第1部 コレクションの形成 第2期 発展期(2)昭和29~40年
青磁鉄絵 草葉文 梅瓶 高麗時代(12世紀前半)
鉄絵具で闊達に草花文を描いた後、青磁釉がかけられている。青磁は酸化気味に焼成され、やや褐色となっている。青磁に自由な筆致で文様を表そうとした意欲が見られる。
粉青掻落鉄彩 龍文 梅瓶 朝鮮時代(15世紀前半)
球のように張った上半部と、細くくびれた下半部が対照的な梅瓶である。龍の姿は手早い掻落の技法にあわせて大胆に簡略化され、戯画風でもある。印花の技法との併用も珍しい。
粉青掻落 蓮華文 篇壷 朝鮮時代(15世紀後半~16世紀前半)
ロクロで形成した瓶の側面を叩いて、この辺壺が作られている。そして器面に白土を貼毛で塗り、文様の地の部分を掻落している。このような装飾技法は15世紀後半から見られるものである。
粉青鉄絵 魚文 深鉢 朝鮮時代(15世紀後半~16世紀前半)
形成後、全面に白泥を貼毛塗りし、鉄絵具で文様を描く、鶏龍山と呼ばれるものである。窯跡が鶏龍山のふもとにあることに由来する。特徴のある魚の姿は、鶏龍山で好んで使われたモチーフである。
青花 宝相華唐草文 盤 朝鮮時代(15世紀後半)
鍔状の口縁を持った盤で、低めの高台がついている。このような盤は15~16世紀の白磁に見られる特徴である。見込みの宝相唐草文は酸化コバルトで丁寧に描き込まれている。
青花 松島文 壺 朝鮮時代(16世紀)
松の木に小鳥と、裏面には梅の木に小鳥が描かれているが、特に松葉や小鳥は透明度の高い青色で、樹木部分はやや黒味がかかっていて、コバルトの純度を変えて表現されている。玉縁の口を持つこの壺は16世紀の作例である。
草花 梅竹文 壺 朝鮮時代(16世紀)
16世紀の青花を代表する堂々たる作品である。短く外へ巻き返した口、丸く豊かな胴にこの時期の壺の特徴が見られる。精緻な文様は、専門の画員が窯場に出向いて絵付けしたという記述を立証するかのようである。
白磁 面取壺 朝鮮時代(18世紀後半)
全体を8面に面取りした壺で、口作りの様子から本来は蓋を伴っていたと思われる。かすかに黄みを帯びた釉色が穏やかな印象を与え、胴裾の貫入より生じた染みが景色となっている。
青花 窓絵梅花文 壺 朝鮮半島(18世紀前半)
18世紀前半の青花は、水で薄めた顔料で描かれた淡い発色を特色としている。梅花はデフォルメされているが、枝の表現などには宮中の画壇との関わりがうかがわれる。京畿道広州、金沙里窯址の製品である。
重文 白磁刻花蓮花文 洗 定窯(北宋時代・11世紀)
底部を広く取り、安定した器形で、洗(せん)と呼ばれている。器壁は非常に薄く作られ、その内側と外側に流麗な片切彫で、蓮華文が表されている。伏焼のため、口縁部には銀の覆輪が嵌められている。「三種の神器」が安宅コレクションに昭和39年に加わった時を境に、中国陶器への傾斜は一段と深まっていった。
「三種の神器」とは、この定窯の深鉢、続く釣窯盤、続く万歴面盆の3点であり、この鉢は、ロンドンのデイヴィッド財団所蔵のものとともに、定窯深鉢の双璧として名高い。
(本稿は、図録「美の求道者 安宅英一の眼 2007年」、図録「東洋陶磁の展開 1990年」を参照した)