大阪市立 東洋陶磁美術館  平常展

大阪は水の都である。土佐堀川と安治川に挟まれた中島公園には、世界に誇る大阪市立東洋陶磁美術館がある。この美術館は、世界的に有名な「安宅コレクション」を住友グループ21社から寄贈を受け、大阪市が設立した美術館である。開館は昭和57年(1982)11月である。開館以来30年以上を経過し、「安宅コレクション」以外に「「李乗昌(イ・ビョンチャン)コレクション」、浜田庄司作品などの寄贈、更に鼻煙壷やペリシャ陶器などのコレクションの寄贈を受け、中国、韓国、日本の陶磁などを独自の構成と方法により体系的に招介している。東洋陶磁コレクションとしては世界で第一級の質と量を誇るものである。この中には2点の国宝と13点の重要文化財を含んでいる。今回の特別展は「朝鮮時代の水滴」であったが、必ずしも私の好みには合わなかったので、平常展を重点的に見学し、その中から特に私の好みに合った陶磁器を選んで、解説する。

大阪市立東洋陶磁美術館の写真

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大阪証券取引所の中のオフィスに行く要件があり、2時間程早めに自宅を出て、2年振りに東洋陶磁美術館を訪れた。開館以来35年を経過したため、やや建物に年代が付いた感じで、ついこの間までの初々しい美術館の感じが、貫録の出来た美術館に変わったような感じを受けた。

重要美術品 唐三彩貼花 宝相華文 壺    唐時代(618~907)

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胴の中央に勲章のような豪華な文様が見られるが、胴とは別に型で作って貼り付けたもので、胴のまわりに3箇所、大きくあしらわれている。唐三彩ではこの器形は少なく、中でも豪華な趣きのある壺である。

重要文化財 緑釉黒花 牡丹文 瓶(へい)  北宋時代(960~1127)

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灰色の胎土(たいど)で成形して、一旦白化粧する。その上から鉄絵具を塗り詰め、文様が浮き出るようにそのまわりを掻き落してから、透明釉をかけて焼き上げる。この瓶は、牡丹文に北宋特有の厳しさが見られ、極めて大きい。貴重な作例である。中国人古美術商から買ったものと言われる。

重要文化財白磁刻花 蓮華文 洗(あらい)定窯 北宋時代(960~1127)

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底部を広く取り、安定した器形で、洗(あらい)と呼ばれている。器壁は非常に薄く作られ、その内側と外側に流麗な片切彫りで、蓮花文が表されている。伏焼きのため、口縁部には銀の覆輪が嵌められている。定窯最盛期の代表作であろう。

白磁 水仙盆 汝官窯          北宋時代(960~1127)

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宋代の五大名窯の一つと言われる汝窯(じょよう)は、宮中の御用品を焼いた窯でありながら、長い間釜跡が明らかでなかった。現在では河南省宝県清凉寺において汝官窯とみなされる青磁片が採集された。そこが汝窯であろうとされている。本器は、水仙のような球根植物を栽培する水盤と考えられる。釉色には青く神秘感が漂い、気品がある。

青磁 八角瓶  官窯     南宋時代(1127~1279)

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青銅礼器を模した器形である。黒く薄い胎土に厚い釉薬がかかり、玉(ぎょく)のような深みのある粉青緑色に発色している。神秘的な美しさである。北京故宮博物院の伝世品との見解もある。19世紀末に、何等かの事情で国外に出て、1903年には英国の取集家の手元にあったとされる。器底には「第百五十一号」という番号を持つ故宮の蔵品票が貼られているという。

重要文化財 青磁 鳳凰耳花生(ほうおうみみはないけ)龍泉窯 北宋時代(12~13世紀)

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砧型の器形に、鳳凰をかたどった耳がついている青磁で、俗に鳳凰耳の花生と呼ばれている。鎌倉・室町時代以降、中国陶磁は日本にさかんに運び込まれ、「唐物」として珍重されてきた。この瓶も何時からか、丹波青山家に伝えられたものという。浙江省龍泉窯の最盛期の制作になるもとの思われる。

国宝 飛青磁 花生(はないけ) 龍泉窯 元時代(1271~1368)

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飛青磁(とびせいじ)とは素地の上に鉄絵具による斑点を置き、その上に青磁釉を施したものである。元時代には青磁や青白磁に鉄斑文を置く装飾が流行した。この花生の器形は玉壺形と呼ばれて親しまれた酒瓶である。中国陶磁で国宝に指定されているものは8点に過ぎない。(平成18年現在)その中に天目茶碗が5碗含まれているため、袋ものとしては三点あるのみである。この花生は鴻池家伝来で、九州の炭鉱王が所有していたが、昭和41年頃に安宅産業が入手したものである。安宅コレクションとしては最初の国宝指定物件を迎えることになったそうである。

重要文化財 木葉天目 茶碗 吉州窯   南宋時代(1127~1279)

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吉州窯の天目茶碗は胎土(たいど)が白く、土が緻密(ちみつ)であるため、薄作りで、碗形も直線的に広がっている。高台が小さいのも特徴である。この天目茶碗は実際の木の葉を使用して、その葉脈まで残して焼き上げる技法については、まだ定説をみない。加賀前田家に伝来したものである。昭和47年に安宅産業が入手している。

重要文化財 法花 花鳥文 壺  明時代初期(15世紀)

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法花の”花”とは文様、”法”とは決まりつける意味である。素地に直接三彩釉をかけて焼き上がるが、低火度で溶けるため色がまじり合う。法花では、色がまじり合わないように文様の輪郭をあらかじめ盛上げた線であらわし、時には文様を浮彫りにする。此の壺は、胴の中央前後に叭々鳥(ははとり)や鸚哥(いんこ)を浮彫であらわしている。その文様の卓抜さ、大きさ、色彩の鮮やかさなどから、法花の最高傑作と言われるものである。

 

中国の陶磁は、青磁、白滋に尽きると私は思う。青磁、白磁は神秘的な色合いを感ずる。数年振りに、中国陶磁の名品に接し、心洗われる思いがした。私の好みは、北宋、南宋時代の青磁、白磁であり、せめて年1回は接したいと思う。

 

(本稿は、図録「東洋陶磁の展開  1994年版」、図録「美の求道者 安宅英二の眼  2007年、小杉一雄「中国の美術」を参照した)