴うTOB(株式公開買付け)が06年7月10日、株式の66.7%以上を集めて成立し、9月下旬に上場廃止した。SPC(特別目的会社)には野村プリンシパル・ファイナンスと英投資ファンドCVCキャピタルパートナーズが出資し、両社の出資額は1500億円超と見られる。
すかいらーくは06年6月8日に臨時株主総会を開きMBOの実施を決め、 横川竟会長兼最高経営責任者(CEO)が代表者となった。横川竟社長(会長兼社長となる)は08年5月に「来年(09年)1月から店長経験がある社員をFC店オーナーとして独立させる制度を導入する」と発表し、5年後をめどに千店まで増やすとした。すかいらーくグループは直営店展開と理解されているが、グループのジョナサンでは、既に50店舗が店長独立制度を利用してオーナーになっており、この成功事例が、5月の発表につながったと思われる。(勿論、マクドナルド店長の残業代支払い命令もあったであろう)
 しかし、横川竟社長と野村プリンシパル等ファンド側とは大きな溝が出来ており、08年7月にファンド側は横川竟社長の退任を要求してきた。結局08年8月12日の臨時株主総会で横川竟社長を解任し、新たにすかいらーく生え抜きの谷真氏を代表取締役社長に選任した。横川社長が解任の道を選んだのは「武士の一分」と述べられている。
 その後、ファミリーレストラン「すかいらーく」全店を廃止するとか、野村プリンシパル・ファイナンスを引受け先に400億円強の第三者割当増資を実施すると共に、フロージャポン、ニラックスを約100億円で売却して、合計500億円を銀行団の借入金の返済に充てる等の対策を実施した。
 すかいらーくは2006年度の連結業績は111億円の最終赤字、2007年度は130億円の最終赤字、2008年度も大幅赤字が噂されている。
 この赤字対策として、新経営陣は2011年度までに地方郊外店約200店舗を閉鎖すると発表している。ファミリーレストランに変わる新業態が生み出せない“悩み”が、すかいらーく激震の真の理由であろう。

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