フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

週刊ダイヤモンド(9月11日号)のFC経営力ランキングについて フランチャイズ時評

 週刊ダイヤモンド(10年9月11日号)は「フランチャイズの悲鳴」という特集を組んでいる。中でも48ページ以降の「上場129社経営力ランキング」は読み応えのある内容である。
 03年7月に経済産業省の諮問機関であるサービス・フランチャイズ研究会から「サービス業フランチャイズの環境整備の在り方について」と題する報告書が発表された。
 この諮問機関は、サービス・フランチャイズ研究会と称しているが、内容はフランチャイズ・システム全体に対する提言であり、フランチャイズ・システムを構成する各主体に対して、様々な課題を提起している。  この報告書の中で、特に注目を集めたのは「サービス業フランチャイズの環境整備に係る具体的施策」の第5項目に提起された「フランチャイズ本部に対する客観的な評価の促進」である。その項目では「本部に対する継続的かつ中立的な評価等が重要」として、「フランチャイズは業種・業態が多岐に及んでいること、評価する視点が様々であることなどから、客観的な評価が難しい面もあり、民間における多用な主体による評価を促進する観点から、必要な環境整備を行うべきである」と結んでいる。

(フランチャイズ市場レポート04年1月号を参照)

 これを契機に様々な機関から「フランチャイズ本部評価」が行われるだろうと予測した。
 本稿では、ダイヤモンド誌(9月11日号)を中心に判読し、併せて過去の各誌の「本部評価」乃至「本部評価の方法」についてまとめて論評する。

Ⅰ ダイヤモンド誌(9月11日号)の経営力ランキングについて

1. 評価の方法

(1) 財務情報 

 対象は全上場企業の中でフランチャイズビジネスを展開している(子会社を含む)企業である。(日本フランチャイズチェーン協会調べで129社)
 業種分類は、日本フランチャイズチェーン協会が用いている小売り、外食、サービスの3業種に従っている。
 財務指標としては、次の3指標を用い、相対比較をするためそれぞれで偏差値化し、3項目の平均偏差値を算出している。その後に小売り、外食、サービスの3業種に分類し、業種ごとで平均偏差値を基にランキンングを作成したものである。(設立3事業年度未満の会社の収益性と成長性は2事業年度で計算)
  収益性(直近3年間の経常利益÷同売上高=%)
  成長性(直近3年間の平均売上高成長率=%)
  財務安全性(株主資本比率=%)

(2) 新規出店数と訴訟件数

 新規出店数と訴訟件数は入手可能な法定開示書面から抽出した。訴訟件数の右は本部が加盟店を訴えた件数、左は本部が加盟店から訴えられた件数。青色は最新データ以外の件数。

(3) 法定開示書面の開示の有無

 ◎ は、 「ザ・フランチャイズ」で一般に公開
 ○ は、 「本誌請求に公開」
 △ は、 「一部または最新版以外が公開」
 ? は、 「一般公開していない」
 A は、 「新規加盟募集停止中や積極募集しないため、または業態変換計画中」
 B は、 「加盟者は社員限定など一般公募しないため」
 C は、 「作成義務の法定対象外のため」
 * ABC は非開示や未作成の理由の回答があった企業

2. 評価方法に対する意見

 1に示されたダイヤモンド誌の評価態度について、筆者は次のように評価する。

(1) 財務基準について

 加盟希望者が本部選定する場合、本部の成長性と財務安定性は重要である。 成長性は、その事業が時代にマッチし、消費者から評価を受けているから店舗数増加、既存店売上高増加等の方法で売上高が成長しているのである。成長性は、本部判定の重要な経営指標である。
 財務安定性も、極めて重要な指標である。財務が安定しない本部に加盟することは推奨できない。財務が不安定であれば、倒産、整理、M&Aの対象になる等加盟店には不安な事象をもたらしかねない。
 しかし、収益性についてはどうであろうか。本部の収益性が高いことは、本部の徴収するロイヤルティが高すぎるとか、商品、原材料に高いサヤ抜きをしているとか様々な理由が考えられる。
 かって筆者は弁護士2名、元FC本部社長2名(内1名は筆者)で、本部と加盟店(全店)の利益をどのように配分すべきかを議論したことがある。筆者は5分5分を主張したが、弁護士2名、元社長1名は、7(本部)対3、もしくは6(本部)対4を主張された。その理由は、「本部は常に業態のブラッシュアップ、新業態開発のため費用が掛かるから」であった。筆者の主張は「ブラッシュアップコスト、新業態開発まで含めてロイヤルティを徴収している。それらは既にコストとして毎期計上されているから、特別に本部の配分を厚くする理由はない」とするものであった。
 特別、結論を出す性格の議論では無かったので、この程度のやり取りで終わったが、本部の利益と加盟店総体の利益をどのように配分すべきか、は大きな問題であり、この辺の議論がタブー視されていることが、この特集の「フランチャイズの悲鳴」かもしれない。
 しかし、収益性は積もり積もって財務安全性につながるので、例えば収益性の比率1に対し、成長性、財務安全性に2倍のウエイトをかければ、より良い指数になったかも知れない。
 また、この指標を作る上で、規模の概念(売上高の大きさ)を持ち込まなかったことは、評価できる。大きい本部が優れた本部と言えるかどうかは疑問である。

(2) 法定開示書面の開示の有無

 わが国の小振法では、小売業について加盟前の情報開示を義務付けている。外食業も原材料を加盟店に販売する場合は、法定開示書面が義務付けられている。しかし、小振法ではサービス業については法定開示書面の開示を義務づけていない。
 しかし、公正取引委員会のガイドライン(02年2月)では、開示すべき8項目を揚げ、すべてのフランチャイズ本部は、この8項目(ほぼ小振法と等しい内容)を開示することが望ましいとしている。
 また、(社)日本フランチャイズ協会では正会員社に対して、協会指定の「要点と概説」を毎年決算期毎に提出を義務付けている。
 また、日経新聞が主催するフランチャイズショーに新規に出展する場合は、すべての業種に法定開示書面の開示を義務付けている。
 従って、小振法で開示を義務付けられていないサービス業も、フランチャイズチェーン協会の正会員になるためには「要点と概説」を協会と経済産業省に提出が義務付けられている。日経フランチャイズショーに新規出展する場合も法定開示書面を提出しないと出展できない。
 従って、ダイヤモンド誌の法定開示書面の提出を拒んだのは、理由が判らない。「同誌が加盟希望者」でない、ということが理由かもしれないが、公開企業なら、それほど拒む理由が無いと思うが如何であろうか。
 なお、直近3年間の新規出店と、直近5年間の訴訟件数の公表は、法定開示書面の開示と同じ意味なので、ここでは特に取り上げない。また、法定開示書面が古いという指摘は重い。多分「ザ・フランチャイズ」の掲載開示書面を指していると思うが、この「ザ・フランチャイズ」の法定開示書面には、直近3年間の新規出店、閉鎖店、直近3年間の財務書類、直近5年間の訴訟件数を欠く開示書面が掲載されていることがある。修正をしない本部の法定開示書面の掲載は、「ザ・フランチャイズ」から削除するべきである。
 小振法の精神にも反するので、ここはWEBを管理している日本フランチャイズチェーン協会が断固たる姿勢を示すべきである。

3. 129社経営力ランキング

(1)外食

順位
社名
主なブランド
総合偏差値
収益性
成長性
財務安全性
法定開示書面
1
サンマルクホールディングス
ベーカリーレストラン「サンマルク」
65.5
17.6
9.7
80.3
2
BRサーティーワンアイスクリーム
「サーティーワン アイスクリーム」
61.2
13.8
8.4
69.3
3
ハークスレイ
「ほっかほっか亭」
61.1
1.0
49.3
29.1
4
ホッコク
「札幌ラーメン どさん子」
60.4
▲0.2
42.1
44.3
5
アークランドサービス
「かつや」
59.8
11.0
8.3
70.8
6
王将フードサービス
「餃子の王将」
59.1
13.0
12.8
50.1
7
三光マーケティングフーズ
「黄金の蔵」
58.7
10.7
3.2
75.6
8
ドトール・日レスホールディングス
「ドトールコーヒー」「五右衛門」
57.5
9.7
▲0.2
79.8
9
壱番屋
「COCO壱番屋」
56.4
10.0
1.0
68.0
10
日本ケンタッキー・フライド・チキン
「ケンタッキー・フライド・チキン」「ピザハット」
56.3
3.2
17.1
58.1

(2)小売り

順位
社名
主なブランド
総合偏差値
収益性
成長性
財務安全性
法定開示書面
1
あさひ
「リサイクルベースあさひ」
64.6
12.1
20.8
71.1
2
ハードオフコーポレーション
「ハードオフ」
62.0
11.7
5.7
87.1
3
ワークマン
「ワークマン」
60.4
14.2
1.2
77.9
4
ローソン
「ローソン」
59.9
12.9
18.7
42.8
5
ヴィレッジヴァンガードコーポレーション
「ヴィレッジヴァンガード」
59.4
9.8
17.5
53.6
6
タビオ
「靴下屋」
58.7
10.7
8.2
66.3
7
メガネトップ
「眼鏡市場」
57.5
9.2
14.2
50.4
8
シモジマ
「パッケージプラザ」
57.2
7.5
1.9
79.8
9
ツルハホールディングス
「ツルハ」
56.9
4.7
17.6
55.5
10
サンドラッグ
「サンドラッグ」
55.9
6.2
13.0
53.2

(3) サービス

順位
社名
主なブランド
総合偏差値
収益性
成長性
財務安全性
法定開示書面
1
センチュリー21・ジャパン
「センチュリー21」
70.3
35.7
▲5.2
77.2
2
明光ネットワークジャパン
「明光義塾」
68.8
26.0
5.6
79.3
3
メッセージ
「アミーユ」
60.8
14.5
16.7
46.7
4
やまねメディカル
「なごやか」
59.4
14.1
18.8
35.5
5
ダイオーズ
「ダイオーズ」
55.7
5.4
0.6
81.1
6
平安レイサービス
神奈川県地盤の葬祭
55.1
16.3
▲0.1
39.9
7
ダスキン
「ダスキン」「ミスタードーナツ」
54.9
7.7
▲2.2
73.4
8
東建コーポレーション
「ホームメイド」
52.7
3.9
13.6
40.2
9
トーカイ
「リースキン」
52.0
6.6
1.0
52.5
9
ナガセ
「東進衛生予備校」
52.0
7.1
13.0
26.0

4. 経営力ランキングを記入してみて

(1) 無力感を感ずる

 加盟希望者に対して、このようなランキング表を公開し、自分が加盟しようとする本部の財務力や法定開示書面に対する公開度を見ることは極めて重要である。
 しかし、ランキングの各上位10社を記入してみて、なんとも言えない無力感を抱かずにおれない。財務力と公開度は判った。しかし、その本部に加盟して成功する可能性が高いかどうかは判定しようがない。果たして、これが信頼できる本部のメルクマルクになるかどうか?
 比較的収益性が高い、比較的成長性が高い、財務力が強い、これが果たして加盟希望者が求める本部判定要因であろうか?
 財務面から見た一部であり、会社の経営方針や、信頼感や、フランチャイズ方針や、業態ブラッシュアップ力はどこからも判断できない。精々一つの財務指標程度の意味しか持たないのではないか。

(2) 順位を付ける必要があるのか

 特に、順位を1番から付けて、あたかも高順位の本部が良い本部であるような錯覚を与える恐れがある。(ダイヤモンド社の真意がそこに無いことは判っている)むしろ、順位はつけずに財務力の優れた本部として、上位15社~20社を挙げてはどうか。そして下位3~5社は「慎重な検討が必要」として注意を喚起するような方法が優れていないだろうか。

(3) 加盟店のアンケート調査は絶対必要である

 過去の財務諸表は、所詮過去のデータに過ぎない。今後の本部の発展を保証するものではない。フランチャイズに取って最も大切な要因は、本部と加盟店の信頼関係である。この信頼関係を探る方法として加盟店のアンケート調査がある。手間は掛かるが3~5%の加盟店のアンケート調査をして、その評価を入れれば、随分変わった結論になる筈である。商業誌である以上1~2ケ月しか、一つの特集に力が注げないことは判るが、この文章が持つ社会的責任についても十分考えてもらいたい。
 この「経営力ランキング」が加盟希望者の本部選定に重要な意味を持つものであるだけに、十分注意してもらいたい。

Ⅱ 過去の各誌のフランチャイズランキング表

 財務力は所詮過去のデータに過ぎない。過去に輝かしいデータを誇った会社が将来共に成功し続ける保証はどこにもない。従って、財務諸表に重点を置くフランチャイズランキング表には、限度がある。
 この後、日経ビジネス、ダイヤモンド各社の過去のフランチャイズ総合ランキングをまとめてみる。
 時代の差があるので、当然大きな変化はあるが、問題はその評価の仕方である。評価手法の差に的を絞って論じてみたい。

(1) 日経ビジネス(2001年5月7日)

 大きな社会問題を起した格付け表であった。
まず、特集として「本邦初!! フランチャイズ100社格付け」と大見出しが踊る記事であった。
① 格付けの方法(以下日経ビジネスの記事を引用)

 FC本部を格付けするために収集、集計、分析してきた調査結果を5つに分類し、各項目の判断基準として以下2つの経営指標を採用した。

(a) 本部収益力
 本部売上高営業利益率(%)
 本部1人当たり当期利益額(百万円)

(b) 店舗力
 加盟店1店舗当たり売上高(万円/年)
 直営店1店舗当たり売上高(万円/年)

(c) SV体制
 SVの加盟店訪問回数(回/月)
 SV1人当たりの担当店舗数(店舗/人)

(d) 商品収益性
 本部商品回転率(回/月)
 本部売上高総利益率(%)

(e) 安全力
 自己資本比率(%)
 インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

 次に、各々2つの経営指標の平均値を主軸にとったマトリクスを作り、さらに平均×0.5と平均×1.5の2本の補助線を引いて16のブロックに分け、各本部の数値をプロットした。なお、マイナス値に対しては評点を0とした。また、本部から情報公開が得られず、調査が不可能となっているものに対しも評点0とした。この分布の基に、格付け対象となった100のFC本部について(a)~(e)の項目に対し、16~0の段階的評価を行った。従って、評点の上限は80点となる。
 こうして出した総合評価を、最終的な格付けの符号に置き換えた。格付けは原則としてAAA~Eランクの6段階においては、上位のものにはプラスを、下位のものにはマイナスを付加した。格付け符号の基準は、次の通りである。

(特にCランク以下について部分的に書き出した)
C 部分的に重大な欠陥があると判断された本部に対する格付け。
D 全体的に重大な欠陥があると判断された本部に対する格付け。
E 本部の構造自体に重大な欠陥があり、加盟対象として現段階では不安材料が多い。

② 具体的な評価方法(日経ビジネスの記事より引用)

 「格付け作業は本部と加盟店双方からの情報収集から始まった。本部には調査表を送った上で、実際に経営者や担当者へのヒヤリングをして(これは事実。幾つかの会社から筆者に問い合わせがあった)精査した。
 また加盟店については22人の調査員を全国に派遣し、1本部について最低7店舗(立地や規模など本部の推奨する条件に近い店)から経営状況や本部への評価などについて取材した。(この事実は確認出来なかった)
 格付けの評価基準の選定に当っては、コンサルタントやアナリスト、大学教授など延べ34人の専門家から意見を集めた。」
(但し、この34人の専門家のうち11人の中小企業診断士は、全く関係なく、「この評価方法について意見を聞きたい」とのアンケートはあったが、それ以外は関知していないことが後日明らかになった。)

格付けの具体例

(外食業のみを掲載する)
チェーン名
企業名
本部収益力
店舗力
SV体制
商品収益性
安全力
格付け
吉野家
吉野家ディー・アンド・シー
A
A
A
C
A
AAA
サンマルクレストラン
サンマルク
A
A
C
A
A
AA+
餃子の王将
王将フードサービス
A
A
B
A
B
AA
ドトールコーヒーショップ
ドトールコーヒー
A
A
A
C
A
AA
モスバーガー
モスフードサービス
A
A
D
B
A
A+
会津喜多方ラーメン坂内小法師
麺食
A
A
C
B
B
A
焼肉屋さかい
焼肉屋さかい
A
A
C
C
B
A-
シャトレーゼ工場直売店
シャトレーゼ
A
A
A
D
D
B+
カフェコロラドチェー
コロラドコーヒー
A
D
B
C
A
B+
炭火焼八剣伝
マルシェ
A
D
D
A
B
B+

 D以下を加盟不適格とすると、実にD(Dと+、-を含む)は13社、E(+含む)4社であり、飲食業の43社のうち、18社が加盟不適格の烙印を押されたのである。(小売り、サービスについては今回は除く。)

③ このランキング表は持ち込み原稿であった。

 日経ビジネスが本邦初!!と大見出しを付けた記事は、実は持ち込み記事であった。(以下日経ビジネスより引用)
「日本初の試みとなるフランチャイズチェーンの格付けがまとまった。起業家情報センターが2年越しで取り組んでいたものだ。本部と加盟店の双方から集めた情報で客観的な評価をした。セブンーイレブン、ユニバーサルホーム、吉野家などの評価が高い。情報開示が進まないFC業界に風穴を開けるきっかけになりそうだ」
 原稿を持ち込んだ起業家情報センターのI社長の顔写真と動機が掲載されている。一部を引用する。
「FCの格付けをしようと思った動機は、4~5年前からリストラされた中高年を中心にFCチェーンへの加盟者が急増したものの、各本部やチェーンの経営状況を客観的に比較できる情報が殆どないために困っているという声を多く聞いたためだ。日本は世界第2位の「FC大国」でありながら、米国にあるような調査機関が存在しない。それならば自分達でやってみようと思った」

④ FC業界に激震走る。

 この格付け表の公表は、予想していなかっただけにFC業界に激震が走った。 特に、日本フランチャイズチェーン協会の正会員社がD以下に格付けされた事例があり、かつ格付けの根拠が曖昧であり、果たしてどこまで信用できるかと大きな話題を呼んだ。「日経ビジネス」という、ビジネス誌では一番の売上を誇る雑誌であるだけに、FC業界には不満と不信が渦巻いた。

 日本フランチャイズチェーン協会の専務理事(当時)瀬尾功氏は、「日経ビジネス」社に赴き、「起業家情報センターの信憑性、日経ビジネス社としてきちんとした追加検証を行ったか」を再三に亘り詰問したが、日経ビジネス社は「情報は正確である。FC協会からとやかく言われる筋合いではない」の一点張りで、事態の収拾の目途は立たなかった。
 瀬尾氏は、これ以上「日経ビジネス誌」と話し合っても無駄と判断し、日本フランチャイズチェーン協会内部に「本部評価諮問委員会」を設置し(01年7月)、学者、研究者、アナリスト、弁護士、流通問題の専門家等日本でも有数の研究者、FC本部の論客を集め、事務方として中小企業診断士の杉本収氏と筆者が参加した。延々と議論を行い、最終的に「誰が格付けを行うべきか?」という問題で大きく揺れたが、瀬尾氏の判断で「格付けは本部各社が自社で行う。従って、この格付けは、本部の現状把握と、有るべき姿との乖離を明らかにし、本部の期待する本部像を明確にして、自社の目標を設定する」こととなった。

 この間、実務部隊である我々は、全体会議で討議された内容を具体的レベルに落とし込み、正会員各社のFC本部の論客を相手に、格付け項目と、評価のレベルを作る作業をした。更に出来上がった内容を数社の正会員社に実施してもらい、加盟店からの評価も取り入れる形にしてほぼ完成した。
 ほぼ完成した格付け表は、学習院大学の田島義博教授(個人)、東京大学の伊藤元重教授のご意見も入れて、02年2月に「経営品質向上プログラム」が答申され、FC協会30周年事業の一環として「フランチャイズチェーン経営品質向上プログラム」として発表され、現在は日本フランチャイズチェーン協会のHPに掲載されている。
 この事実を知る人も少なくなったが、特に中心的に活躍された瀬尾功専務理事(当時)と、中小企業診断協会東京支部FC研究会会長の杉本収氏(当時)の活躍を記録として後世に残したい。
 なお、話題の中心となった起業家情報センターのI社長は、その後別件の詐欺罪で逮捕され、FC業界から完全に消えた。

(2) 「日経ビジネス」(2003年10月20日号)

① 格付けの方法(「日経ビジネス」より引用)

 国内でFCを展開する有力企業392社を対象に、日経BPコンサルティングが調査した。(03年)8月中旬に調査表を送付。有効回答のあった企業数は131社、133チェーン、回収率は33.4%であった。
 ランキング評価は、「規模」のほか、収益の「成長性」、チェーンの「存続性」を尺度として作成した。
 「規模」については「FC店の末端売上高」を評価。「成長性」についてはFC店売上高をFC店舗数で割った直近(2002年から2003年5月までに迎えた決算期)のFC1店舗当たりの売上高を、1期前の同じ値で割った「FC1店舗当たりの売上高伸び率」と、直近のFC店舗数から1期前の同じ値を引いた「FC店舗増加率」、直近の本部売上高を1期前の同じ値で割った「本部総売上高伸び率」の3つの指標で評価した。
 「存続性」については、2002年度中に閉鎖せずに存続したFC店舗数を前年度末FC店舗数で割った「FC店舗存続率」と、直近の店舗指導員を直近のFC店舗数で割った「FC1店舗当たり店舗指導員」、さらに、本部のチェーン全体への投資余力を見るために本部の直近営業利益額をFC・直営の合計店舗数で割った「1店舗当たりの本部営業利益」の3つの指標で評価した。
 それぞれの指標ごとに偏差値を算出。「規模」「成長性」「存続性」の各項目ごとに偏差値の平均値を求め、それらを合計して総合ランキングを作成した。有効回答の平均値が50、標準偏差は10となる。3項目すべてが平均値であった企業の合格点は150点になる。また、回答のあった企業のうちFC店舗数の割合が30%未満の企業は、ランキング対象外とした。(以下省略)

② 飲食業のランキング
順位
チェーン名
規模
成長性
存続性
合計得点
1
北前そば 高田屋
47.2
64.5
52.9
164.6
2
ベーカリーレストラン・サンマルク
47.9
51.8
64.1
163.9
3
炭火焼肉酒家 牛角
47.9
65.3
50.6
163.7
4
吉野家
48.3
47.4
67.4
163.1
5
カフェド・クリエ
47.0
51.9
62.9
161.8
6
ラケル
46.9
52.8
55.2
154.8
7
ドトールコーヒーショップ
48.9
52.8
53.1
154.8
8
びっくりドンキー
47.8
51.0
52.4
151.1
9
カレーハウスCoCo壱番屋
48.1
50.5
52.2
150.8
10
餃子の王将
47.6
49.0
52.3
148.9
③ FC本部調査方法の問題点

 フランチャイズ本部評価に規模を持ち込むことは意味がない。飲食業では大きな破綻はないが、小売業ではコンビニが1位から6位までを独占している。既に2002年には、コンビニの既存店は前年割れを起しており、業態としての問題点は明らかであったが、本調査では「規模」を入れたため、コンビニの問題点が消されてしまったと筆者は判断する。
 また2001年調査で、よほど懲りたのか、小売り、外食、サービス業は上位10社に限定して評価しており、それより下位のランキングは公表していない。
 また、これとは別に「消費者が選ぶ総合ベストチェーンランキング」50社を公表している。
 しかし、2001年の起業家情報センターの持ち込み原稿に比較すれば、格段の進歩である。

(3) 週刊ダイヤモンド(2001年5月26日号)

① 総合ランキング表の作成方法

 2001年とは、フランチャイズの本部評価が特に大きく話題になった年であったようである。週刊ダイヤモンド誌も「本邦初、本部・消費者・加盟店評価によるフランチャイズ・総合ランキング」として、業態別区分をしないで、フランチャイズ100社の総合ランキングを試みている。ランキング表作成方法についてダイヤモンド誌から引用する。
 「総合ランキング表は100フランチャイズチェーンを対象に【本部評価】(40点満点)、【消費者評価】(30点満点)、【加盟店評価】(30点満点)の総合計(100点満点)の高い順に並べたものである。
【本部評点】は40点満点とし、「本部基盤」と「FC体制」の2つに分類している。「本部基盤」は本部の財務面を中心として継続的な加盟店支援を行っていくための基盤が整っているかを評価しており、「FC体制」は、受けられるサービスの充実度を評価している。
「本部基盤」の内訳は(a)本部収益力(8点)、(b)本部安全力(8点)の合計24点満点となっており、それぞれの項目は以下の指標を採用している。

(a) 本部収益力
 本部売上営業利益率(%)
 本部1人当たり当期利益額(万円)
(b) 本部商品収益性
 本部商品回転率(回/年)
 本部売上高総利益率(%)
(c) 本部安全力
 自己資本比率(%)
 インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

 「FC体制」の内訳は店舗力(8点)SV体制(8点)の合計16点満点となっており、それぞれの項目は以下の経営指標を採用している。

(d) 店舗力
 加盟店1店舗当たり売上高(万円/年)
 直営店1店舗当たり売上高(万円/年)
(e) SV体制
 SVの加盟店訪問回数(回/年)
 SV1人当たりの担当店舗数(店舗/人)

 【消費者評点】は30点満点とし消費者の満足度を評価したものである。第1次アンケートで消費者が消費行動を起す基準を調査し,FCというカテゴリーではなく、どのような状況であれば購買に移るのかを、広い範囲で行った。第2次アンケートでは、第1次アンケートの集計結果をもとに、それぞれの業種に対する回答の中で、競合する本部と比較可能である項目をピックアップした。「商品数が多い」「価格が安い」など抽出された項目ごとに、利用経験のある消費者が基準表をもとに10点満点で採点。最終的に合計値が30点満点になるよう計算した。

【加盟店評点】は30点を満点とし、加盟店が本部から受けているサービスに対する満足度を指標化した(1本部で最低5店舗調査)。加盟店に対する聞き取り調査を基にした結果を12項目に分類している。項目は「加盟店業績」「本部説明」「本部方針」「SVのレベル」「利益の確保」「ロイヤルティ」「予測と実現」「仕入れシステムの管理」「宣伝広告」「顧客信頼度」「市況」「技術的信用度」となっている。

② フランチャイズ100社総合ランキング(1位~20位)
順位
チェーン名
総合評点(100点)
本部評点(40点)
消費者評点(30点)
加盟店評点(30点)
1
セブンーイレブン
81.9
34.0
23.2
24.7
2
吉野家
79.3
35.5
22.4
21.4
3
ドトールコーヒーショップ
77.3
32.5
22.0
22.8
4
サンマルクレストランチェーン
74.9
35.0
19.9
20.0
5
モスバーガー
74.8
29.0
22.0
23.8
6
ファミリーマート
73.8
29.0
22.2
22.6
7
ユニバーサルホーム
73.1
34.0
19.2
19.9
8
サークルK
73.0
30.5
20.9
21.6
9
会津喜多方ラーメン坂内「小法師」
71.9
28.5
19.7
23.7
10
餃子の王将
71.2
32.0
20.2
19.0
11
ミニストップ
69.2
27.5
21.1
20.6
12
サンクス
68.7
26.5
20.9
21.3
13
ワークマン
68.2
26.5
19.3
22.4
14
マインマート
67.8
26.0
19.1
22.7
15
靴下屋
66.8
21.5
19.2
26.1
16
シャトレーゼ工場直売店
66.6
25.0
21.6
20.0
17
焼肉屋さかい
66.1
26.0
19.0
21.1
18
BOOK OFF
65.0
21.3
21.4
22.3
19
スペースクリエイト自遊空間
64.9
24.5
19.6
20.8
20
ハウスオブローゼ
64.1
21.5
21.1
21.5
③ フランチャイズ総合100社ランキングの評価について

 2001年5月26日号の週刊ダイヤモンド誌の評価方法は、すべての雑誌の評価の中では一番優れている。
 単に財務諸表の分析(本部評価)に終わらず、アンケート調査により「FC体制」(店舗力、SV体制)を評価している点は、十分評価に値する。
 更に、「消費者評点」として、アンケート調査により消費者満足度を調査している点も見逃せない。消費者評点の具体的手段が理解できないが、とに角本部評価にお客様視点を導入した部分は高く評価したい。
 また、「加盟店評価」を加えた点も高く評価できる。単に財務力に勝るだけで優れた本部とは言えない。少なくとも加盟者から高い信頼を築かねば、優れたFC本部とは言えない。
 但し、選定された100本部の中には上場していない本部も多数含まれている。非上場のFC本部の会計数値は、必ずしも正確ではない。加盟希望者が、この調査を読んで、加盟意思決定することを考える場合、会計数値の正確性は絶対必要である。その意味では2010年版のダイヤモンド誌の上場企業に限定した態度は正しい。
 これからも、FC本部評価が続くことを期待したいが、各誌(日経ビジネス2冊、ダイヤモンド2冊)は、筆者の意見を参考にして一層信頼できる「本部評価」を続けてもらいたい。

Ⅲ 「フランチャイズの悲鳴」について

 ダイヤモンド誌(10年9月11日号)はあくまで、「フランチャイズの悲鳴」が本論であり、当然プロローグの「低成長でいよいよ始まった加盟店争奪の“仁義なき戦い”と、パート1の「コンビニ業界で広がる本部と加盟店の対立構造」についても触れる必要があることは言うまでもない。
 しかし、現在両者(FC本部と加盟店、もしくはエリアフランチャイザー)の意見を調査する時間が無いので後日の宿題としたい。

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