フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

「改訂版・フランチャイズ契約の法律相談」を紹介する

 2009年3月に西口元氏他による「改訂版・フランチャイズ契約の法律相談」(以下法律相談)が出版された。本書は2004年11月に青林書院より「フランチャイズ契約の法律相談」として出版されたものの改訂版である。
 旧版のはしがきによれば、旧版は「フランチャイズ・システムの法律相談」(以下前書)の後継本にあたるそうである。前書は「フランチャイズ関係者のための分かりやすい実務書」という意図の下で書かれ、フランチャイズ関係者のみならず弁護士等の法律家からも、読まれたそうである。
 この前書の改定作業を始めたところ、平成15年11月に、社団法人日本フランチャイズチェーン協会の編集にかかる「フランチャイズ・ハンドブック」が全面改訂され、改定作業も急がざるを得なくなったと記されている。
 筆者は、この「フランチャイズ・ハンドブック」の改定に深く関わった関係者であり、協会の30周年記念事業の一つとして改定したものである。
 また、「法律相談」は、大きな変更点としてQ&A方式を採用したそうである。このQ&A方式は、神田弁護士の「フランチャイズ契約の実務と書式」(以下「実務と書式」)に引き継がれている。
 また、改訂版はしがきによれば、旧版以後に金井高志弁護士の「フランチャイズ契約裁判例の理論分析、小塚荘一郎教授の「フランチャイズ契約論」等が公刊されたことを、改訂版を進める理由上げている。
 改定の編集方針は、「フランチャイズ関係者のための分かりやすい実務書」という旧版を踏襲しつつ、「いずれの設問も最新の学説上の議論、判例・裁判例を反映するようにした」と述べている。
 編集者代表の西口元氏は東京高等裁判所判事であり、同じく編集者の木村久也氏、奈良輝久氏、清水建成氏は弁護士である。執筆者14名は西口氏を除き、いずれも弁護士である。
 本書は全10章からなっており、巻末に資料編としてJFA倫理綱領等を収録している。中には資料価値の高いものも含まれている。
 以下、章ごとに紹介していく。

第1章  総論

 

フランチャイズの歴史と社会的経済的機能、フランチャイズの法的構成、フランチャイズと法律・業界の自主規制は概ねフランチャイズ協会の「フランチャイズ・ハンドブック」に従って記述された、オーソドックスな内容である。
 類似システムとして、代理店制・特約店制、直営店制・チェーンストア制との比較、ボランタリー・チェーン制との比較は良くまとまっている。

第2章  契約締結段階

 

契約締結段階において生じる問題として、中小小売商業振興法(以下小振法)や独占禁止法等の法的規制や(社)日本フランチャイズチェーン協会(以下JFA)の自主規制があるとしている。
 フランチャイザーの情報提供義務として、特に損益予想に関するリスクが裁判上最大の問題点であるにも関わらず、本書ではわずかにQ6で触れるのみであり、判例も古いものばかりであるのは何故であろうか。損益予報リスクは、むしろ次の第3章で、最大の力点を置いて執筆すべき課題ではないだろうか。少なくとも、フランチャイズの実務者として、一番困惑する問題点は売上高予測、収益予測のブレであり、この問題点についてしかるべき回答のない法律書は、殆ど利用価値が無いと言っても言い過ぎではない。

第3章  加盟契約締結時の留意事項

 

イニシャル・フランチャイズフィーとは、フランチャイジーがフランチャイズ・パッケージを購入する際に支払う一時金であり、通常加盟金と呼ばれる。加盟金の内容は、法定開示書面で開示することとなっているが、一般的には商標を使用する権利、統一的なノウハウを使用する権利の対価と見られている。各フランチャイザーの内容は、その法定開示書面の示す内容であり、一律ではない。イニシアル・フランチャイズフィーが一時金であるのに対し、継続的に商標を使用する権利、継続的にノウハウを利用する権利、継続的に指導を受ける権利の対価は、ロイヤルティと称される。
 加盟金はイニシアル・フランチャイズフィーの一部しか含まれず、加盟金とは別に研修費、立地調査費等の名目で残りのフランチャイズ・フィーを徴収する例も良く見られるので注意が必要である。
 多くのフランチャイズ契約では、イニシアル・フランチャイズフィーの不返還規定を置いているが、中にはこの規定を設けていないフランチヤイザーもあり、紛争の種となることもある。
 保証金とは、フランチャイズ契約に関連して発生するロイヤルティ等のフランチャイザーとフランチャイジーに対する債権を担保するためにフランチャイジーが提供する一時金である。この保証金は担保金であり、契約が継続する限りフランチャイザーとして返還義務がなく、かつ"預り金"であり、収益ではないため、利益にはならず、かつ消費税の対象にもならないことから、フランチャイザーの運転資金として有効に活用できるとする実務書がある。保証金の返還時期は、フランチャイズ契約の終了時ではなく、フランチャイジーがフランチャイズ契約によってフランチャイザーに対するすべての債務を履行した時である。中には1年後と定めている契約例もあるが、債務を履行した直後に返還するのが妥当であろう。
 一般に商標(マーク)は、事業上、自他識別機能、出所表示、品質保証、広告など様々な機能を持つものであるが、フランチャイズ・ビジネスにおいては、特に重要な機能を果たす場合が多い。
 平成3年の商標法の改正により飲食業、サービス業の商標登録が可能になったが、平成19年に小売等役務商標制度の導入により小売及び卸売の業務において行われるサービス活動を商標法上の役務として登録することが認められるようになった。しかし、"フランチャイズ"という役務が登録対象にならないことには不満は残る。フランチャイズの商標に関する紛争は多い。本書ではマクドナルド事件のみであるが、小僧寿し事件、ほっかほっか亭事件等多数の判例がある。
 初期研修の問題として開業前の研修、開業後の研修に分けて説明しているが、この部分の記述は極めて詳細であり、内容が充実しており、非常に参考になる。
研修に関する裁判例として大蔵フーズ事件を上げているが、事例として古く、判例としても「結局、被告としては、一応の合理的な経営指導をなせば、義務違反の責めを負わないものと解すべきである」と判断している。やや時代離れした判断と思う。
 契約締結時の問題点としては、売上予測、収益予測が最大の問題点であり、判例も多い。是非、改訂版を出す場合には、この問題点を徹底的に取り上げてもらいたい。

第4章  契約締結後の諸問題

 

この章が設問も11問であり、一番本書では力点を置いている章である。
まず、フランチャイザーがフランチャイズ事業を行うのは、自らが築き上げたイメージを象徴する商標等と経営ノウハウをフランチャイジーに提供して事業を行わせることにより、フランチァイジーがフランチャイズ・システムに加盟するのは、提供される商標等や経営ノウハウを利用して自ら事業を行うことにより、独力で事業を始めるより容易に収益をあげることができると期待するからである。
 更に、ノウハウの内容を細かく説明しているが、その内容は懇切丁寧であり、秀逸である。経営ノウハウの提供は、フランチャイザーの負担する最も重要な給付義務の一つとしている。給付の対象となるノウハウの特定として、マニュルの提供、スーパーバイザー(以下SV)指導、講習会等を挙げているが妥当である。しかし、SVの指導に対するフランチャイジーの不満、苦情は多く、裁判上でも売上高予測に次いで、SV指導の不適切を挙げるケースが多いにも関わらず、本書では「経営指導の内容についての具体的な話し合い及び合意がなされたと認められないから、結局フランチャイザーとしては、一応の合理的な経営指導をなせば、義務違反の責めを負わないと解すべきである」とした大蔵事件の判例文を引用しているが、最近の判例からすると古すぎると思う。東京高裁の平成21年12月25日の判例では「わが国においては,SVによる臨店経営指導はFC契約の不可欠の要素であり、経営指導についての専門性を有するSVによる指導を受けることができるのが通常であると広く認識されている」と認めているが、これは言い過ぎであるとしても、この程度のSV指導は今や当然の必要事であると認識すべきであろう。
 ロイヤルティをめぐる法律問題については、筆者として異論がある。
大手コンビニチェーンでは、総売上利益方式が取られているとして、具体的に総売上利益(=売上高―{売上原価―(廃棄ロス+棚卸ロス商品額)}に対する一定の率の金額がロイヤルティとして徴収される方式であるとして、「総売上利益というのは、いわゆる粗利益(=売上高―売上原価)を意味するものではない。つまりいわゆる粗利益に、商品廃棄の対象及び棚卸ロスといった商品の金額を加えたものがここで言う総売上利益ということになる。簡単に言えば、この方式では廃棄商品額と棚卸ロス商品額が本来の売上高に加えられるために、その分粗利益方式よりもロイヤルティの金額が増えることになるわけです」と解説している。この理解が"ロスチャージ訴訟"として永年に亘り、コンビニ業界で紛争の種となってきた、誤った理解であると筆者は考えている。
 「実務と書式」を表した神田孝弁護士は、同書の183ページで次のように述べている。「コンビニ・フランチャイズ契約における売上商品原価とは"全商品の仕入原価"(いわゆる「売上原価」)ではなく、"実際に売れた商品の原価"を意味することから、売れなかった商品の原価、すなわち"廃棄ロス原価"や"棚卸ロス原価"は売上商品原価には含まれない。そのため、売上商品原価は、全商品の仕入原価から"廃棄ロス原価"や"棚卸ロス原価"を控除した金額となる(コンビニ・フランチャイズ契約では全商品の仕入原価を"総売上原価"と呼ぶ)売上総利益方式では、廃棄ロス原価等はプラスマイナス0となるので、廃棄ロス原価等がチャージの対象となるわけではない。最高裁(平19.6.11)でも「"売上商品原価"は、実際に売上げた商品の原価を意味し、廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価を含まないと解するのが相当である。」としている。
 営業秘密の項目では「フランチャイズ契約というものは、端的に言うとフランチャイザーが開発したビジネスについてのノウハウ等の情報を、フランチャイズ・フィーという金銭を対価としてフランチャイザーがフランチャイジーに対して提供するというものである」としている。
 フランチャイズ情報の保護として、不正競争防止法による保護、秘密保持条項による保護、及び信義則による保護を区分して説明している。特に信義則による保護が重要な論点である。
 更に「フランチャイズ契約というものは継続的契約でありまたビジネス上の陳腐化は避けるためにもフランチャイザーは、技術の進歩や消費者の嗜好の変化に合わせてフランチャイズ情報を新たに開発したり、既存のそれを改良してそれをフランチャイザーに提供する義務を負っている。そしてこれがフランチャイズ契約締結後に提供されるフランチャイズ情報ということになる」としている。(金井高志弁護士の意見と同じ内容である)
 ランニング時に締結される加盟契約以外の各種契約の中で、「フランチャイザーたる最も重要な要件として、フランチャイズ・システムに係る事業について成功し、現在も成功の実績を持ち続けていること、その成功の実績をもたらす事業運営のプロトタイプを確立させていること」を挙げている。筆者は3店舗2年以上の直営店の経営をフランチャイズ展開する条件として「スリー・ツーイヤーズの原則」と呼んでいる。
 特に運営規則の内容について詳しく述べているが、この出所はJFA編「フランチァイズ・ビジネスの法律相談」であるが、これらのJFAの出版物は現在新版フランチャイズ・ハンドブック以外は絶版になっており、貴重な内容であるので、是非参考にしてもらいたい。

第5章 契約終了時の諸問題

 

契約の期間満了により契約が終了したか更新がなさたかについて興味ある判例を見出した。「ほっかほっか亭鹿児島事件」(鹿児島地決平12・10・10)である。筆者は「エリア・フランチャイズ契約に関する調査・報告」の中で、この事件を知ったが、残念ながら判例文を入手できず、成文化することを諦めた経緯がある。「法律相談」は、過去数回に亘って読んでいたが、この判例を見逃したため、ここに記憶のため記載する。
 ほっかほっか亭総本部は、総本部➝九州地域本部➝鹿児島地区本部➝加盟店という重層的なマスター・フランチャイズが存在した事例で(九州地域本部は現プレナス)、九州地域本部(債務者)が鹿児島地区本部(債権者)との間の契約について更新拒絶の通知をしたのに対し、鹿児島地区本部は契約上の地位確認を求める訴訟を提起した。控訴審において九州地域本部敗訴の判決が下されたため、九州地域本部が改めて更新拒絶の意思表示をしたところ、鹿児島地区本部が再びその更新拒絶の効力を争い、契約上の地位確認を求める仮処分を申請した。裁判所は「地域本部による契約更新の拒絶が認められると、地区本部である債権者らがほっかほっか亭の商号、商標、サービスマーク等が使用できなくなるだけでなく、債権者らの長年にわたる投資と努力の結果築き上げた加盟店が鹿児島地区本部との加盟店契約を解消して、地域本部である債務者との間で加盟店契約を締結し、地区本部である債権者らの築き上げた基盤を地域本部である債務者が労せずして獲得するという結果になりかねないこと」、「本件地区本部契約は、契約期間満了の180日前に当事者双方から特別な申出のない限り自動更新となる建前であり、更新が原則となっていること」は本件においても基本的に妥当すると述べて、債権者である、鹿児島地区本部による仮処分申請を容認したとしている。
 一方当事者による解約の項では、法定解約と約定解約を説明している。フランチャイズ契約を一方的に解約しうるのはいかなる場合かについては、➀ロイヤルティの不払い(マクドナルド事件等)、➁フランチャイジーの不適正な経理処理(エーエム・ピーエム事件)等、➂フランチャイズ・システムの秩序を乱すフランチャイジーの行為等(ほっかほっか亭大阪事業本部事件=約定損害金として60ケ月分のロイヤルティ相当額が認められている)等、➃競業禁止義務違反(ニコマート事件)➄商品等の供給の停止(ピロビタン事件)等、➅任意解約条項に基づく解約事例(ホワイト急便事件)➆事情変更の原則等が説明されている。
 加盟契約の一方的解約については、実務者が一番問題にする点であるが、この事例は非常に参考になる。
 なお、競業禁止義務違反の項で、「メガ・フランチャイジーについては、フランチャイズ契約に競業禁止義務が規定されないこともあり、また、仮に契約上競業避止義務の定めが置かれたとしても、フランチャイザーはメガ・フランチャイジーに対しては解約権の行使を事実上制限されることがある」とされているが、筆者がメガ・フランチャイジーの実態調査をした場合には、このような特例や、事実上の制限は見たことが無い。メガ・フランチャイジーと言えども、競業避止義務については非常に意を用いているのが実態である。もし、このような記述をするのであれば、具体的事実を述べる必要があると思う。
 フランチャイズ契約終了後の処理の項では、契約終了後も継続する義務として秘密保持義務を挙げている。「フランチャイジーは、フランチャイズ契約継続中は勿論、契約終了後においても信義則上の秘密保持義務を負うものと考える」としている点は首肯できる。更に「信義則に基づく営業秘密の保護も必ずしもその範囲が明確ではないので、フランチャイザーは権利確保を確実にするためにフランチャイズ契約において明確に秘密保持義務を定めておくべきである」とする意見は妥当である。また、競業避止義務については、「フランチャイズ契約期間中であると期間満了前であると問わず、フランチャイズ契約に明文で定めない限り、原則としてフランチャイジーは、加盟するフランチャイズ・システムと競合する事業を行わないとする競業避止義務を負わないと解すべきである」としているのは、当然の意見である。現実に、競合避止義務を謳わなかったために、かってのフランチャイジーが同業のフランチャイザーとなって競合している事実を幾つも知っている。

第6章  契約上の地位の移転,M&A

 

フランチャイジーの契約上の地位の譲渡については、フランチャイザーの承諾を得なければならない。一方、フランチャイザーの地位の譲渡については、事業譲渡をする場合には各フランチャイジーの承諾が必要である。しかし、株式譲渡や合併・会社分割といった手段を採用した場合には、フランチャイジーのとり得る手段は殆どない。
 フランチャイザーのM&A後において、新フランチャイザーが、経営方針やブランドの統一等のために、過度な要求を行ったり、要求に従わない場合に一方的に契約を打ち切ることを主張したりする場合には、フランチャイジーは独占禁止法における優越的地位の濫用や、公序良俗違反を理由の主張を行うことが考えられる。
 フランチャイザーが合併又は会社分割を行う場合には契約上の地位は、フランチャイジーの承諾なくして当然に移転することになる。このような場合につきフランチャイジーの承諾が不要である旨を積極的に契約において規定する必要は、原則としてない。
 フランチャイザーのM&Aにより、当初予定していたフランチャイズ・システムが大きく変更になった場合に備えて、事情変更の原則に準じた条項を設け、フランチャイズ契約の基礎となっていた事情に一方の当事者が予見できなかった変更が生じた場合で、当初のフランチャイズ契約を維持することが信義に反し不当である場合には、フランチャイズ契約の内容変更・修正又は解約できると規定し、一定の範囲でフランチャイジーの保護を図ることも検討に値する。

第7章  倒産処理

 

フランチャイザーの倒産の場合には、固有の財産を分解的に処理するよりも、フランチャイズ・システム全体として換価するほうが破産処理として優れていると言える。事実破産管財人より、フランチャイズ・システムを購入するケースは多い。フランチャイザーが破産し、買手も現れない場合は破産処理となる。この場合は、フランチャイジーの企業避止義務、秘密保持契約は特約の効力は失ったと解すべきであろう。
 フランチャイジーにつき民事再生の申立てがあった場合は、フランチャイズ契約を解約する旨の特約は、有効であると解すべきである。

第8章  独占禁止法

 

独占禁止法上の不公正な取引方法の禁止の内容は、「不公正な取引方法の一般指定」で更に具体化されている。この一般指定のうち、特にフランチャイズ契約の拘束に関する条項との関係で問題となるのは➀抱き合わせ販売の禁止➁排他条件付取引の禁止➂再販売価格維持行為の禁止➃拘束条件付取引の禁止➄優越的地位濫用の禁止である。
 フランチャイズ・システムと独占禁止法の関係を検討するには、公正取引委員会から出されたガイドラインを参照する必要がある。
 昭和58年に発表され、平成14(02)年4月24日に改定された「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」(以下「フランチャイズ・ガイドライン」)である。特に以下のポイントが重要である。

  1. 本部の加盟者募集について
  2. ・本部が加盟希望者に開示することが望ましい事項の追加・拡充
    ・予測売上又は収益予測を開示する場合には、根拠ある事実、合理的な算定方法に基づく必要がること及びこれらの根拠となる事実、算定方法等を示す必要があることを明記。
    ・加盟募集に関する本部の取引方法が、一般指定第8項(ぎまん的顧客誘引)に該当するかどうかの判断のための考慮事項の追加。

  3. フランチャイズ契約締結後の本部と加盟者の取引について

・➀フランチャイズ契約の個別条項又は本部の行為、➁フランチャイズ契約全体について、一般指定第14項(優越的地位の濫用)に該当する場合の考え方をそれぞれ明確化。
・本部による販売価格の制限について、一般指定第12項(再販売価格の拘束)及び第13項(拘束条件付取引)に該当する場合の考え方をそれぞれ明確化。
 なお、優越的地位の濫用について(見切り販売の制限)を規定し、平成21(10)年6月22日に、コンビニ最大手のセブンーイレブン・ジャパン社に対して、➀デイリー商品(弁当など毎日店舗に納品される、品質が劣化しやすい食料品や飲料)に対する見切り販売制限の停止等を内容とする排除措置命令を出した(平成21年(措)第8号)
 フランチャイズ・ガイドラインにおいて、売上総利益方式下で見切り販売の制限が優越的地位の濫用に当たるとされたのは「コンビニエンスストアのフランチャイズ契約においては、売上総利益をロイヤルティの算定の基準としていることが多く、その大半は、廃棄ロス原価を売上原価に参入せず、その結果、廃棄ロス原価が売上総利益に含まれる方式を採用している。この方式の下では、加盟者が商品を廃棄する場合には、加盟者は、廃棄ロス原価を負担するほか、廃棄ロス原価を含む売上総利益に基づくロイヤルティを負担することとなり、廃棄ロス原価が売上原価に参入され、売上総利益に含まれない方式に比べて、不利益が大きくなりやすい」という考え方に基づいている。(ガイドライン3(1)ア 注4)
 既に述べた通り、廃棄ロス原価・棚卸ロス原価は、もともと総売上原価に含まれていない。売上総利益方式に立ったときに、フランチャイジーが「廃棄ロス原価を含む売上総利益」に基づくロイヤルティを負担するわけではない。
 明らかに公正取引委員会の誤解であったと思う。但し、セブンーイレブンに対する排除命令では、公正取引委員会は「ロイヤルティの額が加盟店で廃棄された商品の原価相当額の多寡に左右されない方式を採用している」と述べているので、「フランチャイズ・ガイドライン」改定当時のように「売上総利益方式では廃棄ロスもチャージの対象になる」と誤解しているわけではない。
 このように考えると、本書のP333の(見切り販売の制限)の項目については、訂正する必要があると思う。

第9章  メガ・フランチャイジー、マルチユニット・フランチャイジーの諸問題

 

表題とは異なり、書かれている内容はすべてサブ・フランチャイザーに関する問題のみであり、表題を書き換える必要があると思われる。
 サブ・フランチャイズ契約に関する類書が無い中で、本章の内容は抜群に優れており、本書の中では白眉と称すべき部分である。
 筆者は、中小企業診断協会東京支部のフランチャイズ研究会(会長伊藤恭)で、2009年、2010年に亘り「エリア・フランチャイズ制度に関する調査・報告」を行った1名である。その第2章の判例を書くに当たり、本書の第9章を引用させていただいた。ここで改めて厚くお礼申し上げる。
 本書では、サブ・フランチャイザーに関して次のように解説している。
 「フランチャイジーがサブ・フランチャイザーの場合、フランチャイザーとの間の対等性がより強く認められるため、フランチャイズ関係の継続、解消、解消後の競合関係の制限といった場面での契約解釈に際しては、消費者訴訟的な弱者救済解釈の色合いは後退し、"共同事業性"と言う面でのフランチャイズ契約の特性がより強く出てくるべきである、と思われます」
 最近の判例を見てみると「サブ・フランチャイズ契約の契約内容をきちんと考えてみるべき時期に来ていると思われます」とのべている。
 いずれも時宜を得た発言であると思う。

第10章  その他

 管轄の合意は、フランチャイズ契約ではフランチャイザーの所在地の裁判所を第一審の裁判所に定める事例が多い。しかし、新民事訴訟法においては、専属的合意がある場合においても、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るために必要があることを認められるときは、訴訟の他の管轄裁判所に移送することが認められた(民訴20条・17条)
 主な契約項目とその留意点については、特段のコメントはない。

資料編

 

ほぼすべての内容がJFAの「フランチャイズ・ハンドブック」に収録されているが、唯一「資料2 契約の指針」は「旧フランチャイズ・ハンドブック」に収録されたものである。資料としては古いが(1970年代)、歴史的価値はある。

まとめ

  1. 極めて優れたフランチャイズに関する法律相談書である。特にJFAの指針を引用し、内容はオーソドックスであり、奇を衒わない基本書であり、推薦できる。なお、フランチャイズ協会の推薦文献にする価値はあると思う。JFAの推薦を期待する。
  2. 特に優れているのは、第1章総論、第9章サブ・フランチャイズ契約論の2章である。中でも第9章のサブ・フランチャイズ契約論は、類書がなく、サブ・フランチャイズ契約を研究する人にとっては最高の文献である。
  3. 「フランチャイズ関係者のための分かりやすい実務書」という、本書の意図からは、少し離れ、かなり難解であることは止むを得ないことかも知れないが、もし第3版を出す機会がある場合には、更に判りやすさに焦点を当てて頂きたい。
  4. フランチャイズの法務部門に働く人にとっては、最も基本的な法律文献として推薦したい。
  5. 売上高予測、収益予測については、フランチャイジーから一番クレームの多い問題点であり、加盟店提起の裁判の80%以上を占めるとの意見もある。 問題の重要性にも関わらず、第2章契約締結段階Q6「フランチャイザーの情報提供義務」の一部を充てるのみである。ここは更に強化・補充の必要性が高いし、新しい判例も追加してほしい。
  6. 判例が概して古い。巻末の判例索引を見ると昭和が36件であり、平成が63件である。新しい判例が、最近出ているので、第3版では判例は一新していただきたい。(読んでいないが第1版の判例を引きずっていないか)
  7. コンビニのロスチャージについては、再度ご検討を頂きたい。特に最高裁の判決文をどのように読むか、教えて頂きたい。



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