フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

民主党政権誕生とフランチャイズビジネスへの影響

 8月30日の衆議院選挙で民主党が圧倒的多数で勝利し、政権を手にした。この鳩山政権の誕生は、フランチャイズ・ビジネスにどのような影響を与えるのであろうか。
 以下、民主党のマニフェストを参考にしながら、新聞・雑誌の記事を引用して「FCビジネスへの影響」を考えてみたい。

Ⅰ マニフェストの概要

 多くの方が民主党が配布したマニフェストをご覧になつていると思うが、念のため、マニフェスト政策各論の項目のみを記してみる。
1.  ムダづかい
2.  子育て・教育 
3.  年金・医療
4. 地域主権
5.  雇用・経済
6.  消費者・人権
7.  外交
 全部で55項の各論が記されている。実に詳細であり、分かり易い。これだけのマニフェストはいまだ見たことがない。民主党の政策作制力には脱帽である。従来の自民党のマニフェストは、全権委任主義であり、例えば小泉純一郎氏の郵政選挙(2005年)は、外部から見えたのは郵政民営化のみであり、その一点で他の野党と戦い、圧倒的勝利を収めた。では、それ以外の重要問題(例えば年金問題、雇用問題、経済問題等)はどのような約束がなされたのであろうか。殆ど記憶に無い。これは郵政選挙と呼ぶ言葉通り、その他の事項は「従来の自民党政権のやり方を踏襲しても良い」とする判断が国民側にあり、それを異とする意見が少なかったのであろう。換言すれば、郵政民営化以外は小泉総理に一任したのである。
 それと比較し、民主党のマニフェストはすべての国民(老いにも若きにも)を対象として詳細に約束している。これがマニフェストであり、今後の参院選でも同じような約束事を書くのであろう。
 しかし、全国民を相手にしたと言うものの、重要なことが抜けていはしないか?国防、国家の安全等は国が担わなければならない最重要事ではないだろうか?見落としがあるのでは無いかと思い、何回もマニフェストを読み直してみたが、やはり無い。国防を強化するのか、国防を必要としないと思うか、方向性さえ出ていない。これはマニフェストとしては重要な見落としでは無いだろうか?勿論、見落とす筈はない。実は、民主党政策集I
NDEX2009(WEB)には外務防衛として4行が書かれている。
 この文言は、特に最後の「自衛隊活動の国民への理解」は、防衛力を強化したい意向がうかがえる。しかし、選挙用に配布するマニフェストから何故外したのか。多分これは党内世論が十分に一致しなかったために、省いたものと判断せざるを得ない。
また、民主党のマニフェストには選挙中に自民党側から「日本経済の成長戦略がない」と批判され、次のような項目を付け加えた。(但し、現在のWEB上のマニフェストには見えない)
 「日本経済の成長戦略」
 「子ども手当、高校無償化、高速道路無料化、暫定税率廃止などの政策により、家計の可処分所得を増やし、消費を拡大します。それによって日本の経済を内需主導型へ転換し、安定した経済成長を実現します」
この民主党のマニフェストを簡単にまとめれば、次のように簡略化できる。
「手当などを家計へ直接給付→消費の拡大→内需の拡大→経済成長」となる。従来の自民党政権の経済成長戦略は、上記モデルに入れ替えて見る。
 「企業・業界への景気刺激→家計の給与所得の増加→消費の拡大→経済成長」
 要するに企業・業界へ景気刺激策を講ずるか、家計へ直接給付するかの差であり、従来の自民党型景気刺激策が、なかなか家計の給与所得を増大させなかったことに対し、民主党型の家計直接給付型は間違いなく、家計が潤い、消費の拡大に導く可能性が高いと言えよう。

1. 民主党政権のマニフェストの工程表   単位:兆円

項目
2010年度
11年度
12年度
13年度
子ども手当・出産支援
2.7(半額)
5.5
公立高校の実質無償化
0.5
年金制度の改革
記録問題への集中対応期
0.2
制度設計新たな
制度
医療・介護の再生
段階的実施     1.2
1.6
農業の戸別所得補償
調査・モデル事業
子ども手当・出産支援
2.5
高速道路無料化
段階的実施
1.3
雇用対策
0.3
0.8
所用額概算
7.1
12.6
13.2
13.2
上記以外の政策
3.6
2013年度の所用額 16.8兆円

 上記の民主党マニフェストを「政策と予算規模の内訳」で見ると、次の表になる。

2.政策と予算規模の内訳   単位兆円

                 
項目
2010年度
11
12
13
子ども手当・出産支援
2.7
5.5
5.5
5.5
公立高校実質無料化
0.5
0.5
0.5
0.5
年金制度の改革
0.2
0.2
0
0
医療・介護の再生
段階的実施
段階的実施
1.6
1.6
農業の戸別所得保障
段階的実施
暫定税率の廃止
2.5
2.5
2.5
2.5
高速道路の無料化
段階的実施
段階的実施
1.3
1.3
雇用対策
0.3
0.8
0.8
0.8
所用額概算
7.1
12.6
13.2
13.2
上記以外の政策 財源を確保しながら順次実施。13年度は3.6兆円に

日経ビジネス(徹底予測民主党)

II 子ども手当の新設

 鳩山総理は、総理選出後の最初の記者会見で、民主党の最大の公約は何かと質問され、子ども手当、暫定税率廃止の2点を挙げた。そこでまず、子ども手当を詳細にみてみたい。

1. 子ども手当の支給

 子ども手当年間31.2万円(初年度は半額)は、民主党マニフェストの柱であり、思い切って家計所得へ配布するものである。
 この子ども手当の年額5.3兆円(2010年度は2.7兆円)はとてつもない金額である。わが国の国防予算は09年度当初予算で4兆8千億円であり、それを遥かに上回る金額である。
子ども手当創設の政策目的は次のようにまとめている。
次世代の社会を担う子ども1人ひとりの育ちを社会全体で応援する。
子育ての経済的負担を軽減し、安心して出産し、子どもが育てられる社会をつくる。
 財源の問題は別として、まず、来年の4月から中学生以下の子どもを持つ家庭に対して、1人当り2万6千円(初年度は半額)を支給する。多分、3ケ月分をまとめて支払う方法を考えれば、4月、5月、6月分が6月末までに家庭に振込まれることとなる。(という解説が多い)
 これは、子ども手当であるので、原則的に子ども向けに支出されると考えるのが妥当だろう。事実、藤井財務相は「使途は限定する。親が勝手に使ってはいけない」と発言している。「フランスでは子ども通帳」をつくっているとも説明している。しかし、現実問題として家計に渡った場合は、子ども専用に使われるかどうかは必ずしも限定できるものではないだろう。勿論、子ども用の支出が第一義に考えられるだろうが、家計への給付の形を取るならば、いろいろな支出に当てられるだろう。また、仮に子ども通帳を新設し、子ども用にしか支出しない方法があったとしても、従来の子どもマーケットに流れていたお金は一般的に支出に廻ることは当然考えられる。
 家計への直接給付であるから、フランチャイズ・ビジネスにとっては大きなチャンスである。小売業もサービス業も飲食業も熱い期待を寄せることになるだろう。

2. 個別学習塾が買われる

 7月24日の日経夕刊では「明光ネットワーク」を“注目株を斬る”の項で取り上げている。「個別指導運営の明光ネットワークジャパンの株価が7月に入り商いを伴って急騰している。民主党がマニフェストに掲げる子ども手当を手がかりに個人投資家を中心に物色が広がり、17日には年初来高値を更新した」
事実、日経の伝える明光ネットの週足は4月22日の376円を底値として、7月17日には576円を付けている。5割以上の急騰である。もう少し日経を引用して見る。「少子化という懸念材料に加え、同業他社の個別指導塾への参入が相次ぎ競争は激化している。ここへきて株価の上値が重くなっているのは、足元の業績や厳しい市場環境を反映したためとの見方も出ている」と報じた。
 民主党勝利を最初に予測したのは、やはり株価であった。
 一方、同じ学習塾でも、個別学習塾以外では冷めた意見もある。「四谷大塚」を展開するナガセ社長の永瀬昭幸氏は日経9月23日で次のように述べている。
「学習塾にとって順風なのは間違いない。しかし(四谷大塚のような)学習塾の場合、中学受験を目指す小学6年生の年間受験料は100万円程度になる。費用を負担する意志のある保護者はすでに出している。子ども手当でこうした層が大きく増えるとは思わない。スイミングスクールや英会話など幼児期の教育には相応のお金が流れるだろう」そして、子育て、教育支援については「人口を増やす姿勢を明確にしたことに意味がある、子どもは将来、生産者、消費者、納税者として日本の社会を支える」と評価している。
 日経9月8日では「民主党関連株 軒並み下落」として、次のように報じている。「衆院選の民主党圧勝から1週間が過ぎ、株式市場では、民主党の政策を材料に買われた銘柄の下落が目立つ。急ピッチで上昇したため、利益をいったん確定する売りが優勢となっている。投資家の関心はマニフェストで提示された個別政策の実現可能性に移っており,今後は銘柄間の選別色が強まりそうだ」

民主党の政策が材料の主な銘柄(フランチャイズではない)

 社名            騰落率(%)        年初来高値
              選挙前     選挙後
子育て支援コンビ     7      ▲12     7月21日
ピジョン           4       ▲5     8月31日
トイザらス         14      ▲22     8月31日
リソー教育          8      ▲15     8月6日
東京個別          30      ▲11     8月26日

3. 貯蓄へ廻る可能性

 テレビでは、8月31日に、民主党圧勝を受けて町の声を拾っていたが、子ども手当については、子どものいる所帯は歓迎一色であったが、中には「高校生より上が高いので、子ども手当は貯金に廻す」という声もあった。家計に給付する場合は、必ずしも政策通り使われない可能性もあり、この声のように貯蓄に廻ると、景気の高楊にはつながらない。これが直接給付の欠点でもある。

4. 財源について

 今回の民主党の家計給付は、殆ど「ムダつかい」が財源であり、その確実性が疑問視された。唯一、子ども手当のみが財源の一部が記された。
「相対的に高所得者に有利な所得控除から、中・低所得者に有利な手当などへ切り替える」と記されている。
 具体的には11年度より、配偶者控除と扶養控除を廃止するものである。
日経新聞9月14日の経済教室ではこの問題を2007年に実施された厚生労働省「国民生活基礎調査」の個票データのうちの9800世帯のサンプルで、詳細に分析している。これによれば、全所帯の2割が負担増となり、この世帯への説得がカギと結んでいる。特に目立つのは、世帯主年齢が55歳~64歳の世帯では、負担増が47%に及んでいることである。多分、この世帯は自費で子どもを育て上げ、やっと子どもが独立し、扶養家族でなくなった世帯である。この世帯に配偶者控除、扶養控除を廃止するのは、いかにも酷である。
 筆者としては、子ども手当は社会的福祉目的であるから、消費税等で、国民が広く、薄く負担するのが筋であると思う。

Ⅱ  暫定税率の廃止

1.暫定税率の廃止  4 地域主権の項の29

 目的を失った自動車関連諸税の暫定税率廃止するでは、具体策として「ガソリン税、軽油取引税、自動車重量税の暫定税率を廃止して、2.5兆円の減税を実施する」としている。  この減税案によれば、特定の制限なく、自動車を利用する個人、事業所、物流業界全体に恩恵が及ぶ。これも、内需全般を刺激して個人需要の増加を生むものと考えられる。今年の5月の連休には、ガソリンの暫定税率が一時廃止され、ガソリン価格が低下したことは記憶に新しい。

 個人への還元は、内需産業であるフランチャイズ産業にとってはプラス材料である。特にガソリン価格高騰で影響のあった郊外型立地のFCにはプラスに寄与するであろう。

2. 環境問題との整合性

 この暫定税率廃止は、民主党がマニフェストに約束した環境問題との整合性はあるだろうか。

5 雇用・経済の中に42項として「地球温暖化対策を強力に推進する」とし、具体策として次のように述べている。

○ CO2等排出量について、2020年までに25%減(1990年比)、2050年までに60%超減(同前)を目標とする。

 既に、この25%削減案は9月8日の日経に、次のように報じられている。
「民主党の鳩山由紀夫代表は7日、2020年までの日本の温暖化ガスの中期目標として“1990年比25%削減”を掲げ、9月下旬の国連気象変動サミットで表明する方針を打ち出した」
 但し、これには次の条件が付加されていることも大切である。
・世界の全主要国による公平かつ実効性ある国際枠組みを構築
・全主要国の参加による意欲的な目標の合意が、日本の約束の前提等
 即ち、世界主要国が、足並みを揃えなければ、日本の目標は約束できないということである。
 鳩山民主党代表の発言は世界各国から歓迎の言葉が寄せられ、鳩山政権の前途を祝する発言となった。
 この25%削減案と、ガソリン税等の暫定税率廃止の問題とは無関係だろうか。いや、そうではない。

3. 環境税の新設

 先ほどの「29 目的を失った自動車関連諸税の暫定税率を廃止する」の具体策の中に次の文言が入れられている。
○ 将来的には、ガソリン税、軽油取引税は「地球温暖化対策税」(仮称)として一本化する
と書かれている。これは、来年度からガソリン税などは廃止するが、将来地球温暖化対策税として徴収するということであり、それは何時から、どの程度の金額になるかは明示されていないのである。

 日経9月16日の“大機小機”では、次のように述べている。

「民主党の目標は国内総生産(GDP)が現状から1割程度は拡大する20年までに3割削減(05年比)を達成しようというのだから、価格メカニズムだけに頼ると原油価格が8倍になるほどの非常に高率の環境税が必要になる計算だ」としている。この記事がどの程度厳密な計算をしているかどうかは知らないが、かなり高率な地球温暖化対策税が遠からず到来することは覚悟しておいた方が間違いないようである。勿論、温暖化対策はすべて石油価格への課税で対処するものではなく、太陽光発電、ハイブリッド自動車への切り替え等様々な政策が考えられる。“大機小機”は、一つの見解の紹介である。

4. 株価はどのように評価したか

 再び、9月8日の日経の記事を引用する。
「民主党株関連株軒並み下落」として、次のように報じている。

温暖化ガス削減
  社名    騰落率(%)       年初来高値
       選挙前  選挙後
三洋電   22    ▲2         6月17日
GSユアサ  5    ▲4         6月18日
荏原     38   ▲2         8月26日
ノーリツ   24   ▲2         3月27日
 株式市場の反応は「子ども手当関連銘柄」より早く、年初来高値が実現したことを示している。

III 中小企業対策

 マニフェスト5項は雇用・経済関とし記述されているが、これらはフランチャイズ加盟店にとって大きな問題を孕んでいる。
1. 中小企業向けの減税を実施する
 具体策として「中小企業向けの法人税率を現在の18%から11%に引き下げる」と記されている。
 これは中小企業としては朗報である。しかし、現在法人税を納付している中小企業は4年連続で悪化し、半数以下(08年46%程度:TKC経営指標)である。恩恵が及ぶのは半数以下では政策効果も知れている。(フランチャイジーの何%が黒字であるかは、データがない。感覚として6割~8割のFCジーは黒字を確保しているように感じている)
2. 中小企業憲章の制定など、中小企業を総合的に支援する
 具体策として、次のような項目を上げている。
「次世代の人材育成」「公正な市場環境の整備」「中小企業金融の円滑化」などを内容とする「中小企業憲章」を制定する。
「中小企業いじめ防止法」を制定し、大企業による不当な値引きや押し付け販売、サービスの強要など不公正な取引を禁止する。
貸し渋り、かしはがし対策を講じるとともに、使い勝手のよい「特別保証枠」を復活させる。
政府系金融機関の中小企業に対する融資について、個人補償を撤廃する。
自殺の大きな要因ともなっている連帯保証人制度について、廃止を含め、あり方を検討する。
公正取引委員会の機能強化、体制充実により公正な市場環境を整備する。
3. 中小企業向けの金融政策について
 民主党のマニフェストが中小企業金融について、多くのページを割いて支援策を強化することには,賛意を表明したい。特に、貸し渋り、貸しはがし対策、個人保障の撤廃には期待したい。連帯保証人制度については、金融業のみではなく、フランチャイズ契約でも広く採用されているので、これについては慎重に運用をしないと、資金が出なくなったり、加盟店契約が滞ることも考えなければならない。
 しかし、亀井金融相が17日未明の記者会見で、中小・零細企業や個人の支援を目的とした借入金の一時的返済猶予制度を10月の臨時国会に関連法案を提出する方針を表明した。返済猶予とはモラトリアムである。わが国では昭和9年の金融大恐慌で一度発動したことはあるが、既に75年も経過している。バブル崩壊の中での金融恐慌でも、モラトリアムは実行されなかった。現在の日本は1930年代に匹敵するほどの厳しい金融情勢であろうか?
 9月18日の日経では社説の中でこれを取り上げている。以下跋渉する。
「亀井氏はさらに踏み込んで“少なくとも3年程度、返済猶予(モラトリアム)を実施すべく取り組む”と法制化を急ぐ考えを述べた。(中略)だが、これまでの発言からは、あたかも民間の銀行や信用金庫の負担で、融資の取立てを強制的に止める”徳政令“のようなものを想定しているようにも聞こえる。そうだとすれば論外である。融資は貸し手の金融機関と借り手の契約関係で成り立つている。国内銀行の中小企業向け融資の残高は280兆円に上る。利ざやが1%と仮定すれば、金利返済の猶予で年間3兆円近い損失が生じる。
 政府がこのような措置を強いるのは資本主義の仕組みではあり得ない。金融不安を広げたり、金融機関がかえって慎重になったりする弊害も考えられる。“借りたお金は返す”という規律も乱れる」
と厳しく論じている。中小企業融資は結構だが、肝心の銀行が身を引いてしまうような徳政令は願い下げにしてもらいたい。

IV 最低賃金を引き上げる

 Ⅲ 中小企業対策の一環であるが、民主党は40 最低賃金を引上げるとしているが、これはフランチャイズ企業に多大な影響が出る可能性が高いので、独立項目として検討してみたい。まず、具体策を見てみたい。
全ての労働者に適用される「全国最低賃金」設定(800円を想定)する。
景気状況を配慮しつつ、最低賃金の全国平均1000円を目指す。
中小企業における円滑な実施を図るための財政上、金融上の措置を実施する。

1.現在の最低賃金はどうなっているか。

 9月2日の日経によれば、2009年度の地域別最低賃金額は、全国平均で10円引上げられ、最低賃金は平均713円となった。
 最低賃金は07年度には平均14円、08年度は16円引上げられて、3年連続で大幅な引き上げとなった。因みに、都道府県別の最低賃金は次の通り。
 順位     都道府県   改正後の最低賃金   引上げ額
 1      東京都       791円      25円
 2      神奈川       789円      23円
 3      大阪        762円      14円
44      沖縄        629円       2円
44      佐賀        629円       1円
44      長崎        629円       1円
44      宮崎        629円       2円
 最低賃金を見ると非常に安く感ずるが、性別、年齢別は一切考慮せずに一律にこれ以下の時給を禁止するものであり、それなりの意味を持つ時給である。筆者は、北海道地区に限定して展開しているフランチャイジーを尋ねて、その時給を聞いたところ、最低時給で定めていると聞かされたことがあるので、特に地方マーケットでは、最低賃金は一つの目安になっていることは間違いない。

2. 当面の目標は時給800円

 民主党のマニフェストでは、全国最低賃金を当面800円としている。仮に10年度に800円に引上げるとすると、来年度の引上げ額は87円となり、過去最高の引き上げ幅となる。仮に、09年度で一番高い東京と、一番低い宮崎の最低賃金を比較すると160円の差が生じている。
 この差額を、来年度以降も継続すると仮定すれば、東京都の最低時給は951円となり、宮崎の最低賃金は789円となる
 多分、東京都の最低賃金でも苦しい中小企業が出てくると思われるが、まして沖縄、宮崎等の789円は企業経営にとっては厳しい金額になるだろう。

3. 将来的に時給1千円を目指す。

 まして、最低賃金全国平均1000円となれば、フランチャイジーの経営は成り立たないであろう。
 筆者は2000年より10年間にわたり、飲食フランチャイジーの経営実態を調べ、120社に及んでいるが、この間の生産性の上昇は全く見られなかった。(人時売上高ベース)時給を引上げるためには、生産性を引上げねばならない。生産性を上げないまま、時給を上げれば、企業が倒れるか、価格を上げなければ営業続行できない。飲食業はバブル期に大幅に価格を引き上げ、賃料値上げと時給アップを吸収した。バブル崩壊で一部値下げはあったが、かなりの部分は値上げを守り、なんとか凌いできた。また、昨年の原材料価格の高騰に合わせて、値上げを行い、基本的には原材料価格が若干下がっても価格は据え置いている。要するに、毎年の時給アップは10年か15年に1回の好機を利用して、価格引き上げによってカバーしてきたのが飲食業の実態であり、生産性の向上が図られた訳ではない。
 民主党のマニフェストでは、「財政上、金融上の措置を実施する」として2200億円を所用額としているが、補助金や融資で済む話ではなく、中小・零細企業の生産性を引上げる具体策無しで、最低賃金を全国平均1000円等と安請け合いをしてもらったは困るのである。是非、生産性を引上げる策を提示してもらいた。

V フランチャイズ規正法は制定されるか

1. 小沢代表代行の挨拶

 8月4日、岡山で開かれた「コンビニ加盟店ユニオン」の結成大会に、当時の民主党小沢代表代行は、次のように演説している。
 「中小企業いじめ防止法を制定することをマニフェストでも明確にうたっています。皆さんが改善を求めているチェーン本部とコンビニ各店舗の契約も、この法律の適用対象とすることといたしております」(日経ビジネス民主党)
更に、同誌は次のように述べている。「加盟店オーナーの一部は“本部の優越的地位を背景とした加盟店いじめは、まだたくさんある”として徹底抗戦の構えで、8月には全国初となるコンビニ加盟店の組合組織を設立した。」
フランチャイズ加盟店を、下請法をベースとする中小企業いじめ防止法の対象とするのは何とも理解し難いことであるが、民主党では、中小企業いじめ防止法案は、大企業と中小企業の取引を公正なものとし、中小企業の利益を保護することを目的としているので、フランチャイズ加盟店も対象になるというのが民主党の論理だそうである。更に、同誌では、次のようなことを書いている。
「さらに、民主党内には、加盟店が本部へ支払うロイヤルティの上限を定めるなど、フランチャイズ業態特有の事情を勘案した「フランチャイズ法」を制定する動きも出てきた。コンビニに限らず、フランチャイズ方式を取る小売業や飲食業などの本部は、これまで以上に「対等な関係」の維持に努める必要がありそうだ」

2. フランチャイズ・ガイドラインの改定について

 公正取引委員会は2002年4月に「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法以上の考え方について」(一般的にガイドラインと呼ばれる)を発表し、 次の内容を詳説している。
1) 一般的な考え方
 ここでは「フランチャイズ・システム」の定義を行っており、極めて妥当な見解を示している。
2) 本部の加盟者募集について
 加盟店募集に当たり、事前に開示すべき内容を8項目を示している。その内容は、ほぼ中小小売商業振興法に等しい内容であり、いずれも妥当な意見であると思う。
3) フランチャイズ契約締結後の本部と加盟店の取引について
(1)優越的地位の濫用について
(2)抱き合わせ販売等・拘束条件付取引について
(3)販売価格の制限について
の3項目を設けて、注意を促している。先にセブンーイレブン・ジャパンが弁当類の値引き販売で公取委より「排除措置命令」を受け、確定したのは(1)優越的地位の濫用の項に該当したからである。
 万一、日経ビジネスが伝えるような「本部の優越的地位を背景とした加盟店いじめは、まだたくさんある」ということであるならば、公取委として、この項を拡大し、実情に合わせたガイドラインを策定することは、当然あるだろう。

3. 情報開示法の新設について

 現在、フランチャイズ加盟の事前情報開示は中小小売商業振興法によっている。しかし、法の制定が古く(1973年9月)、かつ適用も小売業(含む飲食業)に限定され、サービス業が漏れている。
 そこで「フランチャイズ情報開示法」を新設し、現在以上に加盟店希望者に契約以前の情報開示を行うことは必要だろうし、立法としても妥当な措置であると思う。

4. 本部と加盟店の対等な関係について

 どこのフランチャイズ契約書でも、「本部と加盟店は共に独立した事業者である。」等とした契約書を交わしていると思われる。
 しかし、小沢代表代行から「中小企業いじめ防止法の適用対象とする」等と言われることは極めて不穏当であり、このような発言が出ないよう本部・加盟店の対等な関係を早急に構築する必要があるだろう。これは法規制で取り締まるものではなく、本部・加盟店双方の協議により決定すべきことである。
 フランチャイズ協会でも「加盟店と本部のあり方に関する研究会」が開催されていると聞く。早急に良い結論を出して、会員社に普及してもらいたい。

5. フランチャイズ契約の内容に踏み込むフランチャイズ規制法について

 あくまでも「契約自由」の原則に従い、国家権力が契約内容まで踏み込む法規制には反対である。世界中を探しても、契約内容を縛るフランチャイズ規制法は聞いたことがない。
 事前情報開示を徹底すれば、契約内容まで踏み込む必要はないだろう。但し、現在の本部・加盟店の関係が「公序良俗」に反する内容であれば、それは裁判を通して解決するのが近代国家の常識ではないか。
 日経9月18日には、ローソン新浪剛史社長のインタビューが掲載された。
質問 フランチャイズチェーンへの規制強化の声もある。これに対し新浪氏は
 「既存のFC店を守るため、新規出店などを規制する案が出ているが、法で過度に加盟店を保護すれば、チェーン本部の運営が立ち行かなくなり共倒れだ。売上が伸び悩む店を、本部の負担でより良い立地に移転することも難しくなる。本部と加盟店の対立構造が生じるような事態は避けなくてはならない」と答えている。

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