フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

飲食FCビジネスで成功する要件

 「飲食店経営」で2000年1月号より、丸10年連載を続けた「FC加盟店の成功者たち」に登場した加盟店オーナーは、合計120人に達した。この厳しい時代に、一つのテーマで10年間に亘り連載することにご同意戴いた千葉編集長、梅沢編集長に厚くお礼申し上げる。
 また、この企画を誕生させた山田ヒロシ氏のご協力と熱き思いには今でも頭が下がる思いである。その後担当された砂田泉氏、岡下貴寛氏にもお世話になった。「飲食店経営」のすべての編集者にお礼申し上げたい。
 本稿は「飲食店経営」10年2月号に「飲食FCビジネスで成功する条件」として6ページに亘り特集された「FCの成功者たち」の総括版であり、10年間の掲載をまとめた記事を主体にして、それに加筆修正を加え、成功要因も10項目から12項目に拡大したものである。
 振り返れば実に楽しい10年間であり、この企画を通して、筆者はマルチ・ユニット・フランチャイジーの重要性と日本のフランチャイズ研究にとって、それが決定的に欠けていた要素であることを学んだ。
 お陰で、筆者の属する(社)中小企業診断士東京支部FC研究会で「メガフランチャイジー」「複数出店者」「エリアフランチャイズ制度」の実践的研究に取り組むことになり、従来のフランチャイズ研究で欠けていた部分を何がしか補うことが出来たキッカケでもあった。
 また、ここに登場した成功オーナーには、幾つも共通点があり学ぶべき点が多い。それはFC加盟店の成功の条件であると共に、飲食業で成功する方法、更には人生で成功する法則にも通ずるものがあると考える。
 本稿では、このうち重要と思われる成功者の共通要因を次の12にまとめた。一昨年のリーマンショックに揺れる日本経済は未曾有の難しい局面を向かえており、飲食業でも異常な低価格化、売上高減少に悩む多くの飲食店経営者に伝えることにより、今後の自店の経営に何らかの解決策のヒントを与えることになれば幸いである。

成功要因1 本部選定が一番大切である

 FCに加盟すれば,容易に成功する時代でないことは今や常識である。FC加盟成功の要因を1つに絞れば、本部選定の良し悪しに掛かる。
 では、どのように本部選定をすれば良いのか? 基本はその本部の持つ料理が美味しいか、本当に好きかどうか、信頼できる本部であるかどうかである。
そのためにも、筆者は加盟店訪問がすべての調査の中で一番有効であると考えている。まず、本部から3店舗程度の加盟店の紹介を受けて、その3店を回る。売上高の推移、収支予想と現実の差、スーパーバイザー(SV)の能力と誠意、本部に対する信頼度等を聞き出してもらいたい。本部が招介する加盟店は成績良好で、本部との関係も良い加盟店が多い。訪問した加盟店で更に違う加盟店を3店紹介してもらう。 この要領で、10店舗程度の加盟店を回れば、ほぼその本部の力量、一番商品の有無、信頼性、将来性が見えてくる。 加盟店訪問と併せて、事業説明会にも出席すると、社長やFC担当役員のFC方針が述べられる。そこで提示されるビジネスモデル(投資額、事業採算計画等)を良く検討して、その両者とも合格であれば、加盟の商談を進める慎重さが大切である。
「FCの成功者たち」はこぞって成功要因の一番に「本部選定が正しかった」と述べている。例えば、三島のMYコミュケーションズの須田オーナーは「加盟店としては“優れた本部選び”が成功の一番の要因である。わが社が加盟した本部はいずれも素晴らしい本部である」と述べられている。ちなみに同社は、オートバックス、びっくりドンキー、牛角、物語コーポレーション等に加盟している。
 勿論、時代により“運”もある。しかし、現在は“運”にのみ頼る時代ではない。自分なりに調査をし、納得してから加盟する時代である。FC加盟は自己責任である。選んだ以上は自分の責任であり他人に責任の転嫁ができないことを自覚して、慎重に本部選びをしてもらい、以下の成功要因を実行してもらいたい。

成功要因2 経営の基本をきちんと守る

 「FCの成功者たち」を取材して、帰りの電車で編集者と話すことは殆どの場合同じ会話である。「あの人なら何をやっても成功するよね」という内容である。
 要するに成功者は経営の基本をきちんと守っているのである。やるべきことを3年も5年も続けてやれば、ビジネスは成功する。それを途中で止めてしまったり、飽きてしまったり、最初から基本が分からないまま、自己流でやるから成功しないのである。
 では成功の基本とは何か?筆者はFCビジネスの基本はマニュアルであり、SV指導であり、本部の各種方針・指導を忠実に実行することであると考えている。
 本部は決して最初から事業に成功した訳ではない。むしろ、多くのFCの創業者から聞くと、最初は失敗の連続であり、最後の1発で逆転成功した話が多い。例えば「一番カルビ」ひたちなか店(08年7月号)の望月オーナーの談話が面白い。FC本部は多数の直営店の運営で失敗を重ね、店舗閉鎖をし、最後に成功して多数店舗を展開している。FCに加盟するメリットは、その本部が過去の失敗や成功した経験を共有できることであり、いわゆる「ナレッジマネジメント」こそがFC加盟の本質であると述べている。
 「FC加盟の成功者たち」はほぼ全員そろって、「本部の指導に忠実に従った」と答えている。最近の事例で言うならば「焼肉きんぐ」神戸学院前店(09年12月号)の山本本部長、「お好み焼本舗」三島店(09年7月号)の須田オーナー、風々ラーメン田無店(09年3月号)の加邊オーナー等多数いる。
 本部の指導に忠実に従うということは、当然本部の経営者とも堅い信頼関係を築いており、SVに対する信頼も高い。

成功要因3 本部に対する高い信頼

 成功要因1と重なるが、単に本部選定の過程で慎重に選んだだけではなく、本部に対して高い信頼を寄せている加盟店は成功している。例えば、「焼肉きんぐ」神戸学園前店(09年12月号)の山本本部長は、物語コーポレーションの「FC支援室」を、次のように語っている。「支援室長はFCに詳しい取締役が就任している。業態転換するにあたり、このFC支援室に何回も足を運び、直営店の数値の公開、経営上のアドバイスを受けることが出来て、信頼できる本部であることを再度確認した」とまで絶賛している。羨ましい関係である。
 「情熱ホルモン」八王子店(09年11月号)の竹田オーナーは「五苑マルシン」の川辺社長から事業説明会での経営方針を聞き、その後何回も面談を重ねる内に、高い信頼を寄せるようになり1年間に3店舗を東京に開店して、いずれの店でも月商1千万円を売る繁盛店にしている。
 本部に対する高い信頼は、基本的にはビジネスモデルが優れている、収益性が高い、一番商品を有している、競争力が高い、時代の変化に対応できる等が根本的条件であるが、今一つ飲食業で本部に対する評価の高い事例は、「オーナー会」を真剣勝負で開催していることが挙げられる。オーナー会は、本部に対する圧力団体になったり、加盟店の不満分子の「不満のはけ口」になる等マイナス面があることは否定しない。 しかし、それでも筆者は「オーナー会」の開催を薦めたい。真剣にFC本部の社長が、現状を見据え、会社の将来を展望すれば、この暗い時代でも加盟店オーナーは必死に「自店の生き残り策」を考えるものである。このような真剣勝負の結果、加盟店の本部に対する信頼関係が生まれるものである。 
 オーナー会については「サーティーワンアイスクリーム」柿田川店(08年8月号)の手代木オーナーが次のように語っている。「本部の革新の中で加盟店との信頼関係が構築できた。オーナー会も設立され、加盟店からのの意見もも多数採用され、相互に信頼関係ができた。本部に対する信頼感が多数店舗の展開につながった。」
 「丸源ラーメン」戸田店(08年5月号)の千葉オーナーも次のように述べている。「丸源ラーメンオーナー会があり、年2回の会合がある。凡そ7~8割のオーナーが出席する。本部の方針発表や、勉強会が主体である。本部主催のアカデミーも利用している」

成功の要因4 スーパーバイザーに対する高い信頼

 成功要因3と重なるが、特にスーパーバイザー(以下SV)に対する信頼を本部に対する信頼の証として証言されたオーナーの数も多い。本来SVは、本部と加盟店の架け橋であり、常に加盟店経営の指導を通して加盟店の売上高と利益の増加に協力する存在である。このSVに対する不信が、加盟店と本部の関係を決定的に悪化させることがある。
 本部は常にSVを教育し、SVのレベルを上げることが求められている。(社)日本フランチャイズチェーン協会も発足以来、SV教育には特に重点を置いて、「SV学校」は1977年開校以来33回を数えており、協会にとって最も大切な教育機関である。
 ペッパーフードサービス西葛西店(09年5月号)の西野オーナーは「社員教育は本部のSVの臨店指導が大きい。本部の方針としてSVは経営のコンサルタントであり、単なるオペレーション指導ではないことが徹底されている」と述べている。
 「はなの舞」二股川北口店(09年4月号)の上片平オーナー「SVに求めるものは新しい情報、知識の提供であり、場合によってはメール連絡でも有り難い。SVの持っている新しい知識、他店情報、直営店情報は非常に参考になる」と述べている。
 「得得」京都八幡店(08年11月号)の森オーナーは「本部のSVは月2回訪店し、メニューの指導、接客指導、オペレーション指導をしてくれる。家族亭はFCを始めて時間が経過していないため、加盟店に対する配慮も高く,SVのフットワークも極めて良い」と絶賛している。

成功の要因 5 計数管理の物差しを持つ

表―1 「FCの成功者たち」に使用した経営指標
経営指標
計算式
  月坪売上高   月間売上高÷店舗面積
  人時売上高   月間売上高÷総労働時間数
  賃料率   賃料÷月間売上高
  FLコスト   Fコスト+Lコスト
  投下資本回転率   年間売上高÷投下資本
  営業利益率   年間営業利益÷年間売上高

 「FCの成功者たち」では、すべての加盟店で上記の経営分析を行い、ひとことコメントを加えてきた。わが国には中小企業庁の「中小企業の財務指標」(同友館)「TKCの財務指標」等優れた分析が多数あるが、飲食フランチャイジーに限定した経営指標を120例集めたものは過去に一度も無いし、今後も難しいであろう。
 しかし、この指標は決して平均値でもなく、中央値でもなく、最高値でもない。あくまでもFC本部が推薦した加盟店のある時点での経営指標である。従って、この経営指標が一人歩きすることは好ましくない。もっとはっきり言えば間違いの元である。
 経営指標はすべての指標が高い結果を示すことは絶対にない。例えば、ラーメン業はFコストは一般的に低いと思われる。しかし、長時間営業(例えば朝10時から、夜10時までの12時間営業等)を常とするため、人時売上高は一般的に3千円台から4千円台で、比較的低い。弁当事業はフードコストが一般的に50%台と言われており、FLコストも70%台になることが多い。しかし、投下資金額は比較的低いため、投下資本回転率は一般的に高い。
 従って、すべての経営指標で優れたビジネスは有り得ない。高い経営指標と低い経営指標が組み合わされて、事業は成り立つものである。
 だから、特定の経営指標を持ち、自店の経営判断をするのが正しい計数管理の方法である。
 特定の経営指標を用いる事例としては、「風々ラーメン」志木柏町店(01年9月号)の鈴木オーナーが人時売上高を経営指標として常時使用している。「FCの成功成功者たち」のシリーズではないが、飲食店経営2002年1月号「人時売上高5200円を達成するソフト」、飲食店経営2007年11月号「中小飲食店でもできる社員独立制度」で詳しく報告しているが、要するに飲食業の人時売上高を高くしないと、まともな賃金も払えないと言うことを様々な観点から論じて、「日本の飲食業に魅力をもたせ、誇りある産業にするためには、人時売上高は5千円台にする必要がある」と結論づけている。
 是非、一人一人のオーナーが自分の強い指標を探し出し、その指標を基に計数管理の物差しを持ってもらいたい。
 これからの飲食経営者は常に勉強しなければ生き残りは難しい時代である。何か一つ、経営指標に秀でた経営者になってもらいたい。 「しゃぶしゃぶ温野菜」鶴ヶ島店(06年7月号)の野村オーナーは飲食業では珍しいキャッシュフロー経営に徹した経営者であった。 「オーナーの事業に対する基本的考え方はキャッシュフロー経営である。P/L,B/Sは勿論であるが、キャッシュフローの推移をみる利益重視の経営である。1店舗の時に複数店化するには3~4年掛かるが、3店舗になれば毎年1店舗出店できる計算である。手堅く無理をしないで着実に多店舗化を図る理想的な経営スタイルである」と筆者も書いた。

成功の要因 6 社員,P/Aを大切にする

  凡そ、事業目的とは売上高を挙げ、利益を捻出し、株主に配当、経営者に利益、国・自治体に税金を納めることである筈だ。しかし、「FCの成功者たち」は、こぞって社員,パート・アルバイト(以下P/A)を大切に育成し、P/Aに対して高い時給を払い、店舗への定着を希望し、出来れば従業員独立制度も作りたいと考えている人も多い。
 即ち、経営者の利益、配当、税金支払いよりも社員,P/Aへの配分を増やすことを先に考えているオーナーが多い。これは、勿論激しい人手不足の中で、人材採用が思うように出来なかった時代(04年~08年前半)背景もあるが、それと同等に「一緒に働く社員,P/Aを幸せにしたい。それが事業を行う目的である」とまで断言するオーナーがいる。
 確かに飲食業はオーナー一人で成り立つものではない。優れた店長、P/Aのやる気で支えられているものであり、飲食雑誌を読めば、如何に店長を育成し、P/Aのやる気を引き出すかが大きな課題として提起されている。
 最近の事例で言うならば「ちりめん亭」アトレ新浦安店(09年10月号)の松野オーナー、「はなの舞」二股川北口店(09年4月号)の上片平オーナー、「得得」京都八幡店(08年11月号)の森オーナー、「とりあえず五平」竜王店(08年10月号)の小松オーナー等である。

成功の要因 7 法人FCは複数・ドミナント出店が原則

 「FCの成功者たち」のスタートの頃(2000年より02年頃まで)は、脱サラ、商店転換型の1店舗オーナーが多かった。日本のフランチャイジーは、個人の起業、脱サラ、個人商店の事業転換が主体であり、当然のことと受け止めていたが、03年以降は複数店舗出店、異業種参入が増加してきた。フランチャイズは間違いなく法人化、多店舗化、異業種参入型に転換したことを実感した。
 多数店舗展開型で成功している加盟店は、全部ドミナント出店に限定していた。即ち、複数・ドミナント出店が日本のフランチャイジーの一大勢力になり、「FCの成功者たち」の事業規模も拡大した。
 これは規模拡大によりFC事業が、法人化、銀行信用の増加、FC本部との良好な関係作り、労務管理体制の整備等により、生業から事業へと転換を遂げたのであり、本部側からも多数店舗の展開を望む声が増加したのである。
 異業種から参入し、複数・ドミナント出店で成功した最近の事例を挙げれば、「情熱ホルモン」八王子店(09年11月号)の竹田オーナー、「ナポリの窯」大島店(09年9月号)の大谷オーナー、「お好み焼本舗」静岡瀬名店(09年7月号)の須田オーナー、「ペッパーランチ」西葛西店(09年5月号)の西野オーナー、「チャオチャオ餃子」築地店(08年9月号)の近藤オーナー等実に多い。

成功の要因 8 オーナーも常に努力している

 「FCの成功者たち」の共通要因として,絶えざるオーナーの努力・研鑽がある。「焼肉きんぐ」神戸学院前店(09年12月号)の山本本部長は「我々はストロークを強調する。これは自分達の親会社が教育事業であるためである。心理的ストロークはプラスのストロークとして「明るく挨拶する」「笑顔を見せる」「手を振る」等であり、マイナスのストロークは「叱る」「注意する」「説教する」等である。この店舗ではストロークを強調してP/A教育をするのは学習塾の考え方に基づいている。学習塾と飲食業のシナジー効果を考える場合、この教育方針が飲食業の現場にも生きている」とのことである。
 「ペッパーフードサービス」西葛西店(09年5月号)の西野オーナーは「オーナーの役割は社会の窓から会社を見ることであり、必ずしも飲食業のみの動きにとらわれているのではない」と強調された。
 「風々ラーメン」田無店(09年3月号)の河邊オーナーは「全店舗の店舗管理をエクセルで管理している点が特徴である。目標数値は人時売上高、人件費率、原価率の3点に注目している。飲食業の経営が近代化しないのは、店舗の帳票化が出来ないことが原因である」と述べている。
 いずれも、飲食業の中からではなく、外部から飲食業を見て、その近代化に努める努力が感じられる。

成功の要因 9 独自性を出した販売促進

 外食産業全体が全店ベースで4ケ月連続(09年6月~9月)で前年割れを起したほど、外食には不況の波が押し寄せている。外食フランチャイズは90年代から06年までは、全体としては比較的堅調であった。しかし、07年度(▲0.9%)、08年度(▲2.4%)のFC統計によれば、2年連続の前年割れであり、FC統計始まって以来の現象である。

 リーマンショックを受けて、外食の低価格化、客数減少による売上高の低下が大きな課題になっている。「FCの成功者たち」では、毎号その店舗の販売促進策を聞いているが、独自性溢れた販売促進策を語られることが多い。ここでは成功例を一部上げてみたい。 「とりあえず五平」竜王店(08年10月号)の小松オーナーの販売促進策は次の通りである。「販売促進には熱心である。社員5名,P/A40名で毎月1回店舗ミーティングを行い販売促進の計画を練る。店舗を中心に半径10?範囲内の法人、小売店、サービス店の150店に挨拶、クーポン券配布を年間を通して実施している。必要とする経費と売上高はほぼ見合っているが、何よりもP/Aのモラールアップにつながっている」と述べている。
 「カプリチョーザ」新宿アイランドタワー店(08年1月号)の羽鳥オーナーは「他社との差別化のため味はやや濃い目、リピート性が高く、バリュー感もある。当店では食後コーヒーや紅茶のサービスをしているため、お客様に喜ばれている」と語っている。
 販売促進と言うと、クーポン券配布、携帯電話へのメール配信、フリーペーパーへの広告とクーポン券等型にはまったケースが多い中で、独自性を出した販売促進策により成績を上げている例がある。

成功の要因 10 従業員の夢と自己のライフプランを重ね合わせる

 事業がある規模に達すると、その事業を自分の子供に継がせることを考えるのは、ある意味当然の成り行きである。しかし、「FCの成功者たち」の中には、店舗の従業員たちへの分譲、独立によるモラールアップと自分のライフプランとを組み合わせている人も多い。
 「一番カルビ」ひたちなか店(08年7月号)の望月オーナーは「お好み焼本舗の茨城県のエリアフランチャイズ権を購入し、エリアフランチャイザーとなったので、多店舗を出店して、10年後には、その物件を簿価で売却して独立させる。頑張った人は社長になれる。これは刺激になっている」と述べている。
 また「はなの舞」福島駅前通り店(07年8月号)の山内オーナーは「従業員の独立制度にも着手したい。具体的には希望者への店舗売却、銀行の融資保証も付ける」と将来像を述べている。
 「鳥貴族」ナンバ店(07年4月号)の堀江オーナーも「従業員の独立も考えている。希望者に店舗を売却し、銀行の融資の保証を付けることにより、従業員の夢を実現させたい」と述べている。
 「八剣伝」堺東駅前店(07年1月号)の松井オーナーは「現在以上の展開を目指すには、自分のみの夢では実現できない。従業員の夢を引き出し、その夢の実現を図らなければならない。従業員が独立を希望するならば既存店での独立、不振店(八剣伝)の再生・独立、または経営委託等様々な方法を検討して夢実現を図りたい」と述べている。
 「まいどおおきに」大森食堂(03年10月号)の玉置オーナは「店舗を増やして、最後は従業員の希望者に譲渡したい。従業員に独立というメリットがあると同時に、オーナーにも現金収入というメリットが発生する。この夢を実現するためにも、店長、従業員の教育は必要である」と述べている。
 いずれも従業員の夢実現と自己のライフプラン(ある一定年齢後の現金収入、ロイヤルティ収入)との重ね合わせが考えられる。

成功の要因  11 本部と加盟店は役割分担であり、自己責任は重い

 フランチャイズ加盟は成功を保証する仕組みではない。特に飲食業の昨今の不況を見ると、FC本部と加盟店の関係は機能分担であり、本部はフランチャイズパッケージ開発とブラッシュアップ、加盟店指導、加盟店は店舗営業のすべてに責任を持つ関係であり、加盟店の自己責任が重要であることは明確である。
 FC本部は基本的機能を誠実に積上げ、時代の変化に対応することが重要であり、加盟店は店舗営業に責任を持つ役割分担を明確に意識するべきである。はっきり言えば、加盟店の自己責任は重い。
 「とりあえず五平」竜王店(08年10月号)の小松オーナーは「FCに加盟した理由は、自社は店舗経営と人材育成に専念し、メニュー開発等は本部に開発してもらう分業体制が合理的であり、ハード面は本部に任せ、店舗運営のソフト面は加盟店が分担するという仕組みが一番合理的であり、“FCとはそういうものだ”という持論を持っていた」と主張された。
 「丸源ラーメン」戸田店(08年5月号)の千葉オーナーは、成功の要因として、最後を次のようにまとめている。「本部との信頼関係が構築できた点が成功の要因である。本部がしっかりしていて間違いがない。本部の指示通りやってきた。自滅していく店は勝手に変えてしまう。FCは良くも悪くも自己責任である。」

成功要因 12 従業員教育がすべてのカギ

 成功したFCのほぼ全店に当てはまる共通要因は、従業員教育に時間とお金を惜しまずつぎ込む姿勢である。事業成立の要件としてヒト、モノ、カネ、情報が挙げられるが、中でもヒトが重要である。 ヒトを頂点にカネ、モノ、情報がぶら下がっているのである。人材育成はFC事業に限定した話ではなく、すべての事業の成功の要諦である。
 従業員教育には、経営者が勉強して社員会議の席上で教育をするタイプ、本部の勉強会に参加させるタイプ、外部講師の話を聞かせるタイプ、自店の経営理念として徹底するタイプ等様々である。
 「とりあえず五平」竜王店の小松オーナーは次ぎのように話してくれた。「毎月1回の社員,P/A全員参加による店舗ミーテイングを行いオーナーが指導する。売上高予算の責任は全員が共有する。また、1年1回社員,P/A全員参加の合宿を行い、一晩中ミィーティング、分科会、全体会議を通して目標の統一化を行っている」
 「一番カルビ」ひたちなか店(08年7月号)の望月オーナーは次ぎのように述べている。「従業員教育には熱心に取り組んでいる。本部が主催する幹部研修には全員通わせている。今から、自分の将来目標を明確にするよう教育している。独立するか、会社に残って幹部の道を選ぶかである」
 「焼肉屋さかい」田辺店(08年2月号)の松出オーナーは次ぎのように語っている。「従業員教育には熱心である。社員は全体で12名であるが、コンサルタント会社が定時的に訪問し、体験研修、目標に対する徹底的執念を指導する。」
 「ナポリの窯」大島店(09年12月号)の大谷社長は次のように語っている。「オーナーの考える宅配ピザの経営理念は、“運送屋になるな。デリバリーはウエイター、お客様に喜んでもらえるレストランにする”」異業種からの新規参入で、僅か2年の経験であるが、飲食業の本質をついた経営理念である。

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