フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

転換点に立つ日本のフランチャイズ・ビジネス

 2008年度の「JFAフランチャイズチェーン統計調査」が発表された。
店舗数は約5千店減少し、チェーン数も15チェーン減少した。いずれも、この調査が始まって以来の減少であり、日本のフランチャイズ・ビジネスが大きな転換点に差し掛かっていることを顕す事象であり、今後更に大きな変化が見込まれる。
 本報告では、2008年度の統計調査の詳細と、国際比較、小売業・飲食業におけるフランチャイズのシェアー、各国のフランチャイズ・システムの比重比較など,先学の意見を参考にしながらまとめてみた。

Ⅰ 2008年度「JFAフランチャイズチェーン統計調査」の概要

1. 調査結果の概要

日本フランチャイズチェーン協会の調査によれば、2008年度の調査結果は表―1の通りである。

表―1  2008年度調査結果    (金額単位百万円)

 
チェーン数
店舗数
売上高
チェーン数
増減
店舗数
前年比増減
前年比
売上高
前年比
総計
1,231
▲15
230,822
▲4,864
97.9
20,808,749
102.5
小売業
333
▲7
88,374
3,041
103.6
14,445,564
106.2
(うちCVS)
30
▲5
44,391
1,163
102.7
8,067,257
106.6
外食業
533
▲7
54,361
▲1,149
97.9
3,939,402
97.6
サービス業
365
▲1
88,132
▲6,756
92.9
2,423,783
91.1

この調査を概観すれば、次の点が指摘できる。(協会指摘事項)
①2008年度の日本国内のフランチャイズチェーン数は1,231チェーンで、前年度比▲1.2%(15チェーン減)。これは当調査始まって以来初の減少であった。
②国内の総店舗数(直営店と加盟店の合計)は23万822店舗で、前年度比▲2.1%
(4,864店減)。店舗数の減少は、当調査が始まって以来初の減少である。
③フランチャイズチェーンのシステムワイドセールス(以下「売上高」と略記)は20兆 8,087億円で前年度比+2.5%(5,049億円)増加した。
更に業種別に動向を見れば次の通りである。(協会指摘事項)

(1)小売業

 小売業界は全体として高い伸び率を示し、FC業界全体の伸びを牽引した。
CVSでは、店舗数は前年度比2.7%の増加であるが、売上高は6.6%の大幅増加である。これはタバコ自販機のタスポカード導入制度に伴う売上高増加が大きな要因である。
 小売分野で高い伸び率を示したのが、「家具、什器、家庭用品関係小売」に属する「家電量販店」である。店舗数は前年比+12.4%と2ケタの増加で、売上高はさらに伸張して+16.8%であった。店舗数、売上高ともに2年連続で2ケタ成長を見せた。伸びた要因は、大手チェーンによる地方チェーンや個人経営のFC化や店舗の大型化などが上げられる。
 また「医薬品・書籍・スポーツ用品・中古品関係小売」に属する「ドラッグストア」も、家電量販店業界と同様フランチャイズ方式による業界再編が急となり、結果として店舗数は前年比+20.6%に、売上高は同+28.1%という、フランチャイズ・ビジネス業界全体の中で最も高い伸び率を残した。
 ホームセンター関係も比較的順調(売上高+10.2%)であった。

(2)外食業

 08年度の外食業界は、店舗数、売上高ともに前年度を下回り、2年連続のマイナス成長となった。比較的堅調であったのは「ファーストフード」に属する「アイスクリーム」(前年度比+9.7%)と「ハンバーガー」(同+1.9%)であった。
 落ち込みの大きい分野はコーヒーショップの売上高▲9.7%,(店舗数は微増)、持ち帰り寿司・弁当店の店舗数▲5.8%,売上高▲8.6%、日本料理・寿司店の店舗数▲14%,売上高▲5.8%であり、回転寿司の成長鈍化が響いている。
 外食業界の目だった動きは、リーマンショック以降厳しくなったメニューの低価格化へのシフト。それに数年前から続いているM&Aが08年度においてもかなり見られたことが上げられる。なお、低価格志向は外食に限らず、小売業でもサービス業でも顕著になってきた現象である。

(3)サービス業

 サービス・フランチャイズはこれからの日本のフランチャイズ・ビジネスを牽引する業種と見られてきたが、08年度の統計では惨憺たる様子である。
 まず、店舗数は▲7.1%、売上高▲8.9%と店舗数、売上高ともに低下し、売上高は2千3百5十億円の低下である。
 サービス・フランチャイズの分野で売上高がプラスになっているのは「理容・美容」(店舗数+4.3%、売上高+1.2%)、学習塾。カルチャースクール(店舗数+1.1%、売上高+13.4%)、DPE・印刷・コピーサービス(店舗数10.0%、売上高29.3%)、住宅建築・リフォーム・ビルメンテナンス(店舗数+0.3%、売上高+7.8%)の4分野のみである。
 落ち込みの大きい分野は自動車整備(店舗数▲58.0%、売上高▲35.7%)、クリーンサービス・クリーニング(店舗数▲2.0%、売上高▲20.2%)リース・レンタルサービス(店舗数▲3.3%、売上高▲14.7%)等である。

2. 08年度統計はフランチャイズ・ビジネスの転換点である

 フランチャイズ・ビジネスの歴史を辿れば、70年代は外食業の時代、80年代、90年代はコンビニの時代、2000年代はリサイクル、リユースの時代と括ることが出来るだろう。
 08年度統計でもコンビニは業種としては最大の店舗数、売上高を誇る産業であるが、08年度はタスポ効果に支えられた1年であり、09年の直近の既存店売上高は3ケ月連続前年割れであり、今年一杯の回復は難しいと思われる。
 また、リサイクル・リユースも元気ある業界であるが、むしろ家電量販店とドラッグストア業界再編に伴う中小チェーン、個人商店の再統合がフランチャイズ化の大きな波となり、外食業やサービス業の低下を補う形となった。
 外食業、サービス業の店舗数、売上高ともに前年割れは09年度も継続するであろう。コンビニは若干店舗数を伸ばし、売上高も微増を続けるであろう。
 しかし、既存店の売上高が低下するままで、コンビニ全体の売上高が今後も継続的に伸び続けるとは考えにくい。外食業、サービス業、コンビニともに業態の革新を図らないと売上高の回復は難しく、正に転換点に立つFC業界である。

Ⅱ 世界各国のフランチャイズ・システムの規模

2006年1月号のフランチャイズ・エイジに「世界各国の最新FC統計」という記事が出ている。(22P)このデータを基に小塚総一郎氏が「フランチャイズ契約論」にまとめられている。これを表―2にまとめてみる。

表―2  世界各国のFC統計     売上高の単位10億ドル

   
1
2
3
4
   
システム数
店舗数
売上高
雇用数(千人)
北米 アメリカ
1,500
760,000
1,500
9,700
南米 ブラジル(04)
814
59,026
1
531
ヨーロッパ フランス(04)
835
62,981
113.7
400
ドイツ(02)
760
41,200
23.8
362
イギリス
718
31,300
160
32.7
ロシア
95
1,850
N/A
N/A
アジア 中国
1,900
87,000
90
2,000
日本
1,100
220,000
170
2,000
インド
600
40,000
1
300
マレーシア
N/A
N/A
N/A
500
オセアニア オーストラリア
720
50,600
62
600

FC統計は実施年が,少しずつ違うため完全な比較は困難である。しかし、毎年、日本フランチャイズチェーン協会が出来る限りの詳細な調査を行うのは日本のみであり、この点は世界に誇っても良いであろう。
 世界各国のデータはどこまで正確かは判らないが、店舗数、売上高、雇用者数等は、日本がアメリカに次いで世界第二のフランチャイズ大国であることは間違いない。(基準年次は2005年度である。それ以外の年次を採用した場合は国名の横に年度を示した)

Ⅲ 各国経済に占めるフランチャイズ・システムの比重

 小塚総一郎氏の「フランチャイズ契約論」の24ページには、上記の「各国のフランチャイズ・システムの規模」と並んで、「各国経済に占めるフランチャイズ・システムの比重」が一覧表に示されている。

表―3  各国経済に占めるフランチャイズ・システムの比重

    A B A/B C D C/D
    売上高 国内総生産 (%) 雇用数 就業者数 (%)
10億ドル 10億ドル 千人 千人
北米 アメリカ 1,500 11,667.5 12.9 9,700 139,252 7.0
南米 ブラジル 1 604.9 0.2 531 80,163 0.6
ヨーロッパ フランス 113.7 2,002.6 5.7 400 24,720 1.6
ドイツ 23.8 2,714.4 0.9 362 35,659 1.0
イギリス 160 2,140.9 7.5 32.7 28,008 0.1
ロシア N/A 582.4 N/A 67,134
アジア 中国 90 1,649.3 5.5 2,000 737,400 0.3
日本 170 4,623.4 3.7 2,000 63,290 3.2
インド 1 691.9 0.1 300 368,966 0.1
マレーシア N/A 117.8   500 9,867 5.1
オセアニア オーストラリア 62 631.3 9.8 600 9,636 6.2

アメリカは国内総生産比率、就業者人口比率から見ても正に世界一のフランチャイズ大国である。しかし、アメリカでは商標型フランチャイズが含まれており、単純な比較は出来ない。小塚氏は同著作で、米国のFCの付加価値額で
ビジネスフォーマット型   73.6%
商標型フランチャイズ    26.4%
と計算されている。(2001年の統計から算出、24ページ)非常に参考になる意見である。
 日本の国内総生産に対する比率は3.7%、雇用者数比率は3.2%であり、これは日本経済にとって大きな数値である。ちなみに、日本の農業が最近大きく取り上げられているが、日本農業の生産額は06年で8.3兆円であり、フランチャイズ売上高はその2.4倍である。(農林省「農林小売業生産指数」06年)
 また、雇用者比率3.2%も大きな数字である。現在の日本で一番大きな課題は「雇用の確保、拡大」であると筆者は考えている。就労人口の3.2%を雇用するフランチャイズ業界は、日本では主力産業の一角を占める重用産業であると言っても過言ではないだろう。

Ⅳ 日本のフランチャイズ・システムの最近の動向

 2008年度のフランチャイズチェーン統計はⅠで示したが、ではここ数年の動きはどうであったろうか。日本フランチャイズチェーン協会のデータを引用して、最近4年間の動きを調べてみる。

1. わが国のフランチャイズ・システムの動向

表―4  最近4年間のわが国のフランチャイズ・システムの動向

(チェーン数)

  2005年 2006年 2007年 2008年
全業種 1,146 1,194 1,246 1,231
小売業 344 346 340 333
外食業 467 497 540 533
サービス業 335 351 366 365

(店舗数)

  2005年 2006年 2007年 2008年
全業種 234,489 235,440 235,686 230,822
小売業 85,035 85,582 85,333 88,374
外食業 56,865 56,188 55,465 54,316
サービス業 92,589 93,670 94,888 88,132

(売上高:単位百万円)

  2005年 2006年 2007年 2008年
全業種 19,388,888 19,603,579 20,303,777 20,808,749
小売業 12,759,187 12,967,526 13,607,958 14,445,564
外食業 4,060,821 4,075,068 4,036,484 3,939,402
サービス業 2,568,880 2,560,985 2,659,335 2,423,783

2008年度以外は概ね、チェーン数、店舗数、売上高は微増傾向にあったが(業界により若干の減少はある)、2008年度は売上高を除いてほぼすべての項目で減少しており、フランチャイズ・システムの転換点を感ずる。

2. フランチャイズ・システムのシェアー

次に、業界全体の統計のある業種の「FC企業の占めるシェアー」を計算して見る。

(小売業)

平成19年商業統計表の小売額(単位:百万円) 134,705,448
2007年度のフランチャイズ統計(単位:百万円) 13,607,958
全小売額に占めるフランチャイズのシェアー 10.1%

(外食業)

平成20年度外食産業総合調査センター(単位:億円) 24,4315
2008年度のフランチャイズ統計    (単位:億円) 3,9394
全外食業に占めるフランチャイズのシェアー 16.1%

(サービス業)

平成18年度国民経済計算年報と
 総務省のサービス産業動向調査から推算(単位:億円)
2,252,258
2006年度のフランチャイズ統計(単位:億円) 2,560.9
サービス業に占めるフランチャイズのシェアー 1.1%

(総括)

 小売業、外食業全体に占めるフランチャイズの比率は10%~16%の範囲で、予想以上に高い比率を占めている。サービス業の全国統計は、今年の7月から始まり、必ずしも正確な数値ではないが、概略フランチャイズのシェアーは1.1% と計算できる。
今後、更に精度を上げた数値を公表したい。

本文の無断引用は禁止いたします