フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

「フランチャイズ契約の実務と書式」を紹介する

 この度、神田孝弁護士の手により「フランチャイズ契約の実務と書式」(以下「実務と書式」)が刊行された。神田氏は1963年生まれで48歳、早稲田大学を卒業後、弁護士となり大阪弁護士会に所属し、チェーンビジネスの法務を専門とし、多くのフランチャイズ・チェーン、ボランタリーチェーン等の顧問弁護士を務め、「訴訟に負けないチェーンビジネス」(商業界)等の著作があり、チェーンビジネスの第一線で働く現役弁護士である。
 筆者との接点は、(社)日本フランチャイズチェーン協会が開催した「フランチャイズ独立・開業&事業多角化セミナー」に参加されて、お目に掛った時である。その後「中小企業診断士フランチャイズ研究会」の特別会員となり、熱心な会員として、研究会員の法律面の指導者として遺憾なく指導力を発揮され、筆者もフランチャイズの法律面でご指導いただいた関係である。
 本書の大きな特徴は、フランチャイズの実務に詳しく、フランチャイズ本部の実務担当者等との真摯な対談や、研究会の実証的研究の多くを本書に再現していることである。
 本書の中心となる、第2章はQ&Aの形を取っているが、その原点は、研究会が出版した「新FCトラブル回避ガイドブック」であると考えている。  本書は、立法論や概念論を割愛し、わが国のフランチャイズ実務の運用と判例を徹底的に紹介するものである。
 本書は、フランチャイズ本部に働く法務関係者、経営層、弁護士、フランチャイズ法務を勉強するすべての人、フランチャイジーに参考になる。
 思い切った発言もあるが、型破りな実務書として多くの方に推奨できる内容である。
 但し、簡単に読める本ではない。相当の覚悟をしないと読み通せる本ではない。筆者は、この「紹介文」を書くために数回通読した。読むたびに難解であると思った。しかし、実に良くまとまっている。実務担当者には、これ以上の参考書はないであろう。
 本書は、西口元他著「改訂版フランチャイズ契約の法律相談」(青林書院)とQ&Aという書き方で似ている。しかし、いろんな面で差も大きい。  本書を読まれる方は、「法律相談」も併せて読まれることをお勧めする。「法律相談」が、フランチャイズの知識を(社)日本フランチャイズチェーンの出版物に依存しているのに対し、本書は、すべて実務者の体験が基礎になっている。勿論、協会の「ハンドブック」等は多用されているが、大切な部分は実務者の体験論である。極めて現場的な著作である。

Ⅰ 本書の概要の解説

第1章 総論

 この章は、「フランチャイズハンドブック」の引用が多く、ある意味では常識論に依っている。しかし、特徴的な面は、公取委の「フランチャイズ・ガイドライン」の引用が多く、全体的に独占禁止法を強く意識した本である。  フランチャイズ契約に関連する法律として

等を挙げているが、これは類書とほぼ同じである。

第2章 加盟契約交渉から契約終了までのQ&A

第1節 フランチャイズ契約の基本概念

 

Q&Aの数は82問であり、「法律相談」の48問と比較しても、約2倍である。Q&Aが多いということは特別優れている訳ではないが、詳細に亘って述べていることが、質問数の多さからも推定できる。
 「ノウハウの提供」では、「マニュアル」を重視する傾向があるが、本書では「図面、フォーマット、書類、ビデオ、CD、DVD、などの媒体で提供されるもの、開業前研修のプログラム化されたもの」という広い概念を用いており、現場的である。その上で「こうしたノウハウを文書化、図面化したものがマニュアルである」と定義している。
 「自己責任の原則」の項では、「契約締結段階における自己責任の原則」と、「店舗運営段階における自己責任の原則」を判例引用して説明している。

第2節 加盟契約交渉から契約締結まで

 フランチャイズ実務に依拠している点を強調したが、協会が過去に発行した図書に対する目配りはやや不足している。例えば「加盟申込金についての明確な定義はない」としているが、フランチャイズ・ハンドブック(旧版)では、72頁に「8申込金に関する指針」に定義をしている。(但し、旧版は協会が発行者で、かつ協会でしか販売していなかったため、その存在を知らない人が多い。フランチャイズ研究会で、旧版を所有している人は2名のみであった)  その点「法律相談」は、協会が過去に発行した文書類には、幅広い目配りをしている。
 「加盟店開発担当者の説明方法」に対するQ&Aはあるが、最初の加盟希望者を集めての事業説明会のQ&Aがないのはさびしい。平成14年の経済産業省の調査によれば「加盟検討時の情報収集の方法」では、「本部説明会への出席」が45.7%を占め、第1位である。この事業説明会の内容(配布資料)が紛争の種になっている事例もある。
 情報提供義務については非常に参考になる。小振法やガイドラインで詳細な情報を提供することが法律上義務付けられている。神田氏は「フランチャイザーが積極的な開示義務を負うのは、原則として小振法列挙事項に限られる」と述べているが、これは小塚氏の「契約論」以外では珍しい見解である。その上で「信義則上の情報提供義務」について論じている。「過去の裁判例では、小振法が定めていない事項についても、フランチャイザーの加盟希望者に対する情報提供義務を定めている」として、「一般的な情報提供義務を認めたもの」4判例、「売上予測等についての消極的情報提供義務を認めたもの」4判例、「売上予測等についての積極的情報提供義務を認めたもの」4判例を上げている。
 神田氏は「当該立地や出店に関する個別具体的な事項についてフランチャイザーが負う情報提供義務は、原則として消極的情報提供義務にとどまるが、当該情報の重要性や具体性、提供の容易性、フランチャイザーと加盟希望者の知識及び経験の格差、当事者の交渉経緯などに照らして積極的な提供義務を負う場合もある」としている。
 以下、初期投資の概算額については、フランチャイザーは積極的に情報提供義務を負うとする。
 「立地診断、売上予測、予想収益を提供したならば、それが客観的・合理的根拠に基づく必要がある。(消極的情報提供義務)実際の加盟交渉では81.7%(平成20年3月経済産業省調査)のフランチャイザーが加盟希望者に対して売上予測を提示しているので、フランチャイズ訴訟の大部分は、この売上予測の客観性・合理性が主たる争点となっている。」
 神田氏は「フランチャイザーは個別具体的な売上予測を積極的に提供する義務を負わない」と結論付けている。その理由として「実際の売上げは経済環境・消費者動向の変化やフランチャイジーの運営方法によって大きく左右されるが、売上予測は契約交渉時のデータを基に将来の事象を予測するものなので、正確な予測には自ずと限界がある」「データの分析方法や予測手法も科学的に確立されているわけではない」と述べている。
 立地診断については「立地評価シート」例を具体的に開示している。また、売上予測については「開業提案書」として、立地調査結果と事業収支シュミレーションの具体例を示している。法律の類書には無いものである。
 「セールストーク」については、「通常の取引社会の駆け引きとして許容される範囲内と認められる」としているが、「過度なセールストーク慎むべきである」としている点は重要である。
 加盟金不返還特約は原則として有効であるが、加盟金が高額で対価性が著しく欠ける場合に、当該加盟金不返還特約が公序良俗に反するとして、その一部の返還が認められた判例がある。

第3節 開業準備

 

開業前研修に対して、フランチャイジーが搾取行為として争った事例があるが、「フランチャイザーとしては研修プログラムの立案、研修レポートの提出、テストの実施」などで研修の教育的効果を立証する必要があると提言している。

第4節 開業後の店舗(事業)の経営

 

契約締結後のフランチャイザーの情報提供義務の問題は、金井氏「理論分析」で明らかにされたが、契約に付随する義務として、フランチャイザーの情報提供義務はある。
 しかし、実際には、殆どの場合フランチャイザーの経営指導義務に集約されている。  フランチャイザーのノウハウ改良義務について、神田氏は「ノウハウの改良・開発はフランチャイザーの裁量に委ねられるものと考える」しているが、筆者は金井氏の説く通り「継続的にノウハウを改良・開発し、かつ改良・開発されたノウハウを積極的にフランチャイジーに対して開示交付して指導援助する義務がある」と踏み込んで解釈したい。近年、フランチャイザーとフランチャイジーとのあるべき関係が盛んに議論されるが、フランチャイザーがここまで自分の義務と考えれば、不信感はかなり減少すると思う。
 経営指導の方法としては、「フランチャイザーのスーパーバイザーによる臨店指導、リモート・カメラによる店内視察、システムや文書による各種情報の提供、開業後の定期研修の実施、オーナー会議の開催、フランチャイジー向けの機関紙の発行など」を挙げている。極めて現実的な経営指導方法である。
 判例としては「一応の合理的な経営指導をなせば、義務違反の責めを負わないものと解すべきである」としている。
 平成21年12月25日の東京高裁判決で「SVによる臨店、経営指導はFC契約の不可欠の要素」と断言したことについては、疑問を評している。確かにロイヤルティの額や業態によって様々な経営指導の方法はあると思うが、少なくとも売上高の3%以上のロイヤルティを徴する本部には臨店指導の義務はあるだろう。  フランチャイジーへの経営支援策として「フランチャイジーが経営不振に陥っても、それを救済する義務はない。しかし、フランチャイザーの中には、売上(収入保障)制度、家賃・水光費の補助、ロスの一部負担、ロイヤルティの一部減免、運営委託などを実施している企業もある」としている。
 次にフランチャイジーの競業禁止義務を定めた契約は多い。「その理由は第1に、フランチャイザーの営業秘密の保護、第2にフランチャイザーの商圏及び顧客の確保である。」としている。

第5節  契約の終了

 

契約期間満了による更新拒絶は有効かどうか争われることが多い。神田氏は「期間の定めがある場合、契約期間が満了すればフランチャイズ契約は消滅する。フランチャイズ契約に自動更新条項が定められている場合は契約期間が満了しても契約は更新される。なお、フランチャイザーが更新拒絶の意思表示をしても、フランチャイジーの投資回収の観点からフランチャイザーの更新拒絶を制限的に解するのが裁判所の趨勢である」と明快である。
 現実には多くのフランチャイズ契約には自動更新条項が付されている。「裁判所は、フランチャイザーの更新拒絶を公序良俗や信義則を理由に制限するようになり、やがて、当事者の公平の観点から、契約を継続し難いやむをえざる事由がないかぎり契約更新が原則であると判断するようになった」としている。
「現在では、フランチャイジーの投下資本の回収を第一としつつ、契約終了の合理性や契約継続による負担の程度などのフランチャイザー側の事情を総合考慮して判断している」と述べている。
 具体的には、九州地域本部が鹿児島地区本部との契約を更新拒絶した事案において(このフランチャイズ・チェーンでは総本部から九州全域のエリア・フランチャイズ権を付与された九州地域本部が、更に鹿児島地区のエリア・フランチャイズ権を鹿児島地区本部に付与してきた)、九州地域本部による更新拒絶が認められると、鹿児島地区本部が築き上げた基盤を九州地域本部が労せず獲得するという結果になりかねないとして、九州地域本部による更新拒絶は「信義則上許容されるものであると認めるに足りない」と判断された事例がある。
 約定解除事由として、フランチャイジーの債務不履行を理由とする場合が多い。しかし、例えば1カ月分のロイヤルティの支払いを怠っただけでは、他に信頼関係を破壊するような事情がなければ直ちに解除することは困難であるとしている。
「民法上、契約相手方に債務不履行があった場合、相当期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がなければ契約を解除できる。これを法定解除と言う。
約定解除とは、フランチャイズ契約書では、当事者の信用性を大きく損なう事由(破産申立、差押え、銀行取引停止など)やチェーンの根幹を害するような事由(営業秘密の漏えい、競業行為)を約定解約事由として列挙している例が多い。」と述べている。

第6節  コンビニエンス・ストアのフランチャイズ・システム

 コンビニ・フランチャイズ(以下このように略す)には様々な特色がある。同じフランチャイズ・システムではあるが、1章を設けて解説するのは本書の大きな特色であり、日本では初めての試みではないかと思う。
  コンビニ・フランチャイズの特徴として、神田氏は次の3点を挙げる。
➀利益分配制度、➁最低保証制度、➂オープンアカウント制度の3つである。
「コンビニの売上高は、わが国のフランチャイズ・チェーンの総売上高の39%を占め、その売り上げ規模、就労人口、店舗数、社会的役割のどれをとっても非常に大きい。」  「コンビニはスーパーマーケットと同じ小売業に分類されるが、その収益構造はまったく異なる。コンビニはスーパーと比較して売場面積が小さく、その商圏も非常に狭いので、「売れ筋商品」と「死に筋商品」を明確に区別し、商品点数を絞り込む必要がある。フランチャイジーには、分析と仮説に基づいた発注精度の向上と単品管理、売り切る努力が期待されている。」
 元々は、店舗運営と商品管理に専念できる個人加盟が適しているとされていたが、現在は法人加盟(複数出店者)の比率が高くなり、フランチャイザーも複数出店者を優遇する措置を取る方向に向かっている。
 またドミナント出店をするために、迅速な出店が可能なCタイプ契約の比率が60%程度まで高まっている。
「コンビニのビジネスモデルはフランチャイザーとフランチャイジーの役割分担と協力関係のうえに成立する。店舗の利益は両者の共同事業としてつくられたものなので、事業に対する各当事者の投資割合に応じて分配されることになる。その分配率がチャージ率であり、フランチャイザーはチャージ率に応じてフランチャイジーからロイヤルティ(チャージ)を徴収する」オープンアカウントについては「コンビニのフランチャイズ制度では、売上金の送金、商品代金の決済、各種支援金、最低保証、チャージの配分、引出金、元入金、貸付金、利息等、フランチャイザーとフランチャイジーの間の債権債務が複雑に絡む。それを個別に決済することは煩雑なので、交互計算に基づく独自の会計制度を採用している」と解説している。
 コンビニに絡む法律問題は多いが、ここでは「ロスチャージ訴訟」と呼ばれる一連の訴訟に対して神田氏の意見を取り上げる。
「コンビニにおけるロイヤルティ(チャージ)の計算方法において、廃棄ロスや棚卸ロス原価相当額をチャージ計算の対象とすることは違法ないし無効であるとして、フランチァイジーがフランチャイザーに対して損害賠償を請求した一連の訴訟のことを“ロスチャージ訴訟”と呼ぶ」
{コンビニのフランチャイズ・システムでは売上高総利益にチャージ率をかけてチャージ(ロイヤルティ)を算出する。コンビニ・フランチャイズ契約における売上総利益とは、一般に「売上高から売上商品原価を差し引いたもの」と定義される。
ただし、コンビニ・フランチャイズ契約における売上商品原価とは「全商品の仕入れ原価」(いわゆる「売上原価」)ではなく、「実際に売れた商品の原価」を意味することから売れなかった商品の原価、即ち「廃棄ロス原価」や「棚卸ロス原価」は売上原価には含まれない。そのため、売上商品原価は、全商品の仕入原価から「廃棄ロス」や「棚卸ロス原価」を控除した金額となる。

 売上商品原価=総売上原価―(廃棄ロス原価+棚卸ロス原価)・・・➀
その結果、チャージの対象となる売上総利益は、
 売上総利益=売上高―売上商品原価
 =売上高―{総売上原価―(廃棄ロス原価+棚卸ロス原価)}
という計算式で算出されることになる。これを分解すると、
 売上総利益={売上高―総売上原価}+{廃棄ロス原価+棚卸ロス原価}・➁
となる。これにチャージ率が掛けられて具体的なチャージ額が算出される。}

{他方、売上商品原価について「全商品の仕入原価」と考えれば、売れなかった商品(廃棄ロス等)も売上商品原価に含まれるはずなので、チャージの対象は売上高から全商品の仕入原価を控除したものとなり、上述の➁計算式後半の{廃棄ロス原価+棚卸ロス原価}相当部分等はチャージ算定の対象とはされない。
 最高裁でも{「売上商品原価」は、実際に売上げた商品の原価を意味し、廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価は含まないものと解するのが相当である}とした。(最判平19.6.11)
 「フランチャイズ・ガイドライン」では「廃棄ロス原価を含む売上総利益がロイヤルティの算定の基準となる場合において、本部が加盟者に対して、正当な理由がないのに、品質が急速に低下する商品等の見切り販売を制限し、売れ残りとして廃棄することを余儀なくさせること」が「正常な商習慣に照らして不当に不利益を与える場合には、本部の取引方法が独占禁止法第2条第9項第5号(優越的地位の濫用)に該当する。」としている。その理由としては「コンビニ・フランチャイズ契約においては、売上総利益をロイヤルティの算定の基準としていることが多く、その大半は廃棄ロス原価を売上原価に参入せず、その結果、廃棄ロス原価が売上総利益に含まれる方式を採用している。この方式の下では、加盟者が商品を廃棄する場合には、加盟者は、廃棄ロス原価を含む売上総利益に基づくロイヤルティも負担することとなり、廃棄ロス原価が売上原価に参入され、売上総利益に含まれない方式に比べて、不利益が大きくなりやすい」ことがあげられている。
{「フランチャイズ・ガイドライン」3(1)アは、公正取引委員会が、フランチャイジー間で渦巻く「不満」と「誤解」にひきずられた感が否めない}と神田氏は批判している。
 筆者もこの意見には同感である。「ロスチャージ訴訟」は、平成19年の最高裁判決で、一応の結論を得たことになる。

第7節 フランチャイズ・システムにおける事業再編と倒産法

 フランチャイザー、フランチャイジーが共にM&A、倒産、民事再生等の事件に巻き込まれることが、最近増加している。
 特に建物をフランチャイザーがフランチャイジーに転貸している場合には、事件を複雑にするので、その辺に詳しい解説を付け加えている。
 「法律相談」でも、第6章で「契約上の地位の移転,M&A」、第7章で「倒産処理」を詳しく解説している。

第8節 フランチャイズ・システムにおけるその他の問題

 

エリア・フランチャイズ契約を取り上げている。(社)中小診断協会東京支部フランチャイズ研究会・平成22年3月「エリア・フランチャイズ制度に関する調査報告書」は、本邦初の研究書であるが、この内容を引用して厚みを増している。
 エリア・フランチャイズに関する判例は多いが、本書がこれらの判例を引用していない点には不満が残る。特に昨今、マスター・フランチャイザーとエリア・フランチャイザーとの間で紛争が激増している。エリア・フランチャイズ制度は、市場が伸びている時には極めて有効に作用するが、昨今のように市場が縮小気味の時には、マイナスに働くことが多い。
 エリア・フランチャイザーを失った場合には、当該エリアを根こそぎ失う恐れもあり、安易な利用は危険であることを警告する必要はあるだろう。報告書にもある通り、21世紀に入って、エリア・フランチャイズ制度を導入するフランチャイザーが増加しているので、常に警告を発する態度が要求されるであろう。
また、エリア・エントリー制度についても詳しく解説されている。特に加盟金不返還特約に関する判例が詳説されているが、「商標登録もしていない」という 極めて特殊な事例であり、参考にはならないと思う。また、最近の会計監査では「加盟金」を開店時に収益として認識される傾向にあり、エリア・エントリー制度は、現時点ではあまり大きな問題ではなくなった。(但し、まだ3千店以上の未開店の加盟者があるという意見もある)
 特に注目したいのは、加盟店会と労働組合の問題である。神田氏は「フランチャイザーの組織した団体は原則として労働組合法上の労働組合に当たらない」と述べており、「フランチャイザーとして団体交渉に応じる法的義務はない」と断定している。
 川越氏も「フランチャイズ・エイジ」(2009年11月号)で、フランチャイジーの労働者性を否定しておられる。  筆者も、この意見には賛成である。時代のニーズにマッチしたテーマと思う。

第3章 フランチャイズ契約書、法定開示書面の作り方

第1節 フランチャイズ契約書の作り方

 

前文から裁判管轄、収入印紙、体裁まで、ほぼすべての条文について解説している。また「フランチャイズ・チェーン加盟契約書」のひな型まで付加されている。 但し、この契約書はあくまで参考であり、このままフランチャイズ契約書にしないよう注意をしておきたい。フランチャイズ契約書は、あくまでもそのフランチャイズ・システムに即応したものでないと、思いがけないことが起きるので、フランチャイズに精通した弁護士のチェックが必要である。


第2節 法定開示書面(情報開示書面)の作り方

 

「法定開示書面は、小振法でフランチャザーなどの特定連鎖化事業を行う者に対し、事前交付を義務付けているものである。
 「法定開示書面は契約内容を説明する道具に過ぎず、当事者間の権利義務を規定するものではない。フランチャイザーとフランチャイジーとの権利義務を定めるのは、あくまでもフランチャイズ契約書である。」
 法定開示書面の作り方としては、日本フランチャイズチェーン協会の定めた「フランチャイズ契約の要点と概説」の様式に準拠している。
 「この書式は日本フランチャイズチェーン協会の正会員向けに作った書式であり、正会員でないフランチャイザーは、同協会に属する旨の記載は除かなければならない。」しかし、大半のフランチャイザーは、関係のない日本フランチャイズチェーン協会の名称と、経済産業省に提出する旨の記載をそのまま記載している。理解しないまま、作っていることが一覧しただけで明らかである。

第4章  契約当事者間での個別紛争の解決

第1節 本章の目的:訴訟回避と紛争解決手段

 

 神田氏は「フランチャイズ契約紛争は、訴訟的解決に向くものではないと感じている」と述べて、訴訟外解決として交渉、斡旋、調停による早期解決を提案している。{話合いによる解決が難しい場合でも、あっせんや調停を利用した早期解決が望ましく、そのためにも事件の争点を正確に理解することが不可欠であるとして、案件ごとに「訴状例」(訴える側の主張を書いた書面)と「答弁書」(訴えられた側の反論を書いた書面)を付けている。これらの「訴訟例」「答弁書例」は、当事者の主張を整理するための道筋を例示するものであり、訴訟を奨励するものではない}と述べている。

第2節 加盟金返還請求事件

 これは既に第2章第2節で説かれた内容である。

第3節 フランチャイザーの情報提供義務違反に基づく損害賠償請求事件

 この節は、裁判上も非常に争点となる内容であり、かつ中身も濃い。特に売上予測については、判例も多数紹介されており、役に立つ。やや難解ではあるが、時間を掛けて読む価値はある。

第4節 契約終了後の競合避止義務違反

 この節も既に第2章第4節で述べられた内容であるが内容は深いし、判例も多い。読めば参考になる内容である。

Ⅱ  本書の利用方法

 

本書は極めて優れた良書である。下記のように利用されることを期待したい。

  1. 法律ハンドブックとして、常に机上において利用する。
  2. 判例集としての利用も期待できる。本書で採用している判例数は173に登り、類書の中では最高である。また、判例を一覧として随所に入れてあるのも大変利用し易い。(但し、事件名が明記されていないものがあるのは残念である)
  3. 実務書として、フランチャイザー、フランチャイジー共に参考になる。
  4. コンビニ・フランチャイズのために1節を設けたのは、特にコンビニ・フランチャイズに関係する方には利用しやすいであろう。
  5. M&A、フランチャイジーの労働者性など最新の事態まで書き込んであり、新しいフランチャイズ問題を考える上で利用できる。

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