フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

飲食業F社に対する東京高裁判決に学ぶ

 平成21年12月25日に東京高裁で判決言渡があった。「飲食業F社事件」は、その内容を読むと、今後のフランチャイズビジネスに多大な影響が出る可能性がある判決であり,FC事業に携わる企業として注目すべきものである。
 東京高裁判決であり、控訴人は上告の意向であるようなので、この判決ですべて決定した訳ではないが、今後の参考として判決の概要を述べたい。勿論、筆者は法律の専門家ではなく、誤解も多いと思われるので、是非間違った解釈があればご指摘、 ご指導いただきたい。

- 記 -

控訴人       加盟店3社                   (A社,B社,C社)
被控訴人      飲食業                           F社(フランチャイズ展開している)
 〃         加盟店開発代行会社      V社
 東京高裁の判決は、控訴人3社に対して損害賠償金として,F社,V社に約5千万円の支払いを命じている。その理由について東京高裁は次のように縷々説明しているので、概要を紹介する。

I. F社東京進出の状況

(1) F社の東京進出

 F氏は、大阪府を中心に大衆的な食堂を直営で経営してきた。その特徴は、和食を中心とする家庭の日常食を提供し、客が料理を陳列棚から自分で選んで取るという方式(セルフチョイス方式)を採用し、オフィス街、単身者居住地域、
通勤途上の駅周辺など住宅地や商業地に幅広く立地し、各店の料理、価格、内装、外装を統一的なものとするというものであった。このスタイルは、日本国内においては,他にもよく見かけるありふれた形式のものであった。

V社は、昭和61年に設立された中小企業向け情報収集及び情報提供を目的とする株式会社であり、その後、フランチャイズチェーン店の加盟店募集及び加盟店の指導業務の代行事業にも進出するようになった。

F氏は、V社と出会い、平成11年にF社を設立した。設立に当っては,F氏及びV社などが主要な株主となった。

F社と加盟店が締結するFC契約は、店舗物件を確保しないまま先に契約を締結し、その後に店舗物件探しを開始するところが、わが国におけるフランチャイズ契約の標準的な内容と異なる特徴を形成していり、異彩を放つものであった。
F社は設立直後は、V社と協力して東京地区における直営店の経営及びFC本部運営に着手した。F社はフランチャイズチェーン本部の運営業務のうち

 ①加盟店募集業務、及び②店舗運営ノウハウの指導等の業務のうちスーパーバイジング業務(加盟店を訪問するなどして店舗経営・運営のノウハウを指導・管理する業務)をV社に委託した。

(2) 直営店の苦戦

 直営店設置の目的は,FC店のモデルになること、店舗運営のノウハウを蓄積してFC事業に貢献すること及び直営店においてFC店の従業員の研修を実施することであった。
平成12年以降直営店の開店が続いたが、開店した直営店には、立地が悪いなどの理由で経営が思わしくない店が多かった。直営店建て直しの努力にも関らず、立地の悪さなどから、再建できずに閉店に至る直営店も多かった。このような経緯の中でF社,V社は、立地の良い物件を探すのが容易でないことを知った。

(3) FC契約締結数の急増とFC店の開店難

 平成12年以降F社はV社と協力して、法人企業(業種は問わない)を対象とする加盟店募集を積極的に行い、加盟契約数及び加盟店数の急速な増加に力を入れた。その結果、東京地区の加盟契約件数は急激に増加した。
 加盟契約件数の急激な増加に伴い、FC店の開店数も増加をみたが、開店数については、加盟契約数の増加ほどの勢いはなかった。加盟契約を締結して高額な加盟金を支払ったのに、店舗物件が確保できないなどの理由で開店できない加盟店が急激に増加していった。しかも閉店する店舗数も半数近くにのぼった。

(4) FC契約の内容(概要)

東京地区における平成12年ころのF社フランチャイズ基本契約における標準的な加盟金の額は1店舗当たり500万円(平成13年は600万円、平成15年は800万円)であり、標準的な契約の内容は、次の通りである。

① F社は、加盟店に対し、所定の区域(通常は鉄道駅を中心とする半径500メートル以内の区域)に1店舗(又は複数店舗)開店する権限を付与する。

② 加盟店は、契約締結の日から11個月以内に①の区域内において、自己の責任と費用分担により開店場所(候補物件)を確保する。F社は開店場所の選定等に関し、適宜立地診断の助言を与えることができ、加盟店は助言を前提として候補物件を選定する。助言の有無内容にかかわらず、加盟店は候補物件確保の責任を負い、候補物件の選定に関する最終責任は加盟店が負う。  加盟店は、候補物件を確定しようとする場合には、物件概要をF社に書面で届け出た上で、F社と店舗開設契約を締結する。

③ 加盟店は、加盟店の売上月額の6%(うち2%はコンピューターシステム利用料)として、翌月末日までにF社に支払う。

④ F社は、加盟店に対して、契約店舗の運営につき、指導援助を行う。

⑤ 加盟店は、契約店舗の開店に先立ち,F社が実施する加盟研修に、加盟店の費用負担で、加盟店の代表者本人又は専属従業員を参加させ、F社から加盟研修の終了認定を受けることを条件として契約店舗を開店することができる。

⑥ 契約期間は、契約締結日より5年間とする。期間満了の120日前までに書面による更新しない旨の意思表示がない場合には、同一内容で自動的に3年間更新されるものとし、以後の期間満了の際も同様とする。

⑦ 本契約締結後11個月以内に、②に従い契約店舗の開店場所が確定されず、又は本部の責任以外の原因により契約店舗の開店もしくは契約店舗建築(内装を含む)の着工に至らない場合は,F社は、本契約を無催告解除できる。

(5) 加盟店へのマニュアルの交付

 F社は、加盟店に対してマニュアルを交付した。経験者の援助なく素人だけで飲食店を営業することは、上記のようなマニュアル文書がなければ困難であるが、F社作成のマニュルは、格別優れたものではなく、むしろ陳腐なものであった。

(6) 東京地区におけるFC店の開店難の実情

 加盟店自身が物件を探すのと同時に、加盟店がV社に対して物件探索依頼書を提出すればV社も物件探索を行うことになっており、V社は約3000店の不動産業者と連絡をとり、常時30名のアルバイトが物件を探索するので、V社に頼めば物件は見つかるから心配ないというものであった。加盟金没収のリスクを認識していたが、F社,V社の店舗物件確保の心配はないと考えて、FC契約を締結した。

 実際には、店舗物件を確保しないでFC契約を締結した加盟店は、軒並み店舗の確保に苦戦した。自ら物件を見つけることができず、V社に探索を頼んでも物件が見つからず、開店できない加盟店が続出した。

(7) 立地診断の実況

 加盟店は、自ら見つけたか、V社の紹介によるかを問わず、候補物件が見つかると、V社による有料(10万円又は15万円)の立地診断を受けることとなっていた。開業準備説明会資料には「診断の合格が出た店舗のみが出店可能店舗となります」との記載がある。

 立地診断は、次のようなものであった。
 「最低基準クリア評価」においては①半径500メートル内についての人口総数又は従業者数のいずれかの基準値をクリアし、かつ②歩行者店前通行量についての昼間又は夜間のいずれかの基準値をクリアし、かつ③車からの視認性及び歩行者視認性の基準値のいずれもクリアしなければならない。この条件を満たさない場合は、立地診断不可となる。

 「正式立地診断」においては、時間帯評価として、「総合」「昼間」、「アイドルタイム」、「夜間」、「深夜」、「早朝」、「土日」の各項目ごとの評価がされ、その他の診断項目として10項目について各項目ごとの評価がされた上で、総合評価がされるというものであった。各項目の評価及び総合評価においては「S・Aランク(出店推奨)」、「Bランク(出店可能)」、「Cランク(出店検討可能)」、「Dランク(出店不可)」というランクが用いられた。
 高裁では、A社,B社,C社の店舗ごとの立地診断を分析して、事例を多数示している。例えば次のような評価をしている。
 「立地総合評価がB(出店可能)であることは、項目別評価で10項目中8項目がD(出店不可)であることからみて、常識では考えられない高評価である」としている。

(8) 店長研修の実態

 平成12年から15年頃までの東京地区のFC店は、新たに店長となる人物については、甲店(F社の直営店)で店長研修を受け、一通りの業務をこなせるように指導教育するという建前であった。しかし、甲店には、店舗運営に必要な数の従業員(パート・アルバイトを含む)を配置せず、FC店から派遣されてくる研修生を労働力としてあてにして店舗を運営しており、研修生がいなければ従業員不足で店舗運営に支障が生じるという実態であった。当時は、店舗数の増加に伴い、店長研修の需要が高く、ほぼ常時研修生がいるという状態であることから可能な措置であった。しかし、その実態は、甲店の人件費を加盟店が負担することになること、すなわち直営店による加盟店の搾取にほかならなかった。次の研修生が引き続いて来る見込みがない場合には、前の研修生について、研修成績が悪いという虚偽の理由で研修期間を延長するという病理的な運用が、当たり前のように行われていた。
 店長研修と銘打っても、アルバイトと同様に働かせるだけであるから、研修生は、店長として必要な経営ノウハウを十分身につけることができないまま研修を終了するのが実態であり、 この観点からも、加盟店の営業成績向上を妨げていた。

II.F社,V社の業務の実態

(1) 杜撰な立地診断

 東京高裁はV社の立地診断について、次のように述べている。
「前記認定事実によればV社が実施する立地診断は、有料であるにもかかわらず、著しく杜撰で、信頼性に欠けるものであった。経済常識を基準とすれば、このような立地診断を有料で行うことは、詐欺に等しいと言っても言い過ぎではないほどのものであった」

(2) SVの臨店指導の位置づけ

 本件FC契約は、経営指導について専門性を有するSVによる加盟店に対する臨店指導を行うことがF社の加盟店に対する義務になっているものと解せられる。

① わが国においては,SVによる臨店、経営指導はFC契約の不可欠の要素であり、経営指導についての専門性を有するSVによる指導を受けることができるのが通常であると広く認識されている。特に、知名度の低いフランチャイズチェーンに加盟する場合、これの指導がなければ、フランチャイズにかかる料金を支払う意味は皆無である。

② F社,V社は、①のような認識が一般的であることを知りつつ、契約勧誘の説明会において、本件契約はこのような一般的認識とは異なる内容である旨の注意喚起を行っておらず、むしろ逆に,SVによる指導を受けることができることを本件契約締結のメリットとして強調して説明を実施した。

(3) 専門性を有するSVの育成確保を怠けた

① V社は、F社との委託契約の締結に伴い、これに従事する人材(店舗開発業務、SV業務)を新たに大量に確保する必要が生じた。しかし、特にSVの人材確保については、即戦力となる経験者の中途採用や未経験者の研修教育による早期戦力化などの方法によっても、容易ではなかった。本件のように,FC店舗数が急速に増加するような場合には、必要な質、量の人材を確保することは、ますます困難であった。

② F社も、V社に委託していない業務に関して人材を確保する必要が生じたが、同様に店舗数の急激な増加に対応できるペースで確保することは困難であった。

③ 東京進出の初年度となる平成12年度には、従業員の採用を積極的に行い、そのような者の中から多数のSVが選ばれたものと推認されるが、未経験者が多く、社内における十分な研修、教育を受けずにSVとして現場に送り出された者が多かったものと推認される。

④ F社,V社は、SVの量の確保を十分に行わず、SVの質及び量の確保のために必要な社内研修、社内教育を十分に実施せず、これら質及び量の確保のために必要な費用の支出を惜しむ一方で、比較的経費をかけずに実施可能な「チェックリスト100」の作成とその運用などにより当面を乗り切ろうとしていたものと推認される。経験者とペアで仕事をさせて若手社員を育成するという実例もみられないことから、そのような人的余裕もなかったものと推認される。

(4) 東京地区におけるF社,V社らのビジネスモデル

平成11年から16年ころまでの間の東京地区におけるF社、V社らのビジネスモデル(又は収益の構造)は、次のようなものであったと推認される。
 F社,V社は、直営店の物件探しの過程で立地の良い物件を探すのが容易でないことを知っていたにもかかわらず、店舗物件の確保が容易で、契約エリアにおいて当該食堂を独占的に営業することができ、開店後も他のフランチャイズチェーンと同水準の専門性のある経営指導を受けることができると虚偽の説明を行い、これを誤信した者が応募者の中に多数いることを承知の上で、
① 店舗確保に苦しむ加盟店に対してはエリア外の物件における開店を勧めて店舗数を増加させ、結局開店できなかった加盟店からも加盟金を没収し、
② 専門性のあるSVを必要な数だけ養成することを怠り、専門性のあるSVによる経営指導の履行の提供をしないにもかかわらず、店舗の損益状況を問わずに売上の6%のロイヤルティを取得する。
このようなビジネスモデルは、加盟店の一方的な犠牲の上に、F社、V社が、自らの経費の支出を異常なまでに抑制した上で、自らの利益の極大化のみを図っているもので、極めて利己的な動機に基づくものと評価するほかはないものである。

III. 東京高裁の判断

(1) 物件開発と加盟店勧誘

 F社,V社は、東京都内における外食産業用店舗の確保が困難であることを知りながら、その共同の方針として、本件FC契約締結勧誘の際には、店舗確保困難の事実を告げず、逆に、契約で定められたエリア内での店舗物件の確保はV社の支援があるので容易であるとの説明を行うことを定め、この方針に沿って、A社,B社に対しても、店舗物件確保困難の事実を告げず、逆に、V社の支援があるので容易であるとの説明を行い、その旨誤信したA社及びB社との間で本件FC契約を締結したという事実を推認することができる。
 11個月以内に開店できない場合には支払った加盟金500万円は没収されるという契約条項になっているのであるから、店舗物件の確保が困難であることを知っていれば、加盟店側は契約を締結しないのが通常であり、F社はそのことを知りながらV社の支援により物件の確保が容易であると誤信させているのであるから、F社,V社のこのような勧誘行為は、詐欺に該当する違法行為である。上記のF社の契約締結の動機及び詐欺に該当する勧誘行為の実態を考慮すると、著しく不公正な取引である。形式的には意思の合致が存することを理由として、このような契約についてその効力を全面的に容認することは、わが国の公の秩序、善良の風俗に照らし、許されないものというべきである。

 このようなことから、上記本件FC契約のうちA社,B社が各契約時に詐取されたのも同然の加盟金及び加盟保証金の支払い義務を定めた部分は、公序良俗に反するものとして無効というべきである。

(2) 経営指導義務違反について

 本件FC契約においては、F社は、加盟店であるA社,B社,C社に対して、経営指導について専門性を有するSVを臨店させて加盟店の経営指導を行う債務を負っているというべきである。
 しかしながら、前記認定事実によれば、F社及びその履行補助者であるV社は、経営指導について専門性のあるSVを必要な人員だけ揃える努力をすることを契約の準備段階から完全に怠り、SVの多くをチェックリスト項目の形式的チェックしかできないような経験と能力に乏しい若手社員をもって充て、SVの研修、教育に費用と時間をかけることも怠ったまま、このような若手社員SVを中心に加盟店への臨店をさせたにとどまるものである。経営指導を行う債務は、一定の結果を実現することを債務の内容とするものではないことを考慮に入れても、このように最初から専門性の乏しい若手社員のSVしか臨店しか受けることができない状態であることを続けることは、経営指導義務の債務不履行に該当すること、これによりA社,B社,C社に損害が生じたことは、明らかである。

IV. この判決からフランチャイズ企業が学ぶべき点

繰り返すが、この判決は東京高裁判決であり、最高裁判決ではない。しかし、権威ある高裁判決には、実に学ぶべき点が多い。以下にその要点を記すので、FC経営の参考にして頂きたい。

(1) フランチャイズ契約の締結の仕方

 店舗物件候補を確定しないまま、FC契約を締結し、その後に店舗候補物件探しを開始することは、東京高裁が述べる通り「わが国におけるフランチャイズ契約の標準的な内容と異なる特徴を形成しており、異彩を放つものである」と評しても良いであろう。
 FC契約は店舗物件を確保してから、正式な契約を締結するのが常識であり、店舗物件を確定しないまま、FC契約を締結することは避けてもらいたい。仮に物件確保が出来ないまま、契約の締結を行う場合は、あくまでも仮契約であり、加盟金、保証金などの金銭を支払ってはならない。但し、1~2割の預かり金を徴収し、本部が物件探索に入ることはあり得る。この場合の預かり金の処分は、加盟決定後、加盟金に振り替えるか、本部の物件探索費として返却しないかは、仮契約書に定めるべき事項である。

(2) 加盟店開発の外部委託について

 筆者は加盟店開発を外部委託することについては、常に反対の立場であった。しかし,近年資金も少なく、サービス業系のFCを開始したいとする希望が実に多い。それに対しすべて自社開発の原則を守らせることは、起業を妨げることにもなるので、次の条件を付して一部認めることにしている。それは次の通り。

① 開発代理店の選定

  開発代理店は何十社とある。選定は慎重に行う必要がある。過去の開発実績を聞き、実績がそれなりに上がっている代理店を選定する。過去に少なくとも、1社20店舗以上の開発実績のある代理店以外は利用してはならない。

② 利用代金

 成功報酬のみでは代理店は成立しない。毎月の経費をいくら出せるかで代理店の熱意は変わる。成功報酬のみの契約では、代理店は動かない。交通費として最低毎月10~20万円は必要である。成功報酬は別途に決定する。

③ 誠意

 代理店の中には、自ら加盟して、その結果を見て代理店になるかどうかを判断する会社も出てきた。代理店に選ばれる本部になることも必要である。

④ 代理店の利用期間

 当面の本部立上げ期間のみの利用として、開発開始後2年間、若しくは加盟店20店舗までで、そこから先は自社開発にしないと、肝心の自社開発機能が欠けた本部になる恐れがある。

⑤ 代理店への支払い時期

開発代理店の成功報酬の支払い時期は、契約締結時ではなく、店舗開店時以降にすることが重要である。契約だけでオープンしない恐れがある。

(3) 立地診断の進め方

① 裁判所の判断

 一般的に裁判所は、立地診断について専門家ではない。従って、過去の判例では(筆者の見た範囲では)、立地診断の中にまで立ち入って判断することはないと思う。
 論理的判断となり、事実と違った資料を用いたり、形式的に不備な内容(今回の事例では10ケの判断事項のうち、8項目がD(出店不可)であるにも関わらず、立地総合評価ではB(出店可能)で、裁判所は常識では考えられない高評価としている)の場合には、杜撰な立地診断と判断するケースがある。

② 専門家の意見を聞く

 立地診断、売上高予測については、法的紛争が多い。自社で事例を積み上げて、精度を上げるのが正道であるが、起業間もないFC本部は、立地診断の専門家のアドバイスを受けることを推奨したい。プロとして、次の方を推薦する。

(株)R&C 代表取締役  西野 公晴氏 03-3577-1915
(株)ディー・アイ・コンサルタンツ代表 長谷部 和彦氏 
     千代田区岩本町 3-9-13 日光共同ビル

(4) 店長研修の進め方

 本件に示されたように、加盟店店長候補者をまるでアルバイト代わりに利用するようなことは絶対してはいけない。そのためには、次のような受け入れ体制が重要である。

① 加盟店研修生を受け入れる基本的態度

 加盟店研修は、本部のノウハウを伝授する最も基本的な方法であり、研修期間中に、必ずビジネスが本部の手だすけなしで一応遂行できるレベルまで高める必要がある。そのためには、研修期間は最低必要期間を定め、その期間は必ず研修に従事し、もし研修を怠った場合は、開店は認めないという強い姿勢が本部に求められる。

② カリキュラムを定める

 座学研修には、1) フランチャイズ・システムについて 2) 我が社のフランチャイズ・システムの特徴 3) 経営方針 4) フランチャイズ方針 5) 報告書の書き方 6) 計数管理 7) フランチャイズ契約書の確認 8) 法定開示書面の確認 9) 当業界の全体像とわが社の位置づけ等を1~2日で講義することが望ましい。
 座学をフランチャイジーのオーナーに聞いてもらうために、「オーナーズマニュル」を用意する企業も多い。
 店舗研修は業種より様々である。サービス業で一番短い事例で3日、コンビニエンスストアで15日、飲食業で1~3ケ月という事例がある。
 サービス業は短い、コンビニエンスストアは中間で、飲食業は長い特徴がある。飲食業には厨房内コースと、接客コースがあり、どうしても長期間が必要である。
 店舗研修もカリキュラムを定めることが肝要である。研修担当店長と店長候補者が、毎日進捗状況を相互に確認し、捺印・署名しながら進めることが必要である。
 そのためには、しっかりしたカリキュラムを策定する必要があり、できれば開示事項の中に研修カリキュラムを開示させる等の方策も必要であろう。

③ 卒業テストを行う

 店舗研修、座学を確実に行うために、卒業試験を行い、テスト(実務とテスト)に合格しないと、更に研修を追加で行う必要があるだろう。 フランチャイズ店を任せる店長を育成するためには、この程度の慎重さが求められるであろう。

(5) SVの研修・教育

 東京高裁判決の大きな特徴はSVの研修・教育をフランチャイズ企業に取って不可欠な要因であるとして厳しく判断している点であり、この判決に耐え得るだけのSV研修・教育を早急に実施することが必要である。

① 臨店指導の重要性

 判決文では「わが国においては,SVによる臨店、経営指導はFC契約の不可欠の要素であり、経営指導についての専門性を有するSVによる指導を受けることができるのが通常であると広く認識されている」と断じている。
 臨店指導に変わる手法として店長会議、店長研修で地域の加盟店店長を集めて指導するケースがあることは広く知られている。勿論、店長会議、店長研修の重要性は判るが、臨店指導が必須であると判断される以上、FC企業としては臨店指導を中心にSV活動を組み立てる必要があるだろう。
 又、単に臨店指導と称して巡回指導すれば良い訳ではなく、経営指導について専門性を有するSVによる指導が必要であると述べている。SVはしばしば店長経験者を当てる企業が多い。そのことは、必要であり、かつ重要である。
 しかし、現場(この場合厨房周りの業務)に詳しいだけではなく、店舗管理知識などマネジメントにおいても秀でていることが求められている。これは熟達したSVと同行してSV研修を受けるか、若しくは新任SVには企業内で、独特なマネジメント教育を施す以外には難しいであろう。事実、店長からいきなりフィールドに出され、SVを命じられることはSVにも、加盟店にも、ひいてはFC本部にも芳しい話ではない。

② SVの社内研修・教育

 SVの社内研修・教育に一日の長があるのはオートバックス社である。教育専門部署を設け、専任担当者が教育(必ずしもSVのみではない)を日常業務として行うものである。大手コンビニエンスストアも教育体制はしっかりしている。問題は、それほど規模の大きくないFC本部のケースである。社内に専門部署を設けるだけの余裕もなく、SVの研修・教育もままならないのが実態である。
 一つの可能な方法として(社)日本フランチャイズチェーン協会が毎年実施する「SV学校」(年間18日程度)にSVの1名を送り込み、SV士(協会認定の資格で、日本国内に600名近いSV士がいる)の資格を取らせ、そのSV士を核として、伝達講習会を社内で実施することを勧めたい。
 SV研修を実施した場合は、そのカリキュラム、講師名、受講者名を記録に残すことは当然である。
 チェックリストは有用である。しかしチェックリスト頼みでは困る。常に加盟店の経営実績を向上させるノウハウを持たせることが肝要である。

③ 臨店記録を残す

 臨店記録を残すことは常識である。判決文では、臨店記録が残っていないことを問題視しているが、これは当然である。SV日報をメールで終わらせる企業が多いが(ペーパーレス)、必ず印刷して上司が読んで捺印する必要がある。

(6) 記録を残す

① SV日報

 SVが加盟店に臨店指導する場合は、必ずSV日報を記録し、それを印刷して上司の捺印を受け、6~7年に亘って保管する必要がある。SV、開発担当者が退社した場合は、その記録が唯一の証拠である。メール形式ではなく、紙媒体にしておくことが訴訟対策として絶対必要である。(紙を見れば古さが判る)

② 配布書類

 本部が加盟店に交付した文書や資料は必ず受領証をもらって保管する。

③ レポート

 加盟店と一緒に他の店舗視察、物件視察を行うことが多い。その場合は、必ず自己調査レポートを出してもらう。

④ 販促資料

 販促物、販促連絡文書は年度ごとに保管する。

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