フランチャイズ時評バックナンバー

黒川孝雄の美

日本のフランチャイズ・ビジネスは回復したか?

2010年度の「JFAフランチャイズチェーン統計調査」が10月20日に発表された。店舗売上高(システムワイドセールス=協会用語では末端売上高)は前年比+2.8%(5,782億円)と回復した、と宣言した。また、フランチャイズチェーン数は1,233チェーンで、前年度比+2.2%(27チェーン増)で、これは3年振りの増加である。国内の総店舗数(直営と加盟店の合計)は23万4,146店舗で、前年度比+1.1%増(2,480店増)。店舗数は、前年度に引き続きプラス成長を記録した。
 筆者は昨年度(09年度)の調査結果を見て、「停滞期の始まりの恐れも」と予言したが、それは外れたのであろうか。
 本稿では、2010年度の統計調査の詳細と、停滞期の予測の誤り(?)、国際比較、小売業・飲食業におけるフランチャイズのシェアー、各国のフランチャイズ・システムの日米比較など先学の意見を参考にしながらまとめた。

Ⅰ 2010年度「JFAフランチャイズチェーン統計調査」の概要

1.調査結果の概要

日本フランチャイズチェーン協会の調査によれば、2010年度の調査結果は表―1の通りである。

表―1  2010年度調査結果   (金額単位 百万円)
  チェーン数 店舗数 売上高
チェーン数 増減 店舗数 前年比増減 前年比 売上高 前年比
総計
1,233
27
234,146
2,480
101.1%
21,381,415
102.8%
小売業
333
3
90,632
952
101.1
15,028,012
103.9
(うちcvs)
26
▲1
45,769
763
101.7
8,483,343
104.5
外食業
518
6
54,757
331
100.6
3,887,024
98.8
サービス業
382
18
88,757
1,197
101.4
2,466,379
102.6

この調査を概観すれば、次の指摘ができる。(協会指摘事項)
➀2010年度の日本国内のフランチャイズチェーン数は1,233チェーンで、前年比+2.2%(27チェーン増)。これは3年振りの増加である。
➁国内の総店舗数(直営店と加盟店の合計)は23万4,146店舗で,前年度比+1.1%(2,480店増)。店舗数は、前年度に引き続きプラス成長を記した。
➂フランチャイズチェーンのシステムワイドセールス(以下「売上高」と表記は21兆3,814億円で、前年度比+2.8%(5,782億円増)と回復した。なお、3月11日に発生した東日本大震災の影響は、今回の調査にはほとんど出ていない。)

更に、業種別動向は、次の通りである。(協会指摘事項)

(1)小売業
 小売業は比較的大きく伸びた。CVSは、年度前半の売上高はマイナス成長となったが、猛暑となった7月以降は大幅なプラス成長となり、更に9月のタバコ値上げに対する買いだめで、売上高は急上昇した。その結果、売上高は前年比+4.5%という高い伸びを示した。
 また、地デジ化やエコポイント政策の恩恵を受けて家電量販店分野が大きく伸びた。店舗数は前年度比+5.7%、売上高は+9.3%と、フランチャイズ業界で最も高い伸びを示した。売り上げ規模が大きいだけにCVSともどもフランチャイズ業界全体を牽引した。
 中古品分野は、本、家電、ゲーム機、ゲームソフト,CD・DVD、衣料品、ブランド品、スポーツ用品など、幅広い商品分野に広がっている。店舗数は前年度比+14.2%と2ケタの伸びを示したが、売上高は+3.8%であった。

(2)外食業
 2010年度の外食業は、猛暑にも拘らずあまり振るわなかった。チェーン数では6チェーン増、店舗数では+0.6%と手堅く現状を維持したが、売上高では▲1.2%とわずかではあるが前年割れとなり、これで4年連続のマイナス成長となった。
 比較的順調な伸びを見せたのが、「ファストフード」に属する「アイスクリーム」(店舗数+3.3%、売上高+7.0%)と、「コーヒーショップ」(店舗数+4.2%、売上高+7.1%)である。なお、「ハンバーガー」分野は最大手企業が店舗の整理を行ったため、店舗数は▲5.7%と減少したが、売上高は+3.2%と前年(+1.6%)を上回るプラス成長を収めている。
 外食業界で注目すべきは、「弁当店」のプラスへの転換である。「弁当店」は2000年度調査以来、10年間連続してマイナス成長を続けてきた。それがプラス成長に転換したのは、最大手チェーが2つのチェーンに分かれ、それぞれが積極的な店舗展開に力を注いだからと思われる。弁当分野では、店舗数は前年度比+4.2%、売上高は+4.1%の伸びであった。

(3)サービス業
 サービス業分野ではプラス成長をみせたのが「学習塾」分野。こども手当てや小学校における英語教育の本格化から、店舗数・売上高ともに大きな成長をみせている。
 「リース・レンタルサービス」では、3年程前に参入してきた低価格のレンタカーチェーンが急速に勢力を伸ばしている。この低価格レンタカー分野にはまだ新規参入が続いている。
 「その他サービス業」の中では、介護関連のサービスビジネスが順調で、売上高は+5.6%と前回に続きプラス成長を果たしている。

2.10年度統計はフランチャイズ・ビジネスの回復を示しているか?

09年度統計では、筆者は「フランチャイズ・ビジネスは停滞期を示す」と判断した。果たしてその判断は誤りであったであろうか。
 まず一番大きく伸びたのはコンビニである。売上高増加は3、638億円。
続いて大きいのは家電量販店で、売上高増加額は     2、385億円。
両業種の増加額は                   6、023億円
これは、全体売上高の増加に占める比率 は          104.2%
である。極論するならば、コンビニと家電量販店に牽引されて、あたかもフランチャイズ・ビジネス全体が回復したように見えるだけでは無いだろうか。
 東日本大震災の影響を考えると、2011年度統計は、簡単に"回復"とは言えないのではないだろうか?
 確かに、コンビニの復調は素晴らしい。2011年度は、9月のみ前年のタバコ値上げの影響で前年割れを示したが、それ以外は順調に店舗数、売上高を伸ばしている。しかし、家電販売店市場は大幅な縮小が続いている。11年9月の各社の売上は大きく落ち込んだ8月に続き、前年同月比20~30%減となっている。10月以降も同じ傾向が続くと判断せざるを得ない。
 筆者は「08年度はフランチャイズ業界の転換点」「09年度は停滞期入り」と表現した。実は10年度も、コンビニと家電量販店を除けば「停滞期」ではないだろうか。
 確かに、コンビニ業界は継続的革新の結果、はっきりとした成果が出てきて、このまま11年度も大幅な増収、増益となるであろう。
 しかし、一方の家電量販店は8月以降の落ち込みの大きさに驚かされる。
 大震災、電氣の安定供給に対する不安、円高、欧州の経済不安、工場の海外移転、政治の不安定等フランチャイズ・ビジネスの好転は難しそうである。
 小売業、外食業、サービス業ともに業態の継続的革新を図らないと、本格的な売上高回復は難しく、このままでは停滞期が続く可能性が高い


Ⅱ アメリカとの比較

日本のフランチャイズ・システムは、アメリカに模範を求め、アメリカからフランチャイズ・フォーマットを輸入して拡大を続けてきた歴史がある。
 では、アメリカのフランチャイズと日本のフランチャイズを比較して見たら、どうなるであろうか。アメリカでは製品商標型フランチャイズを含んでいるのに対し、日本はビジネスフォーマット型のみをフランチャイズと規定している。
 2010年5月号のフランチャイズ・エイジに2008年、2009年の米国のビジネスフォーマット型フランチャイズの統計が記載されている。
 それによれば、米国IFAがプライスウォーターパース(PwC)社に委託した、「2010年フランチャイズ・ビジネス経済予測」と呼ぶ結果が記されている。内容を子細に検討してみると、2010年は予想であり、実績ではない。そこで、最新の2009年版の米国のビジネスフォーマット型フランチャイズと、同じ2009年度の日本のフランチャイズ統計を比較してみる。


表―2 09年のアメリカと日本のフランチャイズ統計比較 売上高:百万円
  日本 アメリカ 日米の比率
店舗数 231,666店 883,292店 3.81倍
総売上高 20兆803,124 71兆779,500 3.45倍
雇用者数 231万人(推定) 952万人 4.12倍


注1 アメリカの売上高は8,447億ドルで、1ドル85円で計算した。
注2 日本の雇用者の統計は無いので、1店舗10名の仮定で計算した。
注3 日米の比較は日本の数字を分子、アメリカの数字を分母にした。
 アメリカと日本の比率は、概ねアメリカが日本の3~4倍程度である。人口差、フランチャイズの普及の度合いからみて、さほど違和感のない数字と思うが、如何であろうか。(なお、この計算は仮説に仮説を重ねているので、異論があることは当然である)


Ⅲ 世界各国のフランチャイズ・システムの規模

フランチャイズ・エイジ2006年1月号で「世界各国の最新FC統計」という記事が出ている。このデータを基に小塚総一郎教授が「フランチャイズ契約論」にまとめられている。これを表―3にまとめて見る。



表―3 世界各国のFC統計         売上高の単位は10億ドル
    1 2 3 4
   

システム数

店舗数 売上高 雇用者
(千人)
北米 アメリカ 1,500 760,000 1,500 9,700
南米 ブラジル(04) 814 59,026 1 531
ヨーロッパ フランス(04) 835 62,981 113.7 400
ドイツ 760 41,200 23.8 362
イギリス 718 31,300 160 32.7
ロシア 95 1,850 N/A N/A
オセアニア オーストラリア 720 50,600 62 600
アジア 中国 1,900 87,000 90 2,000
日本 1,100 220,000 170 2,000
インド 600 40,000 1 300
マレーシャ N/A N/A 62 500


FC統計の数値は2005年度を基準にしているが、04年度2国、02年度1国であり、厳密な比較は難しい。
 日本フランチャイズチェーン協会の行う「フランチャイズチェーン統計」 は毎年度継続的に実施しており、この調査の正確性、継続性は世界に誇っても良いデータである。
   世界各国のデータがどこまで正確であるかは判らないが、店舗数、売上高、雇用者数等は、日本がアメリカに次いで世界第二位のフランチャイズ大国であることは間違いない。
 但し、世界第二位のフランチャイズ大国にしては、閉鎖的な体質が目立つ。日本列島にこもり勝ちな、「閉鎖的システム」の観がある。毎年開催される「フランチャイズ・ショー」に外国のフランチャイザーが出展しないことでも明らかである。少なくとも5年程前までは、アメリカのニューフェースが出展していたものである。
 また香港、シンガポール、マレーシャ等で開催される「フランチャイズ・ショー」への日本からの出店社は少ないようである。
 フランチャイズ・エイジには諸外国の「フランチャイズ・ショー」に対する出展告知がなされているが、あまり大きな反響はない。



Ⅳ 日本のフランチャイズ・ビジネスの最新動向

1.フランチャイズ・システムのシェアー

 業界全体の数字が明らかな業種の「FC企業の占めるシェアー」を一覧にしてまとめて見た。

(1) 小売業
 平成19年度の商業統計の小売額(単位:百万円)    134,705,448
 2007年度のフランチャイズ統計の小売業        13,607,958
全小売業に占めるフランチャイズのシェアー          10.1%
 (これより新しい商業統計は公表されていない。)

(2)外食業
 平成22年度外食産業総合調査研究センター(単位:億円)  23,6450
2010年度のフランチャイズ統計の外食業(単位:億円)    3,8870
外食産業に占めるフランチャイズのシェアー           16.44%

(3)サービス業
 総務省統計局による「サービス産業動向調査」はあるが、中には新聞、雑誌等を含み、フランチャイズ業で言う「サービス」とは範囲が異なるため、適切なシェアーの算出は難しい。

(まとめ)  小売業、外食業全体に占めるフランチャイズのシェアーは10%~16%の範囲で、日本国内におけるフランチャイズの比率は高い。


2.海外への展開

日本のフランチャイズの閉鎖性を述べたが、実は日本のフランチャイズ本部の海外展開は急速に進んでいる。フランチャイズ・エイジ2011年11月号によればフランチャイズ協会の正会員者、準会員社を対象に「海外展開状況に関する質問」を郵送し、回答社は93社(89%)であったと報じている。


表―4  海外展開状況について(2011年度調査)
回答
企業数 構成比
展開中
44社
41.9%
現在検討中で3年以内展開予定
6社
5.7%
展開する予定がない
37社
35.2%
対象外
6社
5.7%
無回答
12社
11.4%
合計
105社
100%

対象外:日本国内のみをテリトリーとしたマスターフランチャイズ契約等



表―5 既展開企業の業種別内訳
業    種 企 業 数 前 回 調 査 比
コンビニエンスストア
4 0社
小売業
6 0社
外食業
26 ▲2社
サービス業
7 0社
外食&サービス
1 0社
  合    計 44 ▲2社


この調査によれば、協会正会員社、準会員社の46%が海外展開を実施もしくは3年以内に展開予定であり、概して海外展開に意欲的であることが判る。
   しかし、協会に加盟していないフランチャイザーが約1100社あり、かつ日本ではフランチャイズ展開していないが、海外ではフランチャイズ展開している企業の実態は判らない。
 これについては、2010年2月に川端基夫氏による「日本企業による国際フランチャイジング」(新評論社)が出版された。極めて優れた研究であり、一読を勧める。(FC市場レポート2010年5月号参照)特に巻末に付されたデータベースは、完璧であり、撤退企業の多さに驚かされる。
 協会会員社以外で、成功している事例を挙げれば、次のような企業が指摘できる。
(ファッション専門店)
オンワード、ローラアシュレイ、東京ブラウス
(その他専門店)
 ミズノ、大創産業、良品計画、フランフラン、たち吉
(サービス業)
 日本公文教育研究会
(外食)
 ビアードパパ、ココス、元気寿司、フレッシュネスバーガー、カプリチョーザ



3.サービス・フランチャイズが発展の鍵を握る

これからの日本のフランチャイズ産業の発展を考える場合、圧倒的にサービス・フランチャイズが重要であることは論を待たない。
 日本経済は、相変わらず輸出依存型で、製造業の生産性が高く、「物造りの国」と思われているが、実は製造業のウエイトは確実に低下し、広い意味でのサービス業の時代に転換しつつある。

 日本の就労人口(2010年データ)        構成比
第1次産業(農業・林業・漁業)          3.8%
第2次産業(工業,鉱業、建設土木業)      25.2%
第3次産業(金融・保険・商業・観光・サービス業)71%
(総務省統計局「労働力調査」より引用)
 上記の通り、広義のサービス業従事者は71%であり、日本経済のサービス化は予想以上に進行している。

 今後も間違いなくサービス業のウエイトが高まり、いずれGDPの7割をサービス業が担う日がくるであろう。フランチャイズ産業でも、当然サービス業のウエイトが高くなり、サービス産業の比率が高くなるであろう。
 サービス・フランチャイズの流れをキーワード的に表現するならば、高齢化、介護、健康志向、幼児教育、保育、学童、安全、安心、美容、レンタル、便利、省エネルギー、語学教育、スポーツ等であろう。
 これから、フランチャイズで新しく起業を目指す方々は、この方向で検討するのも一つの選択肢となるであろう。
 ちなみに、2011年3月の「日経フランチャイズ・ショー」の出展社を見ると、小売業13社、フードサービス業37社、サービス業64社で、サービス業が過半数を占めているのは、時代の流れを示すものであろう。(詳細はFC時評2010年3月号参照
 サービス産業の重要性は理解して頂けると思うが、サービス産業の生産性を製造業に比較して低いと言われる。事実サービス産業の労働者の賃金は、製造業と比較して低い。サービス産業が発展するためには、サービス産業の生産性を高める努力が必要である。その意味で「最強のサービスの教科書」(講談社現代新書・内藤耕)は、素晴らしい教科書である。一読をお勧め致します。




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