フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

エリア・フランチャイズ制度に関する現代的考察

 中小企業診断士東京支部フランチャイズ研究会(西野公晴会長)は、2010年、2011年と連続して「エリア・フランチャイズ制度」について、フランチャイズ本部、及びエリア・フランチャイザーに対してアンケート調査を行い、研究報告書2冊を刊行しています。  現在、エリア・フランチャイズ制度は大きく揺れています。今回は、エリア・フランチャイズ制度の成立、歴史、将来展望、並びに現在の最大課題に対する考察を行いました。

1. エリア・フランチャイズの定義

 エリア・フランチャイズ契約については、(社)日本フランチャイズチェーン協会が編集したフランチャイズハンドブックに詳しく定義されています。(商業界刊)

(1)エリア・フランチャイズ契約

 フランチャイザーが、特定の地域(エリア)で開発力を有すると見込まれる者に対し、そのエリア内でフランチャイジーを募集する権利を与えることを主たる内容とする契約のことである。フランチャイザーとこの契約を締結した者は、フランチャイザーに代わり、そのエリア内で末端のフランチャイジーの募集を行い、自らフランチャイズ契約を締結するなどして、そのエリアの開発を担当することになる。このエリアの範囲に制限はないが、一般に国内の一定地域程度をエリアとして指定する場合が多い。(03年版定義)

(2)サブ・フランチャイズ

 フランチャイザーが、他の事業者であるサブ・フランチャイザーとの間に契約を結び、サブ・フランチャイザーに対し、一定の地域についてフランチャイズ契約のフランチャイズ契約の締結または締結のための交渉を行う権利を与え、サブ・フランチャイザーはその見返りとして一定の対価をフランチャイザーに支払って事業を行う両者の継続的関係をいう。 サブ・フランチャイズ契約において、サブ・フランチャイザーがフランチャイズ契約を締結または交渉を行うことができる権利に加えて、フランチャイジーに対する指導、サービスの提供、フランチャイズ・フィーの徴収などフランチャイザーがフランチャイジーに行うべき事項の全部または一部を行う権利が与えられる場合が多い。エリア・フランチャイズとも呼ばれる。(82年版定義)  サブ・フランチャイズとエリア・フランチャイズは同意義である旨の文言がサブ・フランチャイズの定義の中の中に述べられています。今回の調査でもエリア・フランチャイズ契約の内容は、加盟店開発と経営指導が必ず含まれていますので、定義としては、エリア・フランチャイズとは(2)のサブ・フランチャイズの意味で用います。  なお、エリア・フランチャイズとはやや異なる言葉としてマスター・フランチャイズ契約がフランチャイズハンドブックに掲載されておりますので、これも参考のために記載しておきます。

(3)マスター・フランチャイズ契約

 フランチャイザーが、特定の地域において開発力を有する者に対し、フランチャイザーに代わって、その地域内でフランチャイジーを募集する権利を与えることを主たる内容とする契約のことである。フランチャイザーとこの契約を結んだ者は、マスター・フランチャイジーやエリア・ディベロッパーなどと呼称され、それらの者との間でさらにフランチャイズ契約を締結した者が、末端のフランチャイジーとなる。この契約の対象となる地域の範囲に限定はないが、フランチャイズ事業を国際的に展開しようと際に締結される場合は、通常国家ないしそれに準じた地域(あるいは複数の国家にまたがるような広大な地域のこともある)が対象になる。(82年版定義)

2. エリア・フランチャイズが重視される理由

 エリア・フランチャイズが導入された経緯・目的については報告書の第3章で研究事例を挙げて詳しく述べますが、今回のアンケート(13社回答)では、次のような回答がありました。

(1) アンケートから見たエリア・フランチャイズ制度導入の理由(複数回答)

1位 離れた場所は、そのエリアに詳しい法人に任せた方が効率的 10件 76.9%
2位 全国をエリアに分割することにより、店舗展開のスピードが速くなる 8件 61.5%
3位 全国をFC本部1社で見ることは効率的ではない 2件 15.4%
4位 全国をFC本部1社で見ることは経済的に難しかった 1件 7.7%

(2) エリア・フランチャイズが重視される理由

 この理由から判断されることは、狭い日本にも関らず、九州、四国、北海道など本州以外の土地については、エリア本部に任せた方が効率的であり、かつ店舗展開も速くなるとの思惑が見られます。

 エリア・フランチャイズは米国から学んだ手法と思われますが、13社の回答を見ますと、必ずしもアメリカの模倣のみではなく、日本独自の理由があるケースも見られます。

3. エリア・フランチャイズの歴史

 日本でエリア・フランチャイズが導入される基盤は、フランチャイズが本格的に日本に導入された1970年に遡ります。それは、その時期アメリカ若しくはイギリスのフランチャイズ本部と、日本の企業が資本提携をして日本全土をエリアとするマスター・フランチャイズ契約を締結するのが一般的であったからであります。例えば、ミスタードーナツはダスキンと、ケンタッキー・フライド・チキンは三菱商事と、マクドナルドは藤田田商店と第一パンが、夫々マスター・フランチャイズ契約を締結しました。この外食産業のフランチャイズ化が、外資とマスター・フランチャイズ契約を結んだことが、後の日本国内でエリア・フランチャイズ導入の糸口になったと考えられます。

 わが国においてエリア・フランチャイズが導入された歴史は必ずしも明らかではありません。金井高志弁護士の「フランチャイズ契約裁判例の理論分析」(2005年判例タイムズ社刊)によれば、「小僧寿し事件Ⅲ」最高裁判決(平成9年3月11日)の中で、次のように判決しています。 「株式会社サニーフーズYは、昭和47年5月に設立され、持ち帰り方式によるすしの製造販売という業態を確立しフランチャイズ・システムによって持ち帰り品としてのすしの製造販売を行いフランチャイザーとして加盟店(フランチャイジー)に対し持ち帰り寿しの製造販売方法、経営指導のノウハウを与え、継続的指導を行うと共に持ち帰り寿しの材料の供給を行うなどしている訴外株式会社小僧寿し本部(Yのフランチィザー)との間でフランチャイズ契約を締結し、そのフランチャイジーとなると共に、自らも四国地域におけるフランチャイザー(地区本部・サブ・フランチャイザー)として加盟店との間でフランチャイズ契約を締結していた。(以下略)」(本案件は「商標権」に関する争いである)

 金井氏は、この最高裁判決は、最高裁が「フランチャイズ契約により結合した企業グループは共通の目的の下に一体として経済活動を行うものである」と判示し、エリア・フランチャイズ(サブ・フランチャイズ)を含むフランチャイズ・システムを認知したものとして意義がある」と述べています。(同誌348P)

 また同じ判決文の中に「遅くとも昭和53年には、本件商品の製造販売業者として著名となっており」とあるので、エリア・フランチャイズは遅くとも昭和53年(1978年)までには日本で確立していたことが分かります。金井氏は同著の中で「ただ、サブ・フランチャイズの法律的な研究はまだ十分にはなされていない」(同著353P)と述べておりますが、日本のフランチャイズの歴史の中でエリア・フランチャイズが最高裁判決に出たことは記憶に止める価値があると思います。

 また、ほっかほっか亭総本部が1979年12月(昭和54年)に地区本部制を導入したことは、飲食店経営09年2月号の「黒川孝雄のFC鋭断」に掲載された表―1「ほっかほっか亭の沿革」で明らかにされています。 『79年から各地に地区本部を設立していった。この地区本部制度は、フランチャイズではエリア・ランチャイズ制度と呼ばれるものである。地区本部制度の導入によって、店舗の展開スピードは急速になった。田淵氏(創業者)はフランチャイズ化とは「チェーンストア化」であると考え、チェーンストアの大先輩であるダイエーとの提携を84年4月に選択した。85年には東部、関西、九州の3地域本部制を導入した。東部はダイエー傘下の「ほっかほっか亭」、関西は青木達也氏(現ほっかほっか亭総本部社長)が率いる「ほっかほっか亭大阪事業部(現ハークスレイ)、九州・山口地区は「ほっかほっか亭九州事業部(現プレナス)が布陣して、この地域内に地区本部を置く体制となった。
ほっかほっか亭は3地域本部制の再編により、89年には2000店舗を超え、増加を続けた。特にダイエー(東部地域本部)に刺激を受けて、関西・九州が伸びた。ほっかほっか亭は2003年12月期には全国3500店舗を達成し、持ち帰り弁当店としては日本一の座を確立した』(飲食店経営09年2月号「黒川孝雄のFC鋭断」より引用)

 日本の外食でエリア・フランチャイズを導入したのが、既に1千店以上に店舗を増加させていた小僧寿し本部、ほっかほっか亭総本部等でありましたことは、当時まだコンピューターの導入が進んでいなかった外食事業としては、エリア・フランチャイズを導入せざるを得ない事情があったと筆者は理解しております。
 次に、エリア・フランチャイズに言及した文献としては月刊コンビニ06年4月号に川辺信雄氏が「コンビニ全史連載6回」の中で、アメリカにおけるコンビニエンスストア(以下CVSと略記)のエリア・ライセンスについて述べた部分があり、以下引用致します。

 「フランチャイズ・システムもさらに進化を遂げた。それはエリア・ライセンス(エリア・フランチャイズ)方式と呼ばれるものである。(中略)サウスランド社は68年(昭和41年)に、ミシガン州サギノウのガーブコ社に、ミシガン州北部及び中部の特定地域にセブンーイレブン店を建設し、営業するために最初のエリア・ライセンスを与えた」
 同じく、月刊コンビニ08年3月号で川辺信雄氏はコンビニ全史連載33回で、日本のCVSのエリア・フランチャイズについて述べています。以下引用致します。  「セブンーイレブンに対抗するため、サンチェーンと合併して統合に忙しかったローソンを除き、他の大手チェーンはエリアFC(フランチャイズチェーン)制度を早くから導入した」として、次の図表を添付しております。やや冗長になりますが、貴重な資料でありますので、一部を掲載致します。

 図表3-1 エリア・フランチャイズの展開状況(98P)

本部チェーン

エリアFC企業名

設立・契約年月

ファミリーマート

株)中部ファミリーマート

株)沖縄ファミリーマート

全家便利商店有限公司

株)松早ファミリーマート

株)アイ・ファミリーマート

 85年 4月

 87年10月

 88年 8月

 89年 3月

 89年 4月

サークルK

サークルケイ・ノースジャパン

サークルケイ・ウエストジャパン

 86年

  87年 4月

サンクス

サンクス西埼玉(株)

サンクス東埼玉(株)

栄興サンクス(株)

サンクス茨城(株)

サンクス東海(株)

サンクス京阪奈(株)

サンクス兵庫(株)

87年 4月

88年 6月

88年 6月

89年 1月

89年 9月

89年10月

89年11月

サンショップヤマザキ

たけたYDS

83年11月

(これ以外にセイコーマート、ニコマート、タイムズマート等が記載されています)

 日本におけるエリア・フランチャイズの文献は皆無の状態でありますが、唯一「サブ・フランチャイズシステム」本橋一秀著(東京経済、昭和52年4月刊)があります。本著は副題として「ナショナルチェーン化への道」とされております。著者の本橋一秀氏は、(株)鮒忠専務取締役であり、かつ(社)日本フランチャイズチェーン協会の副会長でもありました。この文献を詳細に読み込みましたが、例えば実例、社名等は一切なく、サブ・フランチャイズシステムの作り方等を書いたものであり、残念ながら参考になる文献ではありませんでした。
しかし、昭和52年に、この文献が出版されたということは、日本でもフランチャイズのナショナルチェーン化を目指す一つの方法として、サブ・フランチャイズシステムが業界の要職者より提案されたものと理解できます。従って、日本のエリア・フランチャイズは、必ずしも自然発生的に生まれたものではなく、このような指針を参考にして、各社が自社の実情に合わせて、生み出したものでありましょう。  以上の歴史から、やや大雑把でありますが、外食のエリア・フランチャイズは75年頃(昭和50年)にスタートし、CVSはそれより10年遅れて85年頃(昭和60年)にスタートしたと判断して大差ないと思います。  しかし、エリア・フランチャイズが大幅に取り入れられ、会社設立の早い段階からスタートするようになったのは、2000年以降であり、それは後に詳述致します。

4. エリア・フランチャイズが広範囲に広がった時代

 エリア・フランチャイズは,前記の通り、外食業では1975年頃(昭和50年頃)、コンビニでは1985年頃(昭和60年頃)からスタートしました。  CVSでは、セブンーイレブン、ローソンを除く各社がエリア・フランチャイズを導入したことは上記の歴史の中で詳しくふれました。  今回、エリア・フランチャイズを調査するため、実施しているフランチャイズ企業名を調査したところ、大部分が2000年代(21世紀)にはいってから、事業を開始した若い企業(部門)に多いことに気付きました。  事実、アンケート調査でも、エリア・フランチャイズ制度導入の時期は次のような結果になっています。

質問
件数
構成比
フランチャイズ展開と同時に始めた 3件 23.1%
フランチャイズ展開より遅れて始めた 10件 76.9%

 これは、フランチャイズを始めたが、遠隔地は到底自社の力で拡張できないので、地方の有力者にエリア・フランチャイザーになってもらい急速展開を図ろうとした考えたものと理解できます。21世紀に入って、日本のフランチャイズ・ビジネスの伸びが停滞し、思うように加盟店開発が進まなかったことが背景にあったと思います。  今一つ、大型フランチャイズが減少し、比較的小資本で事業を始めたことも背景として指摘できると思います。

5. エリア・フランチャイズ制により本当に店舗展開のスピードは上がったか

 ニッセイ基礎研究所・経済調査レポート(2007-05)小本恵照氏の「マルチユニット・フランチャイジーの成長と課題」という論文から、適宜引用してエリア・フランチャイズ導入の効果測定を行ってみます。  まず、エリア・フランチャイジーの店舗数動向を調べてみます。  「コンビニ業界では、1980年代から中堅チェーンが大手チェーンを追い上げる目的でエリア・フランチャイズが利用されてきた」「エリアフランチャイジーの経営状況は店舗数の変動によって測定することができる。2000年度から2006年度までの店舗数が把握できるエリアフランチャイジーについて店舗数の変化率を見たものが、下記図表である。店舗の増減率は2000~20006年度および2003~2006年度の2期間について計算した」

 図表5-1  エリアフランチャイジーの店舗数の増減状況

企業名

店名

設立年

店舗数

増減率(%)

00~06

03~06

南九州サンクス サンクス

1998年

    92

268.0

70.4

サークルK四国 サークルK

1996年

   159

178.9

45.9

サンクスアンド富山

サンクス

1996年

    82

86.4

26.2

シー・ヴイ・エス・ベイエリア

サンクス

1989年

   132

73.7

15.8

サンクス青森

サンクス

1994年

    70

62.8

9.4

サンクス東四国

サンクス

1994年

   135

53.4

 7.1

サンクス・ホクリク

サンクス

1994年

    90

52.5

 12.5

サンクス・東海

サンクス

1989年

    99

41.4

 13.8

沖縄ファミリーマート

ファミリーマート

1987年

   194

26.0

20.5

サンクス京阪奈

サンクス

1989年

   113

22.8

 0.0

サンクス西四国

サンクス

1992年

    88

18.9

 -4.3

南九州ファミリーマート

ファミリーマート

1993年

   266

18.2

-0.7

サンクス東埼玉

サンクス

1988年

    66

-8.3

 -18.5

サンクス西埼玉

サンクス

1987年

    75

-112.8

0.0

エーエム・ピーエム関西

am/pm

1995年

   155

-16.7

-21.3

参考・セブンーイレブン

 

1973年

11,735

35.5

13.9

参考・ローソン

 

1975年

 8,564

11.5

9.5

「2000~2006年度については、一部のチェーンを除き高い伸び率を示している。セブンーイレブンおよびローソンの伸びを上回っているチェーンが半数以上を示している。2003~2006年度については、伸びが低下するチェーンが増加し、セブンーイレブンおよびローソンの伸びを下回るチェーンも増加している。コンビニ業界が成熟化する中で、エリアフランチャイジーの経営環境が厳しさを増していることを示している。特に、設立から年数が経過している企業で成長の鈍化や衰退が見られる」
 次に、フランチャイザーにとってのエリア・フランチャイズ制の効果を調べてみます。同じく小本氏の論文から引用致します。  「フランチャイザーによってエリアフランチャイズは、出店のスピードアップを図るという理由があった。この目的が達成されたかどうかを、エリアフランチャイズを利用しているチェーンと利用していないチェーンを比較することによって確認した。比較の期間は、本格的にエリアフランチャイズの利用が始まった1987年度から2006年度までとした。」

図表  フランチャイザーの店舗数の変化

チェーン名

1987年度

2006年度

変化率

全店舗数

全店舗数

うち、エリアFC店舗数

エリアFC比率(%)

セブンーイレブン

3,304 11,735 0 0.0 3.6

ローソン

2,710 8,564 0 0.0 3.2
ファミリーマート 1,250 6,974 473 6.8 5.6
サンクス 314 3,278 1,073 32.7 10.4
サークルK 495 3,057 159 5.2 6.2
ミニストップ 204 1,842 153 8.3 9.0
(サークルKサンクスは2006年時点で合併しているが、あえて別ブランドとして計算)

 「これによると、最も積極的にエリアフランチャイズを展開したサンクスの店舗の増加率は他のチェーンに比べて高い。エリアフランチャイズの利用による高成長の実現という目標はほぼ達成されていると考えられる。しかし、問題がないわけではない。2006年の栄興サンクスの北海道からの撤退、足元における埼玉や四国における店舗数の減少など,近年では業績不振のエリアフランチャイズが散見される」
 「これは、エリアフランチャイズの導入によって急速な事業拡大は比較的容易に実現できるものの、エリアフランチャイジーの経営を長期間にわたって健全なものに保つためには、かなりの努力を必要とすることを意味していると考えられる」
 「エリアフランチャイズを利用して成長を実現するためには、フランチャイザーは、自分自身の能力を見極め、エリアフランチャイズのメリットとデメリットを十分認識した上でその活用を図ることが重要だと考えられる」

6. エリア・フランチャイズ制度を利用する会社数の推定

(1)エリア・フランチャイズ制を利用する会社数

 我々は、調査開始に当たり、各種検索エンジン等を利用してエリア・フランチャイズを導入していると思われる会社数を調査してみました。
具体的には、エリア・フランチャイズ、サブ・フランチャイズ、地区本部、地域本部等エリア・フランチャイズを想記させる言葉を検索エンジンに入れて調査をしてみました。その結果は次の通りであります。

図表  エリアFCを導入しているフランチャイズ本部数

CVS

小売業

外食業

サービス業

合計

6

6

41

18

71(社)

 これをベースにして約200社にアンケートを送り、結果としてエリアFCを実施しているとして回答のあった会社数は13社でありました。  回答数は少なかったが、当初推定したエリアFCを導入している会社数の71社は、かなり大きい数であると考えています。

(2)エリア・フランチャイザーの会社数の推定

 アンケートに対する回答を見れば、次の通りであります。

図表  エリア・フランチャイザーの会社数

NO

エリアの数

 件数

全体%

(除不)%

 1

1~9

7

53.8

  63.6

 2

10~19

      3

23.1

  27.3

 3

20~29

     0

 0.0

   0.0

 4

30~39

     0

 0.0

   0.0

 5

40~49

     0

 0.0

   0.0

 6

50以上

     1

 7.7

   9.1

 

不明

     2

 15.4

 
 

サンプル数

    13

100.0

   11.0

仮に1~9を5社、10~19を15社、50以上を70社とします。全体のエリア・フランチャイザーの会社数は150社となります。これは回答のあった11社のエリア・フランチャイザーの仮定数です。
 既に、全国で71社のエリア・フランチャイズ制度を採用していると計算しましたので、 11社で150社のエリア・フランチャイザーがあるとするならば、1社平均14社となります。これを71社に乗ずると、全国の推定エリア・フランチャイザーは994社(約1千社)となります。

7. エリア・フランチャイズの将来展望

 エリア・フランチャイズは小売業、CVS、外食業、サービス業で幅広く採用されていることが分かりました。

 エリア・フランチャイズは小売業、CVS、外食業、サービス業で幅広く採用されていることが分かりました。  牛角を展開するレインズ・インターナシナル社長の西山知義氏に1999年に面談し、「何故、これだけ利益の出るフォーマットを作りながら、自社がフランチャイジー展開するエリアを1都3県に限定し、他のエリアをエリア・フランチャイザーに任せたのか」と質問したことがあります。
西山社長は、「残念ながら創業間もない時期で、全国展開を自社で行うだけの資金力が無かった」と答えらたことがありました。しかし、その後「しゃぶしゃぶ温野菜」「土間土間」等すべての業態をエリア・フランチャイズ化しているのは、単なる資金力の問題ではなく、むしろ有力なエリア・フランチャイザーを各地域に育成し、そのエリア・フランチャイザーに新しい業態を担わせた方が効率的であったのだと思います。

 日本のフランチャイズ・ビジネスは09年度統計で明らかになった通り、CVS、外食、サービス業は不振の時代が続くと思われます。このような時代に1社で全国展開を図るよりも、地域の有力なエリア・フランチャイザーを見つけ出して、彼らに各エリアの経営を任せ、本部は精々1都3県程度を直轄エリアとして、他の地域はエリア・フランチャイザーに任せる経営戦略を採用する方が、効率的で効果的な結果が出るかも知れません。
 しかし、ニッセイ基礎研究所の小本氏が指摘された通り、フランチャイザーの能力やフランチャイズ・パッケージの優劣により、エリア・フランチャイズ制度が大きく揺れることが起こります。 むしろエリア・フランチャイズ展開は一つの経営手法であり、これが他の経営手法に必ずしも勝るものではないことを肝に銘じる必要があると思います。

 本橋氏がナショナルチェーン化への道として「サブ・フランチャイズシステム」を執筆されてから30年が経過しました。現在、率直に考えて「サブ・フランチャイズシステム」が「ナシヨナルチェーン化への道」と考える人はごく少数だと思います。
むしろ、フランチャイズ・パッケージのブラッシュアップ(磨き上げ)こそが、成功への至近距離ではないでしょうか。

8. エリア・フランチャイズ制度の不安定化と対策

 最近、エリア・フランチャイズ制度を見ますと、制度の不安定化を指摘せざるを得ない現象が見られます。  例えば、日本一の店舗数を誇った弁当チェーンのほっかほっか亭から、九州・山口・東京地区の地域本部の地位を占めた(株)プレナスが脱退し、新しいブランドで直営店・加盟店を転換したことは記憶に新しい事例であり、現在本件は東京高裁で裁判中であります。
 また、2010年5月にサークルKサンクスとエリア・フランチャイザーであるシー・ヴィ・エス・ベイエリア(以下ベイエリア)が対立していることが明らかになりました。東京と千葉県に約130店を展開しているベイエリアが一昨年2月、2012年の契約満了前にチェーンを離脱し、他チェーン加盟も含めて検討するとの意向を伝えたのが発端でありました。ベイエリアは「営業利益が減る中でサークルKサンクスの商品力やサービスに問題があった」としています。(日経新聞10年6月28日)
 対立が深まったのが昨年4月、ベイエリアの運営する千葉県市川市のビジネスホテルの1階にローソンが開業したことであります。これに対しサークルKサンクスは「店舗を他チェーンに賃貸する行為は契約に基づく義務違反」としてベイエリアに回答を求めましたが、ベイエリアからは「期限を経過しても回答はなかった」とのことです。サークルKサンクスは
➀ ベイエリアの中途解約の不存在の確認
➁(店舗の他チェーンへの賃貸という)義務違反行為の差止めを求めて10年5月20日付けで東京地裁への提訴に踏み切ったのであります。(日経MJ10年6月28日)
 また、富山県でコンビニの「サンクス」を展開するサンクスアンドアソシエイツ富山(以下サンクス富山)は、ローソンにコンビニ事業を譲渡すると発表しました。サークルKサンクスのエリア・フランチャイイズ契約は11年7月1日の契約期間満了とともに打ち切る方針であります。サークルKサンクスは「まったく説明がなく唐突である」として反発しています。サンクス富山は、なのはな農業協同組合の子会社で、19%の出資するサークルKサンクスからノウハウの提供を受けるエリア・フランチャイザーであり、富山県内で77店のサンクスを運営しています。
 サークルKサンクスと契約更改に向けた交渉を進めてきましたが、「加盟店支援策について具体的な提言が得られなかった」として契約を更新せず、ローソンに事業譲渡することを決議したものであります。(日経MJ10年10月4日)

 このようなエリア・ランチャイズ契約の不安定化の事例を参考にして、以下のように本部とエリア・フランチャイザーの関係について提言を致します。

(1)エリア・フランチャイズ契約の長期化

 エリア・フランチャイズ契約の更新後の期間は3年~5年が最多を占めています。エリア・フランチャイズ契約は、できれば長期契約(最初の契約は7~10年程度、更新後の契約は5~7年程度)が望ましいと考えます。  本部とエリア・フランチヤイザーの契約は長期安定型が望ましいものと考えます。

(2)エリア・フランチャイズ契約の見直し

 本部とエリア・フランチャイザーの契約は、しばしば加盟店契約の延長線上で考えられていますが、単なるフランチャイズ契約とエリア・フランチャイズ契約は、根本的に違います。本部とエリア・フランチャイザーの関係は「共同事業性」が強く、最近の判例でもエリア・フランチャイザーの意向が強まるような判断が見えます。
 エリア・フランチャイズ契約の内容は、現代に適した契約に見直す必要があります。この場合、エリア・フランチャイザーの合意が必要であることは、言うまでもないことです。
 「改訂版フランチャイズ契約の法律相談」の共同著者である奈良輝久氏の解説によれば、「サブ・フランチャイズ契約の契約内容を、きちんと考えるべき時期に来ていると思われる」という指摘は、時宜を得た提案と思われます。

(3) エリア・フランチャイズ契約の更改に当たり留意すべき事項

 エリア・フランチャイズ契約の更新拒絶・中途解約権の行使を選択した場合は、本部が優先的に事業買取り権を有することを契約に入れるべきであります。しかし、価格については「適正価格」とし、エリア・フランチャイザーの意向を十分にくみ取る必要があることは、言うまでもありません。
 この方法については、ファミリーマートが過去に多数のエリア・フランチィザー(中部ファミリーマート、松早ファミリーマート等)を買い取ってきた事例がありますので、参考になると思います。  また、契約終了後の競業避止義務および同義務違反に対しては、高額なペナルティ条項(勿論、公序良俗に反しない範囲)を事前に用意しておく必要があります。

(4)普段の留意事項

 エリア・フランチャイザーと単なるフランチャイジーとの関係は、非常に大きな差があります。万一、エリア・フランチャイザーが本部から離脱した場合、一定のエリアの店舗をすべて失うことになり、この不況の時代にエリア全体を失い、カバーしきれ無い損失が発生することが考えられます。
 本来、契約内容を考える前に、日常的に本部とエリア・フランチャイザーとの良好な関係を創り上げ、エリア・フランチャイザーに対して信頼関係を構築することが、本部の最大の仕事であります。
 例えば、本部が毎月エリア・フランチャイザーの責任者を集め研修会の開催、エリア・フランチャイザーの苦情を聞き取り解決に向けての努力、エリア・フランチャイザーの営業本部長、又はスーパーバイザーの責任者を集めての事例研究、外部講師の講演会の開催等を行い、一方、エリア・フランチャイザーもこれら会議に積極的に参加して情報の共有化を図る等、日常的活動が有効であります。
 また、本部はエリア・フランチャイザーによる加盟店舗数の増加のみではなく、常にフランチャイズ・パッケージのブラッシュアップに努力し、エリア・フランチャイザーから信頼される存在になることが、最大の対策であります。


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