フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

「コンビニ加盟店ユニオン」は労働組合か?

8月4日岡山市で「コンビニ加盟店ユニオン」の設立大会が開催された。
コンビニ加盟店ユニオンのホームページでは、次のような挨拶で始まっている。
当日は「北は北海道から、南は宮崎まで26都道府県約300名の加盟店主が結集し、お蔭様で無事「コンビニ加盟店ユニオン」が正式に発足しました。以前より、連合岡山 関之尾副会長に労働組合の設立に関し、ご相談させて頂いておりました。本部との対話の場が必要であると考えた中で、加盟店で組織する労働組合の必要性を痛切に感じておりました」(8月6日現在)
 また、8月11日のユニオンのHPでは
祝 コンビニ加盟店ユニオン設立 として、次のように述べている。
「8月4日、コンビニ加盟店ユニオンは正式発足しました。設立大会は当初の予想を遥かに超え、全国から260名の加盟店主が集まりました。この大会開始に際し、小沢一郎民主党筆頭代表代行をはじめ、連合岡山二宮会長、連合岡山関之尾副会長より力強いお言葉を頂戴しました。」
 では、まず最初に「加盟店ユニオン」が労働組合法上の労働組合に該当するかどうかについて検討してみたい。

I 「コンビニ加盟店ユニオン」は労働組合か

 私は労働法を専門に勉強した者ではないので、まず専門家の意見を参考にしながら考えてみたい。(以下「労働法」第六版菅野和夫著、「実務労働法講義{改訂増補版}上巻」岩出誠著の2冊を参考にした)

1 法適合組合の要件

(1)構成主体  労働者
 菅野氏によれば、労組法において「労働組合」と認められる団体は、まず「労働者」を構成主体とするものでなければならない。そしてこの「労働者」は同法において「職業の種類を問わず、賃金、給料、その他これに順ずる収入によって生活する者」と第3条で定義されている。
 しかし、労組法では肝心の「賃金」が定義されていないため、「労働者」であるかどうかを判断する場合に、この規定はさほど有効ではないそうである。
 そこで学説、裁判例では「使用従属関係」という代替的な基準によって判断していると菅野氏は述べる。
 菅野氏は、使用従属関係とは、労働者に対して具体的に如何なる意味を持つか判例を参考にしながら、次の4点を挙げている。①その者が当該企業の事業遂行に不可欠な労働力として企業組織に組み込まれていること、②契約が一方的に決定されること、③業務遂行の日時、場所、方法などにつき指揮監督を受けること、④業務の発注に対し諾否の自由がないことの4点を挙げ、このような標識のいくつかを備える限り、当該労務提供契約の形態が雇用、請負、委任、無名契約のいずれかを問わないで労働者に該当すると結論付けている。
 判例として岩出氏は賃加工労働者の事例、テレビ会社の芸能員に関する事例、プロ野球選手の事例を挙げている。(プロ野球選手会に関する東京都地方労働委員会による労働組合の資格認定昭和60年11月14日) プロ野球選手の労働組合は、最近の話題でもあり、誰でも知っている事例なので、少し触れてみたい。菅野氏の解説によれば、野球選手の報酬は選手の力量により格差の大きい年俸制であるが、最低賃金、年金、傷害保険、トレード制等の待遇につき団体交渉が十分機能しうること、演技の日時・場所、労働力の配置・利用等につき、球団による指揮命令が存することなどの事情により、労働組合として認定を受けている。(都労委の判断が公表されているのではなく、菅野氏が判断した)
 ひるがえって、コンビニ加盟店オーナーは、果たして4条件に照らして労働者と言えるかどうかを検討してみたい。
 まず①の「事業遂行に不可欠な労働力として企業組織に組み込まれているか」を検討したい。Cタイプ加盟店の場合はオーナーが店長を兼務している事例は多いが、必ずしもオーナー即店長ではない。単にオーナーとして出資するのみで、店内労働に従事しないケースも少ないが存在する。更に、複数出店するオーナーは、原則として店長にはならず、経営全般を見る人が多い。特にファミリーマートでは、複数出店者の店舗数は全店舗の4割近いという話を聞いたことがある。従って①に該当する加盟店は、かなりの確率で「そうだ」と言えるが、例外もまた多いので「不可欠な労働力として企業組織内に組み込まれている」とは言い切れない。経営者としては企業組織内に組み込まれているのは当然であるが、その場合は労働者とは言えないのではないか。
次に②の「契約の内容が一方的に決定されること」は、労働契約の意味であろうが、加盟店オーナーは本部と労働契約を結ぶ訳ではない。同一内容のフランチャイズ契約を締結するのであり、これは意味が異なる。
 決定的に違うのは③「業務遂行につき指揮監督を受けること」である。フランチャイズ契約では加盟店は独立した経営者であり、本部の指揮監督を受ける訳ではない。あくまでも、本部は加盟店を説得し、納得してもらって業務を遂行するものであり、指揮命令する関係ではない。もし、コンビニ加盟店ユニオンが、本部の指揮監督下で仕事をしたとするならば、これは本部の間違いであり、速やかに本部はそのような関係を改めなければならない。
 また、④「業務の発注に対し諾否の自由がないこと」についても、必ずしもオーナーが全部仕事を引き受けなくとも、パート・アルバイトを20人近く使用して、業務を分担していることは日常目にすることである。
 以上4点について検討してみたが、特に③の「指揮監督を受けること」は絶対にFCにあってはならないことであり、この1点で、コンビニオーナーは労働者ではない、従って「コンビニ加盟店ユニオン」は労働法上の労働組合と認定することは困難であると筆者は考える。但し、労働委員会がどのように判断するかは、各労働委員会が決定する問題である。
(2)自主性
 労組法上の労働組合であるためには、「労働者が自主的に組織」する団体でなければならない。この「自主的」とは、「自発的」にという意味であり、とりわけ使用者からの「独立性」を重要な内容としている。具体的には使用者からの「支配介入」とか、「使用者の利益代表」の排除である。また「団体運営のための経理上の援助を受けない」ことである。
 この自主性についてコンビニ加盟店ユニオンは問題ないと思う。
(3)目的
 労組法上の労働組合の目的としては、「労働条件の維持改善その他経済手的地位の向上を図ること」を主目的としている。
 この点コンビニ加盟店ユニオンは,綱領としてHPで次の通り発表している。
1 組合は、団結と共存共栄の精神により、組合員の労働条件を維持改善し、経済的・社会的地位の向上をはかることを目的とします。
1 私達は、全組合員の意思を結集し、これをフランチャイズ加盟店経営に反映させることを推進します。
1 私達は、要求の実現において、フランチャイザー本部との話し合いを重視します。
1 私達は、コンビニフランチャイズビジネスの社会的地位の向上を実現します。
 このコンビニ加盟店ユニオンの綱領は、労組法上の目的に一部合致している部分があるが、基本的に加盟店は労働者ではないため、この綱領と呼ぶものは、労働組合の目的と同一であるとは考え難い。
(5)規約上の要件
 労組法は、更に組合規約の必要記載事項を定めている。(5条2項)
 詳細に見てみると、「名称」(同1号)、「主たる事務所の所在地」(同2号)、「組合員の組合運営への参加権および均等の取扱いを受ける権利」(同3号)、「人種、宗教、性別、門地または身分による組合員たる資格剥奪の禁止」(同4号)、「組合員選挙の直接無記名投票」(同5号)、「総会の開催」(毎年1回、同6号)、「会計監査と報告」(同7号)、「同盟罷業開始について直接無記名投票の過半数による決定の要件」(同8号)、規約改正の要件(同9号)である。このすべてが必要記載事項であることに注目願いたい。
 特に同8号の「同盟罷業(ストライキ)の開始について」の組合規約が、コンビニ加盟店ユニオンにあるかどうかHPでは確認できなかった。そもそも「コンビニ」の経営者が、ストライキをする(店舗を一時的に閉店する)等ということは、この競争激化の時代に考えられない話しであると思う。

2 資格審査

 労働組合は、労働委員会に証拠を提出して労働組合の定義(労組2条)および規約の必要記載事項(5条2項)の規定に適合することを立証しなければ、労組法に規定する手続きに参与する資格を有せず、かつ同法に規定する救済は与えられない。(5条1項)
 この規定に基づき労働委員会によって行われ、労働組合が上記の両規定に合致するか否かの審査が、「資格審査」である。
 仮に、コンビニ加盟店ユニオンが資格審査に合格すれば、コンビニ本部はまず、このユニオンと団体交渉を行う義務が発生し、もし、団体交渉を否認すれば「不当労働行為」となり、ユニオンより地方労働委員会に「不当労働行為の救済申し立て」(同27条)を受けることも考えねばならない。
しかし、筆者は「コンビニ加盟店ユニオン」は、労働組合では無いと考えるので、団体交渉を否認しても不当労働行為にならない思っている。

II「コンビニ加盟店ユニオン」に対する報道

 「コンニビ加盟店ユニオン」に関する各新聞社の報道は次の通りである。
 まず日経新聞は09年6月5日の日経MJで「セブンーイレブン一部加盟店労組結成の意向」と報道した。MJによれば{セブンーイレブン・ジャパンの一部の加盟店オーナーは、オーナーらで組織する労働組合を2009年度中にも結成する意向を明らかにした。主導している岡山県のオーナーによると「約70人のオーナーが労組への参加を表明している」という。労組結成の動きに対しセブンーイレブンは、「状況がわからないため、コメントできない」としている。}
 また09年8月5日の日経新聞では「FC法制定を求め加盟店主が労組、セブンーイレブン」として、次のように報道している。
{セブンーイレブン・ジャパンの一部の加盟店オーナーが4日、コンビニエンスストア加盟店でつくる労働組合を設立し、設立大会を岡山市で開いた。加盟店の経営状況や労働環境の改善に向けフランチャイズチェーン法の制定を目指す考えを表明した。
 労組設立を主導した加盟店主らによると、総会にはセブンーイレブンを中心にローソンなどの加盟店も参加。「約200店が労組に加盟する見通し」としている}
 次に09年8月5日の読売新聞では「コンビニ店主が労組、設立大会に260店24時間義務改善など要求へ」という見出しの下、次のように述べている。
{コンビニエンスストア最大手のセブンーイレブン・ジャパン加盟店の一部オーナーは(8月)4日、労働組合「コンビニ加盟店ユニオン」の設立大会を岡山市内で開いた。コンビニオーナーによる労組結成は始めてで、大会にはセブン加盟店約1万2千店のうち約230店舗のオーナーが参加。他のコンビニチェーンからも約30店舗のオーナーが出席した。}
{ユニオンはセブン本部に団体交渉を求め、フランチャイズ契約で事実上義務付けられている24時間営業や、本部に支払っている手数料(ロイヤルティの意味か?)の引き下げなど契約内容の見直しを通じて労働環境の改善を目指す方針だ。執行委員長にはセブン店オーナーの池原匠美さん(42)が就任した。}
 更に{セブン本部は、オーナーと個別にFC契約を結んでいることなどを理由に団体交渉には応じない方針で、ユニオンは各都道府県にある地方労働委員会に救済を申し立て、団体交渉を求めることも検討する。
厚生労働省はコンビニオーナーによる労組結成について、「(一般の労働者と異なり)労働の対価として本部から給料を得ているわけではないが、労働組合法上の労働者ではないと一概に言えない面もあり、地労委の個別判断になる」としている。}
 朝日新聞社は6月2日のasahi.comで「コンビニオーナーが年内に労組結成 セブンーイレブン」として、次のようにコメントしている。
{コンビニエンスストア最大手・セブンーイレブン・ジャパン(東京)の加盟店オーナー約70人が(6月)2日、労働組合を年内に結成することを決めた。経営方針で加盟店が本部と対等に交渉できるようになることをめざす。各政党にもフランチャイズ契約で加盟店が不利な扱いを受けないようにする法整備を働きかける。
 労組の名称は「セブンーイレブン経営者ユニオン」(池原匠美組合長)。全国約1万2千の加盟店に参加を募る。連合傘下のUIゼンセン同盟に入る方向で調整中だ。同社をめぐっては、加盟店が弁当などの売れ残りを減らそうと値引きするのを不当に制限したとして,公正取引委員会が独占禁止法で改善を求める方針を固めている。
 オーナーらは「この波に乗らないと」と労組結成に動いた。2日の会合では「商品価格や営業時間も自由に決められない」「2億円も売り上げているのに本部への支払いが多く、従業員の社会保険料も払えない」「契約打ち切りが怖くて声を上げられない」といった意見が相次いだ。
 労組結成の記者会見は民主党本部で開催、2年前から各党に窮状を訴え、最も反応が良かったのが同党だからという。ただ、今後の活動では超党派的に協力を求めていく方針だ}(陰西晴子)
 岡山日日新聞はokanichi.co.jpで、「岡山で“小沢流”コンビニ加盟店ユニオン決起大会で演説」と題して、次のようにコメントしている。
{民主党の小沢一郎代表代行が(8月)4日、岡山市内で開かれた「コンビニ加盟店ユニオン」の決起大会で演説。衆院選を前面に押し出した内容ではなかったが、県内小選挙区の立候補者も同席させ、関係者に「これぞ小沢流」と言わしめた。}
 日経ビジネス・オンラインは2009・8・4で、次のように報じている。
「セブンーイレブン本部との戦いに民主党・小沢氏も参戦、フランチャイズ法制定を目指し、コンビニオーナー支援」
本文は概略次のような内容である。{8月4日、岡山で歴史的な組合組織が結成される。コンビニエンスストア最大手セブンーイレブンの加盟店オーナーを中心とする「コンビニ加盟店ユニオン」だ。(中略)この決起大会にある大物が参加する。選挙戦の最中、最も多忙であろう民主党の小沢一郎代表代行が「激励」に訪れるというのだ。セブンーイレブン本部は、やっかいな人物を敵に回してしまったようだ。}

III フランチャイズ規制法規について

 上記の新聞(電子版を含む)各社の報道はほぼ同じ内容であるが、読売新聞の報道が一番詳細であり、分かりやすいものであった。同紙は「コンビニ加盟店ユニオン」が求めるフランチャイズ規制法規の内容をなすと思われるものは、
「①24時間営業の見直し
②本部に支払っている手数料(ロイヤルティの意味か?)の引き下げ
など契約内容の見直しを通じて労働環境の改善を目指す」
の2点のようである。

1 フランチャイズ法規制はどうなっているか

 アメリカのフランチャイズ法規制は、フランチャイズハンドブック(日本フランチャイズチェーン協会編集)によれば、連邦取引委員会(F.T.C.)による「必須開示事項及び禁止事項」(2000年12月現在)に明記されている。詳細な内容は略するが、「情報開示に関する規制、若しくは禁止事項」のみである。
 規則を書いた後に、次のような注意文が載せられている。
F.T.C.の要請にもとづくフランチャイジー候補者の方々へのお知らせ

 F.T.C.は、あなたを護るために、フランチャイザーに対して、この情報をあなたへお知らせするよう要請しています。
 F.T.C.は、この情報を点検しておらず、この情報が正確かどうか知りません。この情報はあなたの意思決定に役立つと思います。注意深く検討して下さい。
 ここには、あなたが結ぼうとしている契約について、若干の情報が提示されていますが、契約がどんな契約であるかを知るのにこの情報だけを頼ることはなさらないで下さい。契約全体を注意深く読んで下さい。フランチャイズ契約をするということは、難しい投資をすることです。時間をかけて、決定して下さい。できるだけ、契約とこの情報を弁護士や会計士等あなたに助言をしてくれる人に見せて下さい。もしあなたが記載事項が間違っているとか、重要な記載漏れがあることを発見した場合は、そのことをF.T.C.に知らせて下さい。そのことが法律違反に当るかも知れないからです。
 あなたの州にフランチャイズに関する法律が施行されている場合があります。その州法については州当局にお問い合わせ下さい。
ワシントンD.C. 連邦取引委員会
 即ち、加盟希望者に対して、連邦取引委員会(F.T.C.)は、「フランチャイザーに対して、情報を加盟希望者に対してお知らせするよう要請した」ものであり、その情報が正確かどうかは関知しないので、注意深く検討するよう求めているのである。契約の内容に直接踏み込む規定はどこにも無い。
この考え方は「統一フランチャイズ募集書作成の指針」(2000年12月現在)
にも貫かれている。例えば一般的指定の第5項はイニシャル・フランチャイズ・フィー(加盟時に支払う一時金)について、次のように定めている。
 「イニシャル・フランチャイズ・フィーについて開示し、もしそれが返還される場合はその条件を明示しなければならない」
 また、第6項では「その他の費用」として、次のように定めている。
 「その他の継続的または一回限りの費用を開示しなければならない。(中略)
もし、これらの費用が返還されるのであれば、各費用について返還される条件を示さなければならない」
 その他の費用の中には、ロイヤルティが含まれているが、その最高額とか最高率とかを制限する文言はない。それは、加盟時に開示されており、「契約全体を注意深く読んで下さい」と注意喚起をしているのみである。

2 契約内容に対する規制はどのように考えるべきか

 フランチャイズ契約に関する事前開示の強化は世界的な流れである。当然、我国も2002年に情報開示について大きな改正が行われた。
 もし、この改正が不十分だというならば、情報開示法を更に強化し、新たに「フランチャイズ情報開示法」等を制定し、小売業、飲食業、サービス業すべての業種に情報開示を求めることは筋が通っている。
 しかし、既に契約した内容について、新しい法律で後から規制を加えるようなことは行うべきではない。
 そもそも国家権力がむき出しに、契約の内容を規制することは、公序良俗に反しない限り行うべきでないことは世界の常識である。
 「コンビニ加盟店ユニオン」が主張する24時間営業や本部に支払っている手数料が高すぎるという要求であるならば、この契約が公序良俗に反することを証明する必要があるだろう。本来、本部と加盟契約を締結した段階で、開示書面により、24時間営業や、ロイヤルティの率の説明を受けた筈である。
 万一、その訂正を求めるならば、情報開示を受けていなかったことを加盟店サイドで証明する必要があるだろう。
即ち、ユニオンを結成し団体交渉を求める前に、加盟する前に本部が十分な情報開示をしなかった、もしくは情報開示が正確でなかったということを、まず明確に示すことが先決問題であろう。

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