フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

2009年フランチャイズ業界を振り返る

Ⅰ フランチャイズ業界全般

1. フランチャイズ業界の転換点を迎える

 2008年度のフランチャイズ統計は、この統計が始まって以来と言う事象が幾つも散見された。
 まず、フランチャイズ・チェーンが前年比15チェーン減少し、1231チェーンに止まった。これは統計開始以来初の減少であった。 
 また、国内の総店舗数(直営店と加盟店の合計)は23万822店舗で、前年比▲2.1%(4,864店舗減少)であり、総店舗数の減少も、この統計始まって以来初の減少であった。
 総売上高は20兆8百億円で、前年比+2.5%の増加となった。

(1)小売業

 小売業は全体として高い伸び率を示し、FC業界全体の伸び率を牽引した。コンビニでは、店舗数は前年度比2.7%の増加であり、売上高は6.6%の大幅増加であった。これはタバコ自販機のタスポカード導入に伴う売上高増加が大きな要因であり、09年6月以降は再び既存店ベースの落ち込みが目立つようになった。
 小売業で高い伸びを示したのは「家電量販店」であり、店舗数は+12.4%の増加、売上高はさらに伸びて+16.8%であった。伸びた要因は、大手チェーンによる地方チェーンや個人経営のFC化や店舗の大型化などが上げられる。 また、「ドラッグストア」も、家電量販店業界と同様 フランチャイズ方式による業界再編が急となり、結果として店舗数は前年比+20.6%に、売上高は同+28.1%という急成長を示した。ホームセンター関係も順調な売上高の伸び(10.2%)を示した。

(2)外食業

 08年度の外食業界は、店舗数、売上高ともに前年度を下回り、2年連続のマイナスとなった。  特に落ち込みの大きい分野はコーヒーショップの売上高▲9.7%(店舗数は微増)、持ち帰り弁当、寿し店の店舗数▲5.8%、売上高▲8.3%、日本料理・寿司店の店舗数▲14%、売上高▲5.8%であり、回転寿司の成長鈍化が響いている。

(3)サービス業

 サービス・フランチャイズはこれからの日本のフランチャイズ・ビジネスを牽引する業種と見られてきたが、08年度統計では惨憺たる結果となった。
 まず、店舗数は▲7.1%、売上高▲8.9%と、店舗数、売上高共に低下し、売上高は▲2,350億円の落ち込みとなった。
 特に落ち込みの大きい分野は自動車整備(店舗数▲58.0%、売上高▲35.7%)クリーン・サービス・クリーニング(店舗数▲2.0%、売上高▲20.2%)、リース・レンタルサービス(店舗数▲3.3%、売上高▲14.7%)等であった。
 以上の状況を直視すると、元来日本のフランチャイズを牽引してきた外食業、コンビニ(09年度は既存店の落ち込みが始まっている)の伸び率が低下するか減少に転じているのに対して、家電量販店、ドラッグストア業界等の流通再編成に伴う中小チェーン、個人商店の再統合がフランチャイズ化の大きな波となり、フランチャイズ業界は転換点に差し掛かっている。

2. フランチャイジー団体は労働組合か

 8月4日岡山市で「コンビニ加盟店ユニオン」の設立大会が開催された。
連合岡山二宮会長、小沢民主党代表代行(当時)等が列席して祝辞を述べた。
果たして、加盟店オーナーは労働者か?加盟店ユニオンは労働組合か?

(1)法適合組合の要件

 労働法の専門家(菅野氏)によれば、労組法において「労働組合」と認められる団体は、まず「労働者」を構成主体とするものでなければならない。そしてこの「労働者」は同法において「職業の種類を問わず、賃金、給料、その他これに準ずる収入によって生活する者」と第3条で定義されている。
 しかし、労組法では肝心の「賃金」が定義されていないため、「労働者」であるかどうかを判断する場合に、この規定はさほど有効ではないそうである。 そこで学説、裁判例では「使用従属関係」という代替的な基準によって判断していると菅野氏は述べる。使用従属関係とは、労働者に対して具体的に如何なる意味を持つか判例を参考にしながら、菅野氏は次の4点を挙げている。
①その者が当該企業の事業遂行に不可欠な労働力として企業組織に組み込まれていること、②契約が一方的に決定されること、③業務遂行の日時、場所、方法などにつき指揮監督を受けること、④業務の発注に対し諾否の自由がないことの4点を挙げ、このような標識の幾つかを備える限り、労働者に該当すると結論付けている。
②の「契約内容が一方的に決定されること」は、労働契約の意味であろうが、加盟店オーナーは本部と労働契約を結ぶ訳ではない。同一内容のフランチャイズ契約を締結するのであり、これはまるで意味が異なる。決定的に違うのは③「業務遂行につき指揮監督を受けること」である。フランチャイズ契約では加盟店は独立した経営者であり、本部の指揮監督を受ける訳ではない。あくまでも、本部は加盟店を説得し、加盟者は納得して業務を遂行するのであり、指揮命令する関係ではない。もし、コンビニ加盟店ユニオンの参加者が、本部の指揮監督下で仕事をしているとするならば、これは本部の誤りであり、速やかに本部はそのような関係を改めねばならない。
 この③の「指揮監督を受けること」は絶対にFCにあってはならないことであり、この1点で、コンビニオーナーは労働者ではない。従って「コンビニ加盟店ユニオン」は労働法上の労働組合と認定することは出来ない。
 ちなみに、連合岡山は、この「コンビニ加盟店ユニオン」を連合参加の組合として認定したそうである。また、岡山地方労働委員会には、労組としての届出はない模様である。

3. 加盟店との関係改善研究会が発足

 10月7日、日本フランチャイズチェーン協会(JFA)は「フランチャイズ本部と加盟店のよりよい関係のあり方研究会」を発足させたと公表した。
 セブンーイレブン・ジャパンが6月に公正取引委員会から弁当類値下げを制限したとして排除措置命令を受けた事などを機に、本部各社は加盟店との関係強化やFC経営の見直しを迫られていた。
 研究会は上原征彦氏(明治大学・大学院教授)を座長として、川越憲治氏、小塚総一郎氏、小山周三氏、高岡美佳氏等大学教授や田中陽氏(日経新聞編集長)等を委員としている。協会代表としては土方清協会委員長や櫻田厚副委員長が代表として参加している。
 また加盟店代表としてセブンーイレブンFCオーナー、ローソンFCオーナー、外食FCオーナーも加盟店代表として参加している。
 研究会のスケジュールは9月25日に第1回会合を開き、11月、12月、更に必要あれば第4回まで開催予定である。

 検討課題は、次の通りである。
①フランチャイズシステムに対する社会の見る目(メディア・消費者)の変化 ②フランチャイズ契約情報開示のあり方(本部と加盟店の公正な取引について)
③トラブル相談及びトラブルの未然防止
④フランチャイジーの意識の向上
⑤JFAの役割と機能
第1回会合での決定事項は次の通りである。
(対応①実態の把握)加盟店経営状況の実態調査(アンケート)を実施⇒CVS5チェーン合計3,000店の店対象。その他の業種も順次実施予定。
(対応②各本部の個別対応) 各本部個別の対応事例をJFAへ情報集約(対応③JFAの対応)「加盟店相談センター」の設置、「本部・加盟店懇談会」の開催。 
 やや遅すぎたきらいはあるが、FC本部が加盟店との対話を重視する姿勢に転ずることには賛成であり、加盟店懇談会等と言っていないで、思い切って「加盟店オーナー会」の設置を提言したい。

4. パート・アルバイト(P/A)採用難は一応解消へ

 昨年のリーマンショック以降、「派遣社員の解雇」「臨時従業員の解雇」等一挙に労働市場が変化し、それまでの全国的なP/A不足、社員不足が解消し、一応従業員の採用がやり易くなった。  勿論、人材のミスマッチは続いているが、「全く採用できない」「広告を出しても1人の応募もない」という状況は様変わりである。
 フランチャイズ・ビジネスはP/Aに依存する比率が高いため、あのまま人手不足が続いた場合は、事業継続を不安視する意見が全国で見られたが、その心配は取りあえずなくなった。

Ⅱ 小売業界の動き

1. 公取委がセブンーイレブン・ジャパンに対して排除命令を出す

 セブンーイレブン・ジャパン社がFC加盟店に対し、消費期限の近づいた弁当などを値引きして売る「見切り販売」を不当に制限した疑いがあるとして、公正取引委員会が、同社に昨年10月より立入り検査・聞き取り調査などを続け、09年2月からは加盟店も調査対象にしていた。公正取引委員会は同社に対し独占禁止法違反(優越的地位の濫用)容疑で立入り検査をしていた。
 新聞によれば、セブンーイレブンのFC加盟店は取引先から仕入れた商品に対し、売れ残って廃棄した分の原価は全額加盟店負側が負担する契約である。
 このため加盟店が消費期限が近づいた商品などを見切り販売しようとしたところ、同社本部側が「値引き販売しないように」などと指導して制限した疑いが持たれている。
 公正取引委員会は平成13年(2001年)にコンビニ14チェーン本部からヒアリング調査を行った。また同年、大手14本部の加盟店3,000店に対して、アンケート調査を行い、有効回答は650(21.7%)であった。  この本部調査とアンケート調査を受けて平成13年10月に公正取引委員会は「コンビニエンスストアにおける本部と加盟店の取引に関する調査報告書」を公表している。この報告書のまとめとして、公正取引委員会は「今回の調査を踏まえて、独占禁止法上の考え方の明確化を図るため、フランチャイズ・ガイドラインを改定する」と明言していた。
 平成14年(2002年)4月に公正取引委員会は「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」という文書を公表した。所謂ガイドラインの改訂版である。その中に(1)優越的地位の濫用についての項目で「見切り販売の制限」が、優越的地位の濫用に該当すると指摘していた。
 平成21年6月22日に公正取引委員会は、セブンイレブン・ジャパン社に対し、排除措置命令を出した。
 同社は、7月分から店舗で売れ残った弁当類の廃棄損失の15%分を負担すると発表した。セブンーイレブン1社で年間600億円強の廃棄損失があり、この15%本部負担で新たに本部が負担する金額は年間100億円であり,加盟店1店舗当たり6万円強の利益改善につながる計算と述べている。
 結局、同社は8月3日の取締役会で、「値下げガイドライン」を公取委が承認することを前提に、排除措置命令を受け入れることを決議し、5日に公正取引委員会に報告した。
 日経MJ、8月5日によれば、値下げガイドラインは①値下げは消費期限の2時間前に設定している「販売期限」の1時間前から始める②仕入れ価格を下回る価格で値引き販売した場合には、発生した損失分を加盟店が負担することが柱である。  このガイドラインを実施するためには、加盟店との契約の一部を改定する必要があるが、セブンーイレブン・ジャパン社の報道によれば8月中に99%の加盟店が契約改定に応じたとのことである。
 6月から8月に掛けてフランチャイズ業界の話題を独占した、この事件は「排除命令受入れ」という形で結着したが、本部と加盟店のあるべき姿という大きなテーマを投げかけた。今後、時間を掛けて解決に向けて努力することになるだろう。

2. ファミリーマートがam/pmを買収

 11月14日の日経新聞によれば、ファミリーマートはレックス・ホールディングスから同社傘下のエーエム・ピーエム・ジャパン(am/pm)を買収すると発表した。ファミリーマートは12月24日付けでam/pmの全株式を120億円で取得し、10年3月に合併する計画である。
 計画によれば、am/pm1100店のうち、不採算店250店を閉鎖すると同時に2012年2月までに店名の統一、仕入先の一本化を図り、早期に統合効果を目指すものである。
 手順としては、まずam/pmが直接契約している加盟店の店名を変更する。エリアフランチャィザーの傘下にある関西、九州の店舗については今後、エリア・フランチャイザーと店名一本化の交渉を行う。am/pmの商標権を持つ米エーエム・ピーエム・インターナショナルが求めていた一部店舗の名称存続と、同業への譲渡禁止条項については、米社の合意を得ているとのことである。
 ファミリーマートの上田順二社長は「魅力的なのは首都圏にドミナントを作っている点だ」と評価している。
 事実、都内店舗数はこの買収でファミリーマートが1位となる。
都内店舗数
 ファミリーマート+am/pm    1700店
 セブンーイレブン・ジャパン     1650店
 ローソン              1250店 
合併後の全店売上高(概算)は次の通り。(連結子会社とエリアFCを含む)
1位 セブンーイレブン・ジャパン   2兆7600億円
2位 ローソン            1兆5600億円
3位 ファミリーマート+am/pm  1兆5300億円
4位 サークルKサンクス       1兆1000億円
 上田社長は2003年にファミリーマートの社長に就任したが、その時の平均日販は46万円であったが、08年度は50万円を越す水準まで引上げた実績がある。国内のコンビニ店舗数は4万5千店を超えた。上田社長は「市場は5万店で飽和する」と常日頃口にしていた。正に時宜を得た買い物であったのであろう。日本全国には、まだ40社近いコンビニ本部がある。いずれ合従連合の話が近いうちに起こるであろう。
 今年の2月にローソンがam/pmを145億円で買収するとのニュースが流れた。ローソンの新浪社長は、やはり東京圏での店舗数の増加を大きな収穫であると発表した。しかし、米国のam/pmの商標権を持つエーエム・ピーエム・インターナシヨナルが同業への譲渡禁止条項及び700店舗の存続維持を求めたことからローソンは買収を断念した経緯があった。5月20日の日経新聞では、ローソンの意向として「今後もM&Aを含めて首都圏での事業拡大を目指す」としている。

3. タスポ効果一巡、コンビニ既存店再びマナスへ

 日本フランチャイズチェーン協会の発表によれば、6月のコンビニの既存店ベースの売上高は前年同月比2.3%減少した。既存店売上高が前年同月を下回ったのは1年2ケ月ぶりである。タバコ自販機に「タスポカード」を導入したことにより売上高押上げ効果が無くなったことと、消費不況で買い控えが広がったためである。(日経MJ7月24日)
 6月の来店客数は2.6%増とプラスを維持したが、客単価は4.8%減と7カ月連続で前年同月を下回った。主力の弁当類の売上が低迷し、買上点数が落ち込んでいることが響いた。
 7月のコンビニ既存店売上高は前年同月比7.5%減少した。統計を取り始めた1998年12月以来、最大の落ち込みとなった。「タスポ」効果がはがれたことと、長雨の天候不順で飲料、アイスクリーム等夏物商品の売上が低迷したことが大きい。消費不振下の厳しい夏商戦を象徴する数字であった。8月から11月に至るまで、既存店ベースの売上高は前年割れとなった。
 各社はPB商品の投入、値下げで対応しているが大きな効果は出ていない。

4. 日本リユース協会発足

 09年4月15日に「日本リユース業協会」が発足した。目的については「当団体は、“リユース”並びに“リユース業”の社会的認知度向上等」と述べているが、一方同協会の目的は盗難品の持ち込みや査定の透明化が狙いだ(日経新聞、5月5日)との声もある。市場が成長するには価格だけでなく、信用力のアップも今後の条件と指摘する。
 会長は山本善政氏(ハードオフコーポレーション社長)、副会長は石田誠氏(アップガレージ社長)、上田清弘氏(パシフィックネット社長)である。
正会員企業は次の10社からスタートした。

(株)アップガレージ、(株)コメ兵、(株)ゴルフ・ドゥ、(株)ゴルフパートナー、(株)タックルベリー、(株)トレジャー・ファクトリー、ネットオフ(株)、 (株)ハードオフコーポレーション、(株)パシフィックネット、(株)フォー・ユー

 山本会長によると、リサイクルとリユースとは別概念である。リユースはそのまま再利用してもらうものであり、リサイクルは一旦壊して再利用する概念であり、リユースを徹底的に行い、その後でリサイクルしてもらうのが一番エコ対策になるそうである。リユース事業は経済産業省の調査では4,300億円の市場規模であり、年々拡大している。
 日本政策投資銀行の塙賢治調査役は「設備投資意欲が旺盛になるのは11年以降の可能性が高い。設備を手放す動きが新たな産業を育てる可能性が高まっている」と指摘する。少子高齢化を迎え、日本経済が一段と成熟する以上、中古品を活用した実用本位の経営は今後も広がりそうである。(日経新聞、5月6日)

5. 大手出版社の出資は、ブックオフの自由価格本の増加が目的か

 大日本印刷と講談社、集英社、小学館など6社は、5月13日にブックオフコーポレーションの発行済み株式数の28.9%(議決権ベースでは314%)を取得すると発表した。日本政策投資銀行などが出資するアント・DBJ投資有限責任組合などから取得する(日経新聞、5月13日)
 大日本印刷は6.6%を取得して筆頭株主となる。傘下の丸善、図書館流通センターと合わせて16.03%を取得する。講談社など出版社は4.29%ずつ出資する。
 大手出版社は中古書籍チェーンに対し「著作者の権利を損なう」として対立していたが、出版不況で書籍の販売が低迷する中で、中古書籍チェーンとの共存共栄を探る狙いがあると新聞は指摘する。
 しかし実際は全国に1千店近い店舗を持つブックオフへの出版社の資本参加により、今後「自由価格本」の流通が増加するとの意見も聞かれる。近年の出版不況で20年前は3割程度であった返品率(金額換算)が、現在は約4割に達している。出版社としては過剰在庫を解消するため再版指定を解き、中古書籍店側が「バーゲン本」と呼び自由な価格設定でセールを実施する事例が増加している。ブックオフも中小出版社から仕入れ、自由価格本を一部店舗で展開している。一棚あたりの売上高は中古本の2倍近くになっており、同社にとって中古本に続く「経営の柱」になっている。
 大手出版社も、出版不況の中で順調に売上を伸ばすブックオフを自由価格本の販路として活用できるメリットはある。
 大手出版社側の出資には、ブックオフなどが消極的で進まなかった中古本の著作権者への著作権料支払いのルール作りに、ブックオフを引き込む狙いもあると新聞は解説する。制度疲労が顕在化した「再版」「返品自由」などの慣習が、この資本参加で変化する動きが加速しそうである。
 しかし、一方で「中古の出版物の定価の1割で買い取って、定価の半額で販売する」ビジネスモデルが変化する恐れもあり、消費者の支持がそがれることも考えられる。(日経MJ、5月15日)

Ⅲ サービス業界の動き

1. 「09年サービス業総合調査」の伸び率は0.1%増で、横ばい

次 日経MJがサービス業39業種を対象に調べた09年版(08年8月~09年7月期決算)の「第27回サービス業総合調査」によれば、売上高は前年比0.1%増加で、ほぼ横ばいとなった。前年調査と比較しても1.9%低下した。 売上高は1994年の前年割れ以来の低い伸び率であった。
 伸び率の高い順に記せば保育サービス、在宅サービス、インターネットプロバイダー、有料老人ホーム、チケット取次ぎ、興行場、結婚式場・手配、都市型CATV、貸し駐車場、トランクルーム等であった。
 一方、売上高が減少したサービスは不動産仲介、エスティック、温浴施設、人材サービス、総合レンタル、クリーニング・家事応援等であった。
 日経MJ、11月11日は、この特徴を「生活支援や福祉サービスが成長の主役となり、共働きや高齢者など助けを必要とする世帯の需要を取り込んだ」と分析している。

2. 学習塾は2.3%の伸び、教育費は「聖域」か

 「09年サービス業総合調査」(日経MJ)によれば、09年の学習塾の伸び率は2.3%だった。少子化の進行で前年調査を0.8%下回ったが、依然として教育支出を「聖域」と見なす親が多いと見られる。
   しかし、明光ネットワークジャパンによれば、3~5月期は48%の減益となった。理由は新学期からの生徒数が想定を下回り、東北や北海道など地方都市を中心に景気後退の影響が出たと発表している。これによれば、必ずしも教育支出は聖域ではなく、親の収入と蜜切な関係があることを伺わせる。
 学習塾では、夏季講習が大きな収入の柱となっている。明光ネットワークジャパンの09年8月期単独営業利益は前期比3%増加の29億年前後だったと発表している。夏季講習会が好調で、生徒1人当りの受講料が上昇したことで増益を確保したとのことである。(日経新聞、10月6日)
 そんな中で学習塾以外の柱事業を育成しようと学習塾もある。学習塾大手の京進は新生児から9歳の子供を持つ親を対象にした家庭支援事業に乗り出す。(日経新聞、7月22日)育児に適した家庭環境づくりを手助けする診断テストの実施、子育て世代向けの交流サイト「いちご」の開設、子供のやる気の出し方やストレス発散法の講義を専門家から受けるセミナー事業である。
 国内の学習塾業界は少子化で中長期的に需要が減少し、大手学習塾による合従連衡が進行すると見られる。生き残りのため周辺事業を育成し、第2の収益の柱に育てる意向である。
 10年度以降支給が見込まれる「子供手当て」に期待する声も出ている。

3. 複合カフェは1.2%減少へ

 2005年調査では59.6%増加、07年調査では15.3%増加、08年は一転して2.0%減少した複合カフェは、09年調査では1.2%減で、前年より0.8ポイント改善した。
「スペースクリエイト自由空間」を展開するランシステムは1.8%減少した。アプレシォは16.5%と大幅に低下した。ゆう遊空間を展開するメディアクリエイトも3.2%減少であった。(日経MJ、11月18日)
 複合カフェは投資金額が1億円以上と大きいこと、「ネットカフェ難民」などの風評被害で新規加盟店の募集が思うように進まなかったこと等が減少の要因と見られる。今後は、業界の再編、淘汰が進み、勝ち組と負け組が明らかになると思われる。
 名証セントレックス上場で複合カフェ大手のアプレシオは6月5日、東京地裁に民事再生法の適用を申請し、受理されたと発表した。負債総額は約22億円。急激な出店拡大で負債が膨らみ、業績が悪化していた。「アプレシオ」「I LOVE 遊」の名称で約90店を展開しているが、店舗営業は続けるという。
(日経新聞、6月6日)
 7月1日民事再生手続き中のアプレシオの支援スポンサーとして「ホッコク」(ラーメン店を展開)が内定した。(日経新聞、7月2日)しかし現在は「アプレシオ」を複数出店する加盟店が支援スポンサーとして活動しているとの話が出ている。
 急拡大した業界だけに、再編も手間取っている様子である。

4. プラザクリエイトはフォトブック制作体制を整備

 DPE(写真の現像・焼付け・引き伸ばし)関連各社がデジタル写真などを写真集に加工するサービスを拡充している。
 特に、プラザクリエイトは、07年から写真集作成サービス「フォトブック」を開始し、大島社長は「快調である」と述べているが、フォトブックに対応するシステムを導入しているのは直営店のみで約320店舗である。10年3月期中に残りの直営店に順次設置するほか、加盟店には10年春以降に導入する意向である。
 店舗に導入するのは独自に開発した印刷・製本システム。消費者が持ち込んだ写真データを印刷し、冊子の形状に製本したり、裁断したりする。同社のフォトブックは原則、受注から制作まで店内で完結させる仕組みである。
 フォトブックの制作可能な店舗数を、2011年3月末までに現在比2倍の650店舗に引上げる。投資額は約15億円である。
 同社は「パレットプラザ」「55ステーション」の2種類の店舗を展開しており、店舗数は09年8月末時点で1083店舗。うち直営店は7割、FC店は3割を占める。(日経MJ、10月2日)

Ⅳ  外食業界の動き

1. 外食産業の売上高低迷

 マクロ的な外食業の売上高は低迷状態が続いている。
まず、外食産業総合調査研究センターがまとめた2008年の外食産業の市場規模は、前年を0.5%下回る24兆4315億円となった。前年実績割れは3年ぶりある。業態別には「喫茶店・居酒屋など」が1.7%減の2兆860億円、「料亭・バーなど」が1.3%減の2兆9248億円、社員食堂や病院向けなど「集団給食」部門も1.9%減の3兆310億円となった。(日経、6月10日)
 また、日本フードサービス協会の発表した、全店ベースの前年対比売上高は下記の通りであり、特に6月から9月までは4ケ月連続前年割れである。

全店ベース前年同月比推移表(日本フードサービス協会発表)
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
100.4
98.0
98.6
100.8
102.1
97.4
98.2
96.4
98.5
100.4
 この数字から判断しても、09年全体もまた、外食総研の数字は前年割れになるであろう。

2. 低価格・均一価格へシフト

 外食業界の不振を受けて、昨年の値上げから一転して値下げに動いている。
目立つのはゼンショーのすき家の「牛丼並盛」280円(通常価格)である。これはデフレが進行していた2001年に吉野家などがつけた価格と同額であり、300円を切る価格は他の外食産業にも影響を与える可能性がある。(日経12月7日)
 居酒屋チェーンでも300円前後の低価格や均一価格で提供する店舗が拡大している。関西から東京に出店を加速している鳥貴族は290円均一価格で、集客に成功している。
 居酒屋大手の大庄は、食事とドリンク全品を290円均一価格で提供する「鳥キング」を11月に出店し、2010年8月期は低価格店を柱に30店を出店する計画である。
 三光マーケティングフーズは、料理とドリンク全品を税抜き300円、299円、290円、270円で提供する4つの均一価格店を展開しており、年内に当初計画り28店多い78店にまで増やす方針である。
 モンテローザは「笑笑300円厨房」など、料理とドリンク全品を税抜き価格で300円、280円、270円の3種類の均一価格店を展開する。2年前から都内を中心に出店を始め、12月現在で前年比3倍超の約150店舗になり、総店舗の1割程度に達している。
 既存の居酒屋の平均客単価は2700円前後であり、低価格・均一店は2000~2300円前後とされる。節約志向を背景にこれが「2~3年以内に2~3割まで高まる」とみる企業が多く、今後もこのタイプの出店が増えそうである。(日経新聞、12月10日)

3. 店長への時間外手当支給の会社が増加

 日本マクドナルドは、「店長は管理職、残業代は支払わない」としてA店長と間で争っていたが、3月23日「和解金約1千万円を支払う」ことで、東京高裁で和解した。既に、同社は08年8月より、店長などに残業代を支払うことで「名ばかり管理職問題」は終わっていたが、裁判についても和解で決着した。
 外食業界では長年にわたり、店長は管理職として残業手当を支払わない慣行があったが、マクドナルドの判決や世論の動きをみて、残業代を支払う方向へ転換しつつある。
 まず、ロイヤルHDは3月に東日本の「ロイヤルホスト」などを運営する地域子会社で残業代の支払いを始めた。ロイヤルHDとしては、店長と料理長の全約1080人を年内に順次、管理職から外して残業代を支給する方針である。
(日経新聞、2月7日)
 柿安本店は4月から新人事制度を導入した。基本給と役職給で構成する月給のうち、これまで役職ごとに一律だった役職給を個人の評価と連動させることにした。約250人いる店長と料理長は管理監督者から外し、残業代を支給する。従業員のやる気を引き出し、残業代も明確に支払うことで、定着率の向上と優秀な人材の確保を狙うそうである。(日経MJ、3月9日)
 すかいらーくは、残業代を支払っていなかった店長など約3,300人に残業代を支払う新賃金制度を導入した。対象となるのはすかいらーくとグループ会社のジョナサン、ニラックスの店長と、本部社員の一部で、今回の制度ですかいらーくの社員に占める管理職の割合は73%から6%に下がるそうだ。
 従来、同社の給与は基本給のみであったが、新制度では月40時間分の見なし残業代を含む業務手当などを加えた。手当てを増やした分、基本給が減額するため、40時間内の残業であれば新制度の前後で、給与額は変わらない。40時間を越えた残業代は給与に上乗せされる。新制度への移行と同時に、08年9月以降の残業については、遡って残業代を支払うことも決めた。支払い総額は約15億円を見込むそうである。(日経MJ、8月10日)
 居酒屋「庄や」を展開する大庄は、12月から店長など約2千人を管理職から外し、12月分から残業代を支払うと発表した。
 11月1日から新しい給与制度を導入する。残業代を新たに支払う対象は約670店の店長や料理長、店長代行の主任などである。(日経新聞、10月8日)  この1年間の動きで、外食業界の大手は概ね店長に残業手当を支払う体制となり、長年の慣行に終止符を打ったことは、外食産業の近代化にとって大きな収穫の年であった。

4 . 外食産業の海外進出は更に増加

 少子高齢化の進む日本市場は、長期的に見れば成長には限界がある。長期的観点に立てば、アジア、オセアニア、アメリカ等へ外食企業が国際化することは当然である。
 勿論、国内市場が完全に飽和し、発展の余地が無いわけではない。日本には1億2千万人以上の人口があり、経済的にも豊かである。
(社)日本フランチャイズチェーン協会の発行する「フランチャイズエイジ08年11月号」によれば、既に海外展開している正会員、準会員社は、外食が28社で続くサービス業の7社を圧倒している。
 今年(2009年)新たに海外進出を決めた外食業も多い。
 居酒屋チェーンつぼ八は、シンガポールで5月28日に1号店を開業し、3年以内に5~6店舗を展開する予定である。将来はタイや中国、香港での出店も目指す。日本国内では若者のアルコール離れなどに伴い、来店客が減少傾向にある。居酒屋業界ではワタミやモンテローザが2001年ごろから、香港や上海などアジア地区に進出している。
 セブン&アイ・ホルデイングスは7月に北京にファミリーレストランを開業。3年後に30店舗に増やす計画である。このほど北京に「セブン&アイ・レストラン」を設立した。資本金は1億元(約14億円)で、出資比率はセブン&アイ・フードシステムズが75%、地元企業が25%を出資する。展開するファミレスチェーン名は「オールデイズ」とする。年内に北京市に4店舗を開店する。(日経新聞、7月4日)
 「ミスタードーナツ」を運営するダスキンは台湾流通大手、統一超商との合弁会社を通じて、今年の春上海1号店を開設した。上海市とその周辺地域で13年までに66店開店する予定である。(日経新聞、12月3日)
 松屋フーズは、上海に日本食レストラン「松屋」を開業し、再度中国に進出する。3年以内に同地域で10店の展開を目指す。2010年に万博が開催され、需要増が期待される上海を出店再開の地に選び、店舗網拡大の機会をうかがう。(日経MJ、10月7日)

5. 外食産業が農業に参入

 食の安全・安心が大きく揺らぐ中、消費者の目が「原産地」などの表示に注がれるようになった。表示が「努力目標」のガイドラインに止まっている外食産業でも、「国産」「有機」を売り物にした企業が業績を伸ばしている。食材の安定調達のために直営農場をもつ外食企業も増加している。
 居酒屋「ワタミグループ」は契約農場に加え「直営農場による有機農産物を使った食材」が売りである。農場法人の「ワタミファーム」は02年から展開。現在、千葉、群馬、北海道、京都など全国8カ所で野菜や酪農などを500ヘクタール規模で生産している。
 モスフードサービスは使用する生野菜のすべてを国産で調達している。ハンバーガーの規格に合うトマトの調達、特に端境期となる夏場以降の調達が難しいことから、群馬県昭和村に本拠を構える(株)野菜くらぶなどと共同出資して、06年に農業生産法人(株)サングレイスを設立し、群馬と静岡の3農場3.8ヘクタールで、07年2月から生産を開始した。年間生産目標は600トンで、そのうち180トンをモスフードで使用する計画である。(毎日新聞)
 イタリアレストランを展開するサイゼリヤは、福島県白河市の農家による農業生産法人・(有)白河高原農場(経営面積40ヘクタール)との全量引取り契約を条件にレタス、米、キャベツなどの栽培方法を指定している。(全国農業新聞、08年3月7日)

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