美を紡ぐ  日本美術の名品(3)

[美を紡ぐ  日本美術の名品(3)」は、本稿をもって終わりとする。江戸時代から昭和までの明作を綴る。一度、取り上げた作品もあるが、日本美術の粋として選ばれているので、我慢して読んで頂きたい。勿論、大半が、初めての収録である。

虎図  一幅 谷文晁作 絹本着色  江戸時代(18^19世紀)三の丸尚蔵館

多彩な画題、画風を学び、多くの絵師をはじめとして、さまざまな分野の文芸人と交流した谷文晁(1763~1841)が、西欧から渡来したヨンストン「動物図譜」の指図の模写や、伝統的な水飲虎の図様をヒントに描いたもの。近代絵画の萌芽を感じさせる。

花鳥版画「牡丹に蝶」「紫陽花に燕」葛飾北斎2枚 錦絵 江戸時代(19世紀)東京国立博物館

「牡丹に蝶」

「紫陽花に燕」

葛飾北斎による花鳥画の代表作で、「富岳三十六景」と同時期に同じ版元の西村屋与八から出版された十図のシリーズである。「牡丹に蝶」では墨を面的に使って筆線に強弱をつけるなど、各図の描き方を変える意欲的な試みがなされている。北斎70歳代前半の作品。

玄圃瑶華(げんぽようか) 伊藤若冲自画・自刻 江戸時代・明和5年(1768)東京国立博物館

「壇特・華鬘草」(だんとく・けまんそう)

「花菖蒲・棕櫚」(はなしょうぶ・しゅろ)

「玄圃瑶華」の「玄圃」は仙人の居所、「瓔華」(ようか)は玉のように美しい花の意味。草花と虫などを組み合わせた四十八図がある。版木に紙を充着させ、拓本と同じようにその上から墨を打つて形を出す。若冲特有の拓版画の技法が用いられている。版も若冲自身が彫っている。53歳の時の作品である。なお、初収と思い思い、「生誕300年記念 若冲」の図録を調べたところ、図録の148,185ページに発見した。地味な作品であるから見逃したのであろう。しかし、自画・自刻は珍しい。見たことも、聞いたこともない。流石に若冲の「奇想振り」である。

「玄圃」(げんぽ)は仙人に居所、「瓔華」(ようか)は玉のように美しい花の意味。草花と虫などを組み合わせた四十八図がある。版木に紙を密着させ、拓本と同じようにその上から墨を打って形を出す、若冲特有の拓版画の技法が用いられている。版も若冲自身が彫っている。53歳の時の作品である。

「舞子」 黒田清輝作  カンヴァス・油彩 明治26年 東京国立博物館

明治26年夏、9年に及ぶフランス留学から帰国した黒田清輝(1866~1924)は、その秋に京都を訪れた際に舞妓を新鮮に思いスケッチをとり、本図を絵が描いた。鴨川を背に座る舞妓は、京都祇園の小野亭という茶屋の「小えん」を、隣は「女中のまめどん」をそれぞれモデルにしたという。黒田は、外交派と呼ばれた明るい画風を日本の洋画界に紹介し、明治43年(1910)には洋画家として最初の帝室技芸員に任命された。もし、黒田が本は本格的に印象派を学んできたならば、日本の洋画の世界も変わったのではないかと思う。如何であろうか。黒田の日本洋画界に及ぼした影響は、図り知れないものがる。

「雩性(うせい)」一幅 絹本着色 竹内栖鳳筆 大正13年 三の丸尚蔵館

古木の柳で白鷺が羽をつくろい、上部の枝では雀が喧しくさえずっている。丸山四条派の写実的な画風がに西洋画の描法や空間表現を取り入れた竹内栖鳳(1864~1942)の特徴がうかがえる作品。「東の大観、西の栖鳳」と呼ばれ京都画壇の中心として活躍した栖鳳は、皇室の御用も多く手掛けた。

秋茄子 絹本着色 西村五雲筆 昭和7年(1932)  三の丸尚蔵館

昭和7年の第13回帝展にて宮内省お買い上げとなった西村五雲(1877~1932)の代表作である。五雲は師である竹内栖鳳ゆずりの温雅な動物絵に定評があり、そこには徹底した観察眼が根底にあった。制作にあたり名古屋動物園に足を運ぶだけではなく、山奥まで野生の狐を探し、ついには自宅の庭に狐を飼い写生を繰り返した。

重文 色絵若松図茶壷 仁清作 江戸時代(17世紀)  文化庁

仁清は丹波(現兵庫県の一部)出身の陶工である。性を野々村、名を仁清といい、洛西御室の仁和寺前に窯を開いた。江戸前期に活躍した京焼の大成者として名高い。この茶壷は、小型の肩衝茶入の形態を拡大して茶壷にし、四方の肩に耳を付したもので、仁清独特の器形をしている。底は、平底とし、銅部は薄く焼き上げられて均整のとれた姿を呈しており、卓越した轆轤技術が遺憾なく発揮されている。さらに、細く緩やかな曲線は、総体に嫋やかで瀟洒な印象を醸している。地には仁清黒と呼ばれる独特の光沢を発する黒漆が掛けられており、下方の土膚は土埕に見立て、金泥で遠景の山並みを表し、赤、緑、金泥、銀泥を用いた若松、椿、桜などの花弁を組み合わせた吉祥の図様がリズミカルに配置されている。深い漆黒地に色絵によるミチーフが鮮やかによく映えた本作は、仁清色絵陶器の代表作の一つとして、評価が高い。

重文 色絵牡丹図水差  仁清作  江戸時代(17世紀) 東京国立博物館

17世紀前半に京都の仁和寺の門前で御室窯を開き、京焼における色絵の大成者として知られる野々村仁清(生没年不詳)の代表作の一つである。明治41年(1908年)に明治天皇の皇后により、東京国立博物館の前身である帝室博物館に御下付された。

 

「美を紡ぐ  日本美術の名品」を3回に亘り連載した。いずれも宮中となにかの形で縁のあった作家か、作品である。何れも名品であり、二度と見れないものが多数展示された。皇室の代替わりか、20周年記念などでない限り、二度と見れない名品揃いであった。改めて、「令和」の代が、人々にとって良き時代になることを祈りたい。

(本稿は、図録「美を紡ぐ 日本美術の名品  2019年」、「生誕300年記念 若冲  2016年」、図録「生誕150年黒田清輝  2016年」田中栄道「日本美術全史」、小林忠「日本水墨全史」を参照した)