フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

労働組合法上の労働者性の判断基準とフランチャイジーとの関連


 厚生労働省の「労使関係法研究会」(座長:荒木尚志東大大学院法学政治学研究科教授)は、2011年7月25日に「労働組合法上の労働者性の判断基準について」という報告書をとりまとめた。
 労働組合法は、労働者と使用者とが対等の立場に立って交渉することを実現するために、労働組合の結成を擁護し、労働契約の締結のための団体交渉を助成することを目的としている。
 しかし、業務委託・独立自営業といった働き方をする人が加入する労働組合が、契約先に対して団体交渉を求めたところ、労働者ではないとして団体交渉を拒否され、紛争に至る事例が生じている。
 この「労使関係法研究会」は、2010年11月に第1回の研究会を持ち、第7回目に、これから述べる報告書をまとめた経緯があり、メンバーはすべて労働法の大家である。
フランチャイズを専門とする筆者が、労働組合法を論ずることについて違和感があるのは当然であるが、これは2009年8月4日に岡山市で設立された「コンビニ加盟店ユニオン」が労働組合法上の労働組合に該当するか否かを、学問的に検討するためには、労働組合法に踏み込まざるを得ないと判断したからである。なお、既に「コンビニ加盟店ユニオンは労働組合であるか?」(FC時評209年9月号)を論じているが、所詮労働法の素人の意見であるため、この報告書を用いて更に検証する目的である。
 労働法に興味に無い方は、最後の「Ⅱ、Ⅲ、Ⅵ」」の項目を読んでいただければ、概要は理解できるようにした。



Ⅰ  報告書の概要

ここから先は、「労使関係法研究会報告書」を、できるだけ簡潔にまとめるが、それでも、かなり大部なものとなる。

1. 労働組合法上の労働者性の基本的考え方

 労働者の概念は、個別的労働関係法が労働基準法の労働者概念で統一的に解されているが、集団的労働関係法上の労働者概念は労働組合法上の労働者概念で捉えられてきた。両者は労働基準法と労働組合法における労働者の定義規定の違いもあり、必ずしも一致していないと解されてきた。
 職場における労働条件の最低基準を定めることを目的とする労働基準法上の労働者は、同法が定める労働条件による保護を受ける対象を確定するための概念であり、9条により「事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」と定義されている。労働契約法上の労働者も、労働基準法の定義規定とほぼ同じ内容であるので、労働者の判断基準は、労働基準法とほぼ一致すると思われる。
 他方、労働組合法第3条の「労働者」の定義には、「使用され」という要件が含まれていないため、失業者であっても、「賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」である以上は、同法の「労働者」に該当し、同法の保護を受ける職業別労働組合や産業別労働組合等の構成員となることができる。また、同法は、「労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること」を主旨とし、その労使対等の交渉を実現すべく、団体行動権の保障された労働組合の結成を擁護し、労働契約の締結のための団体交渉を助成することを目的としている(労働組合法第1条)。
 同法の労働者は、主体となって労働組合を結成する構成員として(労働組合法第2条)、使用者との間で団体行動権の行使を担保とした団体交渉法制による保護が保障されるべき者を指すと解される。
 したがって、労働組合法における労働者は、団体交渉の助成を中核とする労働組合法の趣旨に照らして、団体交渉法制による保護を与えるべき対象者という視点から検討すべきこととなる。

2. 労働組合法上の労働者を判断した最高裁判所判決の分析
(1)CBC管弦楽団労組事件最高裁判決の分析

○ CBC管弦楽団労組事件の最高裁判決では以下の点を考慮して判断を行ったとみられる。

○ また、会社の発注に原則として従う基本的関係がある以上、会社は労働力の処分につき指揮命令の権能を有していたとしており、労働力の処分に着目して判断している。

(2) 新国立劇場運営財団とINAXメンテナンス事件の最高裁判所判決の分析

○ 新国立劇場運営財団事件の最高裁判決では以下の点を考慮して判断を行ったとみられる。

○  INAXメンテナンス事件の最高裁判決では以下の点を考慮して判断を行ったと見られる。

○ 判断要素は、次の5つの要素を共通に用いている。
➀事業組織への組み入れ、➁契約内容の一方的決定、➂報酬の労務対価性、➃業務の依頼に応ずべき関係、➄指揮監督下の労務提供・一定の時間的場所的拘束
〇 判断要素の順番を見ると,INAXメンテナンス事件では、まず➀事業組織への組み入れと➁契約内容の一方的決定を判断し、その後➃業務の依頼に応ずべき関係や、➄指揮監督下の労務提供・一定の時間的場所的拘束を検討している。
これに対して、新国立劇場運営財団事件では、➃業務の依頼に応ずべき関係が2番目に判断されているが、これは同様の事件であるCBC管弦楽団事件最高裁判断に説示にならった可能性がある。両判決には、労働組合法上の労働者性について労働基準法とは異なる視覚から判断を行うという最高裁判所の意図が窺える。
〇 ➀事業組織への組み入れについて、契約の目的、事業の遂行に不可欠な労働力として位置づけ、評価制度による管理等を捉えて、組織に組み入れられていたと評価しており、➁契約内容の一方的決定、➃業務の依頼に応ずべき関係とは異なる独自の判断要素としている。
〇➄指揮監督下の労務提供・一定の時間的・場所的拘束について、両判決の原審では一定の指揮監督や拘束性があることを認めながら、委託契約の性質や労務の特殊性に由来するものとして労働組合法上の労働者性を肯定する要素としては評価していなかったが、両判決では労働者性を補完的に肯定する要素として評価対象としている。
〇INAXメンテナンス事件最高裁判決では、就労者が実態として独自に営業活動し、収益性が上げられたかを検討しており、事業者性の程度は労働組合上の労働者性を弱める要素として考慮対象としていると考えられる。

3.労働組合法上の労働者性の判断要素の考え方

労働組合法の趣旨や立法者意志を踏まえると、同法上の労働者には、売り惜しみのきかない自らの労働力という特殊な財を提供して対価を得て生活するゆえに、相手方と個別の交渉においては交渉力に格差が生じ、契約自由の原則を貫徹しては不当な結果が生じるため、労働組合を組織し集団的な交渉による保護が図られるべき者が幅広く含まれると解される。
さらに、各判断要素の具体的検討に当たっては、契約の形式のみにとらわれるのではなく、当事者の認識や契約の実際の運用を重視して判断すべきである。

基本的判断要素

①事業組織への組み入れ
②契約内容の一方的・定型的決定
③報酬の労務対価性

補充的判断要素

➃業務の依頼に応ずべき関係
➄広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束

消極的判断要素

➅顕著な事業者性

4. 判断要素ごとの具体的判断
‹基本的判断要素›

➀ 事業組織への組み入れ

労務提供者が相手方の業務の遂行に不可欠ないし枢要の労働力として組織内に確保されているか。

この判断要素は、労働組合法上の労働者性の判断においては、相手方の業務の遂行に不可欠ないし枢要な労働力として組織内に確保されており、労働力の利用をめぐり団体交渉によって問題を解決すべき関係があることを示すものとして、基本的判断要素と解される。

〇 契約の目的
 ・契約の形式にかかわらず、相手方と労務供給者の契約が、労働力を確保する目的で締結されている。
〇 組織への組み入れ状況
 ・業務の遂行の量的ないし質的な面において不可欠ないし枢要な役割を果たす労働力として組織内に位置付けられている。
・評価制度や研修制度を設ける、業務地域や業務日を割り振るなど、相手方が労務供給者を管理している。
〇第三者に対する表示
 ・相手方の名称が記載された制服の着用、名刺、身分証の携行等が求められているなど、第三者に対して相手方が労務供給者を自己の組織の一部として扱っている。
〇 専属制
 ・相手方から受託している業務に関する業務を、契約上他の相手方から受託することができない。
・相手方から受託している業務に類する業務を他の相手方から受託することについて、契約上設定された権利義務としては制約がないが、当事者の意識や契約の実際の運用上は制約があり困難である。

② 契約内容の一方的・定型的決定

契約の締結の態様から、労働条件や提供する労務の内容が一方的・定型的に決定しているか。

この判断要素は、労働組合法上の労働者性の判断においては、相手方に対して労務供給者側に団体交渉法制による保護を保障すべき交渉力があることを示すものとして、基本的判断要素と解される。
〇一方的な労働条件の決定
 ・契約締結や更新の際に、労務供給者が相手方と個別に交渉して、労働条件等の契約内容に変更を加える余地が実際にない。
 ・労働条件の中核である報酬について、算出基準、算出方法を相手方が決定している。
〇定型的な契約様式の使用
 ・相手方と労務供給者との契約に、定型的な契約書式が用いられている。



➂ 報酬の労務対価性

労務供給者の報酬が労務供給に対する対価又はそれに類するものとして性格を有するか。

この判断要素は、労働組合法第3条の労働者の定義規定の文言上明示された「賃金、給料その他これに準ずる収入」に対応した要素であり、労務供給者が自らの労働力を提供して報酬を得ていることを示し、その報酬の労務対価性を基礎づけるものとして、労働組合法上の労働者性の判断における基本的判断要素と解される。労働基準法上の賃金よりも広く「その他これに準ずる収入」も含めて解されるべきである。
〇報酬の労務対価性
 ・相手方の労務供給者に対する評価に応じた報奨金等、仕事の完成に対する
  報酬とは異なる要素が加味されている。
 ・時間外手当や休日手当に類するものが支払われている。
 ・報酬が業務量や時間に基づいて算出されている。
〇報酬の性格
 ・一定額の支払いが保証されている。
 ・報酬が一定期日に、定期的に支払われている。

‹補充的判断要素›

➃ 業務の依頼に応ずべき関係

労働者が相手方からの個々の業務の依頼に対して、基本的に応ずべき関係にあるか。

この判断要素は、労働組合法上の労働者性の判断において、➀の事業組織への組み入れを補強するものとして勘案される補充的判断要素である。使用者の具体的な仕事の依頼等に対して拒否する自由を有しないことは、労働基準法上の労働者性判断においては、指揮監督関係を推認させる(逆に言えばそれらが認められなければ指揮監督関係を否定的に解する)重要な要素になるとされているが、労働組合法上の労働者性判断においては、それが認められれば➀の事業組織への組み入れを補強する要素であるに止まると解される。
  〇業務の依頼拒否の可能性
 ・実際の契約の運用や当事者の認識上、労務供給者が相手方からの個別の業務の依頼を拒否できない。

➄ 広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束

労務供給者が、相手方の指揮監督下の下に労務の提供を行っていると広い意味で解することができるか、労務の提供にあたり日時や場所について一定の拘束を受けているか。

INAXメンテナンス事件の最高裁判所判決では、各種マニュルに基づく業  務遂行、業務終了後の各種の報告等について、原審で修理補修業務の基本的  業務委託契約の契約内容による制約にすぎず指揮監督関係にあることを評価  できないとされた事情を認定した上で、これを「指揮監督の下に労務の提供  を行って」いると評価している。広い意味での指揮監督の下における労務供  給であっても、労働組合法上の労働者性を肯定的に評価する要素として勘案  されている。労働基準法上は労働者性を肯定すべき程度に至らない拘束であっても、労働組合法上の労働者性を肯定的に評価する要素として勘案されている。

‹消極的判断要素›

➅ 顕著な事業者性

労務供給者が、恒常的に自己の才覚で利得する機会を有し自らリスクを引きうけて事業を行う者とみられるか。

過去の労働委員会命令や裁判例をみると、以下のような事情から、顕著な事  業者性が認められる場合には、判断要素の総合的判断の結果として、労働者  性が消極的に解され得るものと考える。
〇自己の才覚で利得する機会
 ・契約上だけでなく実態上も、独自に営業活動を行うことが可能である等、自己の判断で損益を変動させる余地が広範にある。
〇業務における損益の負担
 ・相手方から受託している業務で想定外の利益や損失が発生した場合に、相手方ではなく労務供給者自身に帰属する。
〇他人労働力の利用可能性
 ・労務供給者が他人を使用している。
 ・契約上だけでなく実態上も相手方から受託した業務を他人に代行させることに制約がない。
〇他人労働力の利用の実態
 ・現実に、相手方から受託した業務を他人に代行させる者が存在する。

Ⅱ 「コンビニ加盟店ユニオン」とは何か

読売新聞が一番内容的に優れているので、引用してみる。
09年8月5日の読売新聞では「コンビニ店主が労組、設立大会に260店24時間営業義務改善など容求へ」という見出しの下、次のように述べている。

{コンビニエンスストア最大手のセブンーイレブン・ジャパン加盟店の一部オーナーは(8月)4日、労働組合「コンビニ加盟店ユニオン」の設立大会を岡山市内で開いた。コンビニオーナーによる労組結成は初めてで、大会にはセブン加盟店約1万2千店のうち約230店舗のオーナーが参加。他のコンビニチェーンからも約30店舗のオーナーが出席した。}

更に

{セブン本部は、オーナーと個別にFC契約を結んでいることなどを理由に団体交渉に応じない方針で、ユニオンは各都道府県にある地方労働委員会に救済を申し立て、団体交渉を求めることも検討する}

この地方労働委員会への申立ては、10年3月25日までに、「セブン本部に団体交渉を拒否されたのは不当労働行為だ」として岡山県労働委員会に救済を申し立てた。(2010年12月号 FC時評参照)



Ⅲ フランチャイジーは労働者か?

ここで、漸く本論に達した。時間の無い方は、Ⅱ、Ⅲ、Ⅵのみを読んで頂ければ、この長いFC時評を読む必要は少ない。
 さて、フランチャイジーが労働者か否かについては、小塚壮一郎教授の「フランチャイズ契約論」の第3章第1節にフランス(、ドイツ)の事例が上げられている。(p139)以下引用する。

{ところが欧州では(フランチャイズ契約に対するー黒川私見)、これに対する労働法の適用を論ずることが少なくない。そこには「フランチャイズ」という名称を与えられていても実態は被用者に等しかったり、これに準じた状況にある場合には、労働者と同様の保護を与えるべきであろうという価値判断がある。 たとえばフランスでは、フランチャイズ契約の実質が労働契約関係であると認められれば、そのように性質決定がなされ、労働法が適用される。そのような場合ではなく、契約の性質は事業者間のフランチャイズ契約であると認められるときにも、フランチャイジーが自然人であって、➀工業または商業を営む企業から専属的に(もしくはそれに準ずる態様で)商品の供給を受け、➁右企業が準備または承認した店舗において、➂右企業の指定した条件および価格でその商品等を販売する場合には、労働法典の規定が適用される(フランス労働法典L781-条2号)。すると、フランチャイジーについて最低賃金、勤務時間、有給休暇等の適用が認められるほか、解雇の規制が適用されて、「現実かつ重大な理由」があり、かつ事前の通知と解雇理由の説明の手続きを踏んだ場合でなければ契約の終了ができなくなる。}
 

 小塚先生のフランスの事例を長々と引用したが、もしこのような見解が日本でまかり通れば、フランチャイズ・ビジネスに取っては大変なことになる。これはあくまでもフランスの事例であり、日本では、そのまま適用される訳ではない。
 ビジネス法務2011年5月号で、アンダーソン・毛利・友常法律事務所の原悦子弁護士、上田潤一弁護士による「フランチャイジーの労働者性」という実務解説が掲載されている。全文を引用することは出来ないので、部分的に引用してみたい。

{業務の実態によっては、フランチャイザーの行為がフランチャイザーとしての援助指導と使用者としての「指揮監督」のいずれに該当するかが必ずしも明確ではないなど、その適用が容易ではない場合も考えられる。}
{フランチャイズの場合、フランチャイジーは一般的には、「指揮監督」を受けておらず「労働者」には該当しないと判断されるため、フランチャイジーには労働法上の保護が一切及ばないということになる。しかし、このような「二分法的」取扱いをすることの妥当性には疑問も呈されている。}{フランチャイズ・システムがあらゆる業態に広がり、その内容も非常に多岐にわたっているというわが国の現状に照らせば、フランチャイズ契約という形式を取りつつ、実態は労働契約に近い就労形態となっている場合が存在する可能性も否定できない。}{今後の立法や判例の動向いかんでは、労働者に該当しないフランチャイジーもその保護の対象となる可能性は否定できない。}

Ⅵ まとめ

 

 筆者は、このFC時評を書くまでは、「フランチャイジーの労働者性は絶対ない」と考えて書き始めた。しかし、労使関係法研究会や、小塚先生、ビジネス法務等を読んで見ると、頭から否定することは危険であると考えるまでになった。労使関係法研究会の「3 労働組合法上の労働者性の判断要素の考え方」に従って、「コンビニ加盟店ユニオン」の事例についてまとめてみる。

1. 労使関係法研究会からの視点

(1) 事業組織への組み入れ  

フランチャイズ契約はオーナーの労働力のみを、枢要な労働力として組織内  に確保するものではない。むしろ、オーナーに期待することは、例え一店舗  でも、パート・アルバイト(以下PA)を雇い入れ、彼らを組織して事業を  遂行し、結果としてフランチャイジーにも、本部にも利益をもたらすことを考えている。 

(2)契約内容の一方的・定型的決定  

フランチャイズ契約は定型的な契約様式を用いる。しかし、それは労働条件や労務内容を決定するものではなく、あくまでもフランチャイズ契約である。契約内容は一方的・定型的決定であるが、フランチャイズに関する契約書で  ある。

(3)労働の対価性  

労働の対価性はない。しかし、コンビニには最低利益保証制度がある。これ  が、労働の最低限を保障しているという論理が生まれる可能性がある。しかし、最低利益保障額からPAの労務費が支払われて、オーナーの「賃金」が 保障されている訳ではない。

(4)業務の依頼に応ずべき関係  

「相手方からの個々の業務の依頼に対して、基本的に応ずべき関係にある」とは考えにくい。コンビニは24時間営業が義務付けられており、オーナー・夫婦のみで年中無休・24時間営業できないことは言うまでもない。当然多数のPAを活用して、店舗運営を行うものであり、「業務の依頼に対して基本的に応ずべき関係」とは言えない。

(5)広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束  

フランチャイズ関係では、加盟店は本部の指揮命令下に入るものでは無い。 一定の時間的場所的拘束もない。オーナーはPAを駆使して、店舗運営を行う存在であり、単なる労働力提供義務ではない。勿論、定期的報告の義務もない。

(6)顕著な事業者性  

独自に営業活動を行い、自己の才覚で売上高を伸ばしたり、利益を出して2  号店、3号店を出すジーも多い。顕著な事業性があることは、疑いない。しかし、この顕著な事業性は‹消極的判断要素›に区分されていることは、重  視する必要がある。「事業者性があるから労働者では無い」と、強く考えていた。そこが、消極的判断要素と言われると弱い。

2. 公正取引委員会の調査から考える 

 ここで、労使関係法研究会から離れて考えてみたい。2011年7月7日に公正取引委員会より「フランチャイズ・チェーン本部との取引に関する調査報告書」が発表された。これについては、公取委の事務総局より9月1日に東京で「業種別講習会」が開催され、筆者もそれに参加した。
 この報告書(FC時評2011年8月号参照)は、加盟店調査のみで、本部調査を行っていない,言ってみれば一方的見解を披露したものであり、どの程度信憑性があるか、不明である。
 しかし、この調査・報告書を読むと驚くような事実が出てくる。例えば「(3)商品の仕入数量」の項では、コンビニで販売する商品の仕入数量について、本部から「示されている」とした加盟店の割合は48.8%で、凡そ半数が指定されていると答えている。
「示されている」と回答した加盟店のうち「本部から示された数量に満たない数量の商品を仕入れることや仕入そのものを行わないことがある」と回答した加盟店に対し、本部から示された仕入数量どおりに商品を仕入れなかったときの本部の対応について質問したところ(複数回答あり)、コンビニでは「返品することができないのに、本部が指示したとおりの数量を仕入れるよう指導された」との回答が32.8%、「その他不利益な取扱いがあった又は不利益な取扱いをする旨示唆された」との回答が12.1%であった。
 さらに「その不利益な取扱いがあった又は不利益な取扱いをする旨示唆された」と回答した加盟店に対し、本部からどのような不利益な取扱いをする旨示唆されたかについて質問したところ(複数回答あり)、コンビニでは「契約更新の拒絶」との回答が48.1%、「契約の解消」との回答が27.8%であった。
  書面調査及びヒアリング調査の結果として、回答例が示されている。一例として「返品をすることができないのに、本部が設定している目標数量を達成するため、経営指導員から商品の仕入数量が強制された。また、オーナー不在時に勝手に経営指導員に商品を発注され仕入数量が強制されたこともある」を挙げておく。
 仕入数量の強制、指導員の勝手な発注、契約更新の拒絶、契約の解消等様々な事例は、有りえない事例と思いたいが、各種雑誌によれば、この程度のことは、コンビニの世界では日常的に行われているそうである。
日本式コンビニエンスストアの創業者である鈴木敏文氏は2003年に「商売の原点」「商売の創造」と題する2点の名著を刊行された。これはセブンーイレブン・ジャパン社で毎週1回行われる「FC会議」で、鈴木氏が社員や幹部たちを前にして話した内容の速記録を題材に緒方知行氏が、まとめたものである。筆者は、この「商売の原点」に感激してFC時評2003年4月号で取り上げている。
 鈴木氏は、もう一冊の「商売の創造」の中で、次のように述べている。

 
「発注は、まさに小売業にとって生命線です。これは、最大の権利であると同時に、われわれに課された義務でもあるのです。私たちがこれまでインノベーションの積み重ねによって実現してきた情報システムを、そのために生かしきれないようでは、滅亡もいたしかたないということになります。」
 

 鈴木会長が「小売業にとっての生命線」とまで述べた発注業務が、この調査のように、加盟店に発注を強制したり、指導員がオーナー不在時に勝手に発注するようなことが、まかり通るならば、正に「滅亡もいたしかねない」ということになる。
 公取委の今回の調査は、決してでたらめではない。各種雑誌が既に報じている事実であり、コンビニの該当社は、この調査に真摯に対応しないと、正に会社が滅亡に瀕する恐れがある。
 このような発注に係る事実が明らかになれば、これはコンビニ加盟店オーナーが、労働者そのものであることを示すものであると考える。労働法上の規定ではなく、民主主義の時代に、このような不条理がまかり通る筈がない。勿論、セブンーイレブンが強制したと言っている訳ではない。業界のリーダーが、そのような姑息な手段を弄するとは思えないので、多分他社であろう。
 鈴木会長は、1990年頃には(社)日本フランチャイズチェーン協会の会長であった。現在は名誉会員であるが、是非このような発注の有り方、及び報告書が明細に記している点について、コンビニ創業者として是正して頂きたい。
 また、飲食業界で広く行われている委託店長制度、フランチャイズ委託経営等、正にオーナーの労働者化であると思われる事例を見ることがある。
 これを機会に是正して、「フランチャイジーは労働者である」と言われないように、まともなフランチャイズ本部になろうではありませんか。




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