フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

明光ネットワークジャパン・渡辺弘毅社長に聞く

 筆者が所属している中小企業診断協会東京支部フランチャイズ研究会(西野公晴会長)は、本部研究として毎年何社かのFC本部をお訪ねしてトップから直接お話を伺う勉強会を開催している。
 今年の2月5日に、(株)明光ネットワークジャパンにお邪魔して、直接渡辺社長からお話を聞く機会があった。フランチャイズ本部として極めて経営理念を大切にして、経営理念の具現化を真剣に考える集団であり、日本のフランチャイザーの模範足り得る企業と考え、紹介させていただく。
 なお、講話の後、様々な質疑が取り交わされたが、それも社長の講演の一部として構成した。長いお話であり、聞き間違い等があるかも知れないが、それはすべて筆者に責任があることをお断りする。

I 創業前後と現状

 今年は明光義塾の創業から25年目に当たる。しかし、塾経営は49年目になる。それは前職で教育産業のコンサルタント業をやっていた時に、個別指導システムを作り上げた塾経営者からフランチャイズ化を手伝ってもらいたいと依頼された。ところが、その塾は杜撰な経営で倒産の危機に瀕していた。倒産の前日に、塾経営者より残った17教室の引継ぎを頼まれ、資本金1500万円の会社を設立して1984(昭和59)年9月にスタートした。

 その企業は5億2千百万円の負債を抱えて不渡手形を出し、倒産した。新会社「サンライト株式会社」は、会社を引き継いだ訳ではなく、既存の17教室とノウハウを引き継いだのみであり、負債まで引き受けた訳ではない。

 しかし、その経営者にお金を貸していた人にとっては、当然渡辺社長が負債まで引き受けたものと思い込んでいたが、全く負債とは関係ないとわかっても「取れそうなところから取れ」という悪質な世界の人に巻き込まれ、軟禁状態にされたり、酷い状態となった。事実前の経営者はテリトリーの二重,三重売りをしたり、前金で受け入れた授業料から10%のロイヤルティを控除して17教室に返還する約束を実行していなかったり、様々な問題点が噴きだした。

 しかし、この苦い経験はその後の会社経営で大きな資産となった。「倒産したら、あのような惨めな思いをする。多くの人を巻き込んで大変不幸にする」「会社は健全経営に徹しなければならない」等今でも脈々と生き残っている。
 翌年の1985(昭和60)年から塾の名称を「明光義塾」に変更し,再スタートを切った。
創業13年目の1997(平成9)年にジャスダック市場に店頭登録した。2003(平成15)年に東京証券取引所第二部に株式を上場、2004(平成16)年には東証第一部に指定替えとなった。創業以来満20年となる節目の年であった。その年には明光義塾の教室数は1,200教室に達していた。

 公文・学研教室を除けば学習塾では生徒数、教室数ともNO1の地位となった。現在は個別学習塾は増加したが、社長が創めた事業である。明光義塾は先生1名に対し、生徒3名程度の組み合わせであるが、新しく出来る個別学習塾は1対1、1対2を主流にしている。1対3ではサービスが落ちると思われがちだが、社長は今でもその方針を貫いている。
 塾業者は1対1の個別塾を完全個別と呼んだりするので、1対3は不完全個別となるが、決してそんなことはない。今でも業界NO1の地位は揺るがない。

II. 教育理念とビジネスモデル(1)  自立学習

社長の教育理念は次の通りである。(以下四角の中はビジネスモデル説明書より)

個別指導による自立学習を通じて、
創造力豊かで自立心に富んだ
21世紀社会の人材を育成する

 即ち、明光義塾は“勉強を教えない”学習塾である。あくまでも“勉強の仕方”を教える「自立学習」のための個別指導である。
 現在学習塾は個別指導の占める割合が40%に高まった。具体的に言えば、学習塾・予備校市場はかって1兆円の巨大マーケットであったが、少子化の影響で市場規模は縮小し、塾の淘汰が始まっている。示されたデータは次の通りである。(矢野経済研究所「教育産業白書2008年版」より)

  年度         学習塾・予備校市場規模
2004年度        9,650億円
2005年度        9,600億円
2006年度        9、550億円
2007年度        9,400億円
2008年度(予測)    9,280億円(04年度対比96%)

 少子化の影響を受け、全国の7,600教室(学習塾・予備校)の上位百教室の生徒数は毎年3名づつ減少している。
 明光義塾の個別指導は家庭教師と学習塾のいいとこどりをして、新たなバリュー(付加価値)を生み出す指導形式である。
 社長は、生徒に教えこめば教え込むほど、生徒の自主性、自立性が失われると考えている。
  ヒントを与えて、考えさせることが重要である。勉強の仕方を教える、自ら進んで学習する人材を育成することが教育理念である。
 これは、社長がビジネスモデルを創業(1984年)する1年前に決めていた教育理念である。
 子どもが社会に出た時に役に立つ、自主学習、自立学習が理念である。
 今回の教育改革で自立学習が大きく言われている。いよいよ個別学習塾も淘汰の時代である。教育改革では自学自習可能な教科書を作るべきだという動きも出てきている。

III.ビジネスモデル(2)  成績中位層を対象とする

 社長が引き受けた時は進学塾であった。当時の進学塾の実態はあるレベル以下の生徒は足きりをして、猛特訓している。1人で3~5校も受験させ、それを進学実績として対外発表している。進学塾を引き受けた時は、既に地元毎に有力校があった。そこで、次のビジネスモデルを実行した。

少子化を予測し、ボリュームゾーンである成績中位層を対象とした補習塾の方が安全で社会貢献度も高いと考えた

「1人ひとりの生徒の一流校受験」を推進

少子化は既に始まって26年目である。
 社長はボリュームゾーンである中位層を相手にした。ボリュームゾーンを相手にしてきたから、少子化の中でも伸びられた。
 「1人ひとりの一流校」へ合格させることが目標である。

IV. ビジネスモデル(3) 低料金で低リスク

 17校の個別指導学習塾を引き受けた時の入会金は6万円、小学1年~3年生の週1回の受講料は2.5万円であった。(昭和60年3月)
 この入会金、授業料はあまりにも高かった。明光義塾は1教室30名程度しか生徒が集まらなかった。
 個別学習塾の話を聞かれたお母さんは「個別指導は素晴らしいが、料金が高すぎる」として入塾にためらわれた。そこで、この素晴らしい考えの個別学習塾を大衆料金にしなければならないと考えた。
 まず教室面積を半分にして、15坪~30坪に抑えた(現在は20坪~40坪程度)。教室が狭くなるが、家賃が半額に下がった。また1教室の正社員も3名(教室長、カウンセラー、事務員)から教室長1名にした。固定費である教室の人件費が1/3になった。講師は大学生のアルバイトだから、もともと変動費である。この変革により損益分岐点がガタンと落ちた。

20坪~40坪程度の低投資・低損益分岐点教室を全国展開。個別指導のパイオニアとして個別指導の普及に貢献

小型教室なので、生徒増や周辺環境変化等に対応したり、リニューアルや教室移転が簡単にできる。

 個別教室とは家庭教師のイメージである。1.4メートル高のパーテイション
で仕切り、1個の間仕切りに1名の生徒である。
1日3回転すれば、10席でも30人の生徒が収容できる。1週6日で計算すれば  30人×6日=180人(週1回) の生徒が収容できる。
 もし,集団方式ならば学年別、科目別の指導となるので、かなりの教室数が必要になる。これでは固定費が高くなる。 個別指導方式は非常に効率が良く、料金を大幅に下げても成り立つ方式であった。現在の入会金は大都市で2万円、その他の地域で1万円である。
授業料は一番多い中学3年生の週2回(月8回)で25,200円である。
小型教室だから、どんどん出店していった。他の学習塾とのバッティングは問題にしていなかった。
講師のスキルアップは次のように行っている。まず、講師の教育である。講師まかせにするとバラツキが出るので教室長がサポートする。それでも差がでる。新人講師に対しては「勉強の教え方」「教材・指導書」「ノートの取らせ方」等を作成し、今まさにやろうとしている。
全国2,000教室以上出せると思う。1校の商圏は、中学生が1.5キロメートル以内に800名いればよい。他の学習塾とのバッテイングは考えないが、明光議塾同士のトラブルは起きないように慎重に対処している。
明光義塾の発展振りは下記の通り。(フランチャイズ契約の要点と概説より)
昭和61年7月  「明光義塾」100教室を達成
昭和62年12月 「明光義塾」200教室を達成
平成元年7月   「明光義塾」300教室を達成 
平成3年6月   「明光義塾」400教室を達成
平成5年2月    「明光義塾」500教室を達成
平成6年11月  「明光義塾」600教室を達成
平成8年3月   「明光義塾」700教室を達成
平成9年4月   「明光義塾」800教室を達成
平成12年10月 「明光義塾」900教室を達成
平成14年2月  「明光義塾」1,000教室を達成
平成15年2月  「明光義塾」1,100教室を達成
     7月  「明光義塾」1,200教室を達成 
平成16年3月  「明光義塾」1,300教室を達成
平成17年2月  「明光義塾」1,400教室を達成
平成18年3月  「明光義塾」1,500教室を達成
平成19年7月  「明光義塾」1,600教室を達成
平成20年8月  「明光義塾」1,700教室を達成

V.  ビジネスモデル(4) 教育未経験者を中心にFC展開

 明光義塾の加盟店(オーナー)は脱サラ教育未経験者を中心にFC展開した。1号の教室はオーナー兼教室長をやってもらい、成功した人が次々と複数教室を展開した。教育経験者が駄目ではなく、長年学校の先生をやった方には、自分の教育経験を捨てきれず、明光議塾のノウハウの一部のみを利用しようとする方がおり、全体の仕組みが狂ってくる。我流になると駄目になることがある。

脱サラ教育未経験者を中心にFC展開。オーナー教室長として成功した人が次々と複数教室を展開。安定した教室増設に成功。

50%以上の方が複数出店しており、毎年80~90教室を安定的に増やしている。平成20年11月現在1,720教室になっている。
 オーナーが成功しないとFC本部は旨くいかない。


開設教室別オーナー数 平成20年8月
1教室オーナー 217人
2教室オーナー 96人
3~9教室オーナー 119人
10~19教室オーナー 18人
20教室以上オーナー 10人
合  計 460人
2教室以上開設比率 52.8%
最高50教室 年商 21億円

(ビジネスモデル説明書より、08年8月現在)

VI ビジネスモデル(5) オーナーとの共存共栄を目指して

 フランチャイズビジネスの 創業4年目にオーナーに依頼してオーナーズクラブを結成してもらった。現在は全国を9つのブロックに分けて、各ブロックから理事2名づつ選出してもらい、第1回目の理事会で会長1名、副会長3名を選出する。理事は同時に辞めると運営に困るので、半分づつを1年ごとに選出してもらっている。
 事務局は本部の人が担当している。創業以来、1回もオーナーから裁判を起こされたことはない。

FCオーナーとの共存共栄を目指し、創業4年目にオーナーに依頼してオーナーズクラブを結成してもらう。

オーナーズクラブと本部が一体となり、研修会・勉強会・懇親交流会やノウハウ共有を推進

 研修制度は新任オーナー・教室長研修会(新任研修1週間、新任3ケ月、新任6ケ月目研修)、定例教室長研修会(全国20会場にて年4回開催)、オーナーズクラブ研修会(東京・大阪にて年2回開催)等がある。
 新任オーナー・教室長研修会には、毎回必ず社長が2時間の講演をする。内容は経営理念の徹底と教室長としての成長である。

VII.  全国明光義塾総会と自己啓発支援

 12月には全国の明光義塾オーナー及び教室長、本部社員の総数1,700名が参加する全国明光義塾総会を開催する。
 オーナー・教室長の表彰だけで2時間を要する。表彰は生徒数、売上高、ホスピタリティあふれる行為等を対象として表彰する。更に翌年度の経営方針発表を行い、経営方針書を印刷して全員に配布する。今年の方針書は150頁である。
 当社は風通しの良い会社であり、派閥も学閥もない。創業時から同族会社にはしないと宣言してきた。
 また決算賞与を支給している。これは経常利益ベースで予算をオーバーした分の1/3を原資として決算賞与として支給するものである。
経常利益の予算をオーバーした分は、次のように3分割する方針である。
1/3は税金、1/3は配当、1/3は決算賞与である。
 わが社は人材とノウハウが財産である。だから人材育成には力を入れている。
 従業員の自己啓発に各種支援をしている。通信教育を中心に受けてもらうが、外部研修を受講してもらうことも多々ある。
 明経塾(明光経営幹部候補育成塾)を94年から7年間社長が塾長になって実施してきた。これを昨年から再開している。
わが社は常に発展途上である。大企業病にはならない。一人ひとりが主役であり、仕事を通して成長を図っている。
 何よりも理念が大切であり、理念の具現化を大真面目に取り組んでいる。

しかし常に足りないことばかりであり、まだまだ発展途上の会社である。

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