フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

「日本企業の国際フランチャイジング」を紹介する

 日本のフランチャイザーから海外フランチャイズ展開のご相談を受ける機会が増加している。これは、日本社会の少子高齢化、人口減少等による各種市場の縮小と大いに関係があると思われる。
 (社)日本フランチャイズチェーン協会では1996年の総会で「国際委員会」を新設し、フランチャイズ企業の国際化の調査を行うこととし、2009年11月号のフランチャイズエイジには「2009年度海外展開状況アンケート集計結果」が報告されており、この報告が第9回目であるこが記されている。
 今回、新評論社より川端基夫氏(元龍谷大学教授、2010年4月より関西学院大学教授)により「日本企業の国際フランチャイジング」が出版された。
 国際フランチャイジングの研究としては、わが国で最初の研究書である。本書では様々な問題提起がなされている。例えば、日本では「ビジネスフォーマット型フランチャイズ」のみをフランチャイズの類型に入れて、アメリカで発達した「製品・商標型フランチャイズ」は、アメリカのフランチャイズの歴史の中でのみ取り上げ、日本のフランチャイズでは、その範疇に入れていない。それに対し川端氏は、「製品・商標型フランチャイズ」をフランチャイズ類型に入れないと、現在の国際フランチャイジングの説明が出来ないとして、トヨタ自動車のディーラーをもフランチャイジーとして把握している。
 また、国際フランチャイジングを考える場合、日本国内でフランチャイズ展開している企業を対象にして分析することにも異論を唱え、ファッション産業、スポーツ用品等消費財メーカーの海外展開もフランチャイズの範疇で議論を進めている。
 また、フランチャイズの分析に利用する「資源制約論」「エージェンシー理論」を他分野からの借物として、新たに「フランチャイズ組織のガバナンス」という観点を提示している。

Ⅰ 全体の紹介

第1章 拡大する国際フランチャイジングと本書のねらい

 まず、フランチャイジングとは何かと自問し、アメリカで生まれた自動車、ガソリン販売、清涼飲料等で発展した「製品・商標型フランチャイズ」と、商標や店舗デザイン、商品、サービス、ノウハウなどのパッケージを提供する「ビジネスフォーマット型フランチャイズ」の類型を上げて説明している。
 次に国際フランチャイジングについて、次のように説明している。
 一般に企業の海外進出には投資(資本移動)を伴うものと伴わないものとがある。後者の一つにフランチャイズ方式(契約)での海外進出があり、これを「国際フランチャイジング」と呼ぶ。これは、企業(本部)が海外の企業または事業者(加盟者)との間で、商標や商品・ノウハウを供与する代わりに対価を受け取る「契約」を結び、その契約によって国境を越えて事業を拡大させていくことである。
 国際フランチャイジングには三つのタイプがある。  まず一つ目のタイプは、「ストレート・フランチャイジング」と呼ばれるものである。これは、本部と海外のパートナー(企業や個人)とが直接的にマスター・フランチャイズ契約を結ぶ形態である。これは一切の投資を要しないが、国際化が成功するかどうかはパートナーの能力への依存度が大きく、リスクも大きい。パートナーの選定がきわめて重要である。
 2番目の合弁型フランチャイジングは、パートナーと共に現地に合弁会社もしくは子会社を設立し、そこを相手先としてマスター・フランチャイズ契約を結ぶものである。 このタイプでは合弁会社,子会社に本国から責任者を派遣することも可能であり、現地での運営・管理には本部の意向を反映させ、事業リスクは低減する。1970年代に日本に進出してきたアメリカのフランチャイザーも、日本側パートナーにフランチャイズビジネスの経験が無かったために、当初は合弁方式をとるケースが多かった。
 3番目のタイプは、サブ・フランチャイジングである。これは海外の現地本部(マスター・フランチャイザー)が、現地で加盟店を募集し、フランチャイズ契約による店舗展開を行うことを言う。
 これが本来の国際フランチャイジングであると思うが、日本の国際フランチャイジングにおいては、現地でサブ・フランチャイジングを行わず直営方式で店舗展開するケースが多く見られる。
 国際フランチャイジングはフランチャイズ企業だけの国際化にとどまらないが、現段階の実態は依然として本国でフランチャイジングを行う企業の国際化が中心となっている。
 アメリカフランチャイズ協会(IFA)のHPによれば「推定で800以上のチェーンが国際化しており、毎年100チェーンが新たに国際化を開始していく」という記述が見られた(2009年10月閲覧)。
 フランスの2005年の統計によれば、929システムが存在し、そのうち海外から来たシステム89(基本的にフランス国内から出られない)を差し引いた840システムのうち231システム、つまり全体の27.5%が海外に進出済みとなっている。(「フランチャイズエイジ」2006年9月号)
 特筆すべきは、次の叙述である。
「近年では、フランチャイジングは先進国よりも中国などの新興市場で劇的に拡大しつつある。この背景には、たとえ少ない手持ち資金で、ノウハウがなくても独立経営者になれるという手軽さがあると考えてよかろう。その点では、フランチャイズシステムは経済の発展途上期にマッチしたビジネス手法であることがうかがえる」
 日本の国際フランチャイジングの実態を調査した資料は、日本フランチャイズ協会が正会員、準会員124社を対象に行ったアンケート調査(回答率79%、98社2008年11月号)がまとまっている。
 これによれば、進出企業を見ると、外食が28社、小売業が9社(うち4社がコンビニ)、サービス業が7社、外食・サービス兼業が1社(全部で45社)となっており、外食が多いのが特徴である。
 協会加盟企業から捉えた日本の国際フランチャイジング(フランチャイズ企業による国際化)は、コンビニと外食企業によるものが中心であり、進出先はアジアに偏っている。
 2008年度で、フランチャイズ企業のチェーン数は1,231社であり、日本全体で見ると、国際化の進展度は低いと言わざるをえない。海外店舗比率が50%を超えているのはファミリーマート、味千ラーメン(重光産業)の2社しか存在しないのが現状である。日本の実態はアメリカと比較すると大きな差があると言えよう。
 日本の国際フランチャイジングをめぐる新しい動きとして、著者は次の6点を挙げている。
    ① 国内市場の縮小
    ② 途上国での関連法の整備
    ③ 政府による支援姿勢
    ④ レギュラーチェーンによる国際フランチャイジングの開始
    ⑤ 製造業による国際フランチャイジングの開始
    ⑥ アジアでの日本食ブーム

第2章 日本の国際フランチャイジングの歴史と特性

 まず、日本のフランチャイズの歴史を概観し、1970年代以降の外資によるビジネスフォーマット型フランチャイズの展開を述べている。この時のアメリカフランチャイズ企業の進出が、日本に合弁会社を設立し、それにマスターフランチャイズ契約を締結する方式が多かったが、1975年以降は日本企業と直接契約するストレート・フランチャイズ方式が主流となり、投資は一切伴わないものとなったと分析している。
 日本から、最初に国際フランチャイズを展開したのは「どさんこラーメン」であるが、1990年代末に撤退したそうである。  外食チェーン、コンビニチェーン、専門店・サービス業の国際フランチャイズの歴史を辿っている。
 歴史から捉えた日本の国際フフランチャイジングの特徴を次の6点にまとめている。
    ① ファッション産業をはじめとする多くの専門店が、1970年代から商標を貸与し、商品を供給する製品・商標型の国際フランチャイジングがかなり発展した。
    ② どの業種も2000年以降に一気に進出件数が増大した。
    ③ 外食、コンビニ、ファッシヨン専門店はアジア中心であるが、その他の専門店・サービス業は欧州や中東などに広範囲に展開している。
    ④ 進出形態は、ストレート・フランチャイジングは比較的少なく、子会社や合弁で進出し、それらを相手先としてフランチャイズ契約を結ぶケースが多い。
    ⑤ 現地でサブ・フランチャイジングを行う企業が少なく、直営店が主流である。
    ⑥ 進出形態の選択やサブ・フランチャイジングには、ノウハウ依存度にかかわる主体特性が影響を及ぼした。

第3章 日本の国際フランチャイジングの現状と特徴

 外食の国際フランチャイジングの現状として、全体の進出状況を一覧表にまとめて、外食の事例として「味千ラーメン」(重光産業)、「吉野家」の2例を詳細に報告している。
 「味千ラーメン」はアジアの8ケ国、アメリカ、カナダに進出しているが、圧倒的に中国(含む香港)が多く、全体の9割に近い367店が集中しているのが特徴である。両社は共に香港に合弁会社を設立し、そこからサブ・フランチャイジングの形で大陸全土に展開する方式を取っている。
 次にコンビニではファミリーマート、ミニストップ、ローソン、セブンーイレブンの4社が進出している。
 ファミリーマートは日本型コンビニの国際フランチャイジングを早くから展開してきた企業であり、その海外店舗数は2009年8月に国内店舗を上廻っており、同社は国際化におけるトップの地位にある。
 日本のコンビニによる海外進出は、ストレート・フランチャイジングが11件中2件であり、8件が合弁による進出で1件が子会社の進出である。換言すれば、直接投資による進出がほとんどを占めているのである。
 専門店・サービス業の国際フランチャイジングは、まず店舗数では学習塾の公文(くもん)が群をぬいており、日本公文教育研究会は48国、7800教室で、生徒数は、国内が147万人に対して海外が275万人に達している。進出形態はストレート・フランチャイズ方式が多くなっている。
 ファッション関係のイトキン、オンワード、イトキン、ハニーズの店舗数が多い。スポーツ用品ではミズノが中国市場だけで644店を展開しており、そのうち440店がサブ・フランチャイジングの店舗になっている。

第4章 欧米での研究の系譜と理論的課題

 欧米における国際フランチャイジングの研究を概観し、豊富な資料を提示して、国際フランチャイジングのメリット、デメリットについて、次にようにまとめている。
メリット
    ①少額投資でスピーディーに成長できること。
    ②マーケッティング手法の個別性を標準化できること。
    ③(商標や商品、ノウハウが提供されことから)加盟者に高いモチベーションを与えること。
    ④リスクが小さいこと。
デメリット
    ①本部の利益(取り分)が減少すること。
    ②加盟者による店舗運営に対するコントロールが完全にできないこと。
    ③(ノウハウ流出や加盟店の脱退などによって)競争相手を生み出す可能性があること。
    ④契約条項に関して政府の規制を受けること。
 重要な視点は、国際フランチャイジングに関する固有の理論が展開されていないことであると指摘し、従来のフランチャイズに関する理論を次の2点にまとめている。

(1)資源ベース理論

 直営店展開に比較して、フランチャイズは資金(投資)や人材(社員の雇用)を多く必要としない。投資や雇用から生じるリスク負担も回避できる。経営資源が不足している企業が成長しようとする際に選択されるのがフランチャイズ方式だと言えよう。この資源制約論が、国内でフランチャイズ方式を採用する論拠となってきた。
 現実には、国際化指向が強い企業は資源の豊かな企業であると考えられる。しかし、現実には小規模で創業間もないフランチャイズ企業でも、果敢に海外進出を行うケースもあり、それを可能とするのが、フランチャイズ方式による国際化の最大の特徴とも言える。

(2)エージェンシー理論

 エージェンシー理論とは、依頼主がエージェント(代理人)に業務を委託して代行させるという視点から経済や企業組織を捉えようとするものである。
 つまり、加盟者は、本部のエイジェント(代理人)としてフランチャイズ・システムのコンセプトを守って契約通りの業務を実行し、フランチャイズ・システムの価値を高める義務があるのである。しかし、現実には、エージェントは本部の目の行き届かないところで契約を守らないこともある。本部にはエージェントに対する高度な監督能力が要求されることになり、これは当然高コストが生じる。
 モニタリングコストの削減策としては、①加盟者の選定をいかに行うか、②加盟者にどのようなインセンティブを与えるか,等を考える必要がある。このフランチャイズが有する根本的な問題は、国際フランチャイジングを考える場合にも重視されてきた。
 この資源ベース理論も、エージェンシー理論も他の業界から借用された理論であり、これを越えるフランチャイジング独自の理論が求められている。

第5章 フランチャイジングの理論的フレーム

 この章では、川端氏の独特の理論が展開される。ある意味では一番重要な章である。川端氏は、多様なフランチャイズ・システムを「商品」と「ノウハウ」の二つの要素からなる軸上の位置(ポジショニング)でその特徴を捉えることが出来ると主張する。

        図5-1 システム特性の規定要素

                   ノウハウ ⇔ 商品

海外進出において「商品のオリジナリティをベースとする海外進出」と「ノウハウのオリジナリティをベースとする海外進出」の二つのタイプに区分して課題整理することを提案している。
 商品のオリジナリティをベースとして海外進出した事例は、メーカーや製販一体型(SPA)や外食業の中でも、とりわけ商品やメニューのオリジナルティの高さをウリにしたフランチャイズ・システムが典型例であるとする。
 一方、コンビニやホテルなど商品自体のオリジナルティは低いが、ノウハウのオリジナルティが高いフランチャイズ・システムの海外進出の事例もある。
 本部と加盟者は、独立した事業者であり、対等の関係であるというのがフランチャイズの基本である。川端氏は、当初こそ両者の関係は対等で本部の拘束力は緩やかなものであったが、次第に本部による加盟者の統制は強くなり、何らかの「支配―従属」という関係が生まれてくると主張する。
 本部は何故加盟者を監督・統制する必要があるかというと、加盟者が本部の「エージェント」であるからだとされてきた。本部がエージェントを効果的に監督・統制することで、本部の費用節減と収入増大を実現することが目的と考えられてきた。
 本部による加盟者に対する監督・統制は、広義の「統治(ガバナンス)」と言うべきであると結論付けている。これは、社会的な不正管理も含めたブランド価値の管理と創造を目的としたものであり、単に本部が利益を増大させるためだけに行使される内向きのものに止まらない。「支配」「統制」とは異なるもので、本部と加盟者が「一つのブランド価値の管理と創造を通して相互に利益を享受する方向」にフランチャイズ組織を導くことが、本部によるガバナンスの意味である。本部にとって、加盟者はブランド価値創造のパートナーであって被支配者ではないーと結論付けている。この点については強く同感する。
 本部が有するシステム自体のオリジナルティは「商品」か「ノウハウ」か、という二つの方向性に収斂することから、加盟者のガバナンスに際しても、その手段としてオリジナルな商品を使うのか、オリジナルなノウハウを使うのかという二つの方向性が存在するのである。
 縦軸に「ガバナンスのレベル(強さ)」、上部に「高い」、下部に「低い」を位置させる。一方、「ガバナンスの手段」として右側に「ノウハウ」左側に「商品」を位置させて十字架を描いてみる。
 以下、「ガバナンスレベルが高い、ノウハウが強い分野」、「ガバナンスレベルが高い、ノウハウが弱い分野」、「ガバナンスレベルが低い、商品が強い分野」、「ガバナンスレベルが低い、商品が弱い分野」の四つの象限に分けて分析する国際フランチャイジングの新しい理論が説明される。ここは、この本の白眉であるので、是非、本を手にとって読んで頂きたい。

第6章 ノウハウ依存型システムのガバナンス問題

 川端氏は、フランチャイズの2類型であるビジネス・フォーマット型フランチャイズ、製品・商標型フランチャイズの区分を離れ、自分が開発した前者の4区分に応じて国際フランチャイジングの実態解明に当るのである。
 その一番手として「ノウハウ依存型システム」を取り上げ、具体的には日本型コンビニと公文塾を取り上げている。
 まず、コンビニは高い市場情報収集力や売れ筋分析能力を必要とする業態であり、本来フランチャイズ化が困難な小売業である。それが、フランチャイズ化を可能にしたのは本部が高度な店頭ノウハウのほとんどを代替するシステムを構築したからだと論じている。
 日本のコンビニの国際フランチャイジングは、100%子会社か合弁会社を現地に設立し、そこを相手にマスターフランチャイズ契約を結ぶ形で進出している。これに対してアメリカ発祥のセブンーイレブンの海外進出は、投資は一切行わず、すべて現地企業を相手に直接契約を結ぶストレート・フランチャイジング方式を選択している。これは、日本に進出する際にも同じことが行われている。川端氏は、フランチャイジングでの海外進出の基本はアメリカ型のストレート・フランチャイジングのほうであると割り切っている。では、何故日本のコンビニはほとんどの市場でストレート・フランチャイジングを取らず、ガバナンスを強化する直接投資方式をとったのであろうか。コンビニは物流システムの構築を不可欠とするが、進出市場で高度なシステムを構築しようとすれば、本部の強力なイニシアティブと投資が必要とされるのであると説く。
 具体的に台湾に進出したファミリーマートの事例では、日本の西野商事に協力を依頼し、日本側主導で物流体制を構築したそうである。システムが高度なものになっているが故に、かえってモニタリングコストが高くなっていることも、直接投資方式を取った要因であったと分析している。
 ファミリーマートの事例では韓国(90.0%)、台湾(91.4%)ではサブ・フランチャイジング店比率が高いが、中国やタイでは直営店比率が高くなっている。ファミリーマートの上海の事例では、「直営店の委託店長制」と言う一種の「のれんわけ」が成功して、フランチャイズ店比率が徐々に上昇しているそうである。
 また、学習塾の事例としては公文が、海外45か国、フランチャイズ方式を中心に7800教室を展開している。これは移転すべきノウハウの「絞込み」によって可能になったとしている。

第7章 商品依存型システムのガバナンス問題

 商品依存型フランチャイズの典型例として川端氏はファッション産業を揚げるが、ファッション専門店の国際化は1970年代から百貨店やGMSの海外進出と二人三脚で進んできたと述べる。ストレート・フランチャイズでは様々な問題点があり、1980年代後半から合弁や子会社に切り替えてブランド確立のためのガバナンスを強化する動きが広がった。
 また自動車ディーラーの国際フランチャイジングの事例として、トヨタ・カローラ八戸と千葉トヨペットの新興市場での事例が挙げられているが、自動車販売をフランチャイズと考えている人は、トヨタ自動車の中にもいないようなので、この事例は割愛する。
 しかし、100円ショップの国際フランチャイジングは実績もあるだけに、事例を挙げておきたい。100円ショップで国際フランチャイジングを行っているのは「ダイソー(大創産業)」「シルク(ワッツ)」「キャンドゥ(キャンドゥ)」の3社であり、「セリア(山洋エージェンシー)」が輸出ベースで海外進出している。ダイソーは2008年10月には、日本以外の24の国と地域に523店舗を出店している。進出先は、アジア一円はもちろん、北米から中東、そしてポーランドにまで至っている。但し、中国へは香港に進出しているのみで、大陸には未進出となっている。
 ダイソーの海外進出形態の基本はストレート・フランチャイジングである。これは、100円ショップのフランチャイジングが商品供給を柱とするものであり、ノウハウ移転の必要性が比較的小さなことから、リスクの大きい直接投資を行うまでもないことを意味すると結論付けている。ダイソーの契約は、基本的には商品の供給契約(卸売り、輸出販売)をベースとして、それに店舗運営ノウハウの指導が加わったものである。従って、本部の利益は商品供給の利ざやを基礎に、加盟者の売上高に対して課されるロイヤルティー、それに店舗ごとの運営管理費・指導料として徴収される課金(月額固定制)の三つによって構成されている。(サブ・フランチャイジングの実態については述べていない)
 スポーツ用品店の国際フランチャイジングについては、ミズノの事例が詳しい。ミズノは2006年に販売子会社を稼動させ、代理店を介さない直販体制を敷いた。店舗数は2008年末に902店舗に拡大し、フランチャイズ店は642店舗になっている。このミズノのように、直営店のみではなく、現地でサブ・フランチャイジングを展開することが、本格的な国際フランチャイジングではないだろうか。
 商品依存型のシステムでは、本来は商品供給を柱とし、店頭でのノウハウ依存度が低いフランチャイズ展開が可能となる。つまり、ガバナンス・レベルを上げないですむのである。

第8章  中間型システムのガバナンス問題

 川端氏は中間型システムとは、ノウハウと商品双方のオリジナリティを合わせたところに競争優位性が存在するものを指し、このタイプの典型は、外食のフランチャイズ・システムであるとする。
 具体的には味千ラーメンと吉野家を分析している。味千ラーメンは国内ではラーメン専門店として100店舗強を展開する中堅フランチャイズ本部であるが、海外では11カ国に約430店舗を展開しており、国内の店舗数の4倍以上に達している。現在展開している11市場のうち、日本からの資本が入っているところは中国市場と台湾市場のみであり、その二つの市場には現地に合弁会社を設立して、そこにマスターフランチャイズ権を与えている。他の市場は、基本的にすべて現地企業とのストレート・フランチャイジング契約となっている。ただし、現地の店舗は、基本的にすべて各国の現地本部の直営店であり、中国の店舗も現在のところすべて直営である。海外の店舗は「ラーメンレストラン」であり、ラーメンも柱としながらカツ丼、うどん類、エビフライ、焼き魚等110種類にも及ぶサイドメニューが揃えられている。店舗デザインも日本とは大きく異なっている。中国では麺類メニューの売上が全体の46%にとどまり、サイドメニューが54%を占めるようになった。
 最初、香港で新たな業態を生み出し、海外展開のスタンダードとなったのであり、その意味では味千ラーメンは海外で新たなグローバルフォーマットの開発に成功した企業と見ることができよう。味千ラーメンには中国市場から、ロイヤルティ収入と食材販売で5億円余りが重光産業にもたらされており、それなりの意味のある金額と言えよう。
 吉野家の海外進出は1973年に遡る。アメリカ牛肉の買付け会社(USAヨシノヤ)をアメリカ・デンバーに設立したが、翌年に、日本政府が国内の畜産業を保護するために牛肉輸入の全面禁止措置を講じた。そこで、窮余の一策として牛丼店の展開を始めた。米飯にも馴染みがなかったため、人気は今一つであった。1977年にアジア系やヒスパニック系の多い西海岸地区での出店を目指して「ヨシノヤウエスト」をロスアンゼルスに設立し、西海岸での店舗展開は順調に進んだ。しかし、1980年に日本本社が倒産して資金供給が止まり、1981年にはヨシノヤウエストも破産法(日本の会社更生法に相当)の申請を行い、その後業績も急激に改善し、1996年には90店舗を超えるまでに成長した。
 1980年代にはアジアにも進出を始めたが、吉野家の海外進出はすべてフランチャイズ方式であった。現地企業をパートナーとしてストレート・フランチャイズ契約を結ぶか合弁会社を設立して、そことフランチャイズ契約を結んでいるのである。
 日本側が現地パートナーに一定地域内での「吉野家」の商標使用権を独占的に与えて、牛丼のタレの供給を行い、運営ノウハウを供与している。それらの対価として、吉野家側が加盟金やロイヤルティなどを受け取るのである。
 海外の吉野家の場合はパートナー企業によるサブ・フランチャイジングは認めていない。海外で募集したオーナーを教育して商品やクレンリネス、接客の品質を確保することは困難だと判断しているからである。アメリカを含めて海外展開店舗は1,159店舗に及んでいる。

結章  国際フランチャイジングの発展に向けて

 川端氏は「今後の国際フランチャイジングの課題」として次の10項目を揚げている。

  1. 海外パートナー企業に関する問題

  2. 海外店舗オーナーに関する問題

  3. 店舗開発に関する問題

  4. 商品調達に関する問題

  5. 法規制に関する問題

  6. 従業員・人材に関する問題

  7. 知的財産の問題

  8. ノウハウの移転のマニュアル化・システム化問題

  9. 文化(制度・慣習レベル)に関する問題

  10. 文化(地域暗黙知レベル)に関する問題


Ⅱ 「日本企業の国際フランチャイジング」を推薦する。

1. 豊富なデータ

 巻末には広範囲な「日本企業による国際フランチャイジング」のデータベースが付表として記録されている。良くぞここまで調査したものだと感服するデータであり、今後このテーマを研究する研究者には欠かせないデータである。

2. あらゆる読者にお勧めできる

 本書は、これから新規に海外進出を検討する企業や、既に進出したが事業が旨く軌道に乗らない企業、フランチャイズの研究者など、すべての読者に有用である。

3. 国際フランチャイジングに対する新しい理論作り

 フランチャイズに関する理論として用いられてきた「資源ベース理論」「エージエンシー理論」に対置して、新たに国際フランチャイジングの理論的枠作りとして「ガバナンス理論」を用意し、ノウハウと商品を軸として、縦方向にガバナンスの強さ・弱さを用いた分析は新しい理論展開を可能にした。

4. 製品・商標型フランチャイズの見方

 川端氏は、製品・商標型フランチャイズを日本でも認めるべきであるとして、自動車ディーラーをフランチャイジーとして論じている。
 筆者は、商品から利ザヤを取り、ロイヤルティを低くするか、若しくは徴収しないフランチャイズ本部を多数見ている。これらを製品・商標型フランチャイズとするのでは無く、問屋型日本式フランチャイズと理解している。日本には無形のノウハウに対してお金を払う習慣が無く、やむを得ず商品に転嫁したのが実態ではなかろうか。

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